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6.1 目的

前述した,衛星推進系に関する不具合の調査・分析では,推進系メーカ各社とも輸 入バルブの清浄度保証はベンダ任せであることがわかった.洗浄などに関するノウハ ウを国内衛星推進系メーカが有していないことが大きな要因.一方で,清浄度保証さ れたバルブから実際にコンタミが出てきた例もある.そのため,バルブの洗浄方法な ど,コンタミネーション管理の方法を追加検証すべきであると識別された.

6.2 研究の進め方

同種の検討としては,衛星推進系システム洗浄装置の試作・試験 10)があり,推進系 配管の洗浄について,考察をしている.ここでは,コンタミの種類により適切な洗浄 方法を選択すべきであること,マイクロバブル水による洗浄,もしくはバブリング洗 浄が有効であることが述べられている.

また,近年,半導体等の分野において洗浄方法の検討が進んでおり,こちらでもマ イクロバブル水の洗浄効果に着目しているケースも多い.

そのため,本研究でもマイクロバブル水に着目することとし,その効果を確認する こととした.

また,実際の推進系配管の状態を考慮し,特に流路内に非貫通の「行き止まり」の 配管部分が多数あることを踏まえ,「行き止まり」配管の洗浄を意識した検討を行うこ ととした.従来の衛星推進系で行われている洗浄で経験的に効果が高いと言われてい るバブリング洗浄は洗浄液とガスを同時に配管内に導入し,洗浄液が撹拌される際の 物理力によるコンタミの洗浄を期待したものである.しかしながら,行き止まり配管 では,洗浄液を流すことによる物理的な力に期待できない.このことから,減圧沸騰 によって物理力を得ることも検討することとした.

なお,洗浄効果の定量的評価のためには,管理された汚れを付着させ,その付着度 合いを定量的に計測する必要がある.一方で,軽度の汚れを精度良く管理するために は多くの労力を要する傾向にあるため,ここでは,実際の衛星推進系で想定するより も強めの汚れを付着させることとした.そのため,本研究の結果は,実際に推進系配 管内で想定されるような,もう少し軽度の汚れに対する知見としては,完全ではない 可能性がある

6.3 試験手順および対象とするパラメータ

推進系の汚れは加工における油脂や水分,そして加工で発生する粒子状のコンタミ

する洗浄方法を見出すこととした.まずはそれぞれのコンタミに適した洗浄方法を簡 単な形式で検討し,その結果を踏まえて模擬配管を使用した洗浄方法の検討を行う.

パラメータは以下の通り.これらは推進系への材適および,閉じた空間においても操 作可能と思われるものから選択した.

洗浄液

 水

 アルコール(IPA,エタノール)

 マイクロバブル水(水に空気を溶け込ませ,減圧で微小気泡を発生 [詳細は

§5.4]

 アルコール混合水

 温度 [常温(20℃),高温(50℃) 詳細は§6.5]

浸漬時間(10分,1時間,12時間,24時間等)

減圧沸騰

 液ごと減圧することで沸騰させる,物理的な力による洗浄[詳細は§6.6]

6.4 実験装置

実験装置の構成を図6.4-1に示す.また,実験装置の写真を図6.4-2に示す.

図 6.4-1 実験装置の構成

図 6.4-2 実験装置写真

6.5 マイクロバブル水

半導体分野を中心に活用されている洗浄液で,細かな泡が汚れを浮かせる作用に期 待されている.マイクロバブル水の発生のさせ方としては,マイクロバブル発生バル ブを利用することもあるが,ここでは洗浄液にガスを加圧し十分に溶解・飽和させた 後,一気に圧力を開放することで,溶けたガスが細かいバブルとなって発生し,液を 白濁させる現象を利用してのマイクロバブル水生成を行った.本研究では,具体的に は,洗浄液として水を使用し,それに対して 4 気圧の空気を飽和させた後,大気開放 することでマイクロバブル水を発生させることとした(図6.5-1)

この方法では,衛星推進系の配管内部にガスが十分に溶解した洗浄液を行き渡らせ た後,配管を減圧することでマイクロバブル水を生成できるため,洗浄液の配管入口 にフィルタなどによりマイクロバブルが減ずる懸念を考慮しなくてよい,という利点 がある.図6.5-2に例示するように,この方法にて,配管内でもバブルを発生させられ ることを確認した.

図 6.5-1 マイクロバブル発生の様子

図 6.5-2 配管内のマイクロバブル

6.6 洗浄液の温度調節方法

洗浄液の温度も洗浄効果を左右するパラメータである.そのため,マイクロバブル水が 入ったタンクを40℃で湯煎することとした.セットアップは以下の図6.6-1の通りである.

図 6.6-1 洗浄液温度の調節方法 6.7 減圧沸騰

洗浄液で満たされた配管を減圧し,洗浄液の蒸気圧以下にすることで沸騰状態にな ることが予想される.これにより,液が激しく揺動し,物理的な力で洗浄効果が高ま ることが期待される.本研究の試験セットアップで減圧によって沸騰状態が起きるこ とを確認した.図6.7-1に減圧沸騰の様子を示す.

図 6.7-1 減圧沸騰の様子

6.8 接触角計

汚れを相対的に評価する手法として本研究では接触角を使用した.図6.8-1に接触角 計を示す.接触角の計測イメージを図6.8-2に示す.

図 6.8-1 接触角計

6.9 洗浄方法の検討

衛星推進系の汚れは加工における油脂や水分,そして加工で発生する粒子状のコン タミが複合的に作用していると考えられる.そこで,油脂コンタミ,粒子コンタミの それぞれの汚れに作用する洗浄方法を模索し,その研究結果をもとに,双方の汚れに 作用する洗浄方法を見出すこととした.

まずはそれぞれのコンタミに適した洗浄方法を簡単な形式で検討し,その結果を踏 まえて模擬配管を使用した洗浄方法の検討を行う.

6.9.1 油脂コンタミの洗浄について 6.9.1-1 供試体

油脂コンタミとしてKURE556 を使用した. 具体的には,スパチュラの小さじ 1 杯 分をステンレス供試体の半分に塗布した,供試体を図6.9.1-1に示す

図 6.9.1-1 油脂コンタミ塗布状況

6.9.1-2 油脂コンタミ洗浄の知見

試験結果の一例として,洗浄前後の比較を図6.9.1-2に示す.洗浄液の差による汚れ の落ち方は,IPA ≒ MB水 > 水 > IPA混合水 の順番である.水やIPAと水を混 合したものに供試体を浸漬させると,油分が乳化して,より強固な汚れとなっている.

そのため,配管に水とIPAを導入するリスクについて検討する必要がある.

MB水についても白濁はするが,その白濁した油を浮かせる作用が見られた.IPAは

かなり強力に汚れを浮かせるものの,減圧沸騰を行うと急激に温度が下がり,結露を 起こすリスクがある.MB水は高温かつ,長時間浸漬させることで汚れを浮かせること ができる.一方で,その汚れを取るには減圧沸騰が必要であるが,減圧沸騰も高温の 方が効果が高いため,浸漬時間と温度を考慮して条件を見出す必要がある.

図 6.9.1-2 油脂コンタミ洗浄試験結果の一例

(高温マイクロバブル水→減圧沸騰洗浄結果 14 時間浸漬ケース(37.0℃))

6.9.2 粒子状コンタミの洗浄について 6.9.2-1 供試体

供試体の作成は以下のようにした.図6.9.2-1に供試体を示す.

1)1. ACダスト10gをエタノール100mlで希釈し,8滴垂らして乾燥 2)2. ACダスト0.2gをエタノール100mlで希釈し,2滴垂らして乾燥 3)2)については,供試体を作成したところ,肉眼・写真では汚れが判断できな

かった為,今回の実験では見送りとした.)

図 6.9.2-1 粒子状コンタミ塗布状況

6.9.2-2 粒子状コンタミ洗浄の知見

試験結果の一例として,洗浄前後の比較を図6.9.2-2に示す.水とMB水では汚れの 落ち方に優劣はつけ難いが,IPAとエタノールは明らかに汚れの落ちが悪かった.(水

≒ MB水 > IPA or エタノール).漬け置きのみによる汚れの除去はほぼ無いが,浸け

置き時間が長いほうが汚れを浮かせ,濃い汚れが落ちやすい可能性がある.また,減 圧沸騰による汚れ除去は有効である.ただし,汚れの濃い部分には有効であるが,初 期から汚れの薄い箇所にはあまり効果が見られていない.今後,減圧沸騰の回数をパ ラメータとした検証も考えられる.

図 6.9.2-2 粒子状コンタミ洗浄試験結果の一例

(マイクロバブル水→減圧沸騰洗浄結果 24 時間浸漬ケース(室温))

6.10 模擬配管による洗浄方法の研究 6.10.1 模擬配管による洗浄方法について

これまでの検討を基に,より実機形状に近い形で洗浄方法の検討を行った.実験装 置の配管系統は以下の図 6.10.1-1 の通りであり,実際の配管を模擬した透明配管を用 意し,その一部に汚れを付着させることとした.実際の実験装置を図6.10.1-2に示す.

洗浄流体,乾燥流体は,液体と気体の混合物,もしくは液体のみである.配管の行き 止まり部分の汚染を模擬するため,汚れキャップの「汚れ部位A」や,[汚れ部位B] に汚れを塗布し, その洗浄効果を確認することとした.

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