次に状態密度(DOS)の変化を調べます.この変化から, CO分子のPd (1 1 0)表面上への吸着に関する知見 を得ることができるでしょう.このために,孤立のCO分子の状態密度と, Pd (1 1 0)表面上のCO分子の状 態密度を表示する必要があります.
Project ExplorerからCO molecule/CO CASTEP GeomOptフォルダー内のCO.xsdを開きます.
CASTEPボタン をクリックして, Analysisを選択し, CASTEP Analysisダイアログを開きます.
Density of statesを選択します. Partialにチェックを入れ, fのチェックをはずします. Viewボタンをクリッ クします.
CO分子のPDOSを示したチャートドキュメントが表示されます.
図72: CO分子のPDOS
以上を, Pd(1 1 0).xsdおよび(1x1) CO on Pd(1 1 0).xsdに関しても繰り返します.
図73: Pd (1 1 0)表面構造のPDOS
図74: (1x1) CO on Pd(1 1 0)構造のPDOS
CO分子が表面に結合することで,孤立のCO分子の電子状態のピーク(約−20 eV,−5 eV,および−2.5 eV) がかなり低くなることが分かります.
Pd表面上の炭素原子と酸素原子からのPDOSへの調べることで更なる解析を行うことができます.
(1x1) CO on Pd(1 1 0).xsdのCO分子を選択します. PDOSを描画すると, Pdの軌道との混成の影響で,エ ネルギーレベルが広がり,それらが,より低いエネルギーにシフトしていることが分かります.
図75: Pd (1 1 0)表面構造上のCO分子のLDOS
これでこのチュートリアルを終わります.
6 第一原理による BN の内殻励起スペクトル予測
目的: CASTEPを用いた内殻励起スペクトルの計算をご紹介します.
使用モジュール: Materials Visualizer, CASTEP 時間:
背景
密度汎関数理論(DFT)は内殻励起スペクトルの計算するにあたり,確立された信頼性のある枠組みです.
この手法はさまざまな系に適用され成功を収めています8.しかし, DFTによる方法には,いくつかの制限が あり,最近では,内殻励起スペクトルの計算について,より正確なアプローチとして, Bethe-Salpeter方程式や 時間依存密度汎関数理論(TDDFT)が,実験とより良く一致する結果を与えることが報告されています.これ らの方法では,電子-正孔の寿命に依存したスペクトルの広がりといった,多体の効果が取り入れられていま すが,通常の基底状態のDFTと比べて格段に計算時間がかかってしまいます.
物質の内殻正孔による影響の系統的な観測と定量的な見積もりは,内殻励起スペクトルのシミュレーショ ンと解釈を助けることができます.経験則によると,内殻正孔の影響によって内殻励起スペクトルが大きく は変化しないので,物質の基底状態における電子状態は,実験のスペクトルから直接推測することができま す.この場合,今までの基底状態の計算から,実験結果の主な特徴の予測と,スペクトルの解釈を行うことが できるはずです.しかしこの経験則が成り立たない場合には,内殻正孔の影響をシミュレーションに含める 必要があります.実験結果を解析するには,基底状態を超えて,内殻の電子の励起過程の影響を吸収端近傍微 細構造に含める必要があります.
はじめに
CASTEPはイオンの内殻準位から伝導帯への電子遷移や,価電子帯から内殻準位への電子遷移による,固
体の分光学的な特性を計算することができます.したがってそのような遷移過程に関連する幅広い実験結果 を表現するのにCASTEPを使用することができます.内殻正孔は, X線や電子の照射により生成されます.
内殻準位は局在しているため,内殻励起スペクトルは原子の周りで局在した電子構造の原子固有の描像を 与えます.系の他の原子からの寄与は無視できるので,特定の原子の電子状態を調べることができます.
異方性のある系における,角度の依存性を考慮した実験では,複雑な軌道の異なる対称性を持つ状態の区 別を可能にします.重要な結論として,化学結合に由来する対称性の状態を調べることができます.
このチュートリアルでは,物質の結晶構造を量子力学的手法に基づいてCASTEPがどのように決定するか を示します.結晶構造のモデル構築とCASTEPでのエネルギー計算についても学習し,内殻励起スペクトル
8Gao, S-P.; Pickard, C.J.; Payne, M.C.; Zhu, J.; Yuan, J. ”Theory of core-hole effects in 1s core-level spectroscopy of the first-row elements”, Phys. Rev. B77, 115122 (2008).
の計算と結果の解析を行います.
このチュートリアルは,以下の内容を含みます:
• 準備
• CASTEP計算の設定と実行
• 内殻正孔の設定
• 内殻正孔を含むCASTEP計算の設定と実行
• 結果の解析
• 実験データとの比較
Note:このチュートリアルを正確にそのままたどるには, Setting Organizerダイアログからプロジェクト
のすべての設定をデフォルトの設定値にする必要があります.デフォルトの設定値に戻す方法はCreating
a projectチュートリアルをご参照下さい.
Tip:このチュートリアルは各ファイルの拡張子を表示することで効率よく進めることができます.もし 拡張子がProject Explorerに表示されていない場合は,表示させる方法がOnline HelpのProject Explorer の項にございますのでご参照ください.