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(5) 他の知的財産権との違い
意匠権は知的財産権、そして産業財産権のひとつである。意匠権はそのうち製品デザ インを保護するところに強みを持つ権利である。
図表 0-6-8 知的財産権の関係性
知的財産法
広く知的財産の保護に関する法律知的財産権法
知的財産の権利を認めた上で保護する法律本 編 概 要 第 1 部 第 2 部 第 3 部 第 4 部 第 5 部 第 6 部
「TRIPP TRAPP事件」(知財高判平27・2・10)において著作権が製品に対して適応さ れた事例もみられることから、著作権のみで守られるのではないかという誤解もみられ る。しかし、著作権法においては、まず著作物性として①「思想又は感情が」があること、
②「表現」であること、③創作性があること、④文芸、学術、美術または音楽の範囲にあ ること」(上野達弘「著作物性(2)各論(1)」法学教室323号156頁)といった要件が必要に なる。また、著作物性があると認められても、「類似性」と「依拠性」(既存の他人の著 作権を利用したという証拠)の立証が必要であり、特に「依拠性」を立証することが難し いことから、引き続き製品デザインは意匠権による保護が中心であるといえる。
図表 0-6-10 TRIPP TRAPP事件の概要(知財高判平27・2・10)
「ストッケ・エイエス社」による幼児用椅子である「TRIPP TRAPP」は著作権法2条1項 1号の著作物性を満しており、「応用美術」(実用性・有用性を踏まえた美術)として認められ、
「美術の著作物」として著作権法による保護を受けるとした事件。
平成26年(ネ)第10063号 著作権侵害行為差止等請求控訴事件
<http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/044/085044_hanrei.pdf>
(2017/02/01アクセス)
(6) 意匠特有の制度について
① 部分意匠
部分意匠は平成10 年意匠法改正により導入された制度であり、物品の部分を保護する 権利である。物品の部分に係る形状等について独創性が高く特徴ある創作をした場合は、
当該創作を部分意匠として保護することができる。
図表 0-6-11 部分意匠のイメージ
注 釈 ) 特 許 庁 ウ ェ ブ サ イ ト<https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_ishou/bubun_isyou/bubun_ishou_dounyu.htm>
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② 関連意匠
関連意匠とは、本意匠に類似する意匠を重複的に登録することを可能とする制度であ る。マイナーチェンジしたデザインのラインナップを展開する場合や、意匠権の効力範 囲を明確化するために活用できる制度である。
なお、自らの出願意匠を本意匠として後日に関連意匠を登録しようとする場合は、本 意匠の登録意匠公報発行の前日までに関連意匠を出願する必要がある。
図表 0-6-12 関連意匠の効力のイメージ
本意匠 関連意匠
関連意匠
関連意匠
関連意匠 関連意匠 関連意匠
なお、部分意匠の関連意匠登録については以下のように特許庁で事例集として整理し て い る 。 日 本 意 匠 登 録 グ ル ー プ 別 に 多 数 事 例 が 掲 載 さ れ て い る た め 、 適 宜 参 照 さ れ た い。
図表 0-6-13 部分意匠の関連意匠の事例(意匠登録1372605号、意匠登録1375079号)
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③ 画像意匠について
物品の成立性に照らして不可欠な初期メニュー画面等については、物品の部分として 保護がなされてきた。2016年4月1日以降は「物品にあらかじめ記録された画像」だけ でなく「時期を問わず、物品に記録された画像」まで登録対象が広がった。
ただし、「外部からの信号等による画像を表示したもの」や「映画等(コンテンツ)を 表した画像」については、画像意匠の対象外となる。以下では、それぞれの事例について 紹介する。
図表 0-6-14 画像意匠
画像意匠の対象
①「物品にあらかじめ記録」
された画像
・デジタルカメラ等、特定用途の機器にあ らかじめ記録された画像。
②「物品に記録された」画像 ・上記の機器が有する機能のアップデート の画像
・電子計算機(パソコン、タブレットコン ピューター、スマートフォン等)に記録 された具体的な機能の画像
画像意匠の対象外
③「外部からの信号等による 画像を表示したもの」
・ウェブサイトの画像
・インターネットを介して使用するソフト ウェアの画像
・テレビ番組の画像
④「映画等(コンテンツ)を 表した画像」
・映画
・ゲーム /等 資料)特許庁(2016)「平成27年度 意匠制度の改正に関する説明会資料」
<https://www.jpo.go.jp/seido/s_ishou/isho_text_h27.htm>(2017/03/12アクセス)を参考に作成
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④ その他意匠特有の制度
このほか、意匠においては、以下のような意匠特有の制度がある。登録後3年間を限 度に秘密にできる「秘密意匠」、物品の動きも含めて登録できる「動的意匠」、セット商 品等を登録できる「組物の意匠」がある。
図表 0-6-15 その他意匠特有の制度
特徴的な 意匠出願
概要
秘密意匠 ・「秘密意匠」とは意匠登録の内容を秘密として、設定登録日から3年を限度として意匠の 内容を秘密にすることができる制度である。
・製品開発が長期にわたる場合、市場の動向をみてから登録意匠を活用したい場合等に活 用できる制度である。
・出願においては、意匠登録出願あるいは第1年分の登録料の納付と同時に、所定の書面 を提出することで「秘密意匠」として登録ができる。
動的意匠 ・「動的意匠」とは、意匠にかかわる物品の形状が、物品の機能により変化する場合(例:
冷蔵庫の扉の開閉、変形する玩具等)に、変化の前後の形状等について、意匠登録を受 けることができる制度である。
組物の意匠 ・「組物の意匠」とは「一組の紅茶セット」が紅茶わん及び受皿、ティーポット等同時に使 われるものであり、かつ、全体として統一があるときに、多物品だとしても1つの意匠 として登録を受けられる制度である。
・組物の意匠として認められる物品は、経済産業省令(意匠法施行規則 別表第2)に整 理されている 56 物品のみとなっている。また、組物全体を保護するものであって、個 別の物品が保護されるものではないことに留意されたい。
・特許庁「組物の構成物品表」の一覧については以下のURLを参照されたい。
特許庁「組物の構成物品表」(2017/02/01アクセス)
<https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/isyou-shinsa_kijun/betten.pdf>
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(7) 日本と海外における意匠制度の違いについて
日本と海外における意匠制度を比較すると、根拠法や審査の方法、出願単位等、国に よって制度が異なる。欧州や中国においては実体審査が無く、他方で日本には世界公知 を基準にした実体審査を行っている。このため、日本で意匠権を保有することは、自社 による他社の意匠権侵害を国内に留まらず回避することができるメリットがある。
図表 0-6-16 日米欧中韓における意匠制度の比較
日本 米国 欧州(EU) 中国 韓国
組織 特許庁 合衆国特許商標
庁(USPTO)
欧州連合知的財 産庁(EUIPO)
国務院特許行政 部門
韓国知的財産権 庁(KIPO)
根拠法 意匠法
(昭和34年法律 第125号)
合衆国法典第35 編(35U.S.C)
第16章
欧州共同体意匠 規則(Council Regulation (EC)
No 6/2002)
中華人民共和国 専利法
デザイン保護法
規則・細則 意匠法施行規則 特許規則 (Patent Rules)、特許審査 便覧、特許関連注 意事項
欧州共同体委員 会規則
(regulation)、団 体意匠手数料規 定
中華人民共和国 専利法実施細則
デザイン保護法 施行令、デザイン 保護法施行規則
審査基準 意匠審査基準 審査ガイダンス (Examination Guidance and Training Materials)
- 専利審査指南 特許・実用新案審 査基準、デザイン 審査基準
登録要件 新規性(需要者)
創作非容易性(当 業者)
工業上利用可能 性
新規性(平均的な 観察者)
非自明性(通常の デザイナー)
装飾性
新規性(共同体内 で事業を営む当 業者)
独自性(情報に通 じた使用者)
新規性(一般消費 者)
創作非容易性
新規性(当該デザ イン分野の通常 人)
創作非容易性
(2014 年7 月 より厳格化)
工 業 上 利 用 可 能 性
新 規 性 判 断 の 基 準
国 内 外 公 知 ・ 公 用
国内公用・国内外 刊行物記載
国 内 外 公 知 ・ 公 用
国内公用・国内外 刊行物記載
国 内 外 公 知 ・ 公 用
登 録 要 件 に 係 る 実体審査の有無
有 有 無 無 有
(一部物品で無)
出願単位 一意匠一出願 多意匠一出願
(単一のクレー ムに属する限り)
多意匠一出願 多意匠一出願(同 一の製品に関す る限り)
多意匠一出願
(2014年7月 以降)(以前は無 審査の物品のみ 多意匠一出願)
資料)特許庁(2016)「平成27年度意匠出願動向調査報告書(概要)-マクロ調査-」
<https://www.jpo.go.jp/shiryou/pdf/isyou_syouhyou-houkoku/27isyou_macro.pdf>(2017/03/12アクセス)より 一部加筆して作成
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(8) 判定制度
判定制度とは特許庁審判部が判定対象の権利侵害の可能性について、厳正・中立的な 立場から判断を示す制度である。裁判よりも比較的安価に見解を得ることが可能で、あ らかじめ類似・非類似が判断できるため、無駄な紛争を防止することができる。
図表 0-6-17 判定制度の特徴
☆中立・公平な立場での判断
☆すばやい結論(最短で3ヶ月)
☆安価な費用(特許庁への判定請求料は1件4万円)
☆簡単な手続(審判手続と同じ)
☆行政サービスの一種(法的拘束力なし)
☆十分尊重され権威ある判断
資料)特許庁(2015)「特許庁の判定制度について」
< https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/sinpan/sinpan2/hantei2.htm >(2017/02/18アクセス)