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3次元CGによる都市景観シミュレーションシステムの開発

100-第6章 3次元CGによる都市景観シミュレーションシステムの開発

6 - 1 . はじめに

建築 ・ 都市計画分野におけるシミュレーションは、 これまで設計の実務を中心とし て、 新規建築物のプレゼンテーション、 デザインの検討、 周辺環境への影響など、 建 築設計の初期的段階における設計支援ツールとして活用されてきた。 したがって、 そ れらのシミュレーションは、 新規建築物とその周辺環境を視覚化したものが殆どであ り、 都市という広域の環境を正確に表現した事例は少ない1)。 その理由として、 都市全 景をシミュレートするには、 膨大なデータの作成と多大な作画時間を要し、 現実的に は不可能に近いこと、 また、 旧来のシミュレーションの目的は、 上記の新規建築物の デザイン、 周辺環境への影響などをテーマとしており、 新規建築物が広域的な景観に

及ぼす影響などの検討は対象としていないことが挙げられる。

しかしながら、 近年の大規模かつ高層化していく建築物、 またその集合体しての市 街地の出現は、 旧来の都市景観に大きな変容をもたらしていることから2)3)、 よりマク ロな範囲を正確かつ明瞭にシミユレ一トする手法の開発が望まれている4め引例)戸向5勾m別)戸川6め叩6)7)戸川7η)

そこでで.本章でで.は、 都市空間を構成する建物の表現方法を簡便化し、 データ入力にお ける作業の軽減化を計り、 少ないデータ量で都市空間を3次元C Gにより表現する景 観シミュレーショ ンの手法を提案する。 そして本手法を大分市に適用し、 その有効性 を検証する。

本章の構成として、 第2節では、 都市中心市街地の簡便化表現手法のフローについ て述べ、 第3節では、 そのデータの作成手法とデータ構造について具体的に記述し、

第4節では、 都市中心部のシミュレーション画像を作成する。 第5節では、 遠景の簡 便化表現手法について述べ、 第6節では、 遠景のシミュレーショ ン画像を作成する。

第7節では、 都市中心市街地のデータと遠景のデータを用いて広域の都市空間のシ ミュレートし、 実写の景観画像との比較をおこない、 開発したシステムの有効性につ いて考察する。

6 - 2. 都市中心市街地シミュレーションの作成手法8)9)10)

まず都市中心部市街地の建物形状のデータを作成する。 建物形状は、 建物平面形状 を建物階数に応じて建ち上げて立体的に表現する。 建物平面形状は、

1/2,500の地図か

らデジタイザーを用いて読みとり、 建物階数は現地調査によりデータ化した。 しか

-

101-し、 これらのデータをもとに生成した3次元の市街地シミュレーション画像は、 単純な 建物のボリュームによって表現されたもので、 市街地空間のリアリティは、 このシ ミュレーションによっては得ることができない。 そこで、 建物にファサードの表情を 付加することで、 より現実感あるシミュレーション画像の作成を試みた。 建物のファ サード表現は、 全ての各建物ごとにその詳細なディテールを入力することは不可能に 近い。 したがって、 前述の建物立体化の3次元CGのプログラムに建物の外観の形状を 自動的に生成するプログラムを付加し、 建物ファサードを簡便に表現する手法を開発 した。

プログラムの作成と併行して簡便に建物を 表現 するためのデータベースを作成す る。 これは対象地域内の建物の外観のデザインと色彩の調査を行い、 その結果をもと に建物外観、 色彩の類型化を行ない、 各ノマターンの形状コード ・ 色コードの番号を データベース化したものである。

以上のプログラムとデータベースの2つを揃えることによって都市中心市街地の景 観シミュレーション画像の作成が可能となり、 さらにそれらを利用して景観アニメー ションを作成する。

6 - 3. 筒便なデータベースの作成 ( 1 )建物ファサードのデータベース化

まず建物ファサードの形状を1 2パターン想定した。 このファサードのパターン は、 主要な建築雑誌や本研究室に所蔵するさまざまな建物のスラ イド、 対象地域の建 物等を参考にして、 典型的ファサードを想定した。 その結果、 図6 -1に示す12の パターンが挙げられた。 この12個のファサードは、 建物の形状を大まかに分類した結 果であるが、 後に示すシミュレーションの結果から適当であると判断できる。

0想定された建物ファサードの1 2パターン

・ タイプo :単なる平面のみの箱型の立体のタイプ。

- タイプ1

・ タイプ2

2階から最上階まで比較的正方形に近い窓を配置したタイプ。

2階から最上階まで約8mのスパンで区切り、 lスパンの窓を3分割し て描いている。 この際窓のエ ッジも表現している。

-

102-- タイプ3 :ファサード面の端部のみに柱型を配置し、 ファサード全体に横長の連続 窓を配置したタイプ。 窓の長さに応じた値によって分割し、 それぞれの 窓のエッジを描いて表現している。

・ タイプ4 :柱型が全くファサードに現れない、 連続した横長窓によって構成された タイプ。 窓は壁面から50cm後退して描き、 かつタイプ3と同様に分割し て、 エッジの表現をおこなっている。

・ タイプ5 :いわゆる全面ガラス張りのカーテンウオールタイプ。

・ タイプ6 : 2階から最上階まで縦長の窓を配置したタイプ。 またファサードの左右端 部と上部を縁取 るように壁面が取り巻いている。

・ タイプ7 :タイプ2の建物の壁面部分を50cm突き出し、 バルコニーを擬似的に表現 しているタイプ0

・ タイプ8 :タイプ2の柱型がファサード面から突き出たタイプ。

- タイプ9 :ほぼ正方形に近い窓をもっファサードと縦長の窓を中央部に2つ有する ファサードを壁面交互に配置したタイプ。

・ タイプ10 :ほぽ正方形に近い窓をもっファサードと横長の窓をもっファサードを壁 面交互に配置したタイプ。

・ タイプ11 :横長の窓が1 ・ 7 ・ 9階にある以外は、 ほとんどが壁面で構成されるタ イプ。 縦方向には2m、 横方向には長さに応じた値によって壁面に目地 を入れている。

( 2)建物色彩のデータベース化

個別の建物の色彩を調査し、 個別に各建物の色彩を再現することが、 もっとも正確 なシミュレーショ ンの方法である。 しかしながら作業量やデータ量が膨大になるた め、 建物の外観の色も、 外観の形状と同様にそれぞれ12タイプに分類する。 選定方法 として対象地域の航空写真(大分市撮影)により建物のファサードに多く見られる色 を選びだし、 それらの色を色見本によって確認し、 それらのRGB数値をグラフイ ツ

クディスプレイの画面上に出力し実際に都市の中にあって違和感のない色彩かを判断 して 12色を選定した(R G B数値:表6 - 1 )。 この12色は少ないように思われる が、 実際に建物に使用されている色を統計的に調べてみると、 十分に現在の建物ファ サードの色を再現できる。

-

103-( 3 )点景のデータベース化

点景は、 景観画像のリアリティを向上させるとともに、 C Gにスケール感を与える 重要な要素と言える。 本シミ ュレーショ ンでは、 点景を作成する際もできるだけデー タを軽量化し、 かっ、 表現方法を簡略化しながらも画像の中でより効果的に見えるよ うな工夫が必要であると考え、 以下のような点景を作成している。

①自動車

普通車(ク一ぺ、 セダン〉、 パス、 トラックの全4タイプを想定した。 これにはそ れぞれの方向性があるため、 車の位置と方向を決定する際、 車の前後に2点をとり、

最初に取る点を前、 後に取る点を後ろと定義づける。 またその2点を結ぶ線を中心と して左右に一定の幅を持たせ、 それをタイプごとの形に立ちあげる。

②樹木

まず幹となる6角錐の柱を描き、 それを軸とし3角形の平面を60度ごとずらして描 く。 上方からみると6角形になるようにし、 どの方向から見ても同様に見えるように する。 データは描く位置の座標のみとする。

③人物

人物の形を平面で表現。 データは位置の座標のみとする。

( 4 )街区 ・ 建物形態のデータベース化

作成対象地域として、 大分県の県庁所在地である大分市の中心部の一帯を選定した

〈図6

- 2 )。 本地域の建物、 街区の形状をデータベースとして構築するにあたり、

全体の原点を設定する。 つぎに、 なるべく精度高く、 建築物、 街区の平面形状を入力 するため、 大分市の1

/2,500の基本図をもとに対象地域を街区単位に分割した1 /

1,000のブロ ック地図を作成し、 デジタイザーあるいはマウスにより、 建物、 街区の 平面形状を入力する。 なお、 このブロ ック地図にも仮原点を設定し、 全体の原点に対 する 平面座標をデータ化する。 このデータを用いてブロ ック地図のデータの位置変 換、 アーフィン変換を行い、 最終的に全ての街区を統合化し、 街区と建物の平面形状 のデータが完成する。

次にこれらデータから建物を立体化するために、 建物の頂点の数、 街区 ・ 建物の判 別コード、 階数のデータを付加する(図6

-

3 )。

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