第5章 樹液発電を用いた植物成育モニタリング システム
5.2 樹液発電デバイスの構成法 .1 樹液発電デバイスの発電原理
樹液発電デバイスの発電原理を図 5-1 に示す.樹液発電デバイスは,2 種類の電極として働く亜鉛,及び,ステンレスで構成され,電解液に木の樹 液が用いられる.土は普段マイナスに帯電しているため,カリウムイオンや カルシウムイオン,マグネシウムイオンなどの陽イオンを引き付けている.
植物が植えられている場合,これらの陽イオンは根側へと引き寄せられ,根 と土の界面でイオン交換が起こり,水素イオンが土側へ追い出される( 6 ). 亜鉛電極を木の幹に挿し,ステンレス電極を木が植えられている付近の土に 挿さして,それらの電極間に負荷を接続すると,イオン化傾向の大きい亜鉛 電極では,樹液内に亜鉛イオンが溶け出すと同時に電子を放出し,ステンレ ス電極では,亜鉛電極から受け取った電子と土中の水素イオン が反応する.
その結果,ステンレス電極から亜鉛へ向けて電流が流れる.樹液発電デバイ スのアノード電極,及び,カソード電極での化学反応式はそれぞれ式(5-1),
式(5-2)で示される.
𝑍𝑛 → 𝑍𝑛
2++ 2𝑒
− (5-1)2𝐻
++ 2𝑒
−→ 2𝐻
2 (5-2)樹液発電デバイスの起電力は,主に,2 つの電極間の標準電極電位の差に よって決められている.樹液の中に溶け出す亜鉛イオンの量は,もともと樹 液に含まれている植物の成長に必要な亜鉛イオンの量(7)-(9)に比べて極め て少ないため,上記の化学反応による植物への影響はないと考えられる.
図5-1 樹液発電デバイスの発電原理
5.2.2 樹液発電デバイスの構成
樹液発電デバイス(5)を図 5-2 に示す.樹液発電デバイスは,植物,土,
及び,針状にした亜鉛電極,棒状のステンレス電極で構成される.本研究で は,樹液発電デバイスの発電特性評価のためにパキラを用いた.亜鉛のサイ ズは,直径3 mm,長さ40 mmとし,ステンレスのサイズは,直径 3 mm,
長さ350 mmとした.亜鉛電極はパキラの幹に挿されており,ステンレス電
極はパキラが植えられている土に挿されている.
図 5-2 樹液発電デバイスの写真
5.2.3 樹液発電デバイスの発電特性評価
樹液発電デバイスに10 mFのキャパシタを接続した場合の発電特性を図5
-3に示す.測定には,11 Mの内部抵抗を持つデジタルマルチメータを用 いた.発電電圧は,約 1時間後に0.8 Vに達した.樹液発電デバイス自身は,
0.3 Mの内部抵抗を持ち,解放電圧は 1 Vであった.また,その時の樹液発
電デバイスの短絡電流は 3 Aである.
図5-3 樹液発電デバイスの発電特性