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第 5 章 試験方法

5.8 生体安全性試験

5.8.2 光の生体安全性リスク評価のための国際規格(IEC/CIE 規格)の概要

光の生体安全性リスク評価を定量的に行うためには、先ず、対象となる光の傷害的(また は障害的)諸作用についてまとめておく必要がある。リスク評価のための最初の重要点は、

前項で述べた諸作用(傷害や障害)について、発症の機構、作用波長(作用スペクトル)や、発 症の閾値などが定量的に明らかになっていることである。現時点において、発症しているか、

または発症する可能性のある光の傷害的(または障害的)諸作用について、これらの要素が全 て明確になっているわけではない。

前項で述べたレーザーの生体安全性リスク評価規格:IEC 60825-19)には、規格書の附属書 D:生物物理的考察(参考)(Annex D : Biophysical considerations(Informative))において、

この規格が対象としている光生物的作用が、表 D.1:光に対する過度の露光に伴う(人体へ の)病理学的作用(Pathological effects associated with excessive exposure to light) としてまとめられている。この表 D.1 はレーザーの関連規格書であるが、一般照明用光源に も充分適用できるので、ここに引用・掲載しておくこととする(表 5.8.2-1)。ただし、一般 照明用光源をも対象とするに当り、若干の追加改変が必要であると考えられる。表 5.8.2-1 には、IEC 60825-1 の表 D.1 の内容に、若干の追加・改変を加え、光による生体安全性リ スク評価の対象となる諸作用をまとめた。

159 (2)IEC/CIE 規格(生体安全性リスク評価規格)の対象になっている傷害の種類

IEC/CIE 規格(IEC 62471-1/CIE S 009/E)においては、光放射による人体への生体的傷 害の中で、現在までに生理的・病理的に研究が進んでいて、傷害発生の機構や発症の閾値、

作用スペクトルなどがある程度明らかになっている 8 種類の傷害を対象とすることとしてい る。表 5.8.2-2 に、これら 8 種類の傷害についてまとめたものを示す。なお、同国際規格は JIS C 7550 として JIS 規格が制定されている。

表 5.8.2-1 生体安全性リスクの対象としている生体に対する傷害・障害の種類

(IEC 60825-1 附属書 表 D.1:過度の伴(人体への)病理学的作用より引用・改変)

(注)

1. CIE によって定義されている波長区分は,生物的作用を論ずる時に有効な記号であるが,(原 規格(IEC 60825-1)の)MPE 表の波長区分とは完全には整合していない。

2. UV-C の波長区分は,CIE による区分10)では:100nm – 280nm であるが,原規格の対象波長域が,

180nm – 1mm であるので,この表では 180nm – 280nm とした。

3. 対象に光環境用(一般照明用)光源によるリスクも含めるため,若干の追加・改変を行った。

160 表 5.8.2-2 IEC/CIE 規格が光の生体安全性リスク評価の対象としている人体に対する傷害的作用

(注)

基準物理量の欄の「有効放射○○」の「有効」は,作用スペクトルによった重み付けされた物理量 であることを示している。

(3)許容露光量(Exposure Limit)

前項の各傷害に対する許容露光量は、傷害の種類により放射照度または放射輝度の時間積 分値で評価する必要がある。光放射の人体に対する傷害の許容露光量について、過去に制定 された種々の国の国家規格や、国家規格に準ずる規格を調査し、次の4件を重要に参考する こととした。

ア. ICNIRP(International Commission on Non-ionizing Radiation Protection) のガイドライン11),12)

イ. ACGIH(アメリカ保険機構)の TLV13)

ウ. ANSI/IESNA 規格の中の RP-27 シリーズ14)~16) エ. DIN 503117), 18)

これら4件の規格類を主に参照し、許容露光量の基準値を定めている。

(4)リスクグループ区分

IEC/CIE 規格では、照明用光源を、光生物的傷害リスクの大きさに応じて、4グループ に区分することとした。このリスクグループ区分は、あくまで“傷害を生じる可能性がある (potential hazard)”という考え方で区分することを基本としている。“必ずこの傷害が生 じる”ということではないとしている。

リスクグループ区分においては、区分する尺度の数値はもちろん重要であるが、数値より も区分するコンセプトがより重要であることとしている。今後適用していく段階で、区分す

161 る数値は見直される可能性があるが、コンセプトの方はあくまで優先的基準であるから、容 易には変えないようにすることとした。

表 5.8.2-3 に、IEC/CIE 規格により制定された光の生体安全性リスクの区分の名称と、

区分のコンセプトをまとめたものを示す。

表 5.8.2-3 IEC 62471-1/CIE S 009/E によるリスクグループ区分の名称および区分のコンセプト

(5)アクセス可能時間とリスクグループ区分

光環境用光源や光学機器用光源によるリスクを検討する場合、生体(人間)がかかわる時間、

すなわち、その光環境に滞留する時間や、(点灯状態の)光学機器を扱う時間が重要となって くる。この場合、対象とする傷害の発症の閾値と、その光環境または、光学機器を取扱う状 況における有効放射量が求まれば、次の式 5.8.2-1 により、アクセス可能時間(その光環境 に滞留することができる時間または、その光学機器を取扱うことができる時間の最大値)を 求めることができる。

この IEC/CIE 規格(IEC 62471-1/CIE S 009/E)の規格書には、各傷害の発症の閾値と有効 放射量(有効放射照度または有効放射輝度)を求める方法が示されている。

   

2

2

m W

m S J

 

有効放射時間  

値   対象の障害の発症の閾

アクセス可能時間  

1.有効放射照度:作用スペクトルで重み付けした放射照度 2.評価する物理量が放射輝度の場合も 式 5.8.2-1 に準ずる

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