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格付の方法と格付規程の作成

ドキュメント内 第1章 有機農産物の生産の概要 (ページ 91-94)

5.1 格付とは

「格付」は、JAS制度で定められた品質保証の手順である。

一般の JAS規格は、「品質規格」であり、製品の品質が規格に定められている。これらは、製品の 生産後、この規格を満たしているかどうか試験室等で検査する(これを「格付検査」という)。規格 を満たしているものには、これを示すためにJASマークを貼ることができる。例えば特級の規格を満 たせば、JAS特級のJASマークを貼る。

一方、有機JAS規格を含め一部の規格は「作り方を定めた規格」である。これらは、生産後、規格 を満たすかどうかの格付検査は、品質ではなく、作り方が規格を満たしているかどうか「生産行程の 検査」をする。生産行程の検査の結果、有機JAS規格どおりの作り方であることが確認できれば、有 機JASマークを貼り、有機表示をすることが可能となる。

この生産行程の検査は、生産行程管理者の組織内の格付担当者(責任者)によってなされなければ ならない。

5.2 格付規程の作成 5.2.1 規程の内容

生産行程管理者の格付担当者(責任者)が、格付のための検査、有機JASマークの取扱、名称の表 示(有機の表示)などについて、JAS規格に即した管理を行うために、自ら格付規程を書面で作成す る。格付規程は認定機関や他人から与えられた基準ではなく、自らが作成する「格付のための」手順 書である。

格付規程には、以下の項目が網羅されていなくてはならない。

① 格付業務を実施する手順やタイミング(いつ、どこで、だれが)

② JAS規格に従った栽培基準と生産行程管理記録との照合の手順(生産行程の検査)

(どのように)

③ 表示の確認手順

④ 適合品への格付の手順

⑤ 不適合品の処理方法についての規定

⑥ 格付表示をした後の管理及び、格付後に不適合になった場合の処分の手順

⑦ 荷口ごとの格付実施記録の作成の手順及び記録の保管管理方法

⑧ 認定機関の確認等必要な事項に対する対応

格付のタイミングや場所などについては、それぞれの事情によりやり方が異なるので、それに合 わせて規程を作成する必要がある。

上記のうち生産行程の検査と表示の確認について以下に補足する。

5.2.2 生産行程の検査とは

(1) 生産行程の検査

① 生産行程の検査(格付検査)は、格付担当者が行う。生産農家が独自で申請する場合や、

生産者自身が格付担当者の場合は、自らの生産方法や管理記録を、出荷前に確認すること になる。

② 生産行程の検査とは、「各種の記録をみて、対象のほ場から収穫され、その栽培方法が基 準に準拠しており、収穫後出荷までの間に、混合や汚染がなかったかどうか」を確認する ものである。従って格付業務を実施するには、生産行程の記録の存在が前提となる。

(2) 格付の手順

格付の手順は以下のとおりである。

① すでにある記録類が最後まで記載されているかを確認する。もし途中までであれば、必要事 項を記載し記録を完成させる。

② 作成した記録が、今から確認する農産物の記録であるか(例えば、該当するほ場のものか等)

を確かめる。

③ この記録を見て、内部規程どおりに生産されているかどうか(すなわちJAS規格に適合した 生産をしているか)を確認する。

5.2.3 表示の確認とは

(1) 格付の表示の規定

格付の表示とは、農産物を入れた袋や箱に、有機JASマークを付することを指す。包装資材に印刷 したりシールをつけることができないようなもの(バラで運ぶジュース加工用のトマト、生茶葉など)

の場合は、送り状に「有機」と表示し(例:「有機トマト加工用」)、有機 JASマークのついたシール を送り状に貼り付けることで対応する。

格付の際は、名称は有機JAS規格第5条を参照し、有機JASマークの形や大きさは「飲食料品及び 油脂についての格付の表示の様式及び表示の方法」(昭和54年8月18日農林水産省告示第1182号)

に従った表示がされているかを確認することになる。有機 JASマークの大きさや表示の注意事項は、

第4章(P112)を参照のこと。

実際は大きさについていちいち確認するのではなく、次に述べる手順が一般的なものとなる。

(2) 包装形態と表示方法の確認の手順

出荷を行う前の段階における確認事項として、下記を注意する。

・ 有機 JAS マークは大きさや認定機関の名称などの規定があるので、認定取得時に認定機 関からデザイン原版を入手する。それぞれ認定機関でマーク使用規定などが定められている 場合は、それに従う。

・ マークは 1 枚いくらで購入するものではなく、自らが印刷手配をして、自らがマークの 在庫管理を行わなければならない。

・ 有機 JAS マークを包装資材などに印刷する場合、包装資材を準備する部門にあらかじめ 上記の規定に従った表示であるか確認し、印刷しておく(シールも同様)。

格付の現場では、次の確認が必要になる。

①有機でないものに、有機の包装資材を使用していないか。

②有機のものにJASマークはきちんと貼られているか。

③その JAS マークの下に認定を受けた認定機関の名前が記載されているか(あらかじめ印刷さ れていればよい)。

注 有機JASマークを貼ることができるのは、JASの認定を取得した後になるので、注意のこと。

(3) 有機JASマークの在庫の確認

有機 JAS マークは、生産行程管理者の組織自らが、印刷手配し、自らが在庫管理をする。はじめ の印刷枚数、使用枚数、廃棄枚数(ロス)などを台帳に記載して、格付担当者が管理する。未格付品 への誤使用を避けるには管理者以外のものが勝手に持ち出せないように保管し管理されていること が望ましい。

5.3 格付規程の例

・ 生産行程の検査を、どのような手順で行うのか、具体的、現実的な方法を考える。

・ 格付の表示は、農産物又は包装、容器、送り状のどれかに必要なので、どのように表示するのか を定め、その確認を行うよう記す。

・ その他、必要だと思われる事項については、項目をたてて規定する。

項目 盛込むべき内容

格付検査の手順 ・ 格付検査の実施手順について記す。

・ いつ、だれが、どこで、どの記録を見て何を確認するか。

・ 確認したら、どこにその実施記録(サインや印など)をつけるか。

表示の確認 表示方法やロット番号の確認を行うことを記す。

適合品の扱い 検査終了後の適合品への格付と記録方法について記す。

不適合の確認と処置 不適合品があった場合の処置を記す。

格付後出荷までの確認 格付検査が終了し、有機 JAS マークを付してから、時間をおいて出荷 する場合は、格付後出荷までの貯蔵・保管の間に、有機性を損なう事 例(例えば薬品による汚染など)が起こっていないか再度確認の上出 荷することを規定する。その結果、有機性を損ない JAS 規格不適合の 判断が下されたら、不適合品の処分を行う。

有機JASマークの管理 印刷されている資材やシールを他に不正使用することのないよう、管 理担当者や在庫の把握の方法を決める。

格付記録の保管 以上の格付に関係する記録を作成し、保管する。

格付の実施状況につい て登録認定機関への調 査などの対応

前年4月~当年3月の年度実績を集計し、毎年6月末までに提出する。

その他、格付の実施状況について認定機関からの確認があった場合に は、適切に対応する。

その他 一旦有機 JAS マークを付してある資材を他に再利用する場合には、表 示を除去又は抹消してから使用するなどの管理が必要。

6. 生産行程の管理業務の実際

ドキュメント内 第1章 有機農産物の生産の概要 (ページ 91-94)