第6章 今後の課題
6.3 植物成育モニタリングシステムの課題
6.3.1 無線信号受信間隔と周囲環境における関係性の追究
第5章の5節で示した,植物モニタリングセンサから送信された無線信号 の受信間隔を7日間記録したグラフ,及び,その時の周囲の気温や湿度,土 の水分量などの状態を記録したグラフをそれぞれ図 6-3(a),(b)に再度示
す.図 6-3(a)に示した信号の受信間隔のグラフの縦軸を受信回数として
プロットし直したものを図 6-4 に示す.また,図 6-3(b)の土の水分量 のグラフも一緒に示した.信号の受信間隔は,大きめのドットでグラフ内に 示したように,ある一定のタイミングで変曲点をもつことが分かった.それ ぞれのドットを見比べると,信号の受信間隔の変曲点は,土の水分量が上昇 し始めた直後に毎回現れていることが分かる.また,信号の受信間隔のグラ フは,変曲点を起点にして次の変曲点までの間で徐々に傾きが緩やかになっ ており,この時の土の水分量は徐々に減少している.これらのことから,信 号の受信間隔は,土の水分量が減少することで,長くなると考えられる.さ らに,信号の受信間隔のグラフは,緩やかになっていた傾きが,変曲点を境 にして急になっており,この時の土の水分量は少し上昇している.このこと から,信号の受信間隔は,土の水分量が増加することで,短くなることが考 えられる.よって,信号の受信間隔は,周囲環境と関係があると考えられる.
今後,無線信号受信間隔と周囲環境における関係を明確にしていく.
図6-3 無線信号が送信されている時の木の周囲のコンディション
(a)無線信号の受信間隔 (b)周囲の温度,湿度,土の水分量
6.3.2 無線送信信号への個別識別用 ID 情報の付加
本研究で試作した無線送信機の送信信号には,ID情報が付加されておらず,
同時に複数個の植物成育モニタリングセンサを使用することができないとい う問題がある.この問題の解決策として,植物成育モニタリングセンサに用 いる無線送信機に,ID情報を付加した無線信号を送信する機能を搭載させる ことが考えられる.しかしながら,ID情報を付加した無線信号を送信させる ための処理を行うには,送信データの制御等を行うCPUなどが必要となり,
無線送信機の消費電力が大きくなる.今後は,無線送信回路の低電圧駆動に よる低消費電力化を行うことが課題である.
6.4 まとめ
本章では,本研究を通じて明らかになった尿失禁センサシステム,及び,
植物成育モニタリングシステムの今後の課題を考察した.以下に得られた結 果を要約する.
(1)本研究に用いた尿発電デバイスの電極である二酸化マンガンは安全性 に問題があり,このままでは実用化できないため,改善策として,二 酸化マンガン電極の代わりに,炭素電極を用いた尿発電デバイスを提 案した.炭素電極の内部抵抗は大きいため,内部抵抗を小さくするた めに電極面積を広げる電極構造の例として,今後,スポンジ状の構造 の検討を行うことを示した.
(2)尿発電デバイスは,内部抵抗に非線形抵抗成分を持った発電特性とな るため,開放電圧に達するまでは時間が極端に長くなるという特徴が あり,間欠電源変換回路の検出電圧が尿発電デバイスの開放電圧付近 である場合,尿失禁センサの応答速度が遅くなってしまうという問題 があることを示した.解決策として,負荷を駆動するための昇圧回路 の前段に,低電圧で昇圧を開始することが可能な昇圧回路を接続する 回路構成例を提案し,今後,低電圧から昇圧可能な回路構成の検討を 進めていくことを示した.
(3)植物モニタリングセンサシステムの信号の受信間隔,及び,土の水分 量のグラフの関係から,信号の受信間隔は,周囲環境と関係があると
が必要など,消費電力が大きくなるため,今後は,無線送信回路の低 電圧駆動による低消費電力化を行うことが課題であることを示した.