II. 審査報告
2. 審査結果
2.5 環境動態
2.5.3 水中における動態
2.5.3.2 水中光分解
(1)緩衝液
滅菌緩衝液(リン酸緩衝液、
pH 7.0)を用いて、 [pyr-
14C]オキサチアピプロリン、 [thi-
14C]
オキサチアピプロリン及び [iso-14
C]オキサチアピプロリンの試験溶液(約 0.1 mg/L)をそ
れぞれ調製し、25±1
℃でUV
フィルター(<290 nmカット)付きキセノンランプ(456 W/m2、波長範囲
300~800 nm)を 15
日間照射した。揮発性物質の捕集にはエタンジオール及び1M
NaOH
を用いた。照射開始0、1、2、4、6、10
及び15
日後に試料を採取した。試験溶液は
LSC
で放射能を測定後、HPLC
及びLC-MS-MS
で放射性物質を定量及び同定 した。揮発性物質の捕集液はLSC
で放射能を測定した。緩衝液中の分解物の定量結果を表
2.5-19
に示す。[pyr-
14C]オキサチアピプロリン処理においては、オキサチアピプロリンは経時的に減少し、
試験終了時に
54 %TAR
であった。主要分解物は代謝物b
であり、経時的に増加し、試験終了時に
11 %TAR
であった。その他に代謝物G
及び代謝物I
が生成したが、その生成量は最大で
5.4 %TAR
であった。揮発性物質の生成は認められなかった。暗対照区においては、オキサチアピプロリンの分解は認められなかった。
[thi-
14C]オキサチアピプロリン処理においては、オキサチアピプロリンは経時的に減少し、
試験終了時に
56 %TAR
であった。主要分解物は代謝物b
であり、経時的に増加し、試験終了時に
14 %TAR
であった。その他に4 %TAR
を超える分解物は認められなかった。揮発性物質の生成は認められなかった。暗対照区においては、オキサチアピプロリンの分解は認 められなかった。
[iso-
14C]オキサチアピプロリン処理においては、オキサチアピプロリンは経時的に減少し、
試験終了時に
58 %TAR
であった。2.0 %TARを超える分解物は認められなかった。揮発性 物質の生成は認められなかった。暗対照区においては、オキサチアピプロリンの分解は認められなかった。
表
2.5-19:緩衝液中の分解物の定量結果(%TAR)
[pyr-14C]オキサチアピプロリン 経過日数
照射区 暗対照区
オキサチア
ピプロリン 代謝物b 代謝物G 代謝物I 未同定
分解物* 合計 オキサチア ピプロリン
0 104.3 ND ND ND ND 104.3 104.3
1 99.7 ND 0.7 ND 3.6 104.0 106.3
2 97.9 1.1 1.5 1.1 2.7 104.8 106.2
4 88.3 4.0 5.1 ND 8.6 105.9 105.8
6 73.6 4.8 5.4 2.8 20.2 106.8 108.2
10 65.1 8.7 4.1 2.4 26.1 106.5 106.0
15 54.0 10.8 3.7 5.2 31.3 105.1 105.2
[thi-14C]オキサチアピプロリン
経過日数
照射区 暗対照区
オキサチア
ピプロリン 代謝物b 未同定分解物** 合計 オキサチア ピプロリン
0 102.6 ND 3.1 105.6 102.6
1 102.0 ND 6.5 108.5 106.1
2 99.7 ND 9.8 109.5 108.9
4 84.9 3.0 19.9 107.9 109.6
6 64.6 6.7 31.6 102.8 104.4
10 72.8 7.1 27.2 107.1 104.0
15 56.5 14.0 30.3 100.8 107.8
[iso-14C]オキサチアピプロリン
経過日数
照射区 暗対照区
オキサチア
ピプロリン 未同定分解物*** 合計 オキサチア
ピプロリン
0 98.2 2.9 101.1 98.2
1 97.4 6.1 103.5 104.8
2 86.9 14.3 101.6 106.9
4 86.2 15.0 101.2 104.2
6 80.0 21.1 101.1 104.5
10 66.8 28.8 95.5 102.6
15 57.6 32.6 90.2 100.5
ND:検出限界未満
*:個々の成分は5.4 %TAR以下 **:個々の成分は4.2 %TAR以下 ***:個々の成分は2.4 %TAR以下
緩衝液中のオキサチアピプロリンの光照射による
DT
50を表2.5-20
に示す。オキサチアピプロリンの
DT
50はSFO
モデルを用いて算出すると、15~19日(東京春換算
68~88
日)であった。表
2.5-20:緩衝液中のオキサチアピプロリンの光照射による DT
50(日)[pyr-14C]オキサチアピプロリン [thi-14C]オキサチアピプロリン [iso-14C]オキサチアピプロリン
14.8 (68.3) 15.9 (73.3) 19.1 (88.1)
( ):東京春換算
(2)自然水
滅菌自然水(英国
Crosswood Burn、pH 7.3)を用いて、[pyr-
14C]オキサチアピプロリン及
び[thi-14C]オキサチアピプロリンの試験溶液(約 0.1 mg/L)をそれぞれ調製し、25±1
℃でUV
フィルター(<290 nmカット)付きキセノンランプ(456 W/m2、波長範囲290~800 nm)
を
15
日間照射した。揮発性物質の捕集にはエタンジオール及び1M NaOH
を用いた。照射開始
0、1、2、4、6、10
及び15
日後に試料を採取した。試験溶液は
LSC
で放射能を測定後、HPLC
及びLC-MS-MS
で放射性物質を定量及び同定 した。揮発性物質の捕集液はLSC
で放射能を測定した。自然水中の分解物の定量結果を表
2.5-21
に示す。オキサチアピプロリンは経時的に減少し、試験終了時に
48~63 %TAR
であった。代謝物b
が生成したが、その生成量は最大で7.6 %TAR
であった。その他に4 %TAR
を超える分解 物は認められなかった。揮発性物質の生成は認められなかった。暗対照区においては、オキサチアピプロリンは試験期間を通して
86~101 %TAR
であり、明確な分解は認められなかった。
表
2.5-21:自然水中の分解物の定量結果(%TAR)
[pyr-14C]オキサチアピプロリン
経過日数
照射区 暗対照区
オキサチア
ピプロリン 代謝物b 未同定分解物* 合計 オキサチア ピプロリン
0 95.4 ND 4.2 99.7 95.4
1 93.0 ND 10.4 102.2 100.6
2 91.2 0.6 12.6 104.5 99.0
4 88.4 2.4 12.6 102.9 95.9
6 81.9 3.3 19.2 104.4 96.9
10 72.2 6.6 24.9 103.7 93.3
15 63.0 7.6 33.3 103.9 95.5
[thi-14C]オキサチアピプロリン 経過日数
照射区 暗対照区
オキサチア
ピプロリン 代謝物b 未同定分解物** 合計 オキサチア ピプロリン
0 96.5 ND 5.5 100.9 96.5
1 90.9 ND 8.3 98.3 91.6
2 88.1 0.5 10.2 95.6 90.9
4 84.5 2.4 12.0 98.0 93.8
6 75.5 3.2 18.5 97.2 94.2
10 67.3 5.0 25.2 97.6 87.6
15 48.4 6.3 39.3 93.9 86.4
ND:検出限界以下 *:個々の成分は3.6 %TAR以下 **:個々の成分は3.4 %TAR以下
自然水中のオキサチアピプロリンの光照射による
DT
50を表2.5-22
に示す。オキサチアピプロリンの
DT
50はSFO
モデルを用いて算出すると、17~25日(東京春換算
78~115
日)であった。表
2.5-22:自然水中のオキサチアピプロリンの光照射による DT
50(日)[pyr-14C]オキサチアピプロリン [thi-14C]オキサチアピプロリン
24.9 (115) 16.8 (77.5)
( ):東京春換算
(3)水中光分解性のまとめ
緩衝液及び自然水中において、オキサチアピプロリンは光照射により緩やかに分解され、
オキサゾリジン環の開環及び開裂により代謝物