第9章 過去
2 人の格闘家を部下に高重力ルームに案内させると、火星皇帝は手元の電話で、科学 者のドクター・トリックを呼ばせた。
「ドクター・トリックよ。例のものは用意できたか?」
「ハイ、二体共です。一体は地球で拉致してきた女性格闘家に強化手術を行ったもので す。二体目は我々の科学力が生み出したキラーマシンです。一体目には洗脳マスクをか ぶせて、ポルゴの戦闘データと対策をインストールしています。もちろん、火星皇帝閣 下への忠誠も誓わせています。地球での記憶は全て削除してあります。キラーマシンの 方は、その内蔵コンピュータにポルゴの格闘データを全てインプットしてあります。」
「なるほど。さすがは、ドクター・トリック。今後の研究費も弾ませてもらおう。た だ、インセンティヴ報酬に関しては今度のギャラクシーの結果次第だが。」
「全てわかっております。火星帝国の科学の発展と皇帝閣下のために。」
「期待しておるぞ。では、さがってよい。」
火星皇帝は今度のギャラクシーでのポルゴ排除のために、強化人間とキラーマシンで 勝負を賭けていた。地球の格闘家を金で雇ったのはダミーだった。既にポルゴに敗北し ている2人は本来ならば用済みだった。彼らに声をかけたのは、皇帝の争い好きな性格 と地球人たちの感情の力、復讐への憎悪の力を試してみたかったという理由からだ。
金星フロンティアではポルゴとミスター東郷達が修行に入っていた。ミスター東郷はま
ず、ポルゴに古流柔術の4つの型、それぞれが 12 本の技からなっているが、それを確認
させた。ポルゴが型を正確に1つ1つ再現してゆくと、ミスター東郷は弟子の実力に満 足感を覚えたようだった。次にミスター東郷はパンチングミットを持つと、ポルゴにパ ンチのコンビネーションを確認させた。ワンツー、フック、アッパー、それに肘打ちが 爽快にミットを打っていった。今度はキックミットを大腿部の前に構えると、ローの練 習をさせた。
次は脇に構えてミドル、顔面の前に構えてハイを打たせた。
「これで、基本の確認は終わりじゃ。これからは本格的な練習に入る!全身の気を高め るのじゃ、ポルゴ!」
ミスター東郷はミス・ワカマツに用意させた特別なミットに持ち替えると、ポルゴにミ ドルキックを促した。
「ポルゴ、このミットは通常のミットの 10 倍の威力に耐えられるよう強化した素材で作 られておる。ミーティングの瞬間、気を爆発させるのじゃ。いいな!」
黙々とポルゴはミドルキックを数十発ミットに叩き込んだ。
「バカ者!ポルゴよ、お主はまだ力をセーブして蹴っておる!本気を出すのじゃ。ワシ がミットごと吹っ飛ばされるようなケリを放て!まだお前の表情には甘えがある!」
そう言うとミスター東郷は鬼の表情で、足元に放置してあった竹刀を手に取り、ポル ゴの顔面を容赦なく殴りつけた。
「そうだ。その面だ。今度のギャラクシーに勝つには、お主の本気の力が必要なのじ ゃ。」
ひたすらポルゴがミットにケリを入れると、ミスター東郷はフイにミットを放り投げ た。
「甘いな。まだ甘い!甘過ぎる!!今度はワシが直々にスパーリングで稽古をつけてや ろう!ポルゴよ、グローブをオープンフィンガーに付け替えるのじゃ。あとはレガース
(脛当て)と膝パッドも忘れずにな。スパーはルール無用じゃ。どちらかが一本取るま でが、ワンラウンドじゃ。それを5ラウンド行う。いいな。」
ミスター東郷は5ラウンド全てを取った。ポルゴに一本も取らせなかった。
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「お主、ワシが老いぼれたと思って手を抜いているのではないだろうな!まあ、いい。
お前の実力は、これから行う実践練習で全てが明らかになる!これからミス・ワカマツ の銀河ワニ牧場に行くぞ!」
ポルゴとミスター東郷はミス・ワカマツが経営する銀河ワニ牧場に行くと、十二分に成 長しており、ワニ革バックやスーツへ運命が決まっている 20 匹の銀河ワニ達が放し飼い になっている第3牧場に案内された。
「ポルゴよ。たまにはミス・ワカマツの仕事をお主が手伝ってやるのもいいだろう。こ こにいる銀河ワニ 20 匹を全て素手で倒せ!もちろん、ワシも最小限の援護はする。いい な!これは師匠のワシの絶対命令じゃぞ!」
第 3 牧場に入ったポルゴたちの前に、さっそく体長 10 メートルはあろうかという活き のいい銀河ワニが立ちはだかった。
銀河ワニは大きな口を空けて、ポルゴに向って飛び掛ってきた。
ポルゴはサイドステップでワニの第一波をよけると、銀河ワニのこめかみにあたる急 所めがけて左のハイキックを放った。ミーティングの瞬間、全身の気を爆発させた。
はずだった。
しかし、銀河ワニはぴんぴんしていた。仲間の異変に気がついた銀河ワニたちが5匹 でポルゴたちを取り囲んでいた。
「ポルゴよ、今のは当たり所が悪かった。ちょっとポイントが外れていたぞ。蹴りって のは、こういう風にやるもんだぜ。」
ミスター東郷は一足で飛び上がると、回転回し蹴りを放った。左足を軸に右ハイを放 ち、右足が着地する前に今度は左のソバットを放った。これで2匹の銀河ワニが気絶し ていた。
ミスター東郷は一歩踏み込み、3匹目の銀河ワニに左の裏拳を放った。返す刀で右のサ イドキックで4匹目を仕留めた。
「やってみい。ポルゴよ。正拳突きでお前の獲物を仕留めるんじゃ。」
ポルゴは最初に彼に襲い掛かった銀河ワニに右ストレートを放った。銀河ワニは鼻血 を流して気絶してしまった。
「泡盛でもロックで一杯やる。では、ちゃんと仕事をするんじゃぞ。」
「やれば出来るじゃないか?残りの 15 匹は全てお前が片付けろ。ワシは温泉に入ってく る。」
ミスター東郷はそういい残すと、銀河ワニ牧場を後にした。檻を管理している警備員 に、全ての銀河ワニが大人しくなるまで、ポルゴを出してはいけないと固く言い残すこ とを忘れなかった。
「クッソー。あのアル中オヤジ。俺を殺す気かよ!幾らなんでも 15 匹の銀河ワニを素手 で倒すなんて無理だろ!あんなボケジジイにパートナーを頼んだ俺が悪かったぜ。」
「誰がアル中だと。ボケジジイとはどこに居る?ポルゴよ、言葉を慎むんじゃな!」
檻の外から様子を見ていたミスター東郷は鬼の形相で叫んでいた。
このやりとりを聞きつけた残りの銀河ワニが 15 匹、円を描くかのようにポルゴを取り囲
ドキュメント内
アルセーヌ・ポルゴ.pdf
(ページ 75-78)