(1)災害に強いまちづくりの検討
「災害に強いまちづくり」を計画・整備していくためには、まず、その必要性を明確にす ることが重要です。次に、「まち全体」の現状把握・分析を行い、防災・減災上の課題を抽 出し、重点的に対応すべき事項を有する地域(以下「対象地域」という。)を選定します。
「対象地域」の現状・課題を把握するには、2つの方法が必要と考えます。1つは「関係 者ヒアリングや資料・現地調査等の既存の情報を分析することで現状を認識し、課題を抽出 する方法」です。もう1つは「発災後から 1 ヶ月程度の期間に起こり得る状況を想定(被災 シナリオの作成)し、課題を抽出する方法(時間軸での備えに関する検討)」です。
2つの方法は、「既存の情報」及び「発災時を想定」することでまちの現状や課題を把握 するもので、2つの方法を同時に行うことで、災害に強いまちづくりを進める上で不足する 考え方や具体的な施策等が漏れなく、より鮮明に見えてくると考えます。
これらの方法により、地域や災害の特性を踏まえた「対象地域」の現状・課題を把握し、
課題を集約します。その後、災害に強いまちづくりを行うための基本方針及び基本施策を決 定し、具体的な「災害に強いまちづくり計画」を策定・実施することとなります。
災害に強いまちづくりの検討フロー
(2)災害に強いまちづくりの必要性の明確化
「災害に強いまちづくり」に取組むためには、「災害に強いまちづくり」を行う必要性を 明確にしておくことが重要です。必要性を明確にしておかなければ、まちづくりの検討中で 利害が対立した場合に、利害関係者からの協力を得られなくなるおそれ等が生じます。
【着眼点・留意点】
①住民の行動や災害発生のシナリオを想定しながら必要な対策を検討する
・災害発生のシナリオを想定する際には、地震・津波が突発的に起きる災害であるのに対 し、水害・土砂災害は気象情報等によって危険性が高まっていることが想定できるとい った違いを認識しておくことが重要です。特に、地震・津波を対象とした場合は、災害 が発生してから速やかな避難行動を行うことになりますが、水害・土砂災害を対象とし た場合、災害が発生する時点では、避難を完了している状態にあることをめざしていく 必要があります。
・地震・津波災害の際には、被災者は、災害の発生前又は発災時には一時的に避難場所へ 逃げ、危険な状況が去った後に一定の期間避難生活を送る避難所に移動し、その後応急 仮設住宅や災害公営住宅で居住するということが一般的に考えられます。
・命を守ることを考えれば、避難場所の計画や整備も重要ですが、時間軸の検討における 視点でみると、避難所についても滞在が長期に及びますので、生活環境の確保や支援受 入等、色々な視点から十分検討の上、計画や整備を進めていく必要があります。
・また、災害発生後に必要となる応急仮設住宅の建設地や災害廃棄物仮置き場等の場所を 事前に決めておき、その用地を確保しておくことは、速やかな復旧・復興に役立ちます。
・このように、まず被災状況(被災シナリオ)を想定したうえで、時間とともに変化する 避難者の状況やニーズ、必要となる対応等を検討することが必要です。
四国地方は、長い海岸線、急峻な地形等を有し、過去に多くの災害を受けています。
近い将来、南海トラフの巨大地震・津波の発生が予測されるとともに、多発する水害・
土砂災害に備えるために、災害に強いまちづくりが急がれます。
たは見直し時において、「災害に強いまちづくり」を進めていくための検討は欠かせま せん。その検討結果は「災害に強いまちづくり」を進める上で有効です。
・また、逆に「災害に強いまちづくり」の検討の中で出てきた土地利用等の方策を、上位 計画に反映させることも必要です。
③多くの主体が参画して検討する
・まちづくりを進めるためには、生活基盤や産業振興、保健・医療・福祉などの様々な視 点が必要となります。南海トラフの巨大地震等の大規模災害の発生を考慮すると、「災 害に強いまちづくり」を行うために、計画段階から多くの住民の参画を促し、様々な主 体が「災害に強いまちづくり」を考える場を設ける必要があります。
・また、様々な機会を通して、住民の防災意識の高揚につなげていくことも重要です。
④総合的な「まちづくり」の中で考える
・「災害に強いまちづくり」には、限られた地域や単発的な施策の導入といった局所的な 対応ではなく、まち全体や複数の施策の連携等、総合的な対応が必要となります。
・また、災害発生後の復旧・復興を想定した場合、国や県、自衛隊等の支援拠点(広域防 災拠点)は、道路啓開がどこから、どのように進むかでその場所を検討することとなり ます。
・このように、総合的なまちづくりは、市町村の多様な部局間の横断的な取組みとして、
また、市町村単独で行うのではなく、国や県等と情報共有を図り、計画・実施する必要 があります。
・「災害に強いまちづくり」は、短期・中期施策の実施ばかりでなく、50 年、100 年先を 見据えたまちづくりでもあります。
⑤事前復興計画を検討する
・東日本大震災の教訓の中に、大規模災害の被災の可能性がある地域では、被災から速や かな復旧・復興を行うため、被災することを前提とした復興後のまちづくりを事前に検 討しておくことの重要性が示されました。
・四国地方においても、応急仮設住宅の建設地や災害廃棄物の仮置き場等の用地選定をは じめ、その後の早期の復興をめざす「新たなまちの姿」を検討する「事前復興計画」の 検討が有効です。
・その際、新たなまちへの復興とは、現在考えられている防災面を考慮したまちの将来像 の具現化であり、上位計画との整合、上位計画への反映、住民参加による策定等が必要
(3)まち全体の現状把握、分析、課題抽出
「災害に強いまちづくり」を行うためには、地方公共団体職員がまちの状況をよく知って おくことが重要です。現状把握のために必要なデータの一例を下記に示しますが、関係者へ の確認や現地調査等を通じて、状況を確実に把握しておくことが重要です。
「まち全体」の現状把握・分析により、課題を抽出することで、災害に強いまちづくりを 検討していく「対象地域」を見つけ出します。
◆現状把握のために必要なデータ(例)
・人口(総人口、年齢階層別人口、世帯数、高齢者数等)→国勢調査、住民基本台帳
・将来人口(総人口、年齢階層別人口、世帯数、高齢者数等)→国立社会保障・人口問題研 究所資料
・地形・地質→主題図(国土交通省国土地理院)、地質図(独立行政法人産業技術総合研究 所)
・まちの歴史(なりたち)→市町村史
・産業→農林業センサス、経済センサス
・土地利用(将来像、市街化区域、土地利用規制)→総合計画、土地利用計画、都市計画マ スタープラン、都市計画図、農業振興地域
・各種施設(福祉施設、土木構造物、ライフライン等)→全図、国土基本図、都市計画総括 図、その他地方公共団体所有資料
・道路交通→道路交通センサス、道路整備状況(地方公共団体所有)
・まちの防災・減災対策→地域防災計画、BCP(事業継続計画)、津波避難計画、避難場 所・避難所一覧、その他防災活動拠点配置関係資料
・防災体制・消防団情報→地方公共団体地域防災計画、地方公共団体所有資料
社会情勢の変化の中で、「まち全体」の現状・課題を把握し、地方公共団体職員がま ちの状況をよく知っておくことが重要です。「まち全体」の現状把握・分析により、課 題を抽出し、重点的に対応すべき事項を有する「対象地域」を見つけ出します。
【着眼点・留意点】
①まちの現状と社会情勢の把握
・まちを取り巻く社会情勢は、人口減少や少子高齢化、南海トラフの巨大地震や大型化す る台風等の発生、厳しい財政事情及びICT(情報通信技術)の進歩等により大きく変化 しています。したがって、まち全体の現状を正確に把握することが重要です。
・まち全体の現状を把握するため、「四国地震防災基本戦略」に示される東日本大震災よ り学ぶべきこと等を踏まえ、きめ細かな調査(高台、住宅、避難場所・避難所、備蓄場 所、避難経路、危険箇所の状況等)が必要です。
・まち全体の現状は、各種のデータ整理だけにとどまらず、職員や住民の声等からも把握 することが重要です。必要に応じて、現地調査や関係者ヒアリングを実施することも有 効です。
②災害履歴の把握
・地震は繰り返し発生する特性を有しており、津波による浸水や水害・土砂災害等の災害 履歴を知っておくことが非常に重要です。
・地元の古老は災害に関する実体験を有しているため、古老に話を聞き、記録を保存して おくことは、意識啓発に役立ちます。また、小中学生等がインタビュアになれば、防災 学習や郷土学習にもつながります。
・災害履歴は、地方公共団体等が保有している古文書や市町村史に記述されている事例が 多く見られ、その記録は、地域防災計画等において確認することができます。