• 検索結果がありません。

原油デリバティブ取引

ドキュメント内 .o.c.o ren (ページ 92-119)

21 デリバティブ:オフショア市場の金融派生商品

日本ではデフレ下でありながら都銀等金融機関は利益を拡大しているが, その利益の大きな部分がデリバティブによる収益である。 デリバティブ (derivative金融派生商品) とは金融取引や実物商品・債権取引の相場変 動によるリスクを回避するために開発された金融商品総称であり,95年以 降数年にかけてみずほ銀行は, これにより都銀トップの 「業務純益」 によ り不良債権を償却したが, 償却原資となる業務純益を債券と金利スワップ で上げる事ができた。 反面で米国債と通貨オプションで東京証券がデリバ ティブにより失敗, また為替先物で同和鉱業, 鹿島石油が大損失している。

デリバティブの日本市場導入背景には, 日本銀行 「国際収支統計月報 2011」 で外為法改正により外=外取引が企業に規制緩和されたことが解説 されている。 機関投資家による海外証券投資残高である 「海外金融資産」

は110兆円 (09年) に上り, 日本は海外ドル資産を大量に所有する国と なった。 円高, ドル安も, 日本国内で交換しない限り為替レートも無関係 であるから, もはや国内には還流することのない対外ドル金融資産である。

世界ドルは, 対米国貿易国の債権として巨大な産油国オイルダラー, ユー ロダラー, アジアダラーとなり, これらが金融工学を得て海外で自己増殖 する資本となって成長した。 とくにその発展契機はオフショア・オフバラ ンス取引である。 即ち各国の規制の及ばないオフショア市場 (国内の金融 制度, 税法規制などを受けないグローバル国際金融市場) で自由に取引で

きること, そしてオフバランス取引 (貸借対照表に記載されない簿外取引) が可能なことである2)

原油先物取引では圧倒的にヘッジファンドのシェアが高まり, 市場操作 力をもっている (表6)3)

① 金融デリバティブ取引とプライシング理論

エネルギー資源の中心的役割を担う原油の殆どを海外に依存する日本で は, 民需コストに直接影響する故, この資源価格の急変動は好ましくなく, 長期安定的供給が重要である。 しかし, 国際商品市場の一方では, 例えば 金融商品ファンド等の価格変動を選好し価格の変動幅が大きいほど機会利 益の得られる金融商品対象になっている。

近年, 原油取引は商品取引の実体を離れ, 仮需要である投資により, 価 格変動の利鞘を目的としたファンド動向が, 原油価格に大きな影響を持つ ようになっている。 デリバティブ商品化では, 外国為替, 通貨, 金利, 株

2006 2007 2008 2009

31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15

160 150 140 130 120 110 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 ファンド玉占有率

原油先物相場 ($/バレル) (%)

6 NYMEX原油先物総取組高にヘッジファンドの占めるシェア

($)

1

/3 2

/20 4

/10 5

/29 7

/17 9

/4 10

/23 12

/11 1

/29 3

/18 5

/6 6

/24 8

/12 9

/30 11

/18 1

/6 2

/24 4

/14 6

/2 7

/21 9

/8 10

/27 12

/15 2

/2 3

/23 5

/11 6

/29 8

/17 10

/5 11

/23 1

/11 3

/1 4

/19 6

/7 7

/26 9

/13 11

/1

2007年 2008年 2009年 2010年 2011年

(出所)Bloomberg5 2010より

価変動率, 商品取引相場までの 「原商品」 から広範多岐に金融工学により 商品化, 金融工学の手法を導入する。 著名な研究としてはハリー・マーコ ウィッツポートフォリオ理論 (1950年代), フィッシャー・ブラック, マイ ロン・ショールズ (1970年代) らによるデリバティブの価格理論,Harrison, Kreps, Pliskaらによる確率同値における無裁定性と均衡などがある。 尚, デリバティブの数理手法では, デリバティブ・プライシング理論が中心で あり, 特にブラックショールズ方程式は, ヨーロピアン・オプション評 価式 (期限付き) である。

② 金融デリバティブ取引の特徴

デリバティブとは, 基礎となる商品 (原資産) の変数の値 (市場価値ある いは指標) によって, 相対的にその価値が定められるような金融商品であ る。 デリバティブ取引は, 債券や証券 (株式や船荷証券, 不動産担保証券 など), 実物商品や諸権利などの取扱いをおこなう当業者が, 実物の将来 にわたる価格変動を回避 (ヘッジ) するためにおこなう契約の一種であり, 原資産の一定%を証拠金として供託することで, 一定幅の価格変動リスク を, 他の当業者や当業者以外の市場参加者に譲渡する保険 (リスクヘッジ) 契約の一種でもある。 市場で取引される債券・商品には 「標準品指数」 が あり, 個別商品の先渡契約 (forward) は一般にデリバティブに含まない。

デリバティブの利用目的には, 本来のリスクヘッジの他, スペキュレー ション, アービトラージがある。 デリバティブ取引の効果として主には差 金決済 (レバレッジ効果) が大きく, ショートポジションが可能とされる。

デリバティブはこのレバレッジ効果を有するため, たびたび投機的な運用 資産として, 多額の損失を生じ, 問題となっている。 英国のベアリングス 銀行や米国のカリフォルニア州オレンジ郡など, 運用セクションによるデ リバティブ運用の失敗により, 企業や地方行政の存続に大きな影響を与え る事件は後を絶たない。 そのため, 現在では, 多くの会社ではデリバティ ブへの投資に対して, リスクをモニタリングする仕組みが導入されている。

銀行業の場合は, BIS規制や金融検査マニュアル等でそのデリバティブの 運用に対する体制整備が求められる。

③ 原油デリバティブ取引契約と取引事例

原油デリバティブ取引拡大で, 特に市況が乱高下する場合に, 契約者が 大損失を受ける事例が多発傾向となっている。 投資リスクは, 売買取引当 事者にとり相反関係にあり, 利鞘を取る側の投資行動の逆張りを行なわな いと損失リスクを負うことになる。 常に相場では情報ギャップが取引ゲー ム上, 問題となる。 相場変動の情報はディーラーに有利であり, 市場情報 はブラックボックス化され弱者プレイヤーは情報の検証ができない立場に ある。 また売買当事者が拮抗して相場が動かなくなると, 仲介業者は手数 料利益が得られないので, 業者は相場の上げ下げ変動を期待する。 すると 強者のプレイヤーとディーラー間で相場変動が引起される。 情報非対称性 は, プレイヤーが保有する情報分布に偏りがあり, 経済主体間において情 報格差が生じている事実を表し, デリバティブ取引ではプリンシパル=エー ジェント関係において情報の非対称性が常に存在しエージェンシー・スラッ クとなる。 情報の非対称性への対策として, シグナリング (signaling, market signaling), またはスクリーニング (screening, market screen-ing) の方法が挙げられる (図2)。

④ デリバティブ取引の応用

東京外国為替取引では, 取引の90%以上が輸出入実需とは別の仮需要 による資本取引または投機である。 実体経済の世界貿易輸出入額は年間8 兆ドルであるのに, 仮需要によるドル為替世界取引は80兆ドルであり, FRBがTB (米国財務省証券:米国債) を自己引き受けするようになり 120兆ドル (約1京円) が世界投資市場で余剰流動していると言われる (CDSで元本推計60〜70兆ドル/2009年)。 このドル過剰供給とドル減 価の経済の中にあって, オプション取引に応用し, 金融機関や企業が, デ リバティブによってリスクを避けながら利益を追求しうる外=外資本取引

が新外為法 (平成21年) により, 原則自由化された。

⑤ 資源貿易商品のプライシング:金融工学と資源市場のリスクヘッジ 資源商品は, 比較的早期の段階に価格変動の対策のために金融工学が活 用され, フォワード, フューチャーズ他のリスクヘッジ手法や, ファンド 商品が作られたが, 価格変動リスクを細分化し, 分散ヘッジし, ポートフォ リオ管理するなど様々なリスク回避手法が市場で採用され, 従来の市場取 引手法では, もはや対応できないほどの多種多様な戦略が採用されている (表7)。

⑥ デリバティブ取引規制

現在, デリバティブ取引のバラックボックス化に対抗するスティグリッ ツ・スクリーニングが活発に行なわれるようになる。 以下にその事例を挙 げる。

「OPEC事務局長:原油関連デリバティブ店頭取引, 規制強化を FT」 原油輸出国機構 (OPEC) バドリ事務局長は英紙フィナンシャル・タイ ムズ (FT) とのインタビューで, 原油市場は 「混乱」 に陥るリスクがあ

価 格

2 情報非対象下の市場均衡

需要量・供給量 需要曲線

供給曲線1

供給曲線2

(出典) 藪下史郎 「非対称情報の経済学」 光文社, 2002, p.120より作成

り, 原油に関連する金融商品が十分に規制されない限り世界の供給に支障 が生じる可能性があるとの見解を示した。 バドリ事務局長は, 原油相場の 変動は非公開の相対取引が行われる店頭デリバティブ (金融派生商品) 市 場によって増幅されていると指摘。 このような市場は実際の現物需給より 強い影響力を持っている場合が多いとの見方を示した (11月24日, ブルー ムバーグ)。

以下, 実際のデリバティブ損失事例を掲げる。

デリバティブ損失の事例:大阪商船三井の重油取引

国際海上運賃は船舶余剰もあり, 低く抑えられている。 従って船舶傭船 料では, 燃料費の割合が高くなる。 三井は燃料価格の下落局面で, 価格上 昇をヘッジするための燃料デリバティブ商品を金融機関から購入したが, 燃料価格の下落で約130億円の損失が発生した。 重油価格は2008年7月 750ドル/tと大阪商船三井の期初想定 (530ドル) に比べ大幅に上昇し た。 10月に500ドル近くまで下がった時点で, 同社は再度上昇に対しヘッ ジ取引をした。 思惑とは逆に, 重油価格は11月に250ドル/tまで下が り, 結果的に割高な価格帯で燃料費を固定化したことになった。

デリバティブ損失の事例:航空会社のBAF

日本の航空会社は, 海外の航空会社に比して割高な航空燃料サーチャー ジを, 国際市場で燃料費が下がっても支払い続けることになった。 2005 年時点全日空は約8割, 日本航空は約5割の燃料調達分につき, 原油デリ

7 原油・原油製品デリバティブ市場の取引形態事例 取引所上場商品

(先物・オプション)

NYMEX (WTI), ICE(北海ブレント)

東京工業品取引所 (中東産 及びドバイ・オマーン) 店 頭 取 引

(ペーパー市場)

ドバイスワップ

TAPIS/APP (アジア原油価格指数) スワップ

ス ワ ッ プ (エキゾティック商品)

クラック・スプレッドスワップ ギャップ, フロアー

バティブ導入により価格上昇ヘッジをした。 3年程度先までの燃料調達に 先物取引を活用する航空大手では, 貸借対照表でヘッジ取引の含み損を示 す 「繰延ヘッジ損失」 が急拡大。 2008年12月末時点で日本航空が約2,400 億円損失, 全日本空輸が約1,000億円損失に達した。 燃料費の下落した現 在でもかなりの割高な先物予約の燃料費を支払い続けている。

22 ゲーム理論とデリバティブ

現在, デリバティブは, 日本の上場企業の85%が収益・損失の一部に 計上するまで一般化した経営技術である。 尚, 日本では, 投資銀行の役割 を市中銀行が損保と提携して商品化している。 損保補償をつけた商品化規 制により取引リスクを回避する制度趣旨である。 デリバティブ (金融商品 取引法第2条第24項) について金融機関は顧客に対し, 将来の価格変動 リスクをヘッジするため売買対象の商品に対して一定の割合の証拠金を供 託させて, 「一定幅の価格変動リスクを他人に譲渡する一種の損害保険契 約」 と説明する。 金融商品のリスクに値段を付けて転売する仕組みである。

① 強者と弱者の市場対戦ゲーム

ハイリターンであれば必ずハイリスクであり, 特に市場取引は一定期間 を総計すれば総和マイナスことが一般的であるから, 誰かの収益は, 一方 の者の損失になり, 情報ギャップのあるプレイヤーが, 市場取引コストを 相殺しても損失の側になる比率の方が高い (表8)。

取引リスクを限りなく細分化し, 情報を非対称にして顧客を情報支配し, 取引リスクを相手方エージェントプレイヤーに負わせることがデリバティ ブの仕組みを作るプリンシパルの要所である。

中心となるデリバティブ・プライシング理論では, 特に確率式で熱伝導, 軌道計算の微分方程式を使いこなすことによる比較優位性がプリンシパル に生じ, 一方でエージェントに特に困難なのは情報加工作為や, 誘導の狙 い等の情報検証である。 ゲーム理論からのデリバティブ検証も始められた

ドキュメント内 .o.c.o ren (ページ 92-119)