A, B⊂Rnが独立であるとは、A∩B =∅であって、条件
a, a′∈A, b, b′∈B, (ab)˚∩(a′b′)˚̸=∅ =⇒ a=a′, b=b′
を満たすことをいうのであった(§1.1)。とくに、A={a}の場合、A, Bが独立であることは、aBが錐であ ることにほかならない。
以下では、A, B ⊂Rn が独立であるときに、強調の意味で、ジョインABのことをA ⋆ Bと書くことが ある。
補題3.16. σ, τ が単体ρ⊂Rnの面であるとき、σ∩τ=∅ならば、σ, τ は独立である。
証明. p= dimσ, q= dimτとするとき、p≦qである場合に限って示せばよい。さらにこれをpに関する帰 納法で示す。p=−1のときは明らかであるから、p≧0としよう。σの頂点vを一つ選び、σ′ =σ/vとする
と、στは錐v(σ′τ)なので、{v}, σ′τは独立である。また、帰納法の仮定より、σ′, τ も独立である。よって、
補題1.21により、σ=vσ′,τも独立である。
上の補題の逆として、次も成り立つ。
補題 3.17. σ, τ ⊂ Rn が二つの独立な単体であるとき、σ ⋆ τ は単体であり、その頂点全体の集合は
V(σ ⋆ τ) =V(σ)∪V(τ)で与えられる。
証明. p= dimσ,q= dimτ とする。p+qに関する帰納法によって示そう。p+q=−2のとき、すなわち σ=τ =∅であるときは明らかである。そこで、p+q≧−1とする。このとき、σ, τ の少なくとも一方は空 でない。たとえば、σ̸=∅であるとし、vをσの頂点の一つとする。σ′=σ/vとおく。このとき、σ′,τは独 立だから、帰納法の仮定から、σ′τ=σ′⋆ τ は単体で、V(σ′⋆ τ) =V(σ′)∪V(τ)である。一方、σは錐vσ′ なので、{v}, σ′は独立である。また、σ=vσ′,τは仮定により独立である。よって、補題1.21により、{v}, σ′τは独立であるから、σ ⋆ τ はvを頂点として単体σ′⋆ τを底とする錐である。よって、命題2.2(2)により、
στ=σ ⋆ τ は単体であり、V(σ ⋆ τ) ={v} ∪V(σ′⋆ τ) ={v} ∪V(σ′)∪V(τ) =V(σ)∪V(τ)である。
K, LがRn内の単体複体であるとき、K, Lが独立(independent)であることを、|K|,|L| ⊂Rnが独立 であることとして定義する。
有限単体複体K, Lが独立であるとき、K, Lの単体ジョイン(simplicial join)KLを KL={σ ⋆ τ|σ∈K, τ∈L}
によって定義する。補題3.17により、これはRn内の単体からなる集合である。さらに、注意1.20(3)によ り、任意のσ, σ′∈K,τ, τ′ ∈Lに対して、
(σ ⋆ τ)∩(σ′⋆ τ′) = (σ∩σ′)⋆(τ∩τ′)
である。このことから、KLは有限単体複体となることが分かる。σ∅=σ,∅τ=τ であることからK, Lはそ れぞれKLの部分複体となっていることに注意する。
注意3.18. K, Lに有限性を仮定しない場合、上のようにKLを定義しても一般には局所有限性の条件が成り
立たず、単体複体とならない。
§3.2の最初に見たように、単体複体Kの頂点vに対して、スターst(v, K)はリンクの錐としてst(v, K) =
vlk(v, K)と表されるのだった。これを一般化して、次が成り立つ。
命題3.19. Kを単体複体、σ∈Kとするとき、σ,|lk(σ, K)|は独立であって、
st(σ, K) =K(σ) lk(σ, K), |st(σ, K)|=σ ⋆|lk(σ, K)| となる。ここで、K(σ)はσの面全体のなす単体複体である。
証明. 注意1.20(4)を用いて、σと|lk(σ, K)|の独立性を示そう。各τ∈lk(σ, K)に対して、σとτはあるK の共通の単体の面であり、σ∩τ =∅であるから、補題3.16により、σ,τは独立である。また、τ1, τ2∈lk(σ, K) とすると、補題3.17と補題2.36(1)により、
V((σ ⋆ τ1)∩(σ ⋆ τ2)) =V(σ ⋆ τ1)∩V(σ ⋆ τ2)
= (V(σ)∪V(τ1))∩(V(σ)∪V(τ2))
=V(σ)∪(V(τ1)∩V(τ2))
=V(σ)∪V(τ1∩τ2)
=V(σ ⋆(τ1∩τ2))
である。よって、(σ ⋆ τ1)∩(σ ⋆ τ2) =σ ⋆(τ1∩τ2)である。以上から、注意1.20(4)により、σ,|lk(σ, K)|は 独立である。残る二つの式は、定義からすぐに示される。
P, Q⊂Rnを独立なコンパクト多面体とする。このとき、P =|K|,Q=|L|と三角形分割すると、K, Lは 有限単体複体であるから(注意2.34)、KLが定義され、P ⋆ Q=|KL|となるから、ジョインP ⋆ Qは多面 体である。
次に、P, Q⊂RmおよびP′, Q′⊂Rn がそれぞれ独立なコンパクト多面体であるとし、PL写像f:P →P′, g:Q→Q′ が与えられたとする。このとき、f とgのジョインと呼ばれる写像f ⋆ g:P ⋆ Q→P′⋆ Q′ を、
f ⋆ g|P =f,f ⋆ g|Q=gおよび
f ⋆ g((1−t)x+ty) = (1−t)f(x) +tg(y) (x∈P, y ∈Q, t∈I) によって定義する。
命題3.20. P, Q⊂RmおよびP′, Q′⊂Rnをそれぞれ独立なコンパクト多面体とし、f: P→P′,g:Q→Q′ をPL写像とする。このとき、ジョインf ⋆ g:P ⋆ Q→P′⋆ Q′はPL写像である。
証明. 定理2.61により、P=|K|,P′ =|K′|,Q=|L|,Q′=|L′|と三角形分割して、f:K→K′,g:L→L′ がそれぞれ単体写像となるようにできる。いまKL,K′L′はP ⋆ Q, P′⋆ Q′の三角形分割となるが、このと きf ⋆ g:KL→K′L′が単体写像であることを示せばよい。
主張. 任意のσ∈K,τ ∈Lに対して、(f ⋆ g)|σ⋆τ はアフィン写像である。
主張の証明. φ:σ ⋆ τ →Rnを、v∈V(σ)のときφ(v) =f(v),w∈V(τ)のときφ(w) =g(w)という条件に よって定まるただ一つのアフィン写像とする。すると、f =f ⋆ g|σとφ|σはともにアフィン写像でV(σ)上 で値が一致するから、φ|σ=f である。同様に、φ|τ =gである。さらに、φがアフィン写像であることから、
x∈σ, y∈τ, t∈Iに対してφ((1−t)x+ty) = (1−t)φ(x)+tφ(y) = (1−t)f(x)+tg(y) =f ⋆g((1−t)x+ty) である。以上から、f ⋆ g=φとなるので、f ⋆ gはアフィン写像である。
任意のσ∈K, τ ∈Lに対して、f, gが単体写像であることからf(σ)∈K′, g(τ)∈L′であり、定義から f ⋆ g(σ ⋆ τ) =f(σ)⋆ g(τ)∈K′L′である。よって、上の主張と合わせてf ⋆ g:KL→K′L′が単体写像であ ることが示された。
PL写像のジョインについては、関手性id⋆id = id, (f ⋆ g)◦(f′⋆ g′) = (f◦f′)⋆(g◦g′)が成り立つ。し たがって、次が得られる。
系3.21. 命題3.20のようなP, P′, Q, Q′とPL同相写像f: P→P′,g:Q→Q′に対して、f ⋆ g:P ⋆ Q→ P′⋆ Q′はPL同相写像となる。とくに、P ⋆ QのPL同相型はP, QのPL同相型から決まる。
注意 3.22. 一般に、コンパクト多面体P, Qは共通のEuclid空間に含まれているとも限らないし、独立であ るとも限らない。このようなP, Qに対してP ⋆ Qを構成する方法を考えよう。
まず、十分大きな次元のEuclid空間内にP,QとそれぞれPL同相なコピーP0, Q0を作り、P0, Q0が独立 であるようにできる。実際、P ⊂Rm,Q⊂Rnをコンパクト多面体とするとき、Rm×Rn×R=Rm+n+1 の部分集合
P0=P× {0} × {0}, Q0={0} ×Q× {1}
はそれぞれP, QとPL同相な多面体である。さらに、例1.19(2)により、P0, Q0は独立であるので、ジョイ ンP0⋆ Q0が得られる。このときP, QをそれぞれP0, Q0と同一視することで、P0⋆ Q0のことをP ⋆ Qと書 くことがある。これをP, Qの外部ジョイン(external join)という。
命題3.23. Bn,SnをそれぞれPLn球体、PLn球面とするとき、次のPL同相が存在する。ただし、以下 ではp, q≧0とする。
(1) (Bp⋆ Bq,(∂Bp)⋆ Bq∪Bp⋆(∂Bq))∼= (Bp+q+1, ∂Bp+q+1) (2) (Bp⋆ Sq,(∂Bp)⋆ Sq)∼= (Bp+q+1, ∂Bp+q+1)
(3) Sp⋆ Sq ∼=Sp+q+1
証明. それぞれ、特別な一つの場合に証明すれば十分である。(1)については、Bp, Bq として独立な単体 を取れば、補題3.17から分かる。(2)については、Rp×Rq+1の部分集合として、Bp = [−1,1]p× {0}と Sq ={0} ×∂[−1,1]q+1を考える。[−1,1]q+1が錐0∂[−1,1]q+1となることを用いると、Bp, Sq ⊂Rp×Rq+1 は独立であることがすぐに確かめられる。さらに、このときジョインBp⋆ Sqは
Bp⋆ Sq ={(x, y)∈Rp×Rq+1| ∥x∥+∥y∥≦1}
と表すことができる。よって、Bp⋆ Sqは胞体である。よって、定理3.11により、Bp⋆ Sq はPL (p+q+ 1) 球体である。これで、(2)のうち「Bp⋆ Sq∼=Bp+q+1」の部分が確かめられた。さらに、定理3.11により、さ きほどのBp⋆ Sqの境界として得られるPL (p+q)球面∂(Bp⋆ Sq)は胞体としてのBp⋆ Sqの境界に等しく、
∂(Bp⋆ Sq) = FrRp×Rq+1(Bp⋆ Sq)
={(x, y)∈Rp×Rq+1| ∥x∥+∥y∥= 1}
=∂Bp⋆ Sq
である。これで、(2)の残る部分とともに、(3)も確かめられた。