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4. 液の長期保管の影響評価

4.6 液の長期保管の影響評価 タングステン表面汚れ調査

4.6.6 汚れ付着のメカニズム推定

分析結果を受け, 材料について改めて調査を行った結果,以下の情報を得た.す なわち,「酸性および中性溶液中における超硬合金の腐食は,合金成分のうちコバルト

( )などのバインダー金属が優先的に溶出する形態となっており,母材表面近傍か ら が失われ,あたかも のみで形成されるような状態に変化いたします.そのた め超硬合金においては,このような現象のことを「腐食」と表現しております.」

すなわち,タングステン合金を水に浸漬すると,合金成分のうち,コバルトなどの バインダ金属が溶出し,それが表面に「フィルム」を形成することを意味する.特に バインダがニッケル( )ではなくコバルト( )の場合に,この溶出が顕著とのこ とである.これはバルブベンダを含めた推進系関係者の中では周知の事実ではなく,

これが不具合発生の根本原因である可能性がある.実際,注排弁で使用されているコ バルト合金のバインダはコバルトであるとの情報があり,当該バルブを長期間の純水 雰囲気に暴露する際は注意を要することがわかった.

4.6.7 タングステン浸漬試験の考察

赤外分光分析および 定性分析の結果,一部のタングステン板に付着していたゴ ム材,油分を除き,褐色成分には有機化合物が含まれず,無機化合物であることが確 認された.また,本測定とは別に,各種溶媒への溶解性を事前検討した結果,有機溶 媒には溶解せず,食酢および塩酸には溶解することが確認された.このことからも,

褐色成分が無機化合物であるといえる.

定性分析で,付着物から主に検出されたのが であることから,一つの 可能性として,褐色成分は または の酸化物であることが考えられる. はバイ ンダとしてタングステン板に含まれており,一部が溶出して表面に析出したと推測さ れる.

EDS測定範囲 6C ~ 92U

分 析 画 像 反射電子像

測 定 箇 所 試験片の変色部(褐色部)

EDS測定部位はSEM像での囲み部(「□」の部分)[APPENDIX-3参照]

4.6.5 分析結果 (1) 赤外分光分析

分析結果を表4.6.5-1に示す.W-E-1M,W-S-1M以外の供試体からは全く赤外吸収 が現れなかった.従って,褐色成分には有機化合物は含有されないと推定される.な

お,W-E-1M,W-S-1Mそれぞれ僅かな赤外吸収が現れたのは,褐色成分以外の要因に

よると考えられる.詳細は添付資料 APPEINDIX-5参照)

表 4.6.5-1 赤外分光分析結果

(2) SEM 観察・EDS 定性分析

分析結果を表 4.6.5-2 に示す.純水浸漬供試体のタングステン板に対しては付着物,

母材部でWが共通して強く検出されたが,付着物で特異的に検出されたのはCo, O の み で あ っ た . 詳 細 は 添 付 資 料 APPEINDIX-6 参 照)こ の 結 果 か ら , 表 面 汚 れ は Co,Oによるものと考えられる.

表 4.6.5-2 SEM 観察・EDS 定性分析結果

4.6.6 汚れ付着のメカニズム推定

分析結果を受け,WC材料について改めて調査を行った結果,以下の情報を得た.す なわち,「酸性および中性溶液中における超硬合金の腐食は,合金成分のうちコバルト

(Co)などのバインダー金属が優先的に溶出する形態となっており,母材表面近傍か らCoが失われ,あたかもWCのみで形成されるような状態に変化いたします.そのた め超硬合金においては,このような現象のことを「腐食」と表現しております.」9)

すなわち,タングステン合金を水に浸漬すると,合金成分のうち,コバルトなどの バインダ金属が溶出し,それが表面に「フィルム」を形成することを意味する.特に バインダがニッケル(Ni)ではなくコバルト(Co)の場合に,この溶出が顕著とのこ とである.これはバルブベンダを含めた推進系関係者の中では周知の事実ではなく,

これが不具合発生の根本原因である可能性がある.実際,注排弁で使用されているコ バルト合金のバインダはコバルトであるとの情報があり,当該バルブを長期間の純水 雰囲気に暴露する際は注意を要することがわかった.

4.6.7 タングステン浸漬試験の考察

赤外分光分析およびEDS定性分析の結果,一部のタングステン板に付着していたゴ ム材,油分を除き,褐色成分には有機化合物が含まれず,無機化合物であることが確 認された.また,本測定とは別に,各種溶媒への溶解性を事前検討した結果,有機溶 媒には溶解せず,食酢および塩酸には溶解することが確認された.このことからも,

褐色成分が無機化合物であるといえる.

EDS定性分析で,付着物から主に検出されたのがW, O, Coであることから,一つの

可能性として,褐色成分はWまたはCoの酸化物であることが考えられる.Coはバイ ンダとしてタングステン板に含まれており,一部が溶出して表面に析出したと推測さ れる.

4.7 液の長期保管の影響評価試験結果のまとめ

推薬長期浸漬データを取得した. 長期浸漬の結果,鉄,ニッケル,クロムなどステン レス構成材料の溶出が検出されたが,非常に微量であった.なお,チタンは検出され なかった.樹脂材料のSEM観察・引張試験を行った. SEM観察については,浸漬試験 前後で顕著な組織の変化がみられていないことがわかった.また,引張試験でも浸漬 前後のサンプルでの有意差は認められなかった.この結果から,推薬に浸漬させるこ とで,大きく劣化することは無いと考えられる.ただし,引張試験結果について,よ り正確に判断するためには,サンプル数を増やすことが望ましい.

純水を長期間保存することで,注排弁に「フィルム」が形成されることがあること を受けた調査については,当初,その原因として微生物が繁殖して水を汚す可能性も 指摘されていたが,再現試験の結果,微生物は検出できなかった.一方で,無機分析 などを行った結果,炭化タングステンのバインダとしてCoを使用している場合,水に 長期間漬けると,Coが膜として生成することがわかった.

4.8 液の長期保管の影響評価試験結果の考察

結果からは,ヒドラジン・MON-3と,ステンレス・チタンの間の材料適合性につい ては,従来の知見通り問題ないと判断される.

 NASA 探査機で,「MON-3をステンレス配管に長期間保管することを避ける 運用をする」旨の文献情報もあるが,今回試験した範囲では,問題は見いだ されていない.

 より詳細な考察が必要な場合は,実バルブを使った模擬配管を作成し,その 配管内に推薬・疑似推薬を長期封入する試験の実施などが候補である

注排弁のシール部には炭化タングステンが使用されており,当該箇所は,過去の衛 星で地上試験でリークを起こしたことがあった.今回の試験結果から,バインダにCo を使っている炭化タングステンと水が接触してフィルムが形成され,それが原因とな った可能性が考えられる

 過去の不具合時の成分分析でも,Coは検出されている(Niは検出されていな い)

 本注排弁では,球体上のシール部の接液側に膜が生じた後,当該部の開閉に より,球体シール部が回転し,形成された膜がシール線を横断するようにな ることで,リークが発生すると考えられる.

5. 酸化剤の気泡発生確認

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