山陽論叢 第 22 巻 (2015)
表3.介入・対照群別の得点比較
近藤・望月・山田・田渕・田中:中学校におけるいのちの授業の実践的研究
以下に,男女別の基本的自尊感情「低群」の平均得点と介入群の基本的自尊感情「低群」
の平均得点の推移を示す(図
2-1,図
2-2,図
2-3)。
図 2-1.基本的自尊感情「低群」における平均得点の推移(男子)
図 2-2.基本的自尊感情「低群」における平均得点の推移(女子)
14.25 14.38
15.25 14.91
15.45 15.82
13.50 14.00 14.50 15.00 15.50 16.00 16.50
直前 直後 1ヵ月後
基本的自尊感情(低群)の平均得点(男子)
介入群 対照群
12.33
13.50
12.67
11.75 12.00
10.50
10.00 10.50 11.00 11.50 12.00 12.50 13.00 13.50 14.00
直前 直後 1ヵ月後
基本的自尊感情(低群)の平均得点(女子)
介入群 対照群
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図 2-3.介入群における基本的自尊感情「低群」の平均得点の推移(男女)
4.考察
本研究においては,自尊感情を高める要因は何かという視点から,基本的自尊感情が低 いと考えられる子どもに焦点をあて, 「共有体験」を取り入れた授業を実施し,授業前後の 自尊感情を比較することで, 「共有体験」は「基本的自尊感情を高める」ことを明らかにす るという目的を設定した。
その結果,授業実施前後の得点比較において以下の3点が明らかになった。
1.女子の介入群と対照群の対象間において,それぞれの全3回における基本的自尊感情 得点の平均値に有意な差が認められた。(
p<.05)。
2.女子の介入群と対照群の全3回の基本的自尊感情得点の平均値において,各測定時期 間に有意な差が認められる傾向にあった(
p<.10)。
以上の結果から,「共有体験」を導入した本授業は本研究の焦点として定めた,基本的 自尊感情が低いと考えられる子どもの女子において,効果があったと結論づけることはで きないが,介入群と対照群に客観的な得点差があることを考慮すると,本授業が何らかの 影響を及ぼした可能性も考えられる。
共感について諸研究をまとめた澤田(
1996)の報告によると,女子は男子よりも高い共 感を示す傾向にある。現在のところ,共感における性差が元来備わった生得的なものなの か,環境による社会的なものなのかは明らかにされていないが,今後の調査においては子 どもの共感性における男女差にも着目し,基本的自尊感情の育成については,男女それぞ れに有効な方法を明らかにする必要があると考える。
本研究の限界とそこから生じる今後の課題は次の2点である。
第1に,授業展開の工夫の不足である。本授業のグループワークにおいては,生徒同士 の発言のしやすさを考慮し,通常の授業と同様の班構成で実践した。しかしながら,実際
14.25 14.38 15.25
12.33
13.50
12.67
12.00 12.50 13.00 13.50 14.00 14.50 15.00 15.50 16.00
直前 直後 1ヵ月後
介入群における基本的自尊感情の平均得点
(男女)
男子 女子
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の場面では,班によってグループワークにおける積極性に差が見られ,本来,基本的自尊 感情が低いと考えられる生徒において,適切な共有体験がなされなかった可能性も考えら れる。今後はそのような差が生じることなく,生徒全員に適切な共有体験がなされるよう,
生徒の特徴に応じて,グループワークのメンバーをあらかじめ構成する等の工夫が必要と 考える。
第2に,対象の少なさである。本研究においては,基本的自尊感情が低群に該当する生 徒に焦点をあてていたが,実際に分析対象となった生徒は少数であり,検定結果における 検定力の不足も考えられる。今後は,対象数を増加させることや,複数の学校で実施する ことで,本授業プログラムの効果がより明確になると考えている。
【文献】
蘭千壽(
1992).セルフ・エスティームの形成と変容 遠藤辰雄・井上祥治・蘭千壽(編)
セルフ・エスティームの心理学-自己価値の探求- ナカニシヤ出版
167-226.James,W.(1890)
.
The Principlles of Psychology.
Dover Publication,Inc加藤久仁生(
2008).つみきのいえ
(pieces of love Vol.1) [DVD]株式会社ロボット 近藤卓(
2007).いのちの教育の理論と実践 金子書房
近藤卓(
2010).自尊感情と共有体験の心理学 金子書房
望月美紗子(
2016).社会的・基本的自尊感情尺度の妥当性と信頼性 いのちの教育 日 本いのちの教育学会誌,
1(1),
41-50東京都職員研修センター(
2011).自尊感情や自己肯定感に関する研究(第3年次) 平 成
22年度東京都教職員研修センター紀要
10,
3-28.Ⅱ.子供の自尊感情の傾向を把握 する方法と指導のポイント
http://www.kyoikukensyu.metro.tokyo.jp/09seika/reports/files/bulletin/h22/materials /h22_mat01a_02.pdf
(
2011年発表)
澤田瑞也(
1996).共感の心理学 そのメカニズムと発達 世界思想社
横山正幸(
2010).子どもの自尊感情と体験の関係について 日本生活体験学習学会誌,
10