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派遣職員の技能と応援業務の適合の実態と課題

国立研究開発法人防災科学技術研究所 島崎 敢

大規模災害における被災地外からの応援職員の派遣には、1.被災自治体は 平時よりも機能が低下し、混乱している、2.初動期の情報把握や連携体制構 築は困難だが、迅速で適切な対応が必要である、3.派遣される職員には現地 での生活基盤・土地勘・人脈がない、4.派遣の調整業務や派遣先での業務 は、平時の仕事と大きく異なるなどの特徴がある。このように応援職員の派遣 とその業務は、困難でありながら迅速さ・適切さが求められるため、実際に発 生した災害で、そこに居合わせた職員がどのように対応や調整にあたったのか を記録し、どのような課題が残ったのかを分析すれば、今後発生する災害に向 けた備えや初動期の対応に役立つ資料となると考えられる。そこで本章では 2016 年 4 月に発生した熊本地震において、応援職員派遣に関連する調整がどの ように行われたのかを、実際の調整に当たった職員を対象にしたインタビュー 調査から明らかにすると共に、派遣先での業務内容や平時の業務との類似性、

派遣職員がどの程度の能力を発揮できていたか等について、実際に派遣された 職員を対象とした質問紙調査から明らかにする。その上で、これらに係る課題 を整理する。

本章の目次

5-1.応援派遣の調整を行った職員に対するインタビュー調査 5-1-1.時系列的経緯

5-1-2.時系列以外の事項 5-1-3.課題のまとめと考察

5-2.熊本に派遣された職員に対する質問紙調査 5-2-1.方法

5-2-2.対象 5-2-3.結果

5-2-4.結果のまとめと考察

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5-1.応援派遣の調整を行った職員に対するインタビュー調査

応援職員の人員配置に関する調整の実態や課題を整理するために、熊本地震 の応援派遣で調整の中心となった熊本県市町村課、大分県行政企画課、全国知事 会調査第二部で実際に調整業務に携わった職員を対象に非構造化インタビュー を実施した。インタビュー実施時期は 2017 年 2 月および 3 月であり、いずれも 対象者の職場を訪問して実施した。インタビューに要した時間は 1 団体あたり 90 分程度、対象者の人数は 3 部局合計 8 名である。

会話内容は対象者の同意を得て録音すると共に、その場でメモを作成した。こ れらの記録に基づいて発災後の時系列的な経緯や課題について 8 名分の発話を 統合した形でまとめた。

5-1-1.時系列的経緯

(1)発災〜カウンターパート決めまで

14 日夜に発生した前震を受けて、九州地方知事会、関西広域連合、全国知事 会の担当者等が順次熊本県庁入りした。ここで協定に基づいて、九州地方知事会 と関西広域連合が熊本を支援すること、九州地方知事会の幹事県である大分県 が各県との調整の中心となること、九州地方知事会と関西広域連合の 2 者で対 応が間に合わない場合には全国知事会がバックアップをすることが確認された。

15 日日中、熊本県危機管理課が被災地をまわり、情報収集を行った。

16 日未明に本震が発生した。

熊本県では本震発災当初、被害範囲がよくわからなかったが、熊本入りしてい た関西広域連合のリエゾン等が被災地の情報収集にあたり 16 日昼頃には大勢が 判明した。被害が大きいのは熊本県下だけだが、熊本県内の広範囲の市町村が被 災したことから、県対市町村という形でのカウンターパート方式を採用するこ ととした。なお県対市町村のカウンターパート方式での支援は全国初の試みで ある。

大分県では県内の被災状況の情報収集を行なった結果、別府・由布院などで被 害は出ているものの比較的被害が軽かったことから、県内の対応を行いつつ九 州地方知事会会長県として熊本の支援の中心的役割をはたすことを決めた。

熊本県市町村課では人的支援に関してどのような対応を行うべきか、課内で 協議し、災害対応経験のある宮城県市町村課から東日本大震災の対応時の資料

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等を取り寄せることを決めた。取り寄せた資料等を参考に、市町村の人的支援の ニーズ調査を行うことが決まった。

17 日午前に熊本県市町村課から被災した各市町村に対し電話や FAX で応援職 員のニーズ問い合わせを行なった。しかし、各被災市町村では、市民からの問い 合わせなどで混乱が激しかったこと、市町村でもどのような業務がどの程度発 生するのかが把握できていなかったことから、最初の問い合わせでは各市町村 とも応援の要請は数名程度にとどまった。

熊本市は指定都市市長会がカウンターパートとなって支援し、熊本市以外の 被災市町村を九州地方知事会・関西広域連合・全国知事会で支援することにな り、18 日の午前 1:15 に熊本県から九州地方知事会事務局に応援職員派遣の正式 要請があった。

熊本県からの応援職員の派遣要請を受けたあと、既に大分県から熊本県庁に 派遣されていたリエゾン(課長級職員)が中心となって熊本市以外の被災市町村 のカウンターパートの割当案を作成した。参考にしたのは関西広域連合のリエ ゾン等が被災地をまわって集めた被災状況、派遣先・派遣元の地理的関係(距離 や入りやすさ)、派遣先・派遣元の人口規模などの情報であった。ただし、派遣 先の役場職員数など、現地にもともとある人的資源の情報は十分に入手できて いなかった。

熊本県庁内で作成されたカウンターパート案をもとに最終的に割当てを決定 する際に、派遣元となる九州・山口各県知事の了解を得る必要があり、これに時 間を要したケースがあった。大分県が提案したカウンターパートに対して異議 は出なかった。カウンターパートは 18 日午後に決定し、これに基づいて各県職 員が被災地入りした。

(2)18 日以降の対応の流れ

被災地等の情報共有は各県リエゾン等の参加のもと、毎日 17:30 から熊本県 庁新館 9 階で開かれた連絡会議で行われた。熊本県市町村課も毎回同会議に出 席し、被災市町村への職員派遣に関する被災県側の情報を随時提供した。ここで の情報が連絡会議終了後に九州地方知事会事務局等に電話等で伝えられ、その 後の調整作業に使われた。

被災市町村からの応援派遣要請の人数は徐々に増加した。ただし、派遣開始初 期は人数の根拠が不明確なケースも散見された。また混乱が大きかった市町村、

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すなわち、実際には多数の応援派遣が必要な市町村の方が、混乱のためにかえっ て応援派遣要請を出せずにいたケースもあった。当初は市町村が必要人数を算 出して要請する想定であったが、混乱のために必要人数の算出を行えない市町 村もあり、カウンターパートである応援県から最初に支援に入った職員がニー ズを調べて必要人数を算出し要請するケースもあった。

九州地方知事会や関西広域連合だけで応援職員の人数をまかない切れなくな ると、大分県は全国知事会に応援職員の派遣調整を依頼した。全国知事会は各都 道府県・全国市長会・全国町村会と連携して調整を行い、応援派遣要請を行なっ た。派遣要請は九州地方知事会と関西広域連合に属していない都道府県と、当初 から関西広域連合と連携して全面的な支援を行なっていた静岡県、東日本大震 災の被災県を除いた都道府県の中から、地理的に熊本に近い順に行った。

応援派遣のピークはゴールデンウイーク前後であった。また、ゴールデンウイ ーク前にニーズが多かった業務内容は避難所運営、ゴールデンウイーク後にニ ーズが多かった業務内容は主に家屋被害認定であった。

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5-1-2.時系列以外の事項

ここまで発災から時系列の経緯をまとめたが、ここからは時間的な推移とは 関係のない事項についてまとめる。

(1)複数の調整系統

九州地方知事会、関西広域連合、全国知事会の調整ルートや指定都市市長会の 調整ルートとは別に、次のようなルートで派遣応援やその要請・調整が行われる ケースがあった。

① 東日本大震災被災県や被災市町村が、東日本大震災時に支援を受けた関係 性に基づいてまた、当時のノウハウを提供するために独自に応援派遣を行 ったケース

② 被災自治体との姉妹都市・相互支援協定などの 2 者間の関係性に基づいて 派遣が行われたケース

③ 総務省や首相官邸などの国の機関が被災市町村から集めた情報に基づいて 各都道府県に直接応援派遣要請を行ったケース

④ 支援を受けている被災市町村が九州地方知事会事務局を経由せずに直接カ ウンターパートや全国知事会に応援派遣要請を行ったケース

⑤ 熊本県市長会および熊本県町村会の派遣スキームに基づいて、被害の少な かった熊本県内の市町村から応援派遣が行われたケース

⑥ 罹災証明書発行の前提となる建物被害認定調査のために九州農政局や九州 財務局、熊本国税局など九州地区の国の機関から応援職員が派遣されたケ ース

このように様々なルートで応援派遣の調整が行われたが、九州地方知事会や 関西広域連合で結ばれている災害時相互応援協定では、要請は被災県(熊本県)

が行うことになっているため、協定に沿った形で熊本県が支援要請をするべき だという意見も寄せられた。

(2)災害救助法の適用範囲の問題

災害救助法は「救助」に関連する支援に限定して適用されるため、被災県は、

罹災証明の前提となる家屋被害認定調査などの業務に係る派遣費用を災害救助 法に基づいて国から財政支援を受けられない。災害救助法適用外の費用は、応援 協定上は応援を要請した被災県が負担をすることになっている。しかし、上記の

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