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機能について

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第 5 章 考察

5.1 機能について

5.1.1 機能によって理解が異なる原因

分散分析の結果から、学習環境、習熟度に関わらず「提案」と「仮説」の理解度は

「願望」と「放任」より高いことが分かった。これを考えるにあたって、中国の日本 語教科書は「たら」「ば」言いさし文あるいはこの 4 つの機能を持つ「たら」「ば」の 完全文をどうのように提示しているかを見ていきたい。

中国で使用されている代表的な日本語教科書の『新編日本語』(4 冊)12、『新編基礎 日本語』(4 冊)13、『基礎日本語教程』(4 冊)14、『新大学日本語』(4 冊)15を調査した 結果を表 15 に示す。

12 上海外語教育出版社 1993 年~1995 年。

13 上海訳文出版社 1994 年~1995 年。

14 外語教学与研究出版社 1998 年~2001 年。

15 大連理工大学出版社 2001 年~2003 年。

表 15 中国の日本語教科書における「たら」「ば」の提示状況

機能 例文 数

提案

①お母さんにでも相談してみたらどうですか。

②日本語の小説を読んでみたらどうですか。

③とにかく土曜日の昼までがんばってみたらどうですか。

④富士山の高さに近づくことがわかるようにするために、グラフを作っ たらどうかな。

⑤すわったら?

⑥おかけになったら?

⑦相談の結果、お祭りもおもしろいが、遊びよりも文化的なイベントに したらどうかということになりました。

⑧先輩の意見も聞いてみたらどうですか。

⑨休んでばかりいないで、少しは働いたらどうですか。

⑩一つ歌ったらどうですか。

⑪どっちにしろ、数時間後には決着が着いているんだから結果だけ聞け ばいいじゃないか。

⑫A:では、動物園へはいつにしますか。

B:春休みの最初の日、金曜日にしたらどうでしょうか。

⑬A:じゃ、出発は何時にしますか。

B:七時十分前にしたらどうですか。

⑭A:おもしろいですか。

B:ええ、李さんも読んでみたらどうですか。とてもいい本だといわれ ていますよ。

14 例

仮説

①当日もし雨が降ればどうしましょうか。

②その日、もし雨が降ればどうしますか。

③ところで、もし、雨が降ったらどうしますか。

④正しく言えない学生がいたらどうしますか。

⑤じゃ、男の子がいなかったらどうするんですか。

⑥急に寒くなったらどうするの。

⑦私は心配になってきた。父の言うように、もし半年で 100 匹になって しまったらどうしよう。

⑧断られたらどうしよう。

⑨現代の社会で全く情報が得られなかったらどうなるだろう。

⑩林さん、卒業したらどうしますか。

⑪空港に着いたらどうすればいいんですか。

⑫A:面倒くさかったら、結論だけ伝えればいいよ。

B:伝えたとたんに不満が出たらどうする。

12 例

願望

①竹内さんもいっしょに行くことができればいいですね。

②A:あさって、天気がよければいいですね。

B:ええ、今晩、あさっての天気予報を聞いてみましょう。

2 例 放任 ①大学へ行くも行かないも、お前の好きにすればいいさ。 1 例

表 15 に示しているように、中国の日本語教科書の中で、「たら」「ば」言いさし文 は「提案」の機能を持つ「すわったら?」と「おかけになったら?」の 2 例しか提示し ていない。一方、「提案」、「仮説」、「願望」、「放任」の 4 つの機能を持つ「たら」「ば」

の完全文はそれぞれ 14 例、12 例、2 例、1 例が見られた。教科書調査から、「提案」

と「仮説」の「たら」「ば」完全文が他の機能を持つ完全文に比べて多く教えられて いることがわかった。ここから、学習者が持っている文法知識では、「提案」と「仮 説」の「たら」「ば」言いさし文の方が「願望」と「放任」より馴染みがあるため、

理解しやすいと考えられる。

5.2.2 機能において学習環境には差がない原因

分散分析の結果から、学習者の機能についての理解は学習環境に影響を受けないこ とが分かった。学習者が目標言語に接する機会がほぼ教室に限られる外国語環境と比 べ、第二言語環境では学習者が教室外で、多くの目標言語母語話者に接する機会があ り、必要なインプットの量、種類、頻度ともに豊富に得ることができると考えられて いるが、なぜ「たら」「ば」言いさし文の談話機能の理解について、第二言語環境に 滞在することによっても変化がないのだろうか。

その一因として、学習者が必要とするインプットが常に手に入るとは限らないこと が挙げられる。中島(1997)は自然談話「職場における女性の話しことば」を資料とし て分析し、「提案」の談話機能を持つ「たら」「ば」言いさし文はインフォーマル場面 の出現数のほうが多く、改まり度は低いと指摘している。中島(1997)の結果から、「た ら」「ば」言いさし文は改まり度が低いため、母語話者は親しい相手には使うが、留 学生には使わないと推測できる。つまり、インプットの機会が少ないため、学習者が 第二言語環境に滞在しても、理解の面では進まないと示唆される。

他の原因としては「たら」「ば」言いさし文のインプットに接しながらも、条件文 であると捉え、いいさし文であることに気づかないことということも考えられる。学 習者は既に持つ「たら」「ば」を条件節として扱う知識に無意識に依存し続ける可能 性があると思われる。第二言語習得では、「気づき」が非常に重要だと考えられてお り、Schmidt(1990)の気づき仮説によると、学習者は理解可能なインプットに触れて、

そのインプットの意味が理解できたとしても、そのインプットの中にあったものすべ てが習得されるというわけではない。インプットにあるものの中で、中間言語発達の

ために学習者によって取り入れられたインプットを「インテイク」と呼ぶ。そして、

インプットがインテイクになるために気づきが必要である。つまり、習得が起こるに は意味がわかるだけではなく、そこで使われた言語形式に学習者が気づかなければな らないということである。

「たら」「ば」言いさし文の場合でも同様のことが言える。つまり、JSL の学習者が

「たら」「ば」言いさし文のインプットに接しながらも、条件文であると考え、言い さし文であることに気づかないこともあり得る。そうした気づきが起こらなければ、

「たら」「ば」言いさし文についての理解が進まないと推察される。

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