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5. 産業廃棄物の特性の解析

8.2 現行制度でのマニフェスト交付等状況報告書の多面的活用策の提案

8.2.1 マニフェスト交付等状況報告書の多面的活用策を実現するためのステップ

マニフェスト交付等状況報告書の多面的活用を実現するために、次のステップをふむものとする。

ステップ1 マニフェスト記載情報の信頼性の一層の向上

ステップ2 マニフェスト交付等状況報告義務の周知の徹底

ステップ3 マニフェスト交付等状況報告の作成および集計の効率化

ステップ4 マニフェスト交付等状況報告集計データの一層の活用

8.2.2マニフェスト記載情報の信頼性の一層の向上

マニフェスト記載されている情報(種類と数量)の信頼性の向上のためには、次の事項を実施すべき である。

(1)種類

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最終処分場および中間処理施設におけるアンケート調査では、マニフェスト記載の産業廃棄物の種 類は信頼できるとしていること、マニフェストへの廃棄物種類の単独記載は90%程度であり、マニフ ェストに記載された産業廃棄物の種類の信頼性は、高いと考えられた。しかし、産業廃棄物の種類に よっては、マニフェスト記載以外の種類の混入(容積基準で10%以上)割合が15%を超えるものもあり、

都道府県・政令市が、排出事業者に対して産業廃棄物の分別の徹底を図り、マニフェストに記載され た産業廃棄物以外の異物混入防止の指導が不可欠である。

(2)数量

マニフェスト記載の数量の表示 方法は、産業廃棄物の種類によって 異なっているものの全体では重量が

約60%と多いこと、都道府県・政令

市が求める産業廃棄物の数量に関す る報告での数値は重量であることか ら、マニフェストに記載する数量の 単位は重量が望ましい。

また、トラックスケールの保有割 合は、最終処分場では約 70~80%、

中間処理施設では約 80%と推定され たこと、トラックスケールを保有し ている施設では、全ての搬入産業廃 棄物の重量を測定していないものの、

測定する場合には、実質的にトラックスケールでの計量値をマニフェスト記載数量としていることが 明らかとなった。

トラックスケールで計量しない場合には、環境省通知の重量換算係数を利用すれば、都道府県・政 令市が求める産業廃棄物の重量を報告できる。

さらに、排出事業者が処理委託した産業廃棄物は、契約に基づいて、産業廃棄物の処理業者が適正 な収集・運搬、処理処分を行い、その状況を排出事業者はマニフェストの返送等によって確認してい ることになっている。この契約に基づいて、排出事業者、収集・運搬事業者および処理処分事業者は、

マニフェスト記載情報(種類と数量)の確認を、産業廃棄物の引き渡し時、搬入時、マニフェストの返 送時に相互に徹底することにより、マニフェストに記載の種類と数量の信頼性は一層向上すると考え られる。

これらのことから、マニフェスト記載情報の信頼性の一層の向上のために、図8.2-1の事項を提案 した。ただし、アンケート調査結果より最終処分場事業者と中間処理施設事業者は、現在の環境省通 知の重量換算係数をあまり信頼していないこと、実際に収集・運搬される産業廃棄物の重量換算係数 は、産業廃棄物の種類によって通知の数値との大きな乖離が見られることから、現在の重量換算係数 の数値の見直しが不可欠となる。

8.2.3 マニフェスト交付等状況報告義務の周知の徹底

マニフェストシステムが電子化されている韓国や台湾との大きな違いの一つとして、産業廃棄物排

① マニフェスト記載の数量は、重量を原則とする。

② 処理業者は、トラックスケールを設置する。

③ 処理業者は、搬入産業廃棄物の重量を計測する。

④ 計測した搬入産業廃棄物の重量を、マニフェスト記 載数量の確定値とする。

⑤ トラックスケールによる重量計測をしない場合に は、重量換算係数を使った換算重量を確定値とする。

⑥ 使用した重量換算係数を明示する。

⑦ 排出事業者、収集・運搬事業者および処理処分事業 者は、マニフェスト記載の種類と数量の相互確認を 徹底する。

図8.2-1 マニフェスト記載情報の信頼性の一層の向上のた

めの提案

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出事業者の把握の方法の違いがある。韓国や台湾では、法律に基づいて電子マニフェストを利用する 事業者が特定されているが、日本では、産業廃棄物の排出事業者を特定する仕組みが存在しない。そ のため、マニフェス

トを交付した事業者 の母数が把握できな い。そのことが、マ ニフェスト交付等状 況報告制度を活用し きれていない要因と なっており、排出事 業者にマニフェスト 交付等状況の報告義 務の周知を徹底する

ことは、極めて重要である。そのために、図8.2 -2の事項を提案した。

8.2.4 マニフェスト交付等状況報告の作成および集計の効率化

これまでの調査により、排出事業者が、都道府県・政令市に提出する紙マニフェストの交付等状況 報告書に係わる下記の事項が、明らかとなっている。

1)パソコンを保有している多くの管理型最終処分場と中間処理施設では、紙マニフェスト管理にパソ コンを利用おり、実質的には紙マニフェストの記載情報も電子情報化されている。したがって、収 集・運搬事業者も含めた産業廃棄物の処理業者が、紙マニフェスト交付等状況報告に利用できる電 子データを保有していると考えられる。

2)産業廃棄物の処理業者が、排出事業者によるマニフェスト交付等状況報告書の作成を支援している 例も存在する。

3)排出事業者が提出するマニフェスト交付等状況報告書の元データの多くは、電子データであるにも 係わらず、都道府県・政令市には紙媒体でマニフェスト交付等状況報告書を提出し、受理した都道 府県・政令市は、紙媒体のマニフェスト交付等状況報告書のデータを、労力をかけて改めて電子デ ータ化している。

これらのことから、排出事業者によるマニフェスト交付等状況報告書の作成と都道府県・政令市の 報告データの集計の効率化を図るために、図8.2-3の事項を提案した。

①紙マニフェストにマニフェスト交付等状況報告の提出義務を印刷する。

②収集・運搬事業者、処理処分事業者から排出事業者へマニフェストを 返送する際に、排出事業者に対してマニフェスト交付等状況報告義務の 周知文を添付する。

③都道府県・政令市における排出事業者への指導の徹底

・多量排出事業者への指導

・都道府県・政令市の部局間の連携による少量排出事業者の把握と指導 (許認可事業者のリストの共有化、立ち入り時の指導、公共工事)

図8.2-2 マニフェスト交付等状況報告義務の周知の徹底のための提案

①電子データでのマニフェスト交付等状況報告書の提出を、極力求める。

②産業廃棄物処理業者が電子化した紙マニフェストの記載データを有効に使用する一つの方 法として、産業廃棄物処理業者が、「マニフェスト交付等状況報告書」の様式にあわせて 整理し、定期的(紙マニフェストの返送時等)もしくは年度末にまとめて排出事業者に報告 することを認める。ただし、あくまでもマニフェスト交付等状況報告書の提出は、排出事 業者の責任で行う。

図8.2-3 マニフェスト交付等状況報告の作成および集計の効率化のための提案

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8.2.5 マニフェスト交付等状況報告集計データの一層の活用

マニフェスト交付等状況報告 集計データの活用にあたって、都 道府県・政令市が活用目的を明確 にしなければならない。これまで の都道府県・政令市に対するアン ケート調査により明らかになった マニフェスト交付等状況報告集計 データの活用先を参考に、マニフ ェスト交付等状況報告データの一 層の活用を図っていくべきである。

そこで、都道府県・政令市がマニ フェスト交付等状況報告集計デー タの一層の活用を図るために、図

8.2-4の活用先を提案した。

8.3 提案した多面的活用策の実行可能性の検証