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現代企業と責任体制

ドキュメント内 企業権力と社会的責任 (ページ 30-36)

これまでのところでは,企業権力の角度からの分析を中心に社会的責任の 本質と性格について考察を行なってきた。現代の大企業はその権力に伴って 責任を課せられるに至っているのであるが,そのことに関連して,デヴィスら も強調するように,権力の正当化と拘束とのためのなんらかのシステム,つ まり責任体制が考えられねばならない。そこで最後に本節では, リーガンの 見解を中心に若干の検討をー試みたいQ

さて,国家における権力の場合,この程の問題は立憲制の問題の形で古く から政治学の分野で詳細な検討が加えられてきているといえよう。他方,企 業における権力の場合,そのような検討は現在のところ未だ十分に存在して いないといっても差し支えない。しかしながら,企業立憲制或いは責任体制 についてその重要性を強調する論者も,前記のデヴィスらをはじめとして幾 人か存在しており,そのような論者の一人に,二節でとり上げたと乙ろのリ ーガンを挙げることができるoかれの所説は,かなりに具体的に論議を進め ている点で,責任体制のあり方を考察するに際して有用であると思われるの であり,まずかれの所説を眺めることにする。かれの所説は,以下の如くで ある。

リーガンは,権力と社会的責任の観点からは近代会社の発展方向として三 つのものが考えられるという。かれのいう三つの方向とは要するに,一方で の企業権力の増大と他方での権力に対する社会的コントローノレの減少という 方向,企業権力と社会的コントロールとの減少の方向,および,一方での企 業権力の増大と他方での社会的コントロールの対応的増大とへの方向であ る。乙れらの方向の内容についてのかれの説明は,つぎのようであるD

「第ーは,会社の活動と権力の範囲とが不変もしくは増大するとともに,

他方,……社会的コントロールの程度が小さくなるというものであるD 結果 として生ずるシステムは,ファシズムに類似するそれ,つまり,政府と人民 に対して父親的コントローノレ(温情的であるか,そうでないような)を行使す るが,対応的なコントローノレは伴わないところの産業エリートによる支配で

(1) 

ある口

J

1"第二の可能な発展方向は,会社権力の範囲の縮少,一世代にわた り出現してきた社会的ならびに政治的役割からの徹退,および,より狭い経 済的役割への復帰(パブリックのコントローノレ,少くとも新しいそれの必要 性の対応的減少を伴つての)を含む。かかる発展は,企業についての伝統的 なモデルと最も一致するが,しかしながら,今日の経営者の実践と思想の現

(2) 

突には最も一致しない。

J

1"第三に,会社は,社会的ならびに政治的な領域 へのその活動および権力を拡げるというその現在の傾向を続け,経済の全般 的管理へのその係わり合いを続けるかもしれないが,しかしながら,その際 にそれは,公共的コントローノレの増大を伴うO かかるコントローノレは,これ らの活動に対する公共的責任という,現在欠けている安京を生ずべく訟せら

(3)  れるのであるo

リーガンはこれらの三つの方向のうち,第三のそれ,すなわち,杭力は減 少させられないが,明白なコントローjレの下に置かれるというそれが,最も ありうるとみるO なお, リーガンは,個人的には第二の方向を望ましく思う こと,また,第ーの方向も,実践とイデオロギーを考えるとき,必ずしもあ

(4)  りえないことではないことを付言するD

しからば,第三の方向が実現されるためには,いかなる対策が現代の大企 業をめぐって存在せねばならないであろうか。リーガンは,企業権力の拘束 のための具体的な対策は多様なものたらざるをえないとみるD かれはいうO

企業温情主義の可能性を減じ経済的民主々義の生育可能性を拍大させるため には,どんな具体的処置がとられうるか。経済的権力集中の問題全てに対す る伝統的な回答は,権力の解体なる,反トラストの回答であるO もし近代の 工業技術が小規校な企業単位を可能にするならば,もし市場での集中のみが 企業権力の源泉であるならば,そして,もし独占的な価格設定のみが企業柱力 の結果であるならば,反トラスト行為は,法律と行政との強化を計ること で,大きな効果をもち始めえよう口しかしながら,上述の諸恕定は事実に反 しており,反トラスト行為は,企業コントローノレなる仕事で小さな役割を演 じうるに過ぎないQ 反トラスト行為がどの程度ω成功を収めようとも,かな りな程度の巨大さは裁存するのであるO 単一の形態の社会的コントローノレで

は経済的権力の全てのタイプをカバーしえないのであって,反トラスト法規 (5) 

ではカバーしえないのである,とo

かくて,リーガンは,権力拘束に関して,幾つかの提案を行なうが,その 際にかれは,社会的コントロールが,つぎの諸領域で,すなわち,会社決定 の対外的な経済的諸結果,会社の対外的な社会・政治行動,および,それに よって会社経営者が株主,従業員,仕入先,および配給業者の諸問題を管理

(6) 

すると乙ろの対内的な統治システムにおいて必要であるとするD かれにあっ ては,コントローノレの具体的方策として,チャーターによる規制,非経済的 活動の制限,および,経済の管理の分担が挙げられており,以下,乙れらの 方策についてのかれの説明を順次眺めてい乙うO

かれによる提案の第一は,資産,売上高,もしくは従業員の観点からする 最大企業二百社に対する,述邦による会社設立(federalincorporation)で あるO かれは,連邦のチャーターは規制のための明白な基盤を提供するとと もに,そのような企業の国家的な性格と,それらが国益に対しでもつ責任と を効果的に象徴するであろうこと,また,チャーターをば規制の用具として 利用することは,急進的なやり方ではないのであって,それは過去の歴史へ

(7)  の保守的な復帰である乙とを指摘するO

それでは,どのような種類の制限がそれぞれの会社のチャーターに書き込 まれるであろうか。まず,国家によって特許される会社は,その市場支配を

(8) 

単一の分野に制限されるであろう。

第二に,二百の会社のそれぞれはまた,パブリックによる検閲の委員会 (a  public review board)の設立を要求されるであろう。つまり,全米自動 車労働者の公共的検問委員会 (theUnited Auto Workers' Public Review  Board)に倣った委員会,すなわち,市民のク勺レープが企業の持定の決定l 対して司法的な検討を加えるところのそれが設立される必要があり,諸会社 のチャーターは,委員会に対してアッピーノレをなしうる諸決定の範囲を拍き うるであろう。乙のととは,会社統治の立志化へと向う重要な方策たりうる であろう。委員会の管轄範囲は,全ての直接的従業員を合むべきであるとと もにJ委員会はまた仕入先およびディーラーに彩特を与える決定を取扱うベ

きであるO 公共的検閲を組織化するもう一つの可能な方法は,アメリカ仲裁 団体

( t h eA m e r i c a n  A r b i t r a t i o n  A s s o c i a t i o n )

に 倣 う よ う な , 全 国 的 な

(9)  産業審判委員団を設定することであろうo

第三l乙,公共検閲委員会の展開と同時に,経済的組織内の個人のための (10) 

日権利条項"を成文化するための努力がなされるべきである口なお,他の制 限もまた,チャーターに記されるかもしれない。もし,最大二百社以外の企 業にも等しく適用さるべきであるような制限が考えられる場合には,一般的 法規がチャーターを補足すべきであるO この範臨の制限の一例は,工業会社

(11)  がコミュニケーション・メディアを所有することを禁ずる法律であろうo

第四は,取締役会への利害関係者の参加である口最大二百の企業の取締役 会への公共的メンバーおよび,もしくは従属的諸グループの代表の参加に対 する十分な論拠もまた,存在する口この場合,公共的メンバーの参加は恐ら く,より持定の企業の場合に,つまり,集中化した産業それぞれの中の最大 の企業の場合に限られねばならぬとともに,その取締役会に対して多分,従 業員,仕入先,配給業者もまた代表されるべきあるo 利害関係者のそれぞれに 明白な発言を可能にするに際しての主要な困難は,経営者,株主,従業員,

仕入先,および配給業者という組織化された構成員諸集団が,消費者に対立 して結合するという傾向であろうO それはともかく,利害関係者による代表 制が達成しうるであろうことは,温情的独裁制から立憲制への,企業支配の内

(12) 

部システムの移行,および被統治者による限定的な同意であるO

以上が,チャーターによる規制をめぐるリーガンの主張である。更にかれ は,企業権力の拘束に関連して,非経済的活動の制限を主張する。すなわ ち,かれは,会社の社会的および政治的な行動については,二つの改草が絶 対に必要であるとみる。かかる改草の一つは,政治工作への,および文化・

教育・慈善に対する寄付への税法上の特典の廃止であるO 他は,株主および 従業員による賛成なしに,ならびに,製品価格からの支出相当額控除を消賀 者に可能ならしめることなしに,経営者が会社資金を政治活動に支出するこ

(13) 

とを,妨げる新しい法規であるD

リーガンはまた,上述の二範時の規制!と並んで,経済の {ð~:担の分担が必要

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