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に向かって言った。

ドキュメント内 アルセーヌ・ポルゴ.pdf (ページ 140-167)

い。」

ポルゴはオヤジ 40 に向かって言った。

「しかし、あのスプラッター星人って野郎、一体何者ですが?他人の気を吸収して自爆 する。厄介な敵ですね。」

「終わったことだ。気にするな。さあ、事務所に戻って打ち上げだ。」

ポルゴたちは気を取り直して事務所に戻った。数時間後、テーブルにはミス・ワカマツ の手料理が並んでいた。

「カンパーイ!」

 しばらく料理を食べ始めるポルゴたち。

「しかしおいしいな、このステーキ。こんな上手い肉食べたことないぜ。それにこの巨 大オムレツも。これはダチョウの卵でも使っているのか?」

 ポルゴが言った。

「いつもワカマツさんが用意してくれるこのお肉、本当においしいわね。ところで、こ れって何の肉?豚でも鳥でも牛でもないみたいだけど?」

 アジアも一緒に尋ねた。

「これは実は、銀河ワニの肉と卵です。」

 一瞬、金星での悪夢を思い出し、吐きそうになりかけるポルゴ。

「エー、マジ?」

「冷凍して量子移動機の冷蔵庫に保管しておいたの。銀河ワニのお肉は高タンパク、低 カロリー、低脂質の三拍子よ。ダイエット中の女性にもオススメね。そんなわけで、毎 日の食事に一品加えておいたの。アジアさん、自分でも肉体改造の成果に気付かなかっ た?」

「何となく身体が軽くなって、身動きが楽になったような気がしたけど、これって毎日 知らずに食べていた銀河ワニのお肉の効果だったのね。ところで、この前、ワタシの誕 生日にプレゼントしてくれた紺の革のハンドバック、あれってもしかして?」

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「もちろん、ワタシの会社で養殖している銀河ワニの革で作ったものです。特許出願中 で

すよ。」

 そういい終わるとミス・ワカマツは一瞬、オヤジさんの方へ目をやった。彼も黒の革 ジャンに、レザーパンツをはいていた。

「この前くれたこれも、ワニ革かい?」

「もちろんです。」

 ポルゴは優勝賞金から山分けした後の小切手 388 億ドルをミス・ワカマツに手渡し た。

「これでマシンの燃料を手配してくれ。あとの 612 億ドルも探偵業と株の運用で儲かっ たから大丈夫だよな?燃料が手に入り次第、もとの時代に戻ろう!」

 その時、大柄な金髪の男が事務所を訪れた。

「兄さん。お久しぶりね。」

「色々と大変だったな。ネットヴィジョンで試合の様子は見ていたよ。父さん、元気で したか?」

 いかにもミュージシャンといったファッションのこの男は二代目グレート・アジアの 兄であるヤカモチ大伴だ。

「アジアさん、お兄さんがいたのね。これまでてっきりあなたは一人っ子だと思ってい たわ。」

「兄のヤカモチはシンガーソングライターで、地球中を駆け回っています。」

 ポルゴは気さくにヤカモチにビールを注ぎながら、挨拶をしたが、ミス・ワカマツは 何かを急に思い出したかのように、何も言わずに事務所を飛び出していた。

 ポルゴはそれに気付き、事務所を出るとミス・ワカマツに声を掛けた。

「ミス・ワカマツ、大丈夫か?」

「いや、ただ、ワタシだけ一人、天涯孤独だと思って。ずっと、アジアさんに兄弟がい ないものと勘違いしていたから。しばらく一人にしておいて欲しいの。」

 暗い表情で語るミス・ワカマツ。

「一人じゃないさ。オレがいるじゃないか?」

「ポルゴさんはワタシの肉親じゃないわ。ワタシには血の繋がった家族がいない。ひと 目でも死んだ兄貴に会えたら、いつも寝る前にそう思っているの。しばらく一人にして ください。」

 いつも理知的に振舞っているミス・ワカマツが唯一の肉親である兄を亡くしたことを トラウマに思っていることに、ポルゴは再び気付かされた。たまには一人になって考え るのもいいさ、そう気楽に取り直して、ポルゴは事務所に戻って、宴会を続けた。

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49 章 暗殺依頼(前編)

 ミス・ワカマツはアイウォッチのハッキング機能を使い、キラー・ L の連絡先を割り 出した。そのままヴァイスチャットでアポイントを取ると、超一流の暗殺者キラー・ L にコンタクトした。

 トキオの場末の喫茶店でキラー・ L とミス・ワカマツは密会した。

「依頼の内容は、今の火星皇帝の暗殺よ。契約金はメールで伝えたとおり、キャッシュ で 500 億ドルでいい?」

「ああ、わかったよ。ヤり方はどうする?」

「そうね、細胞一つ残らずがいいわ。後からクローンとか作られると問題だから。」

「お嬢さん、それではこの契約書に血判とサインをお願いします。」

「血判?」

「いや、ここに朱肉があるので拇印でも構わないよ。」

「サインをしてもらう前にひと言だけ説明しておこう。俺の依頼成功率は 100 %だ。ただ し、人を呪わば穴二つという諺がある。依頼が不可能な場合は、俺は依頼人を消す。そ うして依頼そのものの存在をなかったことにするんだ。まあ、 10 件くらいしかそんなケ ースは今までになかったけどね。あと、理由も聞きたいな。」

「あなたのことは全て調べたわ。もちろん、依頼の実行が不可能な時に、依頼人を消す

という話も含めてね。理由は説明すると長くなるけど、要するに復讐とか、そういう部

類ね。サインはこれでいいかしら?出来れば、どれくらいかかるのかも教えて欲しい

な。」

「ざっと1週間、いや十日以内にはなんとかなるはずだ。今、火星皇帝はギャラクシー の

観戦を兼ねて地球圏に来ている。確実にヤツが地球に居るうちに仕留めるよ。まあ、ニ ュースでもマメにチェックしてくれよな。」

 キラー・ L はキャッシュで 500 億ドルの大金を受け取ると何事もなかったかのように その場を立ち去った。その飄々とした風貌と、引き締まった肉体は、狼の獣性を感じさ せると共に、どこからか知性の匂いが漂っていた。それから数日が経過した。ミス・ワ カマツは神経質にニュースをチェックするようになった。

「あのさー、燃料の手配はどうなっているんだい?もちろん、全部ミス・ワカマツに任 せたから、俺に意見する権利はないけどね。」

「実は、もとの時代に戻るのはあと一ヶ月、いや半年は待って欲しいの。」

「なぜだ?せっかく燃料を買う金も合法的に溜めたし、後はもとの時代に戻るだけじゃ ないか?」

 ミス・ワカマツの眼に冷徹な光が宿った。

「あのキラー・ L に火星皇帝の暗殺を依頼したのよ。 500 億ドルでね。」

「ふざけんな!!なんでこの時代の人間を消す必要がある?今までアンタは今までヒト をあやめた事があるのか?たとえ相手が火星人でも、人間は人間だ。一生十字架を背負 って生きてゆくことになる。」

「今、この時代の火星皇帝を消せば、私たちの時代の火星皇帝も居なくなるし、火星帝 国だって。そうすれば、兄貴だって火星人に殺されなくても済む。もちろん、地球侵略 戦争で亡くなった多くの人たちの運命だって変わるかもしれない。歴史を変えることに なるかもしれないけど、私は兄貴が生きているはずのもう一つの未来に賭けることにし たの。」

「今ここで火星皇帝を消せば、確かにワカマツが殺されないもう一つの未来も存在する ことになるかもしれない。しかし、それは完全なパラレル・ワールドで、俺たちはそこ にはアクセスすることは出来ない。しかも、過去に戻って宿敵の祖先を消すというやり

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方が俺には許せないぜ!モラルはモラルだ。ヒトにはやっていいことと、いけないこと があるはずだ!」

「なんとでも言ってよ。でも、ワタシにとって兄貴はたった一人。たとえどんなに汚い 手段を使っても、別の世界に歴史が分岐しても、それでも兄貴と一緒に生活している幸 せな自分の居る未来を作りたいの?それが我儘って言うの?」

「とにかく、俺はキラー・ L の野郎に依頼を撤回させる。力づくでもだ!君に殺しはさ

せはしないさ。」

49 章 暗殺依頼(中編)

「何も知らないのね。キラー・L はいったん引き受けた依頼は絶対に撤回しないわ。彼が依頼を撤回する時 は、依頼人そのものを消した時よ。それにあの生粋の銀髪、紺碧の眼、キラー・L はあなたの…」

「そのことは言うな。いや、言わないでくれ。俺も薄々感づいてはいたさ。この前、ディスクで俺の家系図 を見て確認したし。とにかく、ヤツに掛け合ってみるよ。有無は言わせないさ。」

 ポルゴはキラー・L のアジトを割り出し、アポなしで訪問した。

「アンタかい?あの時は楽しかったな。まあ、何となく気配でアンタの考えていることもわかっているけど な。とりあえず、用件はなんだい?」

「単刀直入に言う。ミス・ワカマツの依頼を撤回して欲しい。カネは別に返してくれなくてもいい。」

「おや、その金のネックレス、俺が恋人の誕生日にプレゼントしたのと全く同じ型だな。確かあれは工場の 職人に特注したヤツだったが。アンタのネックレスはちょっと古びているな。それにそのオレと同じ銀髪と 碧眼の眼。アンタには肉親のような親しみを感じる。しかし、それと仕事と話は別だ!あんたもプロだろ。

それくらいわかっているはずだ。」

「あなたには全部話してもいいだろう。俺とミス・ワカマツは未来から来た。俺のこのネックレスは死んだ オヤジから先祖代々伝わってきた家宝として形見に貰ったものだ。そうだよ。俺はあなたの15 代目の子孫 さ。この眼この髪の色を見ればわかるだろ?ミス・ワカマツは唯一の肉親を俺たちの時代の火星皇帝に殺さ れている。そのことを防止するために、あなたに依頼をした。そのことが馬鹿げたことであることは、彼女 も理解しているはずだ。しかし、感情は数式のようには簡単に割り切れないものだよな。子孫の俺の頼みを 一つくらい聞いてくれてもいいだろ?」

「結論から言おう。ムリだな。三日後には依頼を決行することに決めている。そのことを防ぐために、オレ をヤるか?それはアンタにはムリだろ。オレを消すことは、アンタの存在自体を消すことに繋がる。ミス・

ワカマツと同じ論理だがな。まあ、今日のところはアンタにもお引取り願おう。自分の先祖が暗殺者と知っ た時は相当ショックだっただろうな。だが、オレは今の仕事にプライドを持っている。アンタの身体の中に はオレの遺伝子が3万分の一だけ含まれているんだな。言ってみれば、全くの他人かもな。まあ、未来に戻 ってからも元気にやるんだな。あの時のギャラクシーはひさしぶりにワクワクさせてもらったよ。じゃあ な。」

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