第 4 章 光劣化のメカニズム
4.2 樹脂材料の劣化(透過率/反射率の低下)
どのような種類の光によって樹脂材料の劣化が起こるのであろうか。それを知るために、
図 4.2-1 に光の波長とエネルギーの関係を、また表 4.2-1 に有機部材を構成する主要な結合 の結合解離エネルギーを示す。
図 4.2-1 と表 4.2-1 を見比べれば、ちょうど可視光から紫外光(エネルギーで 35〜286
[kcal/mol])の領域、中でも青から紫外にかけての領域で、主要な結合解離エネルギーが 含まれていることがわかる。ただし、照明用 LED パッケージの光源として使われる青色 LED チップの発光スペクトルは、一番エネルギーの大きい短波長側のすそでも 400nm 程度であり、
この光を受けて化学結合の切断が起こるとは考えにくい。
有機部材中には微量ながらヒドロペルオキシド基やカルボニル基、金属、金属化合物など の官能基や不純物が存在し、それらが光を吸収してフリーラジカルを生成して劣化を開始す ることが知られている。
このため、対象とする有機部材が本来その波長域の光を吸収しない組成であっても、この 仕組みによって光劣化が引き起こされてしまうと考えられる。
図 4.2-1 光の波長とエネルギーの関係図
表 4.2-1 主要な結合解離エネルギー
波長λ [nm] 0.001 0.01 1~100[μ m]
名称 γ 線 紫外線 マイクロ波
遠紫外 近紫外 紫 青 緑 黄 橙 赤 近赤外 遠赤外 励起のタイプ
光のエネルギ [eV]
[kcal/mol]
700 600
100 200 300 800
可視光線 赤外線
内殻電子 原子価電子 原子価電子 分子振動
400 X線
500
12.4 286
6.2 4 143 95
3.1 2.5
41 35 72 57
1.8 1.55 2.1
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波長域 結合の種類 結合解離エネルギ[kcal/mol]
O-H 110.6
C-H 98.9
C-C 83.1
C-Cl 78.5
C-I 57.4
N-N 38.0
赤外 O-O 33.2
紫外
可視
129 この光劣化は有機部材中に含まれている酸素によって促進され、さらに実際の LED パッケ ージでは光放射とともに必ず発生する熱によってなお一層加速される。劣化によって発生し たフリーラジカルは光や熱を受けてさらに次の劣化を引き起こすので、劣化は自動的に進行 する(自動酸化)。
一般に封止樹脂が光劣化を起こすと、図 4.2-2 のように透過スペクトルが狭くなってくる。
これは光劣化によって封止樹脂中に発色団が形成され次第に黄変してくるためである。
図 4.2-2 樹脂の透過スペクトルの劣化
図 4.2-3 に示す A と B の二種類の封止樹脂では、より短波長域まで透過スペクトルが延び ている樹脂 A の方が樹脂 B よりも光劣化が少ない。これは樹脂 A の方が樹脂 B よりも光吸収 が少ないためである。したがって高出力と長寿命が求められる照明用 LED パッケージでは、
従来から使用されてきたエポキシ樹脂ではなく、樹脂 A のように短波長側まで透過特性の良 いシリコーン樹脂がよく用いられる。
図 4.2-3 樹脂の透過スペクトルの比較 100
50
0
300 400 500 600 700 800 200
波長[nm]
光透過率[%]
初期特性
通電後
100
50
0
300 400 500 600 700 800 200
光透過率[%]
波長[nm]
樹脂A
樹脂B
130 LED パッケージのケースに用いる光反射樹脂の場合も封止樹脂と同じメカニズムで光劣化 を起こし反射率が低下すると考えられる。
一般に光反射樹脂は酸化チタンなどセラミックスのフィラーをポリアミド系などの熱可塑 性樹脂に混合したものが用いられ、これを射出成型などの方法によってケースの形状に成型 する。
光反射樹脂に LED チップからの光が当たると含まれているセラミックスフィラーによって 反射されるが、フィラーに当たるまでは光は樹脂中を進行することになるので、この時にケ ース表面近傍の樹脂が光劣化して黄変着色し、これによって反射率が低下することになる。
なお、封止樹脂の劣化を防ぐため各種の劣化防止剤が検討されているが、抜本的な対策に は至っていないのが現状のようである。
ケースの劣化を完全に防ぎたい場合は、樹脂ではなくアルミナなどのセラミックスのパッ ケージが用いられる。
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