第 4 章 一過性高強度運動によるリンパ球減少に対する酸化ストレス及びリン
4.1. 一過性高強度運動によるリンパ球減少に対する酸化ストレスの関与
4.1.2. 方法
4.1.2.1. 対象
対象者は,喫煙・服薬及び運動習慣のない若年健常男性15 名[年齢 23.7±
1.5 歳,身長 171.8±6.2 cm,体重 67.3±5.8 kg,体脂肪率 15.4±2.9 % (平均 値±標準偏差)]とした.対象者には測定前日から測定終了までアルコール・
カフェインの摂取及び激しい運動を控えるように指示した.対象者に対して,
事前に実験の趣旨,実験方法,起こりうる危険性及び参加の任意性について十 分説明し,文書による参加の同意を得た.本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に従 い,且つ筑波大学大学院人間総合科学研究科研究倫理委員会の承認を得て実施
28 した.
4.1.2.2. 実験デザイン
4.1.2.2.1. 運動負荷
4.1.2.2.1.a. 最大運動負荷テスト
本研究において用いた最大運動負荷テストの測定プロトコルは以下の通りで ある.本テストは個々の酸素摂取量を相対的に決定するために実験1-1及び実験 1-2において行った.全ての対象者は自転車エルゴメータ(232CXL,コンビウ ェルネス,東京)を用いた負荷運動によって最大酸素摂取量(maximal oxygen uptake: V
.
O2max)を測定した.エルゴメータに座り,2 分間の安静後に60 Wから
100 Wの負荷(20 W/分のランプ負荷)で各1 分毎の3 分間のウォーミングアッ
プを行い,その後,疲労困憊に至るまで30 W/2 分のランプ負荷運動を行った.
テスト終了条件は①呼気ガス分析装置(AE200S,ミナト医科学,大阪)により モニターされた酸素摂取量(V.
O2)がプラトーに達した時点,②ガス交換比が 1.10を上回った時点,③心拍数が予測最大心拍数(220-年齢)を超えた時点の うち,いずれか2つに該当した時点とした.ランプ負荷運動中のV
.
O2を呼気ガ
ス分析装置を用いて一呼吸毎に測定し,それらの30 秒毎の平均値よりV
. O2max を求めた.
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4.1.2.2.1.b. 定常運動負荷テスト
定常運動負荷テストは,最大運動負荷テストの実施日から少なくとも4 日間 以上の間隔をあけて実施した.各被験者の50 % V
.
O2max の強度で1 分間のウォ ーミングアップを行い,引き続き75 % V
.
O2max の強度で59 分間の自転車ペダリ ング運動を行った.強度を75 % V
.
O2max に維持するため,運動中にV
.
O2をモニ ターし,適宜運動強度を調節した.
4.1.2.2.2. 血液採取とサンプル調整
血液サンプルは定常運動負荷前の安静時(PRE),運動直後(P0),運動終了
後1,2,3及び4時間後(P1-P4)(合計6 回)に翼状採血針を用いて肘前静脈
より15 ml/回,合計90 ml採取した.対象者には定常運動負荷テスト前日の24 時
からテスト当日の運動終了4 時間後までミネラルウォーター以外の飲食を控え るように指示した.ただし運動直後と運動終了1 時間後の採血間に,全ての被 験者に対して抗酸化作用の無い内容の同種・同量の軽食を摂取させた.全ての 血液採取は7 時から15 時の間に行った.
血清分離は採取した血液を3000 rpm(4 ゜C)で15 分間遠心分離し,得られ た血清を使用して過酸化脂質(lipid peroxide: LPO),コルチゾールの血中濃度 を測定した.
リンパ球分離には採血した血液と等量のリン酸バッファー(phosphate buffered
saline: PBS)溶液の混和溶液を1:2の割合で加え,リンパ球分離液(Ficoll-Paque,
Pharmacia Biothch,Uppsala,Sweden)に静かに重層し,遠心分離(3000 rpm,
30
30 分,20 ゜C)した.単核球層を回収しPBS溶液で2 回洗浄した後,さらに 遠心分離(3000 rpm,30 分,20 ゜C)した.生じたペレットにセルバンカー(十 慈フィールド株式会社,東京)を加え,ピペッティングして細胞を浮遊させた 後,クライオチューブに細胞浮遊液を分注し,これをリンパ球サンプルとした.
このサンプルはDNA損傷検出に使用するまで-80 ゜Cで凍結保存された.
4.1.2.3. 測定項目
4.1.2.3.1. リンパ球数
リンパ球数の測定は,2 mlの血液を(株)三菱化学メディエンスに依頼し,
多項目血球分析装置(Sysmex SE-9000, Sysmex, 兵庫)を用いて行った.白血球 分画には鏡検法を用い,リンパ球数は白血球数と白血球分画の積により算出し た.
4.1.2.3.2. 酸化的DNA損傷
リンパ球の酸化的DNA 損傷を検出するためにSCGEを行った.なお,本測 定はhOGG1 FLARE Assay Kit(Trevigen, Gaithersburg, U.S.A.)のプロトコル (109) に準じた.
凍結保存されたリンパ球サンプルを37 ゜C で解凍し,これに高栄養液体培地 であるRPMI1640(Invitrogen Corporation,California,U.S.A.)1 mlを加え,遠心 分離(3000 rpm,30 分,20 ゜C)後,上清を取り除いたものにPBS溶液を加え,
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リンパ球細胞浮遊液とした.37 ゜Cに温めた低融点アガロース(1 % low melting point agarose: LMAgarose,1×PBS)100 µl をリンパ球細胞浮遊液1 µl と混和さ
せ,うち75 µl をFLARE スライド上に満遍なく広げた.スライドにサンプルが
接着するまで4 ゜Cで一晩保存した後,スライドを冷却した4 ゜C のlysis solution(2.5 M sodium chloride,100 mM EDTA pH 10,10 mM tris base,1%
sodiumlauryl sarcosinate,1 % TritonX-100)に30 分間浸漬し,細胞溶解を行った.
スライドについた余分な溶液を拭き取った後,室温のFLARE buffer(10 mM
HEPES-KOH pH7.4,10 mM EDTA,0.1 M KCl)にスライドを浸し,hOGG1酵素
液を各サンプルエリアに100 µlを加え,37 ゜Cで60 分間高湿度の環境下で反 応させた.続いて,スライドをpH 12.1のアルカリ溶液(500 mM EDTA pH 8.0,
3 M NaCl)に浸し,室温で暗所に置き30 分間反応させた.次にpH 12.1 のアル
カリ溶液で満たした水平型電気泳動槽にスライドを移し,室温で電気泳動を行 った(30 V,30 分間).泳動後は余分な溶液を取り除いて70 %エタノールに5 分間浸し,中和させた.スライドに蛍光色素であるSYBR GreenⅠ(励起光/発光
494 /521 nm)を50 µlを加えて染色した後,蛍光顕微鏡でスライドを観察した.
蛍光顕微鏡で観察した画像を,1 サンプルにつき最低75 個,CCDカメラでコ ンピューターに取り込み,画像解析ソフト(コメットアナライザver 1.5,ユー ワークス社,茨城)で解析し,% DNA in tailを算出した.本実験で使用した指 標の定義は第3章でFigure 2.に示し,得られた画像例をFigure 3.に示した.
32 (A)
(B)
Figure 3. (A) (ormal lymphocyte, and (B) D(A-damaged lymphocyte.
33
4.1.2.3.3. 血清マーカーの測定
血清中のLPO濃度をヘモグロビンメチレンブルー法 (74)によるLPOキット
(協和メディックス社)で測定した.LPOは生体細胞膜などを構成する高度不 飽和脂肪酸がROSによって過酸化されることによって生じる物質であり,本研 究では酸化ストレスの指標の1 つとして用いた.
また,血清中のコルチゾール濃度を放射性免疫測定法 (100)により測定した.
本研究では,コルチゾールをストレスホルモン及びアポトーシス誘因物質とし て測定した.
血液サンプルから測定されたLPOとコルチゾールの運動後のデータは,全て 運動後の血清量の変化率で補正した値とした.なお,この補正にはDillらの方 法 (20)を用いた.
4.1.2.4. 統計処理
全ての統計量は平均値±標準偏差で示した.運動前後の変数の比較には反復 測定の一元配置分散分析を行い,有意水準はP< 0.05を用いた.Post-hocテスト
にはBonferoni/Dunn法の検定を用い,有意水準はP< 0.0033とした.全ての統計
処理には,統計解析ソフトウェアStatView5.0日本語版(SAS Institute Inc,North
Carolina,U.S.A.)を用いた.またP値が0.1 未満で有意な差を示さなかったも
のについては効果の大きさを検討するためにCohenのD値 (10)を用いた.
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