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5. 産業廃棄物の特性の解析

8.4 マニフェスト交付等状況報告活用の具体例

現在、産業廃棄物の排出事業者は、廃棄物の運搬、中間処理、最終処分を委託する場合には、マニ フェストを交付し、委託した産業廃棄物(委託産業廃棄物)が適正に処理されたかどうかを確認する義 務が課せられている。このマニフェストには、産業廃棄物の種類、数量、排出場所、中間処理場所、

最終処分場所などの様々な情報が記載されている。さらに、排出事業者は、マニフェスト交付等状況 報告として、前年度に交付したマニフェストの状況を、一定の様式で都道府県・政令市に報告するこ とになっている。マニフェスト交付等状況報告には、1 年間に交付したマニフェストの情報(廃棄物 の種類、数量、排出場所、中間処理場所、最終処分場所等)が記入されており、この報告内容を解析 することで、委託産業廃棄物の排出実態や移動、処理実態の把握が可能と考えられる。委託産業廃棄 物の移動等の実態が把握できれば、産業廃棄物行政における効果的な施策立案やより適切な事業者へ の指導等への多面的活用が可能となる。しかし、これらの報告内容は、一部の自治体では、産業廃棄 物の移動状況の解析へ試みに利用さているが、多くの自治体では、環境省に報告されているのみで、

あまり活用されていないのが現状である。各自治体が行う産業廃棄物実態調査では、産業廃棄物の運 搬状況報告書や処分状況報告書が利用されているが、マニフェスト記載情報を追加利用すれば、より 詳細な信頼性が高い調査が可能となる。

本研究では、現在自治体に提出されているマニフェスト交付等状況報告の情報利用の具体例を明ら かにすることを目的として、マニフェスト交付等状況報告をもとに、処理産業廃棄物の排出、移動実 態の把握と排出原単位の推定および産業廃棄物の移動時に排出される温室効果ガス量の算定を行った。

さらに、マニフェスト記載情報の信頼性やその情報利用の改善に向けた検討実施を目的として、事業 所における産業廃棄物排出時の実態についてアンケート調査を行った。

8.4.2 方法

(1)産業廃棄物の排出、移動実態の把握と排出原単位の推定

平成 22 年度に静岡県内で交付された紙マニフェストと電子マニフェストを利用して、産業廃棄物 の排出、移動の実態および排出原単位について解析を行った。解析に必要なマニフェスト交付等状況 報告のデータと電子マニフェストのデータは、静岡県、静岡市、浜松市の各担当部署から提供を受け た。解析対象のマニフェスト枚(件)数は147万枚、委託産業廃棄物の排出場所は約16,600地点、その 移動先は約2,400地点であった。

各自治体から提供されたデータについて、廃棄物の分類コードの入力や排出事業者の名称から排出 場所の住所の入力、処分受託者の名称から処分場所の住所の入力を行った。建設業から排出された廃 棄物のマニフェストには、各事業者の本社の住所が排出場所として入力されている例が多くあったた め、それらについては、人口比率を用いて各市町村に割付を行った。

排出場所と処分場所の住所から移動距離の解析には、ゼンリン電子地図帳Zi14の経路探索機能を

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用いた。経路探索条件は、幅員が広く、右左折が少ないコースを探索する推奨モードとした。

(2)産業廃棄物の移動時の温室効果ガス排出量の算定

産業廃棄物の移動時の温室効果ガス排出量の算定では、マニフェスト交付等状況報告に記載された 処理委託重量とマニフェスト交付枚数から1回の処理委託時に移動する廃棄物の重量を算出した。廃 棄物の移動する重量から移動に使用する車両の大きさを決定し、各種車両の単位移動距離、単位移動 重量当たりの温室効果ガスの排出量を排出原単位データベースから選定した。輸送車両の排出原単位 と1回の廃棄物移動重量、排出場所から処分場所までの移動距離から1回の廃棄物の移動時に排出さ れる温室効果ガス量の算出を行った。廃棄物の各委託処理について上記の計算を行い積算することで、

平成22年度に静岡県内での委託産業廃棄物の移動時に排出された温室効果ガスの排出量を求めた。

(3) 排出事業者における廃棄物委託時における意識調査

富山県内の産業廃棄物排出事業者(4,000事業者)を対象に、郵送によるアンケート調査を行った。

アンケート調査での質問項目は、排出している産業廃棄物の種類、産業廃棄物の収集・運搬・処理処 分業者の選定理由、処理委託量、委託費用、委託頻度、マニフェストの保管方法やマニフェスト記載 情報の利用状況、マニフェスト交付等状況報告についての要望、マニフェスト記載事項についての要 望等とした。

8.4.3 結果および考察

(1) 委託産業廃棄物の排出の実態

静岡県内の解析対象とした産業廃棄物量は723万トンであった。運搬実績報告書や処理実績報告書、

多量排出事業者処理時計画書等の数値を基に推計した静岡県の産業廃棄物実態調査報告書では、平成 22年度の静岡県内の産業廃棄物の発生量は1,142万トン、委託量は493万トンと推計している。マ ニフェスト交付等状況報告をもとにした委託量は、この数値と比べて多いことが明らかとなった。

マニフェスト交付等状況報告を基にした業種ごとの産業廃棄物排出量の割合を図8.4-1に、産業廃 棄物の種類ごとの排出割合を図 8.4-2に示す。製造業と建設業から処理委託される産業廃棄物が多い ことが分かる。産業廃棄物の種類では、製造業由来であると思われる汚泥、建設業由来であるがれき 類が多くを占めている。このように、マニフェスト交付等状況報告から、該当地域において産業廃棄

図8.4-1 静岡県内の委託産業廃棄 図8.4-2 静岡県内の委託産業廃棄

物の業種ごとの排出割合 物の種類ごとの排出割合

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物を多く処理委託している業種とその産業廃棄物の種類の把握が可能である。なお、静岡県の産業廃 棄物実態調査報告書に記載されている産業廃棄物の割合は、業種別では製造業が50%、建設業が26%、

種類別では汚泥が57%、がれき類が20%となっている。

(2)産業廃棄物の排出、移動の可視化

マニフェスト交付等状況報告書に記載されている委託産業廃棄物の排出場所と量および委託処理 場所と量の情報を利用して、静岡県内における委託産業廃棄物の排出場所とその量および処理処分の ための移動先を地図上にプロットした例を図8.4-3に示す。左側は、委託産業廃棄物の排出場所を右 側は委託産業廃棄物の移動先を、各図でプロットされた棒の高さは処理量を示している。このように、

委託産業廃棄物の排出場所と移動先が可視(見える)化すると、委託産業廃棄物がどこで多く排出され ているのか、どこで多く処理されているかが、一目瞭然に把握できる。なお、図8.4-3からは、静岡 市、浜松市において委託産業廃棄物の排出場所が少なく、少ない地点から多くの廃棄物が発生してい るように見える原因は、静岡市、浜松市のマニフェスト記載情報に発生場所の詳細な住所の記載がな かったため、市役所の住所を委託産業廃棄物の排出場所としたためである。委託産業廃棄物の移動先 は全国に分布しているが、その多くは静岡県内とその近隣に移動して処理処分されていることが分か る。また、東京都八丈島への委託産業廃棄物の移動量が他に比べて、特異的に多い等の特徴も把握で きる。

委託処理される産業廃棄物の排出と移動状況の把握は、中間処理事業者が都道府県・政令市に提出 する処理実績報告書や廃棄物実態調査からでも推計できるが、マニフェスト交付等状況報告の情報の 利用によって、実際の数値として把握が可能である。マニフェスト交付等状況報告の数値の集計だけ では見落としがちな産業廃棄物の遠方への移動や多量の移動を把握するには、見える化は非常に有効 な手法である。例示した八丈島への産業廃棄物の多量移動のような気になる動きが発見された場合に は、マニフェストに排出事業者や収集運搬業者、処理事業者等の記載があるため、不適正処理の有無 の確認は可能である。

(3)産業廃棄物の移動距離

静岡県内におけるマニフェスト交付等状況報告からの委託産業廃棄物の移動距離の解析例として、

産業廃棄物全体の結果を図8.4-4に、汚泥の結果を図8.4-5に示す。グラフの縦軸の移動量は対数目 盛である。産業廃棄物全体としては、移動距離が長くなるほど産業廃棄物の量が減少する傾向にある ことが分かった。東西に長い静岡県の県内移動距離は約180kmであるので、産業廃棄物は県外の処

産業廃棄物の排出場所 産業廃棄物の移動先

図8.4-3 静岡県内における委託処理される産業廃棄物の排出場所とその移動先