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活性炭フィルターを備えた密閉型 nano-ESI イオンソースの評価

第三章 1 細胞ショットガンプロテオミクスに向けた高感度分析システムの開発

3.3. 結果と考察

3.3.3. 活性炭フィルターを備えた密閉型 nano-ESI イオンソースの評価

第二章で使用した nano-ESI イオンソースは,オープンソースタイプの装置であっ た.そのため,実験室中に存在するシロキサン等が,サンプルと一緒にMSへ導入さ れてしまい,バックグラウンドのイオン強度が高いという問題点があった.このよう な周囲環境の影響を受けにくくするための手段として,密閉型の nano-ESI イオンソ ースの使用が考えられた.そこで,国内のAMR社が開発した活性炭フィルターを備 えた密閉型nano-ESIイオンソース (Dream spray,AMR Inc) の利用を検討した.Dream

sprayの利点は,(1) 活性炭フィルターを通った純度の高い空気を一定方向から流入す

ることで気流が形成されイオン導入効率が向上すること64,(2) 密閉型nano-ESIイオ ンソースの空気の流入口に活性炭フィルターを備えることにより,活性炭フィルター によるシロキサン等のバックグラウンドイオンの原因となる物質の除去が期待でき ることである.

上記の活性炭フィルターを備えた密閉型 nano-ESI イオンソースが,少数細胞分析 に与える効果を検証するために,3種類のnano-ESIイオンソース条件を用いて比較検 討した (図 3-6).条件 1 では標準的に付属しているオープンソースを使用した (コン トロール条件).条件 2 はイオン導入効率の向上を検証するために,密閉型 nano-ESI イオンソースを使用した.条件3はバックグラウンドイオンの低減効果を検証するた めに,活性炭フィルターを備えた密閉型nano-ESIイオンソースを使用した.また,バ ルクスケールのHeLa細胞から調製したペプチド消化物10 ng (50細胞相当) および1 ng (5細胞相当) を3種のnano-ESIイオンソースを搭載したnano-LC/MS/MSシステム にて評価した.

- 53 - 図3-6. Nano-ESIイオンソース条件.

各nano-ESIイオンソース条件の評価は,2種の試料に対して試行回数3回で同定さ

れたペプチド数およびタンパク質数の平均値を基に実施した.各システムへの消化ペ プチドの導入量が10 ng (50 細胞相当) での分析結果は,条件1 (オープンソース) で は 1101 ペプチドおよび 366 タンパク質であり,条件 2 (密閉型 nano-ESI イオンソー ス) では1200ペプチドおよび400タンパク質,条件3 (活性炭フィルターを備えた密

閉型nano-ESIイオンソース) では1371ペプチドおよび449タンパク質がそれぞれ同

定された (図3-7. a, b).条件2の密閉型nano-ESIイオンソースは,条件1のオープン ソースと比較してイオンの導入効率が向上することにより,ペプチドおよびタンパク 質の同定数が約1.1倍向上した.また,条件3の活性炭を備えた密閉型nano-ESIイオ ンソースは,バックグランドイオンが低減されることで,条件1と比べてペプチドお よびタンパク質同定数が約1.2倍増加した.

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3-7.nano-ESIイオンソース条件下における10 ngHeLa細胞消化物 (50細 胞相当) のショットガンプロテオミクス解析結果.

(a) 同定されたペプチド数.(b) 同定されたタンパク質数.

平均値 ± 標準偏差 (n = 3).統計解析はStudent’s t検定により決定した (***p < 0.001).

続いて,1 ngのペプチド消化物 (5細胞相当) の分析結果では,条件1 (オープンソ ース) で290ペプチドおよび117タンパク質,条件2 (密閉型nano-ESIイオンソース) で 393 ペプチドおよび 162 タンパク質,条件 3 (活性炭フィルターを備えた密閉型

nano-ESI イオンソース) で 476 ペプチドおよび 188 タンパク質がそれぞれ同定され

た.条件 2 の密閉型 nano-ESIイオンソースを使用することにより,条件 1 のオープ

ンソースと比較して,同定されたペプチド数およびタンパク質数は約1.4倍向上した.

また,条件 3 の活性炭フィルターを備えた密閉型 nano-ESI イオンソースを使用する ことで,条件 1と比べて同定ペプチド数およびタンパク質数は約 1.6倍増加した (図 3-8. a, b).

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3-8.nano-ESIイオンソース条件下における1 ngHeLa細胞消化物 (5細胞 相当) のショットガンプロテオミクス解析結果.

(a) 同定されたペプチド数.(b) 同定されたタンパク質数.

平均値 ± 標準偏差 (n = 3).統計解析はStudent’s t検定により決定した (***p <

0.001).

上記の結果から,条件 3 の活性炭を備えた密閉型 nano-ESI イオンソースを使用す ることにより,nano-ESIに導入されるペプチド試料量の低下に伴い,その効果が顕著 に表れることが示された.

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