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清浄な標的の作成

第 5 章 実験セットアップ 29

5.8 清浄な標的の作成

本研究で用いた標的は粒状(ニラコ製)で、純度は99.99%である。これを標的フォルダー

(15mmϕ×3.5mm)に入れ、カートリッジヒーターで溶かすことによって液体標的が得られる。

液体標的の場合、表面の状態が特に重要となる。In中でのD+ の飛程は、Ed = 20keV で約

5.8. 清浄な標的の作成 41

0.12µmであり、表面に不純物などが浮かんでいる状態では、固体中と類似したDD反応となっ

てしまう。従って清浄な表面の標的を作ることは非常に重要である。

Inは水素と化合物を形成しない。従って、一度不純物を除去すると長時間の測定が可能にな るが、残留ガスによる酸化、または、In中やターゲットフォルダーの表面に存在する不純物な どによりInは少しずつ汚染されていく。その際、汚染が軽微な状態では、超音波照射中は汚れ がIn表面に集まり、超音波照射を止めると汚れが見えなくなるといったことが目視できる。こ のようなことが起きる理由は不明であるが、この効果により、Inに軽微な汚染が存在する場合、

スペクトルと放射温度計に超音波on/offで以下の図に示すような違いが生じる。また、汚染が ひどい場合には U.S. offのスペクトルにも固体ピークが見えるようになる。

図5.12はInが清浄な際に得られるd(d,p)t反応のスペクトルであり、U.S. のon/off でスペク トルに違いは見られない。また、図5.14の(a)はInが清浄な際の放射温度計の読みであり、こ ちらにもU.S. on/offによる違いは見られない。

図5.13はInが軽度に汚染された際に得られるd(d,p)t反応のスペクトルであり、U.S.のon/off でスペクトルに明らかな違いが生じている。U.S. on時に見えているのは汚染膜で生じている d(d,p)t反応のピークであり、液体In内で生じたものではない。また、図5.14の(b)はInが軽 度に汚染された際の放射温度計の読みであり、こちらにもU.S. on/offによる違いが生じてい る。U.S. on時のみ放射温度計の読みが高くなっており、これは温度計で見ている物質がInか ら不純物に変化している為だと思われる。

Geometry3においては、Inと検出器の位置関係から温度測定をすることができないが、汚染

膜による固体ピークは収量も多く、液体ピークと位置も異なるため、スペクトルを目視するこ とでInが清浄かどうかを判別することができる。そしてIn が汚染されていた際は、ビーム照 射とU.S.照射を繰り返すことで表面に汚れが集まり、それを汚れをスクレーパーで除去するこ とによって清浄な液体In 標的を得ることができた。

図 5.12: Inが清浄な時のProtonのスペクトル。左がU.S. offで、右が U.S. onである。スペク トルに大きな違いは見られない。

42 第5章 実験セットアップ

図 5.13: Inに軽微な汚染が存在する時のProtonのスペクトル。左が U.S. offで、右がU.S. on である。スペクトルに大きな違いがあり、onの方には汚染物質による固体ピークが見えている。

図 5.14: 放射温度計の読みの変化。(a)がInが清浄な時で、(b)が軽度に汚染されている時の

ものである。また、青線はU.S. on/off が切り替わった時間を示している。(a),(b)ともにBeam onの時に温度が上昇し、Beam off の時に温度が下降しているが、汚染時(b)は、U.S. onの時 の温度がoffの時よりも高くなっている。(a),(b)で温度が異なるのはヒーターの設定が異なる ためである。

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