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現地観測期間の設定に関する検討

第 4 章 経済的に長大橋を実現する耐風設計手法

4.3 設計風速の設定法に関する検討

4.3.3 現地観測期間の設定に関する検討

(垂水観測塔の風向を基本に±22.5deg.風向の範囲の観測データを整理) 図- 4.3.5 垂水観測塔と神戸海洋気象台の風観測データの相関関係

を実施する期間により150年再現期待値がどの様に影響を受けるのかの計算を実施し た.観測期間中の最大風速は1965年であることから,1961年から統計処理を行った 場合と,1971年から統計処理を行った場合の試算を実施した.

表- 4.3.3 より既往最大規模の風速を含む場合の再現期待値は,それを含まない場 合の再現期待値の1.2~1.5倍程度となっており,既往最大規模の風速を観測していな い現地観測記録では危険側の評価を与える可能性があることが確認できた.試算結果 を二重指数確率紙にプロットした結果は図- 4.3.6 に示すとおりであり,既往最大規 模の風速を記録したデータの場合(左図)は,統計処理対象期間により最大値の二重指 数確率紙へのプロットがばらつくため,計算される再現期待値も大きく変化したもの と判断できる.一方,既往最大級の風速を記録していないデータの場合(右図)は,統 計処理対象期間の違いに伴うプロットのばらつきが小さくなっており,長期間の観測 であっても低めの再現期待値を得る可能性がある.

表- 4.3.3 統計対象期間の違いによる 150 年再現期待値

統計開始年 10 年間 20 年間 30 年間 40 年間 54 年間 1961 39.3 m/s 36.0 m/s 34.0 m/s 32.5 m/s 32.9 m/s 1971 26.9 m/s 26.9 m/s 26.2 m/s 27.2 m/s

1961/1971 1.46 1.34 1.30 1.20

図- 4.3.6 統計対象期間の違いによる二重指数確率の変化

y = 3.3215x + 16.272 R² = 0.9841

y = 3.1933x + 16.497 R² = 0.9768 y = 3.3747x + 17.064

R² = 0.9767

y = 3.6332x + 17.846 R² = 0.9555

y = 3.7733x + 20.439 R² = 0.9328

0 10 20 30 40 50 60 70

-2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7

風速(m/s)

標準極値変数(y)

1.001 100050020010050201052 150

0.001 0.50.2 0.3 0.40.1

0.00 0.70.6 0.8 0.9 0.95 0.98 0.99 0.995 0.999

再現期間 (年)

*:1961-1970 (10年)

◇:1961-1980 (20年)

□:1961-1990 (30年)

△:1961-2000 (40)

○:1961-2014 (54年)

y = 2.3773x + 15.267 R² = 0.9803 y = 2.0969x + 15.733

R² = 0.9516

y = 2.169x + 15.997 R² = 0.9683

y = 2.1514x + 16.096 R² = 0.9491

0 10 20 30 40 50 60 70

-2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7

風速(m/s)

標準極値変数(y)

1.001 100050020010050201052 150

0.001 0.50.2 0.3 0.40.1

0.00 0.70.6 0.8 0.9 0.95 0.98 0.99 0.995 0.999

再現期間 (年)

*:1971-1980 (10年)

◇:1971-1990 (20年)

□:1971-2000 (30年)

△:1971-2010 (40)

以上より,現地観測記録に既往最大級のデータが含まれているか否かが,再現期待 値に影響を及ぼすこととなるため,実際に得られたデータに既往最大級のデータが含 まれているかを確認する必要がある.そこで,垂水観測塔および神戸海洋気象台の年 最大風速を年別に整理した(図- 4.3.7).この図より,垂水観測塔で最大級の風が観測 された 1964年と 1965年には神戸海洋気象台でも他の年よりも高い風速が記録[4.13]さ れており,近隣気象官署の長期間にわたる観測記録は,限られた期間の現地観測デー タを極値統計解析する際の記録されたデータの妥当性を判断する材料になると考え られる.

図- 4.3.7 垂水観測塔と神戸海洋気象台の年最大風速の関係

(2) 観測される最大風速と平均風速の関係

気象庁のホームページ[4.13]には既往最大風速が観測された上位 20 地点が表- 4.3.4 のとおり示されており,このうち現在観測が継続されており,その観測期間内に最大 風速が観測されている気象官署のデータを対象として,強風が観測される地域におけ る年最大風速の最大値と観測期間で平均した値の比較を行った(図- 4.3.8).

図- 4.3.8 強風発生地域における最大風速と平均風速の関係

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0

1960 1970 1980 1990 2000 2010

年最大風速(m/s)

垂水観測塔 神戸海洋気象台

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0

室戸岬 宮古島 与那国島 石垣島 屋久島 那覇 下地 志多阿原 北原 銚子 野母崎 大原

風速(m/s

最大風速 平均風速

表- 4.3.4 気象官署で観測された最大風速の一覧

順位 都道府県 地点 観測値

m/s 風向 起日 観測中

1 静岡県 富士山 72.5 西南西 1942 年 4 月 5 日

2 高知県 室戸岬 69.8 西南西 1965 年 9 月 10 日 3 沖縄県 宮古島 60.8 北東 1966 年 9 月 5 日 4 長崎県 雲仙岳 60 東南東 1942 年 8 月 27 日 5 滋賀県 伊吹山 56.7 南南東 1961 年 9 月 16 日

6 徳島県 剣山 55 2001 年 1 月 7 日

7 沖縄県 与那国島 54.6 南東 2015 年 9 月 28 日 8 沖縄県 石垣島 53 南東 1977 年 7 月 31 日 9 鹿児島県 屋久島 50.2 東北東 1964 年 9 月 24 日 10 北海道 後志地方 寿都 49.8 南南東 1952 年 4 月 15 日 11 沖縄県 那覇 49.5 東北東 1949 年 6 月 20 日 12 沖縄県 下地 49 北西 2003 年 9 月 11 日 13 沖縄県 志多阿原 48.9 南南東 2010 年 9 月 19 日 14 静岡県 石廊崎 48.8 1959 年 8 月 14 日 15 沖縄県 北原 48 北北東 2007 年 9 月 14 日

千葉県 銚子 48 南南東 1948 年 9 月 16 日 17 長崎県 野母崎 46 南東 2006 年 9 月 17 日 18 愛知県 伊良湖 45.4 1959 年 9 月 26 日 19 沖縄県 盛山 44.9 南西 2015 年 8 月 23 日 20 沖縄県 大原 44.3 南東 2010 年 9 月 19 日 気象庁ホームページ[4.13]より引用

これらのデータについて,観測期間と最大風速と平均風速の比率の関係を整理する と,図- 4.3.9 のとおりとなり観測期間が長くなるに従い最大風速と平均風速の比率 は大きくなる傾向にあり,最大風速は平均風速の概ね 2倍程度となることがわかる.

図- 4.3.9 強風発生地域における観測期間と最大風速/平均風速の関係

1.0 1.5 2.0 2.5

0 20 40 60 80 100 120 140

平均風速

観測期間

(3) 観測期間が再現期待値に与える影響

上述の結果を参考に,何年くらいの記録があれば再現期待値が大きく変化しなくな るか把握するため,以下の前提条件による試算を実施した.

① 観測される年最大風速は極値Ⅰ型分布に完全に一致する.すなわち,n年分 の記録が得られた場合,最小風速の確率(P1)と最大風速の確率(Pn)が機械的に 決定されるため,二重指数確率紙にプロットされる2点から求められる回帰 直線から目標とする年数の再現期待値が算出できる.標準極値変数の算出方 法は基準(2001)と同様にGringortenの式(𝑃𝑗 = 𝑗 − 𝑎 𝑁 + 1 − 2𝑎 : 𝑎 = 0.44) を使用する.

② 期間内に観測される最小風速は 10m/s,最大風速は Vmax=20m/s または

Vmax=40m/sとし,観測期間をパラメータとした回帰直線を求める.

③ ②に対し,最大風速のみを1.2倍,1.4倍,1.6倍,1.8倍,2.0倍とした場合 の回帰直線に与える影響を求める.

これらの条件による試算結果を図- 4.3.10 および図- 4.3.11 に示す.観測される 最大風速が同じであれば,観測期間が長くなるに従い回帰直線のグラフの傾きは小さ くなっており,垂水観測等における試算結果と同様である.また期間内に観測される 最大値の影響についても,観測期間が長くなれば回帰直線も収束する傾向にあること を確認した.

 

ln ( )

ln P j

y   

■:40m/s,□:36m/s,▲:32m/s,△:28m/s,●:24m/s,○:20m/s

図- 4.3.10 観測期間の違いによる近似直線の変化(Vmax=20m/s)

y = 6.2251x + 12.714 R² = 0.7216 y = 5.4891x + 12.712

R² = 0.759 y = 4.7532x + 12.711

R² = 0.8076 y = 4.0172x + 12.709

R² = 0.8709

y = 3.2813x + 12.707

R² = 0.9474 y = 2.5453x + 12.705 R² = 1 0.0

10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0

-1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0

風速(m/s)

Fs

y = 4.1936x + 12.448 R² = 0.6639 y = 3.7678x + 12.486

R² = 0.7136 y = 3.342x + 12.523

R² = 0.777 y = 2.9163x + 12.56

R² = 0.8565

y = 2.4905x + 12.597 R² = 0.9457

y = 2.0647x + 12.634 R² = 1 0.0

10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0

-1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0

風速(m/s)

Fs

y = 3.4094x + 12.378 R² = 0.6463 y = 3.1008x + 12.419

R² = 0.7025 y = 2.7922x + 12.459

R² = 0.773 y = 2.4835x + 12.499

R² = 0.8584

y = 2.1749x + 12.54 R² = 0.949

y = 1.8663x + 12.58 R² = 1 0.0

10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0

-1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0

風速(m/s)

Fs

y = 2.9757x + 12.346 R² = 0.6409 y = 2.7304x + 12.385

R² = 0.7013 y = 2.4851x + 12.423

R² = 0.7757 y = 2.2398x + 12.462

R² = 0.8634

y = 1.9946x + 12.501 R² = 0.9525

y = 1.7493x + 12.54 R² = 1 0.0

10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0

-1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0

風速(m/s)

Fs

y = 2.6944x + 12.326 R² = 0.6405 y = 2.4894x + 12.362

R² = 0.7038 y = 2.2843x + 12.399

R² = 0.7806 y = 2.0792x + 12.435

R² = 0.869

y = 1.8741x + 12.472 R² = 0.9557

y = 1.6691x + 12.508 R² = 1 0.0

10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0

-1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0

風速(m/s)

Fs

y = 2.4945x + 12.312 R² = 0.6426 y = 2.3175x + 12.346

R² = 0.708 y = 2.1404x + 12.38

R² = 0.7862 y = 1.9634x + 12.414

R² = 0.8744

y = 1.7863x + 12.448

R² = 0.9584 y = 1.6093x + 12.482 R² = 1 0.0

10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0

-1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0

風速(m/s)

Fs

観測期間:10 年 観測期間:20 年

観測期間:30 年 観測期間:40 年

観測期間:50 年 観測期間:60 年

y y

y y

y y

 

ln ( )

ln P j

y  

■:80m/s,□:72m/s,▲:64m/s,△:56m/s,●:48m/s,○:40m/s

図- 4.3.11 観測期間の違いによる近似直線の変化(Vmax=40m/s)

y = 14.995x + 18.134 R² = 0.7899 y = 13.524x + 18.13

R² = 0.827 y = 12.052x + 18.126

R² = 0.8709 y = 10.58x + 18.123

R² = 0.9213

y = 9.1079x + 18.119 R² = 0.972

y = 7.636x + 18.115 R² = 1 0.0

20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0

-1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0

風速(m/s)

Fs

y = 10.452x + 17.531 R² = 0.7541 y = 9.6003x + 17.605

R² = 0.8017 y = 8.7488x + 17.68

R² = 0.8565 y = 7.8973x + 17.754

R² = 0.9163

y = 7.0457x + 17.828

R² = 0.9721 y = 6.1942x + 17.902 R² = 1 0.0

20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0

-1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0

風速(m/s)

Fs

y = 8.6851x + 17.337 R² = 0.7478 y = 8.0679x + 17.418

R² = 0.7999 y = 7.4506x + 17.498

R² = 0.8584 y = 6.8334x + 17.579

R² = 0.9198

y = 6.2162x + 17.66 R² = 0.9743

y = 5.5989x + 17.741 R² = 1 0.0

20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0

-1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0

風速(m/s)

Fs

y = 7.7007x + 17.231 R² = 0.7492 y = 7.2101x + 17.309

R² = 0.8036 y = 6.7195x + 17.387

R² = 0.8634 y = 6.229x + 17.464

R² = 0.9243

y = 5.7384x + 17.542

R² = 0.9765 y = 5.2478x + 17.62 R² = 1 0.0

20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0

-1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0

風速(m/s)

Fs

y = 7.0579x + 17.16 R² = 0.7535 y = 6.6478x + 17.233

R² = 0.809 y = 6.2376x + 17.306

R² = 0.869 y = 5.8275x + 17.379

R² = 0.9287

y = 5.4173x + 17.452

R² = 0.9783 y = 5.0072x + 17.525 R² = 1 0.0

20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0

-1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0

風速(m/s)

Fs

y = 6.5983x + 17.105 R² = 0.7588 y = 6.2442x + 17.174

R² = 0.8149 y = 5.8901x + 17.242

R² = 0.8744 y = 5.536x + 17.31

R² = 0.9326

y = 5.1819x + 17.379

R² = 0.9798 y = 4.8278x + 17.447 R² = 1 0.0

20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0

-1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0

風速(m/s)

Fs

観測期間:10 年 観測期間:20 年

観測期間:30 年 観測期間:40 年

観測期間:50 年 観測期間:60 年

y y

y y

y y

以上の結果から,各試算条件における観測期間と 150 年再現期待値の関係は図- 4.3.12,観測期間と再現期待値の変化率(風速変化率)の関係は図- 4.3.13のとおりと なった.いずれも,設定した最大風速に関係なく観測期間が長くなるに従い収束する 傾向を示す.観測期間内に1データのみ平均的な風速の2倍の強風を観測した場合に おいても,観測期間 20 年で 10%程度,30 年で 5%程度の変化率となっている.これ は,それ以上観測を継続すれば再現期待値が前述の割合で減少することを意味してお り,設計上は安全側の評価を与えていると考えられる.したがって,現地における風 観測は少なくとも20年程度が必要であり,可能であれば30年程度とすることが工学 的に提案できると考えられる.

ただし,以上の試算は観測されるデータが極値Ⅰ型分布に完全に従うことを前提条 件としているため,実際には観測されたデータを処理する際に,処理対象データ数を パラメータとした試算により変化率を比較したうえで判断する必要があると考えら れる.

Vmax=20m/s Vmax=40m/s 図- 4.3.12 観測期間と 150 年再現期待値の関係

Vmax=20m/s Vmax=40m/s 図- 4.3.13 観測期間と風速変化率の関係

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0

0 10 20 30 40 50 60

風速(m/s)

観測期間()

2.0 1.8 1.6 1.4 1.2 1.0

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0 160.0

0 10 20 30 40 50 60

風速(m/s)

観測期間()

2.0 1.8 1.6 1.4 1.2 1.0

0.70 0.75 0.80 0.85 0.90 0.95 1.00

0 10 20 30 40 50 60

風速変化率

観測期間()

2.0 1.8 1.6 1.4 1.2 1.0

0.70 0.75 0.80 0.85 0.90 0.95 1.00

0 10 20 30 40 50 60

風速変化率

観測期間()

2.0 1.8 1.6 1.4 1.2 1.0