考えられる.また,図 4.8(c)より,実験後の下流側断面では Ptの増加していることが分かる.Ptの 増加は上流側から Pt が移動してきたことによるものであると考えられる.二液式モードでは燃焼室温
度が1000℃以上の高温にさらされるが,熱電対により計測している温度はスラスタ内の下流側であるた
め,上流側はさらに高い温度であると思われる.Ptは800℃以上に晒されると凝集することが知られて おり25),また,アルミナも融点以下でその性質に変化が起こることが知られている26)ため,Ptが上流側 からの移動し下流側で凝集していると考えられる.Ptの移動・凝集により表面積が減少することで点火 ができなくなると考えられる.従って,燃焼室温度を抑制することで触媒の長寿命化が実現できると考 えられる.
(a) 実験前
(b) 実験後:上流側断面 (c) 実験後:下流側断面 図 4.8 二液式モード実験前後の触媒分析結果
表 4.3 混合比の違いによる寿命への影響評価実験の条件 供給圧力
[MPaA]
混合比 [-]
推進剤充填量 [mL]
予熱温度 [°C]
サンプリング周波数 [Hz]
使用触媒 番号
0.5 3 400 300 10 No.30
4. 2. 2 結果
表 4.4および図 4.9に実験結果を示す.点火してから3s程で最大800℃以上に達し,定常作動に成 功したが,180s付近で触媒断面温度の急激な低下を確認した.触媒断面温度が低下した後,燃焼室温度 は徐々に下降していき,280s程で燃焼室温度も急激な低下を確認し,不点火時と同様の状態になったた め一度推進剤の供給を止め,再点火を試みた.再点火には成功したが,その後定常作動は持続しなかっ たため,実験を終了した.本実験における推進剤使用量は 94.16g だった.混合比 5 のときと比較する と,混合比3で長時間噴射したときの寿命は短いことが分かった.
表 4.4 混合比の違いによる寿命への影響評価実験の結果
実験 番号
定常区間
定常区間における平均値
推進剤 圧力 温度 触媒温度 流量 推力 比推力 使用量
[s] [MPaA] [℃] [℃] [g/s] [mN] [s] [g]
#1 3.2-169.3 0.41 804.84 811.01 0.27 536.74 203.41
94.16 185.6-287.3 0.35 621.56 141.15 0.30 527.54 187.78
(a) 燃焼室圧力履歴 (b) 燃焼室温度・触媒断面温度履歴
(c) 推進剤流量履歴 (d) 推力・比推力履歴
図 4.9 寿命評価実験(混合比3)
4. 2. 3 考察
触媒の違い
4.1 節の実験では燃焼室温度が低下しても触媒断面温度が低下しない場合があったが,本実験ではそ れとは正反対のことが起こっている.これは使用した触媒の違いが影響していると考えられる.本実験 で使用した触媒No.30は,今までに使用した触媒とは違い,巻き芯がない触媒である.巻き芯がないた め,触媒下流断面における温度の測定点が触媒自体ではなく,触媒中心部を通った推進剤であると推測 される.
電子顕微鏡による観察および分析
図 4.10に本実験後の触媒分析結果を示す.上流側断面は実験前との違いはほとんど見られなかった.
一方,下流側断面においてはPtの増加していることが分かるが,図 4.8(c)と比較すると,Ptの濃度は低 いことが分かる.これは推進剤使用量が少ないからであると考えられる.
(a) 上流側断面 (b) 下流側断面 図 4.10 混合比の違いによる寿命への影響評価実験後の触媒分析結果