・x軸上を運動してい2つの硬い小球A とB が衝突したとする.衝突 時に小球 A が小球 B から受ける力 FA と小球 B が小球 A から受ける 力 FB は,向きが逆で大きさが等しい.つまり
FB =−FA. (3.51)
である.これを 作用反作用の法則 と呼ぶ.衝突の前と後は小球 A も小 球 B も力を受けずに運動しているものとする.
・衝突後の2つの小球の運動量の和は,衝突前の運動量の和に等しい(運
動量は (3.28) で定めた).つまり,小球 A と B の衝突前の運動量を
pA, pB,衝突後の運動量を p"A, p"B とすれば,
p"A+p"B =pA+pB
が成り立つ.運動量の定義(3.28) より,上式は
mAv"A+mBvB" =mAvA+mBvB
(3.52) と表すこともできる.ここでmA, mB は小球A,B の質量,vA, vB は小球 A,B の衝突前の速度,vA" , vB" は小球A,B の衝突後の速度である.
・衝突後の2つの小球の運動エネルギーの和が,衝突前の運動エネルギー の和に等しいとき(運動エネルギーは (3.29)で定めた),つまり
1
2mAv"A2+1
2mBvB" 2 = 1
2mAvA2+1
2mBvB2
(3.53) が成り立つとき,この衝突を 完全弾性衝突 と呼ぶ.
注.物体の衝突によってその運動エネルギーの一部が物体内部のエネル ギーに転化する場合(物体の温度上昇などが起る)は,衝突は完全弾性衝 突とはならない.
・(3.52)が成り立つことを示す.いま,時刻t における小球 A, Bの速度 をvA(t), vB(t)と書き,時刻tに小球A, Bが受けている力をFA(t), FB(t)
と書く.(3.12)より,小球 A と小球B の運動方程式はそれぞれ
mA
d vA(t)
dt =FA(t), mB
d vB(t)
dt =FB(t). (3.54) である.小球A と B の運動量の和 mAvA(t) +mBvB(t) を時間 t で微分 し,上の2つの式を用いると
d
dt(mAvA(t) +mBvB(t)) = mA
d vA(t) dt +mB
d vB(t) dt
= FA(t) +FB(t) ((3.54)より) (3.55)
を得る.ここで,どの時刻t においても
FA(t) +FB(t) = 0 (3.56) が成り立っている.実際,小球A,B が衝突している最中は,(3.51) よ
り (3.56) が成り立ち,それ以外の時刻t では小球 A, B の受けている力
FA(t), FB(t) はどちらも 0だから,やはり (3.56) が成り立つ .(3.55)と (3.56)より
d
dt(mAvA(t) +mBvB(t)) = 0
この結果は小球 A,B の運動量の和 mAvA(t) +mBvB(t) が定数であり変 化しないことを示す((1.10)より).従って衝突後の小球A と B の運動 量の和は衝突前の和と同じである.つまり(3.52) が成り立つ.
問.静止している質量 m の小球 A に,同じ質量を持つ速度 vB の小球 B が衝突した.この衝突は完全弾性衝突であった.小球 A と小球 B の 衝突後の速度を求めよ.
解.小球 A と B の衝突後の速度をそれぞれ vA",vB" で表す.問の条件 より,小球A と小球B の質量は m であり,また衝突前の小球Aの速度 vA は 0 である.従って (3.52)より
mv"A+mvB" =mvB. (3.57)
が成り立ち,また(3.53) より 1
2mvA" 2+1
2mv"B2 = 1
2mvB2. (3.58) が成り立つ.(3.57) の両辺を m で割った式より
vB =v"A+vB" (3.59)
これを(3.58) の両辺を m/2 で割った式の右辺に代入すると
vA" 2+v"B2 = (vA" +v"B)2
この式は右辺を展開した後,整理すると
vA" vB" = 0
という式となる.これより
vA" = 0 (3.60)
と
v"B= 0 (3.61)
の少なくとも一方が成り立たなければならない.いま(3.60)が成り立つ としてみる.これは衝突後も小球A が静止したままであることを意味す る.一方,(3.59) よりこの仮定 (3.60) のもとでは vB" = vB であり,小 球 B は衝突後も衝突前と同じ速度で運動していることになる.従って,
衝突後,小球 B は静止したままの小球 A を通り抜けたことになる.こ れは不可能.従って (3.60)は成り立たない.従って(3.61) の方が成り立 つことになる.つまり衝突後の小球B の速度は0.このとき (3.59)より
vA" =vB.つまり衝突後の小球 A の速度は vB.(A と B の速度が衝突で
入れかわったことになる.)
4 ベクトルの復習
4.1 ベクトル
・ベクトル とは向きと大きさを持つ量.
・ベクトルを次図のように矢印で表す.矢印の向きはベクトルの向き,矢 印の長さはベクトルの大きさを表す.ベクトルに名前を付けるときは,A"
のように上に矢印のついた記号を用いることにする.
#####$
"
A
・ベクトル A",B" の 和 A" +B" とは,A",B" を2辺とする平行四辺形の 対角線で表される下図のようなベクトル.
%
&&&&&'
"
A
"
B
%
&&&&&'
(((((((((()
$$$$$
"
A
"
B A"+B"
注.右端の図のベクトルA"+B" は下図のように A" と B" を繋げることで も得られる:
%&&&&&'
(((((((((()
"
A
"
B
"
A+B"
・ベクトル A" の 定数 k 倍 k "A とは,下図のように A" の大きさを |k| 倍 し(例えばk =−2なら | −2|倍,つまり2倍する),k が負のときは更 に向きを逆にしたベクトル.
&&&&&'
"
A
&&&&&&&' &
&
&
&
&
&
&*
k "A k "A
kが正のとき kが負のとき
・−A" とは −1A" のこと.従って −A" は A" と大きさが同じで向きが逆の ベクトル.差A"−B" とは A"+ (−B)" のこと.
・A" に対しA"−A" = (A"+ (−A))" や A" の 0倍 0A" を作図すると,大きさ
(長さ)が 0のベクトルとなる.大きさが 0のベクトルを記号"0 で表し,
零ベクトル と呼ぶ.零ベクトル"0を表す矢は長さが0 であるからその向 きは重要ではない.
・ベクトル A" の大きさ,つまりベクトル A" を表す矢印の長さを,記号
|A"|で表す.ベクトル A" の大きさを,上の矢印を取り除いたA で表すこ
ともある.
・ベクトル A" と B" の 内積 A"·B" を
"
A·B" =|A"||B"|cosθ (4.1) により定める.ここでθ はベクトル A" と B" のなす角.つまり下図の角 θ.
%
&&&&&'
"
A
"
B θ
・ベクトルA" と B" が直交しているときは A"·B" = 0 となる.実際,こ のときθ = 90◦ だから cosθ = 0.従って (4.1) の右辺は 0 となる.
問.A" の大きさが2,B" の大きさが 3,A" と B" のなす角が 2π
3 のとき,
内積A"·B" を求めよ.
解.
"
A·B" = 2×3×cos2π
3 ((4.1)より)
= 6×(−1
2) (cos2π
3 = cos 120◦ =−1 2より)
= −3.
・ベクトル A" の大きさ |A"| は,内積を用いて
|A"|=
.A"·A" (4.2)
と表せる.実際,A" が A" 自身となす角は0 であるから,
"
A·A" = |A"||A"|cos 0 ((4.1)より)
= |A"|2 (cos 0 = 1より).
これより(4.2) を得る.