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植物資源に関する権利

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ここで, 改めてABSのもととなっているCBDでは植物の利用権をど のように扱っているのかを見てみよう。 CBDは前文と42条および附属書 からなり, そのなかで植物 (生物) の利用権に関連する重要な事項は, 3 つにまとめることができる。 すなわち, 「1. 植物資源の取得に関する事項」

「2. 外国から取得した生物遺伝子資源 (動植物) の利用に関する事項」 「3.

知的所有権と資源保有国への技術移転に関する事項」 である。 以下, この 3項目について, 現実にどのように実施・運用されているのかを検証する。

植物資源の取得

CBDの第15条の1に, 「各国は, 自国の天然資源に対して主権的権利 を有するものと認められ, 遺伝資源の取得の機会につき定める権限は, 当 該遺伝資源が存する国の政府に属し, その国の国内法令に従う」 と定めら

れている。 さらに, 条約第15条の5に 「遺伝子資源の取得の機会が与え られるためには, 当該遺伝子資源の提供国である締約国が別段の決定を行 う場合を除くほか, 事前の情報に基づく当該締約国の同意を必要とする」

と定めている。

そのため, 外国で植物を採取するには, その国の政府の植物採集許可を 得るとともに, 国外に持ち出す時には, 植物の輸出許可が必要とされる。

この方式はCBDの発効以前にも, ブラジルをはじめペルー等の南米諸国 が実施している。

また, 「提供国が別段の決定を行う場合」 とは, その国の政府が個々の 植物について国外への持ち出しを禁止したり, 許可制にするなどの規制を 行うことと解釈される。 これによって, 植物資源が豊富な各国により, 植 物資源の国外持ち出しに関するリストを表示した国内法令がつくられつつ あり, 新たな植物種の入手はますます困難になってきている。

しかし, この点に関してはいわば 「抜け道」 がある。 植物の分布には国 境がなく, A国で国外への持ち出しを禁止している種が, B国にも分布し, そこでは輸出禁止リストに入っていない, ということも考えられる。 これ に対処するため, 南米のアンデス山脈一帯のコロンビア・ボリビア・エク アドル等は, 共通した植物種を対象にした 「アンデス協定」 を結び, 植物 資源へのアクセスには共同で対処することとしている。

また, この点に関しては, 名古屋議定書の第11条にも 「同一の遺伝資 源が, 複数の締約国の領域内にある生息域内に認められる場合, 当該締約 国は, この議定書を実施するため, 該当する場合には関係する原住民の社 会及び地域社会の関与を得て, 適宜, 協力するよう努める」 としている。

利益配分

名古屋議定書の中心となったABSつまり利益配分について, CBDでは 第15条の7節に 「締約国は, 遺伝資源の研究及び開発の成果並びに商業

的利用その他の利用から生ずる利益を当該遺伝資源の提供国である締約国 と公正かつ衡平に配分するため, (中略) 適宜, 立法上, 行政上又は政策 上の措置をとる。 その配分は, 相互に合意する条件で行う」 と規定してい る。 これは, 個々の企業のみでなく, 資源の提供国と利用国の政府の間で 互いに合意できる条件で利益配分をするという意味である。

利益の配分は, 本条約の3つの柱すなわち 「1. 生物多様性の保全」 「2.

生物多様性の構成要素の持続可能な利用」 「3. 遺伝資源の利用から生ずる 利益の公正かつ衡平な配分」 の中では3番目であるが, 開発途上国にとっ ては最も重要な意味を持つ。 前述したように, 植物を 「開発国の利用のた めに」 保存するには多額の費用がかかる。 さらに, その土地の開発によっ て, 得られるであろう利益を犠牲にしているのだから, 開発国に対してそ の補償を求めるのは当然の権利であるという主張である。

なお, 自然保護にかかる多額の資金は企業体のみでは支出できないので, 第20条の2項で 「先進締約国は, 開発途上締約国が, この条約に基づく 義務を履行するための措置の実施に要するすべての合意された増加費用を 負担すること及びこの条約の適用から利益を得ることを可能にするため, 新規のかつ追加的な資金を供与する」 とし, 生物多様性の保護のため, 先 進国が主として資金の負担し, 途上国への供与することを規定している。

近年, 南米諸国を中心に遺伝子資源の提供国側の利益分配要求がますま す大きくなっており, 企業体のみで利益配分に応じるのは困難になりつつ ある。 しかし, 日本の植物産業の発展のための政府取り組みは欧米の先進 国, 特にアメリカ・イギリス・ドイツ・フランスに比べ大きく遅れをとっ ている。 今後より一層の取り組みが求められる。

知的所有権と技術移転

CBDの第16条の1項には 「締約国は, 技術にはバイオテクノロジーを 含むこと並びに締約国間の技術の取得の機会の提供及び移転がこの条約の

目的を達成するための不可欠の要素であることを認識し, 生物の多様性の 保全及び持続可能な利用に関連のある技術又は環境に著しい損害を与える ことなく遺伝資源を利用する技術について, 他の締約国に対する取得の機 会の提供及び移転をこの条の規定に従って行い又はより円滑なものにする ことを約束する」 と記されている。

この背景には, 途上国から開発国への技術移転に対する強い要望がある。

しかし, ここで技術移転の際, 開発国 (主に先進国) の所有する特許権, その他の知的所有権の保護が問題となる。 この点は第16条の2項で 「特 許権その他の知的所有権によって保護される技術の取得の機会の提供及び 移転については, 当該知的所有権の十分かつ有効な保護を承認し及びその ような保護と両立する条件で行う」 と規定されている。

つまり, 知的所有権の保護と両立するような方法で技術移転を行うとし ており, 先進国と途上国の妥協の産物ともいえる。 しかし, 第16条全体 を見ると, 知的所有権の保護よりも, 途上国への技術移転の促進のほうが 重視されているような表現になっている。

一方, 第15条の2節には 「締約国は, 他の締約国が遺伝資源を環境上 適正に利用するために取得することを容易にするような条件を整えるよう 努力し, また, この条約の目的に反するような制限を課さないよう努力す る」 とある。 つまり, 提供国は遺伝子資源の適正利用に協力するように規 定しているが, 第16条全体に比べて弱い表現である。 すなわち, 開発国 にとって植物の入手が困難になる一方で技術移転への要求はますます強く なっているのである。

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