い。」
アンタが 13 代目のグレート・アジアか。俺は初代と闘った事があるし、2代目と一度だ けタッグを組んだこともある。今のアンタの涙を見ると、どうやら俺はもう元の(過去
の)世界には戻れない運命のようだな。しかし、一体どうなっているんだ?この世界の ザマは?」
「火星人たちが地球に侵略してきて、地球の人口は一気に半減。ワタシは地下のシェル ターに避難して何とか助かったけど、地上のジムの建物は全壊。所属していたプロレス 団体も戦争のゴタゴタで崩壊して … 今の状態に。」
「青空リングか。いろいろ大変だったのだな。プロレスの団体の運営は、さすがにこの 戦後の状況を見ると難しいのはわかる。でも、例えば銀河レベルの大会、それにタッグ の大会とかは、ないのか?」
「キングオヴギャラクシーのことね。確かに近々どこかで開かれるっていう噂は聞いて いるけど。まだ主催者の情報もわからないし、それに肝心のタッグパートナーが。前回 大会で一緒に参加してくれたエリカって子がいるんだけど、もうライバルの私とは金輪 際組みたくないと三行半突きつけられちゃってね。」
「俺と一緒に組んで参加しよう。銀河最強クラスのエネルギーがぶつかりあう例の大会 に参加すれば、俺も力を取り戻して、あわよくば元の時代まで戻れるかもしれない。そ れに … 」
「願ってもない話ね。シェルターの中にもう一部屋空き部屋があるし、これからワタシ と一緒に生活して合同強化練習を始めてくれる?エントリーとか、面倒くさい作業はこ ちらで全部済ませておくから。」
「了解。交渉成立だな。」
廃墟となった地球圏で、かつてのキングオヴギャラクシーの常連にして初代銀河の大 王の龍の気の遺伝子を受け継ぐ強化人間 G’ (ジー・ダッシュ)と、最強レスラーの遺伝 子を持つグレート・アジア 13 世が時代を超えて手を結んでいた。これから来るべき反火 星パルチザン抵抗運動、波乱の予兆を含んだ新世紀第3回キングオヴギャラクシーへ向 けて、時代はゆっくりと、しかし正確に胎動していた。
「ちょっと火星人でも狩って来る!合同練習はその後だ。」
そう言い残すと、彼は急ごしらえのウェヌスジムを後にした。侵略者達を狩る!それ は銀河の掃除人(スイーパー・ギャラクティカ)と呼ばれた彼にとって、朝飯前の作業 だった。
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第 53 章 最強の挑戦者
銀河帝国の首都がある惑星サルバトーレでは、2人の人間が強烈なトレーニングを開始していた。
「王子!もっと気合入れて練習してくださいよ。」
「んなこといっても、ニート君。最近ちょっと厳しくなってない?」
「すべて王子のためです。今度のキングオヴギャラクシーで、お父上、いや大王様を越えて見せるのです。こ の銀河帝国で4代目の大王の座を狙っている連中は、王子だけではないことをお忘れなく。」
王子と呼ばれている龍族の若い青年は、3代目の銀河の大王の息子、つまり銀河帝国の皇太子だった。ま たニート君と呼ばれている小柄な少年、こちらは地球人タイプであったが、彼は(本当は性別まではわから ないが、とりあえず彼としておこう)は本名ニコラス・トルーマン、略称はニート君だった。ニート君は王子 のスパーリング・パートナー兼コーチだった。
「王子っ!前のギャラクシーで大王様が、地球人の女性チームに負けたことをご存知ですよね?あれで大王 様の株はグンと落ちてしまったのです。そこで、息子の王子が頑張れば、一気に次期大王の座は確定で す。」
「でも、ニート君、ボクそんなに根性ないしさー。どうせ今の状態で試合出場しても、一回戦負けがオチだ よね。」
「だからこそのトレーニングです。私が王子の潜在能力をギリギリまで引き出して見せます!」
王子とニート君がパンチンググローブをオープンフィンガーグローブに付け替えると強烈な殴り合いのスパ ーリングがはじまった。
銀河帝国の王子が全身の気を込めたパンチをワンツー・フック・アッパーと放つ。すれすれで全てかわす ニート君。ニート君が軽く踏み込んだだけのノーモーションのジャブ気味右ストレートを放つと、あろうこ とか王子はダウンした。すかさずダウンした王子の頭にニート君が蹴りかかる。
寸止めだった。
「王子。あなたはまだ甘さがとれていない。実戦だったら、ここでKOされていますよ。」
「んなこと言ってもニート君、ボク、カワイ子ちゃんが応援してくれないと本気が出ないんだよ。ボクまだ 成人もしていないしさー。やっぱり彼女くらい欲しいよね。」
「何言っているのですか?王子!キングオヴギャラクシーにナンパはカンケーありません。異性をナメてい るからお父上のように負けてしまうのです。」
「ニート君、ボクはパパと違って、まだ無敗だよ。なぜって、まだデビューしてないんだからね。今まで小 柄な君のことを気遣って本気を出さなかったけど、パパのことまで引き合いに出すんだったら、ボクにも考 えがあるよ。」
言い終わると銀河帝国の王子は両の掌を合わせ、腰元に溜めた。そのまま両手を前に出すと、両の掌から ニート君に向けて全身の気を一気に放った。
「食らいなー。10 倍ギャラクシーウェーブ!」
至近距離からの大技だった。小柄なニート君が受けられるはずがなかった。
しかし、そこには片手(左手のみ!)でギャラクシーウェーブを完全に受けきっているニコラスの姿があ った。
「王子、まだ甘いですね。世の中にはもっと凄い技があることをお教えしましょう。」
言い終わるとニート君は使っていない方の右手を前に突き出すと、鏡のように王子のギャラクシーウェー ブを反射させ、一気に王子目掛けて強力な返しの光線技を放った。
「リフレクション・エッジ、なんちゃってネ。王子、お怪我はありませんか?」
その時、トレーニングルームに入ってきた一つの強大な影があった。3代目の銀河の大王、その人であっ た。
「ニコラス・トルーマン、もう今日はその辺でジュニアを勘弁してやってくれんか?ワシも自分の息子だけは ついつい甘やかしてしまう。もちろん、お主の教育方針には賛成じゃがの。」
「ハイ、大王様!」
こうして、次のギャラクシーに向けて、銀河帝国では着々と準備が進められていた。
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第 54 章 憤怒の皇帝
---―くたばれ!ゴミども。
その言葉と共に銀髪の若者の掌から光線が放たれる。目の前にいた火星人4人がいまの気を利用した強烈な 光線技で完全に消滅していた。なおもまだ、この若者の周りを20人以上の火星人たちが取り囲んでいる。
−オトナシクシロ!この無知蒙昧な地球人め。生命の杖でヤキコロサレタイカ?
彼を囲んでいる火星人の一人が言った。どうやらリーダー格らしい。
−なんだ?生命の杖って?コレのことか?
一瞬で火星人の生命の杖を奪い取ると、銀髪の若者は一気にその杖を無造作に振り回した。
−ヤメロ、貴様、なんてキケンなことを!!
隊長がその言葉を言い終わる前に、生命の杖が彼の体を貫いていた。
−侵略者のゴミどもめ!お前ら、生きる権利がねーよ。少なくともこの地球上ではな!
言い終わると、銀髪の若者は全身の気を一気に開放した。たったこれだけで、まわりの20 人を越える火星人 が全て蒸発していた。
---「一体なんじゃ?このひどいビデオアーカイブは。私の可愛い同胞達が無残に殺されておるではないか?」
「太陽系帝国皇帝閣下!もうあなたは火星人だけの代表ではないのですぞ!太陽系の住民、すべての利益を 代表してものを考えていただかないと。」
「うるさい、うるさい。私は同胞が無残に殺されてゆく姿が歯がゆいのじゃ!あの銀髪の地球人め、絶対に 公式の場で公開処刑してやる。おい、ジョー・ヨージ司令官を呼べ!」
「は、はっ。ただちに。」
火星皇帝に魂を売った地球の格闘家ジョー・ヨージ12 世は、先の太陽系統一戦争の地球侵略部隊の司令官 を引き受けていた。時代遅れの軍服に身を包んだヨージ司令官が、火星皇帝、いや太陽系皇帝の執務室に呼 び出された。もちろん、太陽系帝国の首都はマーシャンポリスだった。
「ヨージ司令官、参上しました!」
「おお、ヨージか。入れ、入れ。この度の戦、素晴らしい活躍じゃったの。」
「邪魔者のポルゴも現れなかったせいか、地球併合作戦は上手く行きました。しかし、今回のご用件はなん でしょうか?」
「お主も既に見たであろう、このビデオアーカイブを?この銀髪の地球人の若者を始末して欲しい。」
スクリーンに映し出された銀髪の青年の顔を見て、ヨージ司令官の表情は一瞬にして凍りついた。
「この男は、この男は、かつて数世紀前に開かれていたというキングオヴギャラクシーの初代覇者G’(ジ ー・ダッシュ)という男にそっくりです。もちろん、何かの間違いだとは思いますが。彼が本物のG’、ある いはその遺伝子を引き継ぐものであるとすると、2流格闘家の私の能力を遥かに越えます。出来れば、今回 の件はなかったことにしていただきたいのですが。」
「何だと!このワタシの頼みが聞けないと言うのか?それほどまでに、この男が凄いと申すのか?納得がい かんな。まあ、いい。ワタシは太陽系統一記念に近々キングオヴギャラクシーを主催する。その場で、この 男を公衆の面前で始末させよう。ヨージ司令官、世の中にはお主の代わりが腐るほどおることを忘れるな よ!」
ヨージ司令官は屈辱に顔を歪めながら、内心ほっとしていた。あの男が本当にG’であるとすれば、時空す ら超越している彼を止められる者などこの世には存在しないはずだ。
全ての太陽系の格闘家にとって、初代キングオヴギャラクシーの覇者G’は伝説の存在だった。彼は地球人 ではじめて気を駆使した格闘術をマスターし、最終的には瞬間移動まで極めたという伝説の武道家G・ハロ ルドのクローンにして、初代銀河の大王の爆発的な龍の気を生み出すための遺伝子を移植された最強の強化 人間だった。彼はキングオヴギャラクシーを5連覇して、唯一彼を第6回大会で食い止めることが出来た人 間は、ただ一人、G・ハロルドの弟子であり、地球のCYBER探偵の草分け、タビト大伴だった。
タビト大伴の子孫が現代まで生き残り、プロレスラーをやっていることを思い出したヨージは、部下にタ ビト大伴の子孫の所在を聞き出した。
「ヨージ司令官殿、タビト大伴の子孫、つまりグレート・アジア13 世は、次のギャラクシーに向けて、例の 銀髪の男と合同練習中です。」
あまりに救い様のない事実だった。伝説の強化人間G’とかつて彼を止めることを出来た唯一の人間の子孫 が時空を超えて共闘している。もはや誰にも彼らを止めることは不可能だった。
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