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物流コスト管理にかかわる環境マネジメントの発展

第1節 問題の所在

地球環境問題に対する関心の高まりから、大企業を中心とする環境の取組みが 1990 年 代頃から本格的に着手され、その内容と成果が注目された。その後、中小企業や非営利組 織においても環境の取組みが普及している。温室効果ガス削減に関する「クールチョイス」

のように政府が国民運動を組織するなど現在では個人を含む社会的な取組みとなっている。

ところで、物流は環境の取組み対象として知られている。物流は社会インフラであるた め、個別企業とともに社会的な取組みが必要である。たとえば、物の移動においてトラッ クよりは鉄道、飛行機よりは船の利用が望ましいとされ、モーダルシフトが実施されてき た。さらに、人手不足や路線維持も目的として地方では貨客混載も試みられている。この ような取組みに対しては助成措置も講じられてきた。通常のマネジメントの対象として製 造と物流には相違点があるように、環境マネジメントの対象としても企業職能間で一定の 相違が見られるであろう。

製造や販売が企業の主要職能であるのに対して、物流は補助職能とみなされることが多 い。主要職能と補助職能間の管理対象上の相違点としては、収益性追求に関する貢献度や これに伴う活動規模の大小がある。さらに、前者は相対的に完結性や独立性が高い職能で あるが、後者は前者の必要性に応じて実施される。このような相違点は環境マネジメント 上ではどのように考慮されるのか必ずしも明らかでない。つまり、通常のマネジメントと 環境マネジメントを個別に実施する段階はともかく、両者を関連付けて実施したり、包括 的なマネジメントを実施する段階に至れば、両者の相違点を整理してから調整を試みる必 要がある。これまで製造と物流を巡っては、活動の性格や成果が有形か無形か、活動の特 徴が工場などにおける固定的なものと輸送手段を活用した移動的なものなど、いくつかの 相違点が指摘されてきた。

また、物流では実施主体の点から自家物流と委託物流に大別される。製造においても自 社生産と委託生産があり、前者から後者への移行が指摘されるが、物流ほどではないであ ろう。かつて物流では 1970 年代の経済成長に伴う輸送量増加に対応するため、多くの企 業で自家物流に着手した。その後、物流全体のなかで一定程度を占めるに至り、物流部門 を分社化したり、既存の物流事業者を買収して物流子会社を設立した。しかしながら、1990

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年代以降は規制緩和による物流事業者数の増加と発展に加えて、荷主企業による外部委託 の定着により、委託物流のみの企業も見られる。自家物流では環境マネジメントの対象と なるが、委託物流の取組み方法は必ずしも明らかでない。委託物流では基本的に物流事業 者による取組みが想定されるが、荷主企業は環境重視の物流事業者を選定すれば取組みが 終了する訳ではない。荷主企業にも一定の役割が求められる。荷主独自の取組みに加えて、

物流事業者との提携した取組みの実施も想定される。他方、両者による役割分担や取組み の区分が困難な状況も予想される。この点において委託物流において必要な取組み内容や 実施方法を整理する必要がある。物流に関する環境マネジメントの成果は環境報告上に反 映され、ステークホールダから評価される。つまり、物流事業者の取組みを所与とすれば、

委託物流では荷主企業による取組みの巧拙が環境の取組み全体の成果に大きな影響を与え ることが考えられる。

以上の視点から本章では、荷主企業を中心に物流に関する環境経営や環境マネジメント について考察する。まずは環境マネジメントの上位概念とみられる環境経営の意義と環境 経営が主張された背景を整理して、環境マネジメントとの関連性や物流を対象とする環境 マネジメントについて検討する。物流の環境マネジメントの具体的な内容については、環 境報告のガイドラインにおいても解説が行われている。一般的な環境報告のガイドライン における物流項目とともに、物流固有の環境の取組みを対象とするガイドラインの概要を 明らかにして具体的な内容に検討を加える。

また、環境マネジメントにはいくつかの手法があり、それぞれに固有の役割が期待され ているが、有力な手法として環境会計が知られている。環境会計の主要な対象である環境 コストの概念を整理してから、物流との関連性を中心に環境会計の意義と内容を検討する。

通常の環境マネジメントでは企業の環境関連活動を物量によって測定するが、環境会計で は可能な限り貨幣によって測定するため、通常のマネジメントと環境マネジメントを関連 付ける役割が指摘されてきた。当初、両者は明確に区分されていたが、環境の取組みが発 展すれば個々の取組みが通常のマネジメントと一体化して境界が曖昧となる。さらに、環 境会計でも通常の環境活動に加えて環境負荷削減につながる企業活動自体の効率化も対象 に発展しているため、その役割に改めて期待が高まっている。環境会計では通常の企業会 計が管理会計と財務会計という機能別に区分されるのと同様に内部機能と外部機能を有す ることが知られている。各機能を目的とする環境会計では対象範囲が異なるが、これまで 公表されてきた主要なガイドラインを手掛かりにその意義を明らかにして個別の手法等に

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検討を加える。これまで環境会計では製造職能または企業活動全体を主な対象に発展して きた。この点はかつての管理会計発展の初期の頃と類似している。管理会計では製造から 着手され、全社へと対象を拡張した。さらに、その後、物流を含む主要な企業職能を対象 とすることで内容を拡充して発展している。主要な企業職能を詳細に検討した上で企業活 動全体を対象とする管理会計はそれ以前の管理会計と比較して機能が高度化して有用性も 高い。このような管理会計上の発展は環境会計においても同様なものが予想される。物流 が環境マネジメントの対象として確立しているならば、内部機能および外部機能の双方に おいて環境会計の対象とする必要性が高まり、環境報告の内容も詳細となる。

以上の視点から本章では物流コスト管理にかかわる環境マネジメントの発展を明らかに するために、その構成要素である環境経営、環境マネジメント、および環境会計の意義に ついて検討を加える。これらを踏まえて今後の課題についても言及する。

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第2節 物流を対象とする環境マネジメントの意義と内容

(1)環境経営の意義と内容

環境経営という用語は、Environmental Management の訳語であり、広く普及してい るが、その起源は必ずしも明らかでない。それでも、地球環境問題に対する企業行動に関 心が高まった 1990 年代頃から使用されはじめたことは知られている。特に 1996 年に

ISO14001環境マネジメントシステムが発効して以来、日本企業は競って認証取得を行い、

一時期には世界一の取得件数となっていた。この間、環境経営に関して、さまざまに解釈 や定義が行われ、その後に定着して現在に至っている(1)。以下では、環境経営が普及する に至った社会的背景を簡単に整理してみよう。

まず、1991年には当時の経済団体連合会(現在の日本経済団体連合会)が「経団連地球 環境憲章」を公表している。同憲章では、「環境問題の解決に真剣に取組むことは、企業が 社会からの信頼と共感を得、消費者や社会との新たな共生関係を築くことを意味し、わが 国経済の健全な発展を促すことになる」という認識を示している。さらに、同憲章の構成 は、前文、基本理念、および以下の11項目からなっている。

① 環境問題に関する経営方針 ② 社内体制 ③ 環境影響への配慮

④ 技術開発等 ⑤ 技術移転 ⑥ 緊急時対応 ⑦ 広報・啓蒙活動

⑧ 社会との共生 ⑨ 海外事業展開 ⑩ 環境政策への貢献

⑪ 地球温暖化等への対応

経団連では、これらを会員企業に示した上で社会各層との協力の必要性など、従来の産 業公害とは異なる対応を実施すべきとしている。これを受けて会員企業では独自の環境憲 章を制定する動きが広がった。さらに、経団連では、その後も環境問題に対する関心の状 況に応じて、1996年には「経団連環境アピール 21 世紀の環境保全に向けた経済界の自 主行動宣言」、1997年には「経団連環境自主行動計画」など、環境問題に関するさまざま なガイドラインの公表を通じて取組みを強化している(2)

環境問題の取組み方法では業種間で相違が見られる一方で、業種内ではある程度までの 共通性が見られる。このため、業種別のガイドラインも公表されている。たとえば、取扱 う製品の性格上、環境対策の前提としての健康対策や安全対策を特に重視する化学産業の

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