物理学
A
(仲光)
!2008 by Kuniaki Nakamitsuc1
微分積分の復習
1.1
微分
・以下では t2,sin t, cos t のように.関数の変数に文字 t を用いる.記 号 f(t) は t を変数とするある関数を表す. ・ 時刻 t における物体の速度 v(t) を知るには,まず時刻 t における物 体の位置 x(t) を測定し,次に時刻 t + ∆t における物体の位置 x(t + ∆t) を測定し,位置の変化 x(t + ∆t) − x(t) を経過時間 ∆t で割ればよい.こ うして得られる物体の速度 v(t) = x(t + ∆t)− x(t) ∆t は,経過時間 ∆t を短くすればより正確な値となる(時間が ∆t 経過する 間に物体の速度が変化してしまうことがあるから).従って,正確な速度 v(t) というものを式で表現すれば v(t) = lim ∆t→0 x(t + ∆t)− x(t) ∆t となる.ここで記号 lim ∆t→0 は ∆t を 0 に近付けることを表す.次に述べる 導関数の記号を用いれば,上式は v(t) = dx(t) dt と表せる. ・関数 f(t) の 導関数 df (t) dt を df (t) dt = lim∆t→0 f (t + ∆t)− f(t) ∆t (1.1) で定める. 問.関数 t2 の導関数 d t2 dt を (1.1) を使ってを求めよ.解.(1.1) で f(t) が t2 の場合である.f(t) = t2 なら f(t+∆t) = (t+∆t)2 である.従って (1.1) より d t2 dt = ∆tlim→0 (t + ∆t)2− t2 ∆t = lim ∆t→0 (t2+ 2t∆t + (∆t)2)− t2 ∆t ((t + ∆t) 2を展開した) = lim ∆t→0 2t∆t + (∆t)2 ∆t (分子を整理した) = lim ∆t→0(2t + ∆t) (約分した) = 2t. (∆t を 0 に近付けた) ・関数の導関数を求めることを,関数の 微分 を求める,関数を 微分する などと言う.df (t) dt を簡単に f "(t) と書くこともある.(df (t) dt は df dt(t) と 書く方が好ましいが,ここではこのようなことにはこだわらないことに する,) ・後で利用する微分公式は, d c dt = 0 (c が定数のとき), (1.2) d tn dt = nt n−1, (1.3) d sin at dt = a cos at, (1.4) d cos at
dt =−a sin at, (1.5)
d eat dt = ae at, (1.6) および d (f (t) + g(t)) dt = df (t) dt + dg(t) dt , (1.7) d (cf (t)) dt = c df (t) dt (c は定数), (1.8) d (f (t)g(t)) dt = d f (t) dt g(t) + f (t) d g(t) dt . (1.9)
注.(1.2) より定数の微分は 0 であるが,この逆も言える.つまり,微分 して 0 となる関数は定数である: df (t) dt = 0 ⇒ f(t) = 定数. (1.10) 問.x = 3 cos 2t − 4t2+ 5t + 6 のとき,微分 dx dt を求めよ. 解. dx dt = d dt(3 cos 2t− 4t 2+ 5t + 6) = 3d cos 2t dt − 4 d t2 dt + 5 d t dt + d 6 dt ((1.7), (1.8) より) = 3· (−2 sin 2t) − 4 · 2t + 5 · 1 + 0 ((1.5), (1.3), (1.2) より) = −6 sin 2t − 8t + 5. 問.x = t2sin t のとき,微分 dx dt を求めよ. 解. dx dt = d t2sin t dt = d t 2 dt sin t + t 2d sin t dt ((1.9) より) = 2t sin t + t2cos t. ((1.3), (1.4) より) x という変数を持つ関数 f (x) を変数 t で微分するとき,次の式が成り 立つ: df (x) dt = df (x) dx dx dt (1.11) 注.(1.11) は分数計算における規則 b a = b c· c a と同じ形である.
問.x = t2+ 1 のとき dx4 dt を求めよ. 解. dx4 dt = dx4 dx dx dt ((1.11) より) = dx 4 dx d(t2+ 1) dt (x = t 2+ 1 より) = 4x3· 2t ((1.3), (1.2) より) = 4(t2+ 1)3· 2t (x = t2+ 1 より) = 8t(t2+ 1)3. 問.d sin(t2+ 1) dt を求めよ. 解.sin(t2+ 1) を sin x, x = t2 + 1 と2段階に分けて考えると d sin(t2+ 1) dt = d sin x dt (t 2+ 1 = x より) = d sin x dx dx dt ((1.11) より) = d sin x dx d(t2+ 1) dt (x = t 2+ 1 より) = cos x· 2t ((1.4), (1.3) より) = 2t cos(t2+ 1) (x = t2+ 1 より). ・記号 d 2f (t) dt2 は f(t) を2回微分したものを表す.つまり d2f (t) dt2 = d dt ! df (t) dt " (1.12) 注.(1.12) の両辺を見比べるとわかるように,d 2 dt2 は d dt d dt の略. 問. x = C1cos at + C2sin at (1.13) (C1,C2 は定数)と置くと,x は式 d2x dt2 =−a 2x (1.14)
を満たすことを示せ. 解.まず dx dt =−C1a sin at + C2a cos at ((1.5) と (1.4) より) (1.15) となる.これを更に微分すると d2x dt2 = d dt ! dx dt " ((1.12) より) = d
dt(−C1a sin at + C2a cos at) ((1.15) より) = −C1a2cos at− C2a2sin at ((1.4) と (1.5) より)
= −a2(C
1cos at + C2sin at)
= −a2x ((1.13) より) となり (1.14) が成り立つことがわかる. 注.(1.14) を満たす x は (1.13) の形のもの以外には無い.つまり d2x dt2 =−a 2x ⇒ x = C 1cos at + C2sin at (C1, C2は定数) (1.16)
1.2
積分
・t3 を微分すると 3t2 になるが,微分すると 3t2 になる関数は t3 だけ ではない.定数の微分は 0 であるから,t3+ C(C は定数)も微分すれば 3t2 となる.このように,微分すると 3t2 となる関数の 一般形 は t3+ C (C は任意の定数)である. ・関数 f(t) の 不定積分 # f (t)dt とは,微分すると関数 f (t) となるよう な関数の一般形のことである. 例.関数 3t2 の不定積分 # 3t2dt とは,微分すると関数 3t2 となるよう な関数の一般形のことであるから,t3+ C (C は任意の定数)のことで ある.つまり# 3t2dt = t3+ C(C は任意の定数).問.不定積分# sin 2tdt を求めよ. 解.微分すると sin 2t となる関数の一般形を求めればよい.これには (1.5) が利用できる. (1.5) で a = 2 ととると d cos 2t dt =−2 sin 2t 両辺に −1 2 を掛けて, d dt $ −1 2cos 2t % = sin 2t. (1.17) つまり,微分すると sin 2t となる関数のひとつは −1 2cos 2t である.この ことと定数の微分が 0 であることより,微分すると sin 2t となる関数の 一般形は −1 2cos 2t + C(C は任意の定数).つまり # sin 2tdt =−1 2cos 2t + C (C は任意の定数). ・上の例や問の解答ように,不定積分を計算すると必ず # f (t)dt =· · · + C (C は任意の定数) (1.18) という形になる.(不定積分の「不定」とは,このように不定の定数 C が 付くことを言っている.)この任意定数 C は 積分定数 と呼ばれる. ・後に利用する不定積分の公式は, # cdt = ct + C (c が定数のとき), (1.19) # tndt = t n+1 n + 1+ C, (1.20) # sin atdt =−1 acos at + C, (1.21) # cos atdt = 1 asin at + C, (1.22) # eatdt = 1 ae at+ C, (1.23)
および # (f (t) + g(t))dt = # f (t)dt + # g(t)dt, (1.24) # cf (t)dt = c # f (t)dt (c が定数のとき). (1.25) 注.(1.19) で特に c = 0 ととると # 0dt = C. (1.26) 問.# (4 sin 2t− 3t2+ 2)dt を求めよ. 解.計算結果は (1.18) のように任意定数 C がひとつ付く形になることは 始めからわかっている.従って,計算中に上の不定積分の公式を何度か 使う場合,定数 C はいちいち書かずに略しておき,最後に C をひとつ 付ければよい.つまり次のように計算: # (4 sin 2t− 3t2+ 2)dt = 4 # sin 2tdt− 3 # t2dt + # 2dt ((1.24), (1.25) より) = 4(−1 2cos 2t)− 3( 1 3t 3) + 2t + C ! (1.21), (1.20), (1.19) を C を略し て使い,最後にひとつ C を付けた " = −2 cos 2t − t3+ 2t + C. 問.(1.2)-(1.6) を利用して,(1.19)-(1.23) の右辺の関数の微分が左辺の積 分の中に書かれた関数となることを確かめよ. ・記号 # b a f (t)dt は,不定積分 # f (t)dt(の任意定数 C を略したもの) の t = b における値から t = a における値を引いたものを表す. 例.# 2 1 t 2dt は,不定積分 # t2dt = 1 3t 3+ C の C を略したもの(つまり 1 3t 3)の t = 2 における値から t = 1 における値を引いたものを表す.つ まり # 2 1 t 2dt = &1 3t 3'2 1 = 1 32 3− 1 31 3 = 7 3.
ここで記号 [· · ·]b a は括弧内の量 · · · の t = b における値から t = a におけ る値を引くという操作を表す. ・# b a f (t)dt を,区間 [a, b] 上での f (t) の 定積分 と呼ぶ.上の記号 [ ] b a を用いると # b a f (t)dt = [F (t)] b a (1.27) と表せる.ここで F (t) は f(t) の不定積分の任意定数 C を略したものを 表す. ・df (t) dt の不定積分とは,微分すると df (t) dt になる関数のことだから f(t)+ C.従って,(1.27) より # b a df (t) dt dt = [f (t)] b a= f (b)− f(a). この # b a df (t) dt dt = f (b)− f(a) (1.28) という結果は,微分積分学の基本定理 と呼ばれる. 注.定積分 # b a f (t)dt の値は,関数 f (t) のグラフと t 軸(横軸)の間に 挟まれた領域の t = a から t = b までの部分の面積を表している(グラ フが t 軸より下にあるときは面積にはマイナス符号が付く).
2
力学の基本単位
・力学における基本的な単位は,長さの単位,質量の単位,時間の単 位. ・これらの単位によく用いられるのは m(メートル),kg(キログラム),s(セコンド = 秒), あるいはcm(センチメートル),g(グラム),s (セコンド). ・力学で使用される他の単位は,長さ,質量,時間の単位を組み合わせ て表せる. 注.kg や g は重さの単位ではなく質量の単位である.重さは力の単位 (後述)を用いて表される. ・単位のついた量の加減乗除を行うとき,単位を付けたまま計算をすれ ば,計算の結果得られた量の単位がわかる. 問.100 m を 10 s(s = 秒)で走る人の平均速度 V(= 移動にかか っ た時間移動した距離 ) を求めよ. 解. V = 100 m 10 s = 100 10 m s = 10 m s . ・関数の変数 t や値 f(t) が単位を持つ量であるとき,次の事が成り立つ: df (t) dt の単位 = f (t) の単位 t の単位 . (2.1) 例.時刻 t (s) における物体の位置を f(t) (m) で表すとき, df (t) dt の単位 = f (t) の単位 t の単位 = m s . 注.(2.1) は導関数の定義式 (1.1) から導かれる.実際, (1.1) の左辺df (t) dt の単位 = (1.1) の右辺の分数 f (t + ∆t)− f(t) ∆t の単位 = f (t) と同種の量 t と同種の量 の単位 = f (t) の単位 t の単位 .
3
直線上を運動する物体
3.1
位置
→
速度
→
加速度
・ここでは物体が直線上を運動している場合を扱う.この直線を x 軸 と見なす.時間や時刻は t で表す.(t は time の頭文字.)直線上を運動 する物体の例として,真下に落下して行く物体や,ばねの力を受けて左 右に振動する物体などがある. ・物体の位置をその座標 x で表す.一般に物体の位置 x は時間 t と共に 変化する.つまり物体の位置 x は時間 t の関数である.例えば x = t2 は 時刻 t における物体の座標 x が t2 という値であることを意味する. ! ! x x 軸 物体 ・物体の 速度 v とは,物体の位置 x を時間 t で微分したもの.つまり v = dx dt (3.1) (v は velocity(速度)の頭文字.) ・物体の 加速度 a とは,物体の速度 v を時間 t で微分したもの.つまり a = dv dt (3.2) (a は acceleration(加速度)の頭文字.) 問.物体の位置 x が時間 t を用いて x = t3 と表されるとき,物体の速度 v と加速度 a を求めよ. 解. v = dx dt ((3.1) より)= d t 3 dt (x = t 3より) = 3t2, a = dv dt ((3.2) より) = d 3t 2 dt (上で求めた v = 3t 2より) = 6t. ・物体の位置 x の微分は速度,速度の微分は加速度だから,加速度は位 置 x を2回微分したものである. つまり加速度 a は a = d 2x dt2 (3.3) とも表せる. 問.物体の位置 x が時間 t を用いて x = cos t と表されるとき,物体の 加速度 a を求めよ. 解. a = d 2x dt2 ((3.3) より) = d dt ! dx dt " ((1.12) より) = d dt ! d cos t dt " (x = cos t より) = d dt(− sin t) = − cos t.
3.2
速度と加速度の単位
・物体の位置は,例えば「座標原点からマイナス 3 cm の位置」などと いうように,長さの単位を用いて表せる.つまり 位置の単位 = 長さの単位 (3.4) ・速度 v や加速度 a の単位を知るには,(2.1) を使えばよい.いま v の単位 = dx dt の単位 ((3.1) より v = dx dt だから) = x の単位 t の単位 ((2.1) より) ここで位置 x は長さの単位,t は時間の単位を持つから,上の結果は次 のように表現できる: 速度の単位 = 長さの単位時間の単位 (3.5) 加速度 a についても同様に a の単位 = dv dt の単位 ((3.2) より a = dv dt だから) = v の単位 t の単位 ((2.1) より). つまり 加速度の単位 = 速度の単位 時間の単位. この右辺の分子を (3.5) を使って書き直すと 加速度の単位 = 長さの単位 (時間の単位)2 (3.6) 注.簡単に言えば,位置 → 速度 → 加速度の各ステップごとに単位が 1 時間の単位 倍される(つまり時間 t で微分をするごとに単位が 1 時間の単位倍される). 問.物体の時刻 t (s)(s = 秒) における位置が x = sin 2t (cm) で表され るとき,物体の速度 v と加速度 a を求めよ. 解.速度 v と加速度 a を計算すると v = dx dt ((3.1) より) = d sin 2t dt = 2 cos 2t, a = dv dt ((3.2) より) = d 2 cos 2t dt (上で求めた v = 2 cos 2t より) = −4 sin 2t. また,この問では時刻 の単位に s,長さの単位には cm を使っているから 速度 v の単位 = 長さの単位時間の単位 ((3.5) より) = cm s , 加速度 a の単位 = 長さの単位 (時間の単位)2 ((3.6) より) = cm s2 . 従って求める速度は v = 2 cos 2t (cm/s),加速度は a = −4 sin 2t (cm/s2).
3.3
加速度
→
速度
→
位置
・直線上(x 軸)を運動する物体を考える.物体の位置の微分は物体の 速度,物体の速度の微分は物体の加速度であることは既に述べた.ここ では逆に,加速度から速度,速度から位置を求めることを考える. ・物体の加速度 a を積分すると,物体の速度 v が得られる. つまり, v = # adt (3.7)注.右辺は不定積分であるから,この式を利用して求めた速度 v には任 意定数 C が付く((1.18) 参照).この定数 C の値は,ある時刻(例えば 最初の時刻)における物体の速度がわかれば定まる(後の問参照). ・物体の速度 v を積分すると,物体の位置 x が得られる. つまり, x = # vdt (3.8) 注.右辺は不定積分であるから,この式を利用して求めた位置 x には任 意定数 C が付く.この任意定数の値は,ある時刻における物体の位置が わかれば定まる(後の問参照). 注.「積分」の項の最初に述べたように,# f (t)dt は,微分すると中に書 かれた関数 f(t) になる関数を表す.従って,(3.7) は (3.2) の,(3.8) は (3.1) の言い換えに過ぎない. 問.物体の加速度 a が a = cos 2t で表されるとき,物体の速度 v はどの ように表されるか.ただし t = 0 のときの物体の速度を v0 とする. 解.物体の速度は v = # adt ((3.7) より) = # cos 2tdt (a = cos 2t より) = 1 2sin 2t + C (C は定数) ((1.22) より). 得られたこの速度 v = 1 2sin 2t + C の定数 C の値を求める.問の最後の条件より,上式で t = 0 としたとき v の値は v0 にならなければならない.つまり v0 = 1 2sin 0 + C.
これと sin 0 = 0 より C = v0.従って求める物体の速度は v = 1 2sin 2t + v0. 問.物体の速度 v が v = 2t と表されるとき,物体の位置 x はどのよう に表されるか.ただし t = 1 のときの物体の位置を x0 とする. 解.物体の位置は x = # vdt ((3.8) より) = # 2tdt (v = 2t より) = t2+ C. (C は定数) ((1.20) より) 得られたこの結果 x = t2+ C の定数 C の値を求める.問の最後の条件より,上式で t = 1 としたとき x の値は x0 にならなければならない.つまり x0 = 12+ C これより C = x0− 1.従って求める物体の位置は x = t2+ x0− 1.
3.4
物体の運動方程式
・直線上(x 軸上)を運動する物体を考える.この物体に対するニュー トンの運動方程式は ma = F (3.9) ここで m は物体の質量,a は物体の加速度,F は物体の受けている力. (m は mass(質量)の頭文字,F は force(力)の頭文字 ・力 F の符号は,力 F が物体に対しどちら向きに働いているかを表す: F > 0 のとき力の向きは x 軸正方向. F < 0 のとき力の向きは x 軸負方向(3.10)・物体の質量 m と物体の受けている力 F がわかっていれば, (3.9) から 物体の加速度 a がわかる.逆に,物体の質量 m と加速度 a がわかって いれば, (3.9) から物体の受けている力 F がわかる. ・(3.3) より,運動方程式 (3.9) は次のようにも表せる. md 2x dt2 = F (3.11) ・(3.1) より,運動方程式 (3.9) は次のようにも表せる. mdv dt = F (3.12) ・(3.9) から力の単位がわかる.実際, F の単位 = ma の単位 ((3.9) より) = m の単位× a の単位 = 質量の単位× 加速度の単位 = 質量の単位× 長さの単位 (時間の単位)2 ((3.6) より). これより 力の単位 = 質量の単位 × 長さの単位 (時間の単位)2 . (3.13) ・長さ,質量,時間の単位に m(メートル),kg(キログラム),s (秒) を用いた場合,(3.13) より,力の単位 = (kg · m)/s2.この単位 (kg · m)/s2 を ニュートン と呼び,記号 N で表す. 問.質量 10 kg の物体が加速度 5 m/s2 で運動している.この物体に働い ている力 F を求めよ.
解. (3.9) に m = 10 kg,a = 5 m/s2 を代入すると F = 10 kg× 5m s2 = 50 kg· m s2 = 50 N. ・力は足し合わせることができる.物体がいくつかの力 F1, F2, F3, . . . を 受けているなら,物体の受けている正味の力(合力) F はこれらを足し 合わせた F = F1+ F2+ F3 +· · · である.
3.5
力を受けずに運動している物体
・直線上(x 軸)を運動する物体を考える.この物体の受けている力 F が 0 の場合,物体の運動方程式 (3.9) は ma = 0. これより物体の加速度 a は a = 0. (3.14) このとき物体の速度 v は v = # adt ((3.7) より) = # 0dt ((3.14) より) = 定数 C ((1.26) より) この結果より,力を受けていない物体の速度 v は一定で変化しないこと がわかる.特に,静止した物体はそのまま静止し続ける. ・逆に,物体の速度 v が一定で変化しないときは(静止している場合も 含む),物体が受けている力 F は 0 である.実際このとき F = mdv dt ((3.12) より) = m· 0 (v は一定,つまり定数だからdv dt = 0) = 0. 問.机の上に置かれている本は,重力以外の力を受けているか.解.重力以外の力も受けている.この本は静止しているから,上で述べ たことより本が受けている正味の力は 0 のはずである.従ってこの本は, 地球の重力の他に,それを打ち消すような力,つまり重力と大きさが等 しく向きが逆の力を机から受けていることになる.(この力は本が机から 受けている抗力と呼ばれる.)
3.6
地表の近くで重力を受けながら運動している物体
・地表の近くで重力を受けながら運動する物体を考える.いま x 軸を 次図のようにとり,物体はこの軸に沿って運動しているとする(つまり 真下に落とした物体や真上に投げ上げた物体などを考える).物体の位置 座標 x は物体の地表からの高度を表している. " " ! x x F = −mg x = 0 (地表) ・地表近くで質量 m の物体の受ける重力 F は F =−mg (3.15) と表される.g は 重力加速度 と呼ばれる正の定数. 注.(3.15) の重力 F が負の値であるのは,上図のように x 軸を上向きに とったために.重力の向きが x 軸負方向となるため((3.10) 参照). 注,天体間の重力の式は上と異なる.地表の近くなどこれに比べて小さ な範囲では,重力の式は上の簡単な式 (3.15) で近似される.・(3.9) と (3.15) より,重力を受けながら運動する物体の運動方程式は ma =−mg (3.16) つまり a =−g. (3.17) 注.方程式 (3.17) には物体の質量 m が含まれていない.従って地表の 重力の下での物体運動は物体の質量に無関係である(ガリレオの法則). 例えば,空気の抵抗が無い月面では,同じ高さから同時に落としたハン マーと鳥の羽が同時に着地する. ・(3.17) より,重力加速度 g は加速度 a と同じ単位を持つ(だから g を 重力「加速度」という).重力加速度 g の値は約 9.8 m/s2. 問.時刻 t = 0 に高さ x0 の位置から物体を落下させた.時刻 t における 物体の位置(高度) x を求めよ.始めの時刻 t = 0 における物体の速度 は 0 とする. 解.まず物体の速度 v を求め,次にそれを使って物体の位置 x を求める. 物体の速度 v は v = # adt ((3.7) より) = # (−g)dt ((3.17) より) = −gt + C. (C は定数) ((1.19) より) 得られたこの速度 v =−gt + C の定数 C の値を求める.問の最後の条件より,上式で t = 0 としたとき v の値は 0 にならなければならない.つまり 0 = −g · 0 + C これより C = 0.従って物体の速度は v =−gt (3.18)
これを用いると,物体の位置 x は x = # vdt ((3.8) より) = # (−gt)dt ((3.18) より) = −1 2gt 2+ C. (C は定数) ((1.20) より) 得られたこの結果 x =−1 2gt 2+ C の定数 C の値を求める.問の最初に書かれている事より,上式で t = 0 としたとき位置 x の値は x0 にならなければならない.つまり. x0 =− 1 2g· 0 + C これより C = x0.従って求める物体の位置は x =−1 2gt 2+ x 0. 問.上の問で時刻 t = 0 における物体の速度を v0 としたとき,物体の時 刻 t における位置 x はどう表されるか. 解.(上の (3.18) が v = −gt + v0 になることに注意.) x =−1 2gt 2+ v 0t + x0.
3.7
ばねの力を受けて振動する物体
・下図のような,ばねの先端に取り付けられた物体を考える.x 軸をば ねに沿ってとり,ばねが自然長(伸び縮みのないときの長さ)のときの 物体の位置を座標原点 x = 0 にとる. ! #$ %& # $ % % $$%%$$%%$$%%$$"%%$ x x F = −kx 0 ばね固定 ばねが自然長のときの物体の位置・上図における物体の位置座標 x を物体の平衡点(x = 0)からの 変位 と呼ぶ. ・ばねの先端に取り付けられた物体がばねから受ける力 F は,物体の平 衡点からの変位を x とするとき F =−kx (3.19) と表される.k は ばね定数 と呼ばれる正の定数であり,ばねの強さを表 す. 注.ばねの力の式 (3.19) の右辺のマイナス符号は,ばねの力が常に物体 を平衡点に引き戻す向きに働くことを表している.実際,(3.19) ( (3.10) も参照)より x > 0 (物体が平衡点の右) のとき F < 0 (力の向きは x 軸負方向) x < 0 (物体が平衡点の左) のとき F > 0 (力の向きは x 軸正方向) となる.結果として,物体は平衡点を中心にして左右に振動を続ける. ・ (3.11) と (3.19) より,ばね定数 k のばねの力を受けながら運動する質 量 m の物体の運動方程式は md 2x dt2 =−kx (3.20) ここで x は物体の平衡点からの変位.(上式は加速度の記号 a を使って ma =−kx と表すこともできるが,上の書き方の方が応用上便利である.) ・(1.14) の解は (1.13) の形であること,つまり d2x dt2 =−a 2x ⇒ x = C 1cos at + C2sin at (3.21) (C1,C2 は定数)であったことを思い出す.と置くと,x は式 d2x dt2 =−a 2x (3.22)
問.質量 m の物体が,ばね定数 k のばねにつながれている.時刻 t = 0 における物体の平衡点からの変位が x0,速度が v0 であるとき,時刻 t に おける物体の変位 x を求めよ. 解.この物体の変位 x は運動方程式は (3.20) を満たす.この (3.20) は d2x dt2 =− k mx と書き直せる.(3.21) で a = ( k m と置けばわかるように,上式を満た す x は, x = C1cos ( k m t + C2sin ( k m t (C1, C2は定数) (3.23) の形である.後はこの変位 x の式の定数 C1, C2 の値を求めればよい.問 の条件より,上式で t = 0 としたとき x は x0 とならなければならない. つまり x0 = C1cos 0 + C2sin 0 これと cos 0 = 1, sin 0 = 0 より C1 = x0. (3.24) 次に定数 C2 の値を求める.いま (3.23) から物体の速度 v を求めると v =−C1 ( k msin ( k mt + C2 ( k mcos ( k m t (3.25) となる.実際 v = dx dt ((3.1) より) = d dt C1cos ( k m t + C2sin ( k m t ((3.23) より) = −C1 ( k msin ( k mt + C2 ( k mcos ( k mt ((1.4), (1.5) より) 問の t = 0 における条件より,(3.25) で t = 0 としたとき v は v0 となら なければならない.つまり v0 =−x0 ( k msin 0 + C2 ( k mcos 0
これと sin 0 = 0, cos 0 = 1 より C2 = -m kv0. (3.26) (3.23), (3.24), (3.26) より求める変位は x = x0cos ( k mt + -m k v0sin ( k mt. (3.27) ・関数 sin t や cos t の値は t を 2π 増やすと元に戻る.つまり sin(t + 2π) = sin t, cos(t + 2π) = cos t
この事を,sin t や cos t は周期 2π の関数であるという.より一般に,関 数 f(t) の値が t をある定数 T だけ増やすと元にもどるとき,つまり f (t + T ) = f (t) となるとき,T をこの関数 f(t) の 周期 という. 問.上の問で求めた物体の位置 (3.27) の周期 T を求めよ. 解.(3.27) は二つの関数 f1(t) = sin ( k mt, f2(t) = cos ( k m t. から成る.(3.27) の周期を求めるには,この f1(t) と f2(t) の周期を調べ ればよい.sin t の周期は 2π である.つまり sin(t + 2π) = sin t t はどんな値でもよいのだから,この式の文字 t を ( k mt に置き換えて もよい.このとき上式は sin ( k mt + 2π = sin ( k mt.
となる.左辺の括弧の中を ( k m でくくると,この等式は sin ( k m $ t + 2π -m k % = sin ( k mt. と書ける.左辺は f1(t) の t を t + 2π -m k に置き換えたものに他ならな いから,上式は f1(t + 2π -m k ) = f1(t). と表せる.これは f1(t) が周期 T = 2π -m k を持つことを示している.上 の議論は sin を cos に置き換えてもそのまま成り立つから,f2(t) も同じ 周期 T を持つ.従って (3.27) の周期は T = 2π -m k .
3.8
物体の運動量とエネルギー
・直線上(x 軸)を運動する物体を考える.この物体の 運動量 p とは, 物体の質量 m と速度 v の積である.つまり p = mv (3.28) ・物体が力を受けていない場合,物体の運動量は一定で変化しない.実 際,物体の受けている力 F が 0 なら d p dt = m dv dt ((3.28) より) = F (物体の運動方程式 (3.12) より) = 0 (仮定 F = 0 より). となるから p は定数((1.10) より). ・物体の 運動エネルギー T を T = 1 2mv 2 (3.29)で定める.ここで m は物体の質量,v は物体の速度.(前に記号 T を周 期を表すために使ったが,ここでは記号 T を運動エネルギーを表すため に用いる.) ・(3.28) より v = p/m であるから,(3.29) で定めた物体の運動エネル ギー T は物体の運動量 p を用いて T = p 2 2m (3.30) と表すこともできる. ・物体の受けている力を F とすると dT dt = F v (3.31) が成り立つ.実際, dT dt = d dt $1 2mv 2% = 1 2m d v2 dt = 1 2m d(vv) dt = 1 2m ! dv dtv + v dv dt " ((1.9) より) = 1 2m· 2 dv dtv = mdv dtv = F v ((3.12) より) 注.上の計算を (1.9) の代わりに (1.11) を使って行うと(こちらの方が 普通) dT dt = d dt $1 2mv 2% = 1 2m dv2 dt
= 1 2m dv2 dv dv dt ((1.11) の 文字 x を v に変えたものより) = 1 2m· 2v dv dt = mdv dtv = F v ((3.12) より) ・物体が力を受けていない場合,物体の運動エネルギー T は一定で変化 しない.実際,このとき dT dt = F v ((3.31) より) = 0 (物体の受けている力 F = 0 より) となるから T は定数((1.10) より). ・物体が重力 (3.15) を受けている場合は,その位置エネルギー V を V = mgx (3.32) により定める.ここで x は物体の位置の地表からの高さ.この物体のエ ネルギー E とは,その運動エネルギー (3.29) と位置エネルギー (3.32) の和のことである.つまり E = 1 2mv 2+ mgx (3.33) ・エネルギー (3.33) は時間によらず一定値を保つ.実際, dE dt = d dt( 1 2mv 2+ mgx) = d dt $1 2mv 2%+d mgx dt = F v + mgdx dt ((3.31) と (3.29) より) = F v + mgv ((3.1) より) = F v− F v (物体の受けている力の式 (3.15) より) = 0.
従って E は定数((1.10) より). 問.物体を地表からの高さが x0 の位置から真上に速度 v0 で投げ上げた. この物体が着地する直前の速度 v を求めよ. 解.重力を受けながら運動する物体でのエネルギーは (3.33) で定めたよ うに E = 1 2mv 2+ mgx (3.34) である.ここで x, v は物体の高度と速度である.上に示したように,こ のエネルギー E の値は一定である.問の条件より,物体のはじめの高度 は x0,速度は v0 である.このときは E = 1 2mv 2 0 + mgx0 (3.35) である.物体が着地する直前は,物体の高度 x は 0 である.従ってこの ときは E = 1 2mv 2+ mg· 0 = 1 2mv 2 (3.36) である.ここで v は着地直前の物体の速度である.エネルギー E は時間 によらず一定なのであるから,(3.36) の右辺は (3.35) の右辺と同じ値で ある.つまり 1 2mv 2 = 1 2mv 2 0 + mgx0 両辺を m 2 で割れば v2 = v02+ 2gx0. これより v =±.v2 0 + 2gx0. 着地直前の物体は下方に向かって運動しているから,その速度 v は負. 従って,求める速度は v =−.v2 0 + 2gx0. 問.物体を地表からの高さが x0 の位置から速度 v0 で投げ上げた.この 物体が到達する最高点の高さ x を求めよ.
解.(この物体のエネルギー (3.33) が一定であることと,最高点での物体 の速度は 0 になることを用いる.) x = v 2 0 2g + x0. ・物体がばねの力 (3.19) を受ている場合は,その位置のエネルギー V を V = 1 2kx 2 (3.37) により定める.この物体のエネルギー E とは,その運動エネルギー (3.29) と位置エネルギー (3.37) の和のこと.つまり E = 1 2mv 2+1 2kx 2 (3.38) ・エネルギー (3.38) は時間によらず一定値を保つ.実際, d dt $1 2kx 2% = 1 2k d x2 dt = 1 2k d(xx) dt = 1 2k ! d x dtx + x d x dt " = 1 2k· 2x d x dt = kxv ((3.1) より) = −F v (物体の受けている力の式 (3.19) より). これと (3.31) を用いると dE dt = d dt( 1 2mv 2+1 2kx 2) = d dt $1 2mv 2%+ d dt $1 2kx 2% = F v− F v = 0.
従って E は定数((1.10) より). 注.上の d dt $1 2kx 2% の計算では (1.9) を使ったが,(1.11) を使って次の ように計算してもよい: d dt $1 2kx 2% = 1 2k dx2 dt = 1 2k dx2 dx dx dt ((1.11) より) = 1 2k· 2x dx dt = kxv ((3.1) より) = −F v ((3.19) より). 問.物体がばねの力を受けながら運動している.ある時刻におけるこの 物体の平衡点からの変位は x0,速度は v0 であった.この物体の変位 x の最大値を求めよ. 解.ばねの力を受けながら運動する物体のエネルギーは (3.38) で定めた ように E = 1 2mv 2+ 1 2kx 2. (3.39) である.ここで x, v は物体の変位と速度である.上に示したように,こ のエネルギー E は一定である.問の条件より,ある時刻における物体の 変位は x0,速度は v0 である.このときは E = 1 2mv 2 0+ 1 2kx 2 0. (3.40) である.エネルギー E は時間によらず一定なのだから,(3.39) の値は常 に (3.40.) に等しい.つまりどの時刻でも 1 2mv 2+1 2kx 2 = 1 2mv 2 0+ 1 2kx 2 0 が成り立っている.右辺は x0 と v0 によって定まっている定数だから,左 辺の x2 が最大となるのは,左辺の第1項が最小の値 0 となるときであ る.つまり上式が 1 2kx 2 = 1 2mv 2 0 + 1 2kx 2 0.
となるときである.この式を書き直すと x2 = m kv 2 0 + x20. これより x =± -m kv 2 0 + x20. これは物体の x 座標(変位)の最小値が − -m kv 2 0 + x20,最大値が -m kv 2 0+ x20 であることを示している.従って,変位 x の最大値は -m kv 2 0 + x20. 問.物体がばねの力を受けながら運動している.ある時刻におけるこの 物体の平衡点からの変位は x0,速度は v0 であった.この物体の速度の 最大値を求めよ. 解. ( v2 0+ k mx 2 0. ・エネルギーの単位を求める.エネルギーの式 (3.33) や (3.38) の運動エ ネルギー 1 2mv 2 の部分に注目すると エネルギーの単位 = 運動エネルギー 1 2mv 2の単位 = 質量の単位× (速度の単位)2 = 質量の単位× ! 長さの単位 時間の単位 "2 ((3.5) より) 従って エネルギーの単位 = 質量の単位 × 長さの単位時間の単位2 2. (3.41) ・長さの単位に m(メートル),質量の単位に kg(キログラム),時間の単 位に s(秒)を用いた場合,(3.41) よりエネルギーの単位は (kg · m2)/s2. この単位 (kg · m2)/s2 を ジュール と呼び,記号 J で表す.3.4 節で述べ たニュートン N を使うと,J = N · m と表せる.
3.9
力のポテンシャル
・前節では,物体の受ける力が重力の場合とばねの力の場合に対し,物 体のエネルギーを定めた.ここではより一般的な場合に対し物体のエネルギーを定める. ・重力 F = −mg を受ながら運動する物体の位置エネルギーは,(3.32) で定めたように V = mgx である.この V は位置 x のみを変数に持ち(速度 v や時間 t を変数に 持たない),x で微分すれば dV dx = d mgx dx = mg = −F (F = −mg, より) (3.42) となる.また,ばねの力 F = −kx を受ながら運動する物体の位置のエ ネルギーは,(3.37) で定めたように V = 1 2kx 2 である.この V も位置 x のみを変数に持ち,x で微分すると dV dx = d dx( 1 2kx 2) = kx = −F (F = −kx より) (3.43) となる. ・上に述べたように,力 F が重力やばねの力の場合,V は位置 x のみ を変数に持つ関数であり (3.42), (3.43) に示したように F = −dV dx (3.44) という式を満たしている.力 F が重力やばねの力でない場合でも,力 F に対して,位置 x のみを変数に持つ関数 V で (3.44) を満たすようなも のが見つかることがある.このとき V を力 F の ポテンシャル と呼ぶ. (上の重力やばねの力の場合のように V を位置エネルギーと呼ぶことも ある.)
・一般に,力のポテンシャル V を求めると任意定数 C が付く.つまり V =· · · + C (C は任意定数) (3.45) の形となる. 例.力 F が F = sin x (3.46) と表されるとき,力 F のポテンシャル V は V = cos x + C (C は任意定数) (3.47) の形となる.実際, dV dx = d(cos x + C) dx = − sin x = −F (3.46) より) となるから V は C の値が何であっても (3.44) を満たしている. ・通常は,ポテンシャルの基準点を適当に選び(例えば x = 0),その点 でのポテンシャル V の値が 0 となるように (3.45) の定数 C の値を定め る. 問.力 (3.46) のポテンシャル V は,ポテンシャルの基準点を x = 0 に とったときどのように表されるか. 解.力 (3.46) のポテンシャル V の一般形は (3.47) に示したように V = cos x + C. 基準点 x = 0 ではこのポテンシャル V の値は 0 でなければならないか ら C = −1(cos 0 = 1 より).つまり,V は規準点を x = 0 としたとき V = cos x− 1 と表される.
・物体の受けている力 F が保存力であり,従って式 (3.44) を満たすよう なポテンシャル V があるとき,物体のエネルギー E を E = T + V (3.48) で定める.ここで T は (3.29) で定めた物体の運動エネルギーである. ・(3.48) で定めたエネルギー E は時間によらず一定値を保つ.実際, dE dt = dT dt + dV dt = F v + dV dt ((3.31) より) = F v + dV dx dx dt ((1.11) より) = F v− F v ((3.44) と (3.1) より) = 0. 従って E は定数((1.10) より). 問.物体の受けている力 F が F = −x3 と表されるとする.この物体のエネルギー E はどのような式となるか. ただし力 F のポテンシャルの基準点を x = 0 とせよ. 解.いま V = 1 4x 4+ C (C は任意定数) (3.49) と置く.この V は位置 x のみを変数とする関数であり,しかも dV dx = d dx $1 4x 4 + C%= x3 =−F となるから (3.44) を満たす.従って V は力 F のポテンシャルである. 基準点 x = 0 ではこのポテンシャル (3.49) の値は 0 でなければならない から C = 0.従って V = 1 4x 4
従って (3.48) より物体のエネルギーは E = 1 2mv 2+ 1 4x 4.
3.10
仕事
・物体を位置 x = a から位置 x = b まで力 F を加えながらゆっくり移 動させたとする.このとき,定積分 W = # b a F dx (3.50) の値を物体にした 仕事 と呼ぶ.(W は work(仕事)の頭文字.定積分に ついては (1.27) 参照) 注.物体をゆっくりと移動させるとは,物体が外部から受けている力を 打ち消して 0 にするのに必要なだけの力 F を加えながら(つまり,釣り 合いを保ちながら),物体を移動させるということである. 問.地上にある質量 m の物体を,ゆっくりと高さ h の位置まで持ち上げ た.物体になした仕事 W を求めよ.重力加速度を g とする.また,こ の仕事 W が,持ち上げた後の物体の位置エネルギーから持ち上げる前の 物体の位置エネルギーを引いたものに等しいことを確かめよ. 解.物体は重力 −mg (3.15) を受けている.これをゆっくり持ち上げるに は,逆の力 F = mg を加えることが必要.物体の最初の位置(高度)は 0,最後の位置は h であり,また mg は定数であるから, W = # h 0 F dx ((3.50) より) = # h 0 mgdx = [mgx]h0 ((1.27) の 文字 t を x に変えたものより) = mgh− mg · 0 = mgh 従って求める仕事は W = mgh.(3.32) より,物体が高さ h の位置にあ るときその位置エネルギーは mgh.また,物体が地表にあるときその位置エネルギーは mg · 0 = 0.従って,前者から後者を引いたものは mgh. これは求めた W に等しい. 問.ばね定数 k のばねに取り付けられた物体を,平衡点からゆっくりと x0 だけ変位させた.物体になした仕事 W を求めよ.また,この仕事 W が,変位させた後の物体の位置エネルギーから変位させる前の物体の位 置エネルギーを引いたものに等しいことを確かめよ. 解.物体はばねが引き戻す力 −kx (3.19) を受けている.この物体をゆっ くりと変位させるためには,逆の力 F = kx を加えることが必要.物体 の最初の位置(変位)は 0,最後の位置は x0 だから, W = # x0 0 F dx ((3.50) より) = # x0 0 kxdx = &1 2kx 2'x0 0 ((1.27) の 文字 t を x に変えたものより) = 1 2kx 2 0− 1 2k· 0 2 = 1 2kx 2 0. 従って求める仕事は W = 1 2kx 2 0.物体の変位が x0 のとき,(3.37) より物 体の位置エネルギーは 1 2kx 2 0.また,物体が変位が 0 であるとき,物体 の位置エネルギーは 1 2k· 0 2 = 0.従って,前者から後者を引いたものは 1 2kx 2 0.これは求めた W に等しい.
3.11
物体の衝突
・x 軸上を運動してい2つの硬い小球 A と B が衝突したとする.衝突 時に小球 A が小球 B から受ける力 FA と小球 B が小球 A から受ける 力 FB は,向きが逆で大きさが等しい.つまり FB =−FA. (3.51) である.これを 作用反作用の法則 と呼ぶ.衝突の前と後は小球 A も小 球 B も力を受けずに運動しているものとする.・衝突後の2つの小球の運動量の和は,衝突前の運動量の和に等しい(運 動量は (3.28) で定めた).つまり,小球 A と B の衝突前の運動量を pA, pB,衝突後の運動量を p"A, p"B とすれば, p"A+ p"B = pA+ pB が成り立つ.運動量の定義 (3.28) より,上式は mAv"A+ mBvB" = mAvA+ mBvB (3.52) と表すこともできる.ここで mA, mB は小球 A,B の質量,vA, vB は小球 A,B の衝突前の速度,v" A, vB" は小球 A,B の衝突後の速度である. ・衝突後の2つの小球の運動エネルギーの和が,衝突前の運動エネルギー の和に等しいとき(運動エネルギーは (3.29) で定めた),つまり 1 2mAv " A 2 +1 2mBv " B 2 = 1 2mAvA 2+1 2mBvB 2 (3.53) が成り立つとき,この衝突を 完全弾性衝突 と呼ぶ. 注.物体の衝突によってその運動エネルギーの一部が物体内部のエネル ギーに転化する場合 (物体の温度上昇などが起る)は,衝突は完全弾性衝 突とはならない. ・(3.52) が成り立つことを示す.いま,時刻 t における小球 A, B の速度 を vA(t), vB(t) と書き,時刻 t に小球 A, B が受けている力を FA(t), FB(t) と書く.(3.12) より,小球 A と小球 B の運動方程式はそれぞれ mA d vA(t) dt = FA(t), mB d vB(t) dt = FB(t). (3.54) である.小球 A と B の運動量の和 mAvA(t) + mBvB(t) を時間 t で微分 し,上の2つの式を用いると d dt(mAvA(t) + mBvB(t)) = mA d vA(t) dt + mB d vB(t) dt = FA(t) + FB(t) ((3.54) より) (3.55)
を得る.ここで,どの時刻 t においても FA(t) + FB(t) = 0 (3.56) が成り立っている.実際,小球 A,B が衝突している最中は,(3.51) よ り (3.56) が成り立ち,それ以外の時刻 t では小球 A, B の受けている力 FA(t), FB(t) はどちらも 0 だから,やはり (3.56) が成り立つ .(3.55) と (3.56) より d dt(mAvA(t) + mBvB(t)) = 0 この結果は小球 A,B の運動量の和 mAvA(t) + mBvB(t) が定数であり変 化しないことを示す((1.10) より).従って衝突後の小球 A と B の運動 量の和は衝突前の和と同じである.つまり (3.52) が成り立つ. 問.静止している質量 m の小球 A に,同じ質量を持つ速度 vB の小球 B が衝突した.この衝突は完全弾性衝突であった.小球 A と小球 B の 衝突後の速度を求めよ. 解.小球 A と B の衝突後の速度をそれぞれ vA",vB" で表す.問の条件 より,小球 A と小球 B の質量は m であり,また衝突前の小球 A の速度 vA は 0 である.従って (3.52) より mv"A+ mvB" = mvB. (3.57) が成り立ち,また (3.53) より 1 2mv " A 2 +1 2mv " B 2 = 1 2mv 2 B. (3.58) が成り立つ.(3.57) の両辺を m で割った式より vB = v"A+ vB" (3.59) これを (3.58) の両辺を m/2 で割った式の右辺に代入すると vA" 2+ v"B2 = (vA" + v"B)2 この式は右辺を展開した後,整理すると vA" vB" = 0
という式となる.これより vA" = 0 (3.60) と v"B= 0 (3.61) の少なくとも一方が成り立たなければならない.いま (3.60) が成り立つ としてみる.これは衝突後も小球 A が静止したままであることを意味す る.一方,(3.59) よりこの仮定 (3.60) のもとでは vB" = vB であり,小 球 B は衝突後も衝突前と同じ速度で運動していることになる.従って, 衝突後,小球 B は静止したままの小球 A を通り抜けたことになる.こ れは不可能.従って (3.60) は成り立たない.従って (3.61) の方が成り立 つことになる.つまり衝突後の小球 B の速度は 0.このとき (3.59) より v" A = vB.つまり衝突後の小球 A の速度は vB.(A と B の速度が衝突で 入れかわったことになる.)
4
ベクトルの復習
4.1
ベクトル
・ベクトル とは向きと大きさを持つ量. ・ベクトルを次図のように矢印で表す.矢印の向きはベクトルの向き,矢 印の長さはベクトルの大きさを表す.ベクトルに名前を付けるときは, "A のように上に矢印のついた記号を用いることにする. ## ## # $ " A ・ベクトル "A, "B の 和 "A + "B とは, "A, "B を2辺とする平行四辺形の 対角線で表される下図のようなベクトル.% && && &' " A " B % && && &' (((( (((( (() $$ $$ $ " A " B " A + "B 注.右端の図のベクトル "A + "B は下図のように "A と "B を繋げることで も得られる: %&& && &' (((( (((( (() " A " B " A + "B ・ベクトル "A の 定数 k 倍 k "A とは,下図のように "A の大きさを |k| 倍 し(例えば k = −2 なら | − 2| 倍,つまり2倍する),k が負のときは更 に向きを逆にしたベクトル. && && &' " A && && && &' & & & & & & &* k "A k "A k が正のとき k が負のとき ・− "A とは −1 "A のこと.従って − "A は "A と大きさが同じで向きが逆の ベクトル.差 "A− "B とは "A + (− "B) のこと. ・ "A に対し "A− "A = ( "A + (− "A)) や "A の 0 倍 0 "A を作図すると,大きさ (長さ)が 0 のベクトルとなる.大きさが 0 のベクトルを記号 "0 で表し, 零ベクトル と呼ぶ.零ベクトル "0 を表す矢は長さが 0 であるからその向 きは重要ではない. ・ベクトル "A の大きさ,つまりベクトル "A を表す矢印の長さを,記号 | "A| で表す.ベクトル "A の大きさを,上の矢印を取り除いた A で表すこ ともある.
・ベクトル "A と "B の 内積 "A· "B を " A· "B =| "A|| "B| cos θ (4.1) により定める.ここで θ はベクトル "A と "B のなす角.つまり下図の角 θ. % && && &' " A " B θ ・ベクトル "A と "B が直交しているときは "A· "B = 0 となる.実際,こ のとき θ = 90◦ だから cos θ = 0.従って (4.1) の右辺は 0 となる. 問. "A の大きさが 2, "B の大きさが 3, "A と "B のなす角が 2π 3 のとき, 内積 "A· "B を求めよ. 解. " A· "B = 2× 3 × cos2π 3 ((4.1) より) = 6× (−1 2) (cos 2π 3 = cos 120 ◦ =−1 2より) = −3. ・ベクトル "A の大きさ | "A| は,内積を用いて | "A| = . " A· "A (4.2) と表せる.実際, "A が "A 自身となす角は 0 であるから, " A· "A = | "A|| "A| cos 0 ((4.1) より) = | "A|2 (cos 0 = 1 より). これより (4.2) を得る.
4.2
ベクトルの成分
・以下では平面上にあるベクトルを考える.この平面上に xy 座標をと る. ・ベクトル "A を, "A を表す矢を下図のように座標原点から書いたときの 矢の先端の x 座標 Ax,y 座標 Ay を用いて, " A = ! Ax Ay " . (4.3) と表す.Ax, Ay をそれぞれベクトル "A の x 成分,y 成分 と呼ぶ.ベク トルを (4.3) のように表すことを,ベクトルの 成分表示 という. ! " ++ ++ ++, ++ ++ ++, x y " A Ax Ay ・零ベクトル "0 とは大きさが 0 のベクトルのことであった.これは "0 = ! 0 0 " (4.4) と表せる.実際,上図で "A が "0 の場合,矢印の長さは 0.従って上図右 の座標 Ax も座標 Ay も 0 となる. 例.下図のベクトル "A は,これを表す矢を座標原点から書いたとき,そ の先端の x 座標が −2,y 座標が 3 となる.従って "A = ! −2 3 " である.! " -. -. x y " A −2 3 ・ベクトル "A, "B が " A = ! Ax Ay " , B =" ! Bx By " と表されるとき, " A + "B = ! Ax+ Bx Ay+ By " (4.5) k "A = ! kAx kAy " (k が定数のとき) (4.6) となる.言い換えれば ! Ax Ay " + ! Bx By " = ! Ax+ Bx Ay + By " , (4.7) k ! Ax Ay " = ! kAx kAy " (4.8) 問. "A = ! 5 3 " , "B = ! 4 −1 " のとき,2 "A− 3 "B を求めよ. 解. 2 "A− 3 "B = 2 ! 5 3 " − 3 ! 4 −1 " = ! 10 6 " + ! −12 3 " ((4.8) より) = ! −2 9 " . ((4.7) より)
注.(4.5) は下の左のような図を書けば確かめられる.矢 "A の先端の x 座標は Ax,矢 "B の先端の x 座標は Bx である.矢 "A と矢 "B から平 行四辺形の規則に従って作図した矢 "A + "B の先端の x 座標は Ax+ Bx であることがわかる.また y 座標についても同様なことが確かめられる. (4.6) は下右のような図(これは k > 0 の場合の図)を書けば確かめられ る.矢 "A の先端の x 座標は Ax である.矢 "A からベクトルの定数倍の 規則に従って作図した矢 k "A の先端の x 座標は kAx とであることがわか る.また y 座標についても同様なことが確かめられる. ! " ////// ///0 && && &&' 11 11 11 11 11 1 2 &&&&&& &&& $$ $$ $$ x y " A Ax Ay " B Bx By " A + "B Ax+ Bx Ay+ By 0 ! " ++ +++, ++ ++ ++ + , x y " A Ax Ay k "A kAx kAy ・(4.5),(4.6) と (4.4) より " A + "0 = ! Ax+ 0 Ay+ 0 " = ! Ax Ay " , k"0 = ! k× 0 k× 0 " = ! 0 0 " . つまり " A + "0 = "A, k"0 = "0 (4.9) が成り立つ. ・ベクトル "A, "B が " A = ! Ax Ay " " B = ! Bx By " と成分で表されているとき, "A の大きさ| "A| と, "A, "B の内積 "A· "B は 次のように表せる: | "A| =.A2 x+ A2y , (4.10)
" A· "B = AxBx+ AyBy (4.11) と表せる.言い換えれば / / / / / ! Ax Ay "/// / /= . A2 x+ A2y , (4.12) ! Ax Ay " · ! Bx By. " = AxBx+ AyBy (4.13) (4.10) と (4.11) からも (4.2) が得られる. 問. "A = ! 4 −3 " , "B = ! 2 5 " のとき,| "A| と "A· "B を求めよ. 解. | "A| = .42+ (−3)2 ((4.10) より) = √25 = 5, " A· "B = 4× 2 + (−3) × 5 ((4.11) より) = −7. 注.(4.10) は次左図を用いて次のように確かめられる: | "A| = ベクトル "A を表す矢印の長さ = .A2 x+ A2y ! 図の矢印の長さをピタゴラス の定理を使 っ て求めた " . ! " ++ ++ ++, x y " A Ax Ay ! " ////// ///0 && && &&' x y " A Ax Ay " B Bx By θ (4.11) は次のようにして確かめられる.上右図の "A と "B のなす角を θ, " A と x 軸のなす角を θA, "B と x 軸のなす角を θB とすると, " A· "B = | "A|| "B| cos θ ((4.1) より)
= | "A|| "B| cos(θB− θA) (θ = θB− θAより)
= | "A|| "B|(cos θBcos θA+ sin θBsin θA)
(cos(x− y) = cos x cos y + sin x sin y より) = | "A|| "B| ! Bx | "B| Ax | "A| + By | "B| Ay | "A| " cos θB = Bx/| "B|, cos θA= Ax/| "A|, sin θB = By/| "B|, sin θA= Ay/| "A| より = AxBx+ AyBy. ・ベクトルの内積は次のように通常の数の積と似た性質を持つ: " A· "B = "B· "A (4.14) ( "A + "B)· "C = "A· "C + "B · "C (4.15) " A· ( "B + "C) = "A· "B + "A· "C (4.16) (k "A)· "B = k( "A· "B) (4.17) " A· (k "B) = k( "A· "B) (4.18) 問.内積が上の性質を持つことを,ベクトルの成分表示を利用して示せ. 解.ベクトル "A, "B, "C を " A = ! Ax Ay " , B =" ! Bx By " , C =" ! Cx Cy " と成分で表す.このとき " A· "B = AxBx+ AyBy ((4.11) より) = BxAx+ ByAy = "B· "A ((4.11) より) となり,(4.14) を得る.また " A + "B = ! Ax+ Bx Ay+ By " ,
であるから ( "A + "B)· "C = (Ax+ Bx)Cx+ (Ay+ By)Cy ((4.11) より) = AxCx+ AyCy + BxCx+ ByCy = A"· "C + "B· "C ((4.11) より) となり,(4.15) を得る.(4.14) と (4.15) を利用すると " A· ( "B + "C) = ( "B + "C)· "A ((4.14) より) = "B · "A + "C· "A ((4.15) より) = A"· "B + "A· "C ((4.14) より) となり,(4.16) を得る.また k "A = ! kAx kAy " であるから, (k "A)· "B = (kAx)Bx+ (kAy)By ((4.11) より) = k(AxBy + AyBy) = k( "A· "B) ((4.11) より) となり,(4.17) を得る.(4.14) と (4.17) を利用すると " A· (k "B) = (k "B)· "A ((4.14) より) = k( "B· "A) ((4.17) より) = k( "A· "B) ((4.14) より) となり,(4.18) を得る. ・ベクトルの大きさは次のように数の絶対値と似た性質を持つ: |k "A| = |k|| "A| (4.19) | "A + "B| ≤ | "A| + | "B| (4.20) ここで (4.19) 右辺の |k| は定数 k の絶対値である.
問.(4.19) が成り立つことを,ベクトルの成分表示を利用して示せ. 解.ベクトル "A を " A = ! Ax Ay " と成分で表すと k "A = ! kAx kAy " であるから, |k "A| = .(kAx)2+ (kAy)2 ((4.10) より) = .k2(A2 x+ A2y) = √ k2.A2 x+ A2y = |k|.A2 x+ A2y (|k| = √ k2より) = |k||| "A| ((4.10) より).
5
ベクトルの微分
・以下では成分が変数 t の関数であるようなベクトルを考える.例え ば ! cos t sin t " はそのようなベクトルである. ・ベクトルを微分するということは,その成分を微分するということで ある.つまり, " A = ! Ax Ay " のとき d "A dt = dAx dt dAy dt . 言い換えれば d dt ! Ax Ay " = dAx dt dAy dt . (5.1)ベクトルを2回微分するということは,その成分を2回微分するという こにとなる.つまり d2 dt2 ! Ax Ay " = d2A x dt2 d2A y dt2 . (5.2) 問. "A = ! t2 sin t " のとき,d2A" dt2 を求めよ. 解. d2A" dt2 = d2 dt2 ! t2 sin t " = d2t2 dt2 d sin t dt ((5.1) より) = ! 2 − sin t " . ・(1.10) に記したように,微分すると 0 となる関数は定数である.同様 に,微分すると零ベクトル "0 となるベクトルは,成分が定数のベクトル である.つまり d "A dt = "0 ⇒ A のどの成分も定数" (5.3) 言い換えれば d dt ! Ax Ay " = ! 0 0 " ⇒ ! Ax Ay " = ! C1 C2 " (C1, C2は定数) が成り立つ.実際,上の左側の式は (5.1) より dAx dt dAy dt = ! 0 0 " と書き直せるが,これは2つの式 dAx dt = 0, dAy dt = 0 をまとめて書いたものに他ならない.これらの式から Ax = C1, Ax = C2 (C1, C2 は定数)を得る(((1.10) より).
6
平面上を運動する物体
6.1
位置,速度,加速度
・ここでは平面上を運動する物体を考える.この平面上に下図のよう に xy 座標をとる.物体の位置の x 座標と y 座標をそれぞれ x,y で表 す. ! " ' 33 33 334 x y x y "r 物体 ・上図に示したような,座標原点から物体の位置へのベクトル "r を,物 体の 位置ベクトル,あるいは簡単に物体の 位置 という.ベクトルの成分 の定め方 (4.3) より,位置 "r は "r = ! x y " と表せる.物体の位置 "r は,物体の座標 (x, y) を縦に書いたものに他な らない. ・物体が運動していれば,物体の位置 "r は時間 t の関数となる.例えば物体 の座標が x = cos t,y = sin t と表されるとき,物体の位置は "r =! cos t sin t " という t の関数となる. ・物体の速度 "v とは,物体の位置 "r を時間 t で微分したもの.つまり "v = d"r dt (6.1) (ベクトルの微分については前節を見よ.) ・物体の 速さ とは,物体の速度 "v の大きさ |"v| のこと.
・物体の加速度 "a とは,物体の速度 "v を時間 t で微分したもの.つまり "a = d"v dt (6.2) 問.物体の位置が "r = ! 1− cos t sin 3t " と表されるとき,物体の速度 "v と加 速度 "a を求めよ.また物体の速さ |"v| を求めよ. 解. "v = d"r dt ((6.1) より) = d dt ! 1− cos t sin 3t " = d dt(1− cos t) d sin 3t dt ((5.1) より) = ! sin t 3 cos 3t " , (6.3) "a = d"v dt ((6.2) より) = d dt ! sin t 3 cos 3t " ((6.3) より) = d sin t dt d 3 cos 3t dt ((5.1) より) = ! cos t −9 sin 3t " . また,物体の速さ |v| は |v| = .(sin t)2+ (3 cos 3t)2 ((6.3), (4.10) より) = . sin2t + 9 cos23t.
・物体の位置の微分は速度,速度の微分は加速度だから,加速度は物体 の位置 "r を2回微分したもの. つまり物体の加速度 "a は次のようにも表 せる: "a = d 2"r dt2 (6.4) 問.物体の位置が "r = ! t + 1 t3+ 1 " と表されるとき,物体の加速度 a を求 めよ. 解. "a = d 2"r dt2 ((6.4) より) = d 2 dt2 ! t + 1 t3+ 1 " = d2(t + 1) dt2 d2(t3+ 1) dt2 ((5.2) より) = ! 0 6t " . 注.物体の位置 "r,速度 "v,加速度 "a の関係は下図のように表現できる. 矢 "v の方向と長さは,矢 "r の先端(つまり物体の位置)が進む方向と進 む速さを表す.同様に,矢 "a の方向と大きさは,矢 "v の先端が進む方向 と進む速さを示す.つまり,加速度 "a は速度 "v がどのように変化しつつ あるかを表す. ! " ' 11 1112 5 5 56 7 7 8 x y "r "v "a 物体
6.2
運動方程式
・平面上を運動する物体が受けている力は,下図のように平面上のベクト ル "F で表される.物体がいくつかの力 "F1, "F2, "F3, . . . を受けているなら,物 体の受けている正味の力(合力)"F はこれらの力の和 "F = "F1+ "F2+ "F3+· · · となる. ' 7 7 7 7 8 " F 物体 ・平面上を運動する物体に対するニュートンの運動方程式は m"a = "F (6.5) ここで m は物体の質量,"a は物体の加速度, "F は物体の受けている力. ・(6.4) より,運動方程式 (6.5) は次のようにも表せる. md 2"r dt2 = "F (6.6) ここで "r は物体の位置. ・(6.1) より,運動方程式 (6.5) は次のようにも表せる. md"v dt = "F (6.7) ここで "v は物体の速度. 注.(6.5) より,力 "F を受けた物体には加速度 "a = 1 mF が生じる.この" 加速度 "a は,下図のように物体の速度 "v の矢の先端を力 "F と同じ方向 に動かそうとする.つまり,物体の速度の方向を力の方向へ向けようと する.! " ' 5 5 56 7 7 8 7 7 7 7 8 x y "v "a = m1F" " F 物体
6.3
力を受けずに運動する物体
・物体が力を受けていない場合,言い換えれば,物体の受けている力 " F が " F = "0 (6.8) である場合を考える.ここで "0 は零ベクトル "0 = ! 0 0 " . 注.(6.8) を "F = 0(数の 0)と書くことはできない.実際, "F = 0 と書 くと,左辺はベクトル,右辺は数であるから,決して成り立たない式と なる(複数の成分を持つベクトルが通常の数に等しくなることはない). ・物体が力を受けていない場合,(6.7) と式 (6.8) より物体の運動方程式 は次のように表せる: md "v dt = "0. この両辺に 1/m を掛ければ((4.9) より右辺は 1/m 倍してもやはり "0 ) d "v dt = "0. となる.従って (5.3) より "v の各成分は定数であり,"v は時間が経過して も変わらない.つまり,力を受けていない物体の速度 "v は方向も大きさ も常に一定である. ・逆に,物体の速度 "v が方向も大きさも変えず常に一定であるときは, 物体は力を受けていない.実際,"v が一定ならその成分も一定でだから,"v = ! C1 C2 " (C1, C2 は定数)と表せる.このとき " F = md"v dt ((6.7) より) = md dt ! C1 C2 " = m d C1 dt d C2 dt ((5.1) より). = m ! 0 0 " = ! 0 0 " = "0.
6.4
等速円運動をする物体
・半径 r の円の周上を一定の速さで運動している質量 m の物体 A を 考える.下図のように,この円の中心を座標原点にとる. ! " '''' ''' ! 9 9 9: x y r cos ωt r sin ωt r "v ωt 半径 r の円の周 円の中心 物体 A ・ 物体 A は時刻 t = 0 に x 軸を横切ったとする.座標原点と物体を結 ぶ直線と x 軸がなす角は時間 t に比例して増大していくから,この角度 を図中のように ωt(ω は比例定数)と書いた.この比例定数 ω は物体 A の円運動の 角速度 と呼ばれる.(距離割る時間を速さと呼ぶのと同様に, 角度割る時間 = ωt/t = ω には角速度という名前がく).・図より物体 A の x 座標は r cos ωt,y 座標は r sin ωt. 従って,物体 A の位置ベクトル "r は次のように表せる: "r = ! r cos ωt r sin ωt " . (6.9)
・物体 A の速度 "v と加速度 "a は次のように表せる: "v = ! −rω sin ωt rω cos ωt " , (6.10) "a = ! −rω2cos ωt −rω2sin ωt " . (6.11) 問.(6.9) から (6.10) と (6.11) を導け. 解. "v = d "r dt ((6.1) より) = d dt ! r cos ωt r sin ωt " ((6.9) より) = d r cos ωt dt d r sin ωt dt ((5.1) より) = ! −rω sin ωt rω cos ωt " ((1.5), (1.4) より), "a = d "v dt ((6.2) より) = d dt ! −rω sin ωt rω cos ωt " (上で示した (6.10) より) = d (−rω sin ωt) dt d rω cos ωt dt ((5.1) より) = ! −rω2cos ωt −rω2sin ωt " ((1.4), (1.5) より). ・物体 A が等速円運動を続けるのは,ある力を受けているからである. 運動方程式 (6.5) を利用して物体 A の受けている力 "F を求めると " F = m"a ((6.5) より)
= m ! −rω2cos ωt −rω2sin ωt " ((6.11) より) = −mω2 ! r cos ωt r sin ωt " ((4.8) より) となる.この最後の ! r cos ωt r sin ωt " は (6.9) に記した物体の位置ベクトル "r に他ならない.従って上の結果は " F =−mω2"r (6.12) と表せる. ・物体 A の位置ベクトル "r は,物体 A の円軌道の円の中心にとった座 標原点から物体 A へ向かうベクトルである.物体 A の受けている力 "F は,(6.12) のようにこの "r を負の定数 −mω2 倍したものであるから,"r と逆の向きを持つ.従って,力 "F は物体 A からその円軌道の円の中心 への向きを持つ.物体 A の受けているこの力 "F を 向心力 と呼ぶ. ・物体 A が受けている向心力 (6.12) の大きさ | "F| は,物体 A の円軌道 の半径 r を用いて | "F| = mω2r (6.13) と表せる. 問.(6.13) を示せ. 解. | "F| = ///−mω2"r// / ((6.12) より) = | − mω2||"r| ((4.19) より) = mω2.(r cos ωt)2+ (r sin ωt)2 ((6.9) と (4.12) より) = mω2r . cos2ωt + sin2ωt = mω2r· 1 = mω2r. ・いま物体 A の速さを v で表す.速さ v とは速度 "v の大きさ |"v| のこと
であるから,(6.10) より v = |"v| = .(−rω sin ωt)2+ (rω cos ωt)2 ((6.10), (4.10) より) = .r2ω2(sin2ωt + cos2ωt) = rω . sin2ωt + cos2ωt = rω· 1 = rω を得る.これより ω = v r. (6.14) 向心力の大きさを表す式 (6.13) を上式を用いて書き換えると, | "F| = mv 2 r となる.これは物体 A の受けている向心力の大きさを,物体 A の速さ v を用いて表す式である. 注.(6.14) は次のようにしても得られる.物体 A は時間 t の間に円軌道 に沿って r × ωt の長さだけ動く(本 6.4 節始めの図参照).この移動し た長さ rωt を移動時間 t で割ったものが物体 A の速さ v である.つまり v = rωt t = rω これより (6.14) を得る.
6.5
運動量とエネルギー
・平面上(xy 平面上)を運動する物体を考える.物体の運動量 "p を "p = m"v (6.15)により定める.ここで m は物体の質量,"v は物体の速度である.運動量 "p と速度 "v を "p = ! px py " , "v = ! vx vy " (6.16) のように成分で表せば,(6.15) は ! px py " = m ! vx vy " と表せる.これは2つの式 px = mvx, py = mvy をまとめて表したものに他ならない. ・物体が力を受けていない場合,物体の運動量 "p は一定で変化しない.実 際,物体の受けている力 "F が "0 なら d"p dt = m d"v dt ((3.28) より) = "F (物体の運動方程式 (6.7) より) = "0 (仮定 "F = "0 より). となる.(5.3) より,上の結果は "p の成分が定数であり,従って "p は常に 一定であることを示している. ・物体の 運動エネルギー T を T = 1 2mv 2 (v2 = "v · "v) (6.17) で定める.ここで m は物体の質量,"v は物体の速度であり,内積 "v · "v を 簡単に v2 と書いた. 問.物体の質量が m であり,その速度 "v が "v = ! 2t 1− t2 "