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条件判定と実行の分岐

ドキュメント内 ( ( 5 10 pdf (ページ 42-46)

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前節では、ブロックが順に実行されていくこと、および変数を利用できることを説明しました。

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これはプログラムの実行の大原則ですが、これだけでは複雑な処理はできません。そこで次の原理

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が必要となります。

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第二原理 プログラム中では、条件判定を行い、その判定結果の真偽に従い、次に実行する動作を

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取捨選択できる。

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Scratchには(もちろんC++にも)上の原理を実装する手段が用意されています。

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5.5.1 第一象限の判定

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次のような動作をするプログラムを考えます。

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第一象限を判定するプログラム

キーボードのスペースキーを押した時のマウスの位置 (x, y)について、その位置がx-y座標 系の第一象限ならば(x >0かつy >0ならば)、猫が“YES”と言い、さもなくば“NO”とい うプログラムを作りなさい。x軸、y軸上については考慮する必要はない(どの象限としても よい)。

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このプログラムの一例が図5.19(a)です。このプログラムでは、「制御」のパレットの「もし

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なら〜でなければ〜」ブロック(図5.7の左列の上から5つ目)を新たに使用しています。この

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ブロックは、

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(a)プログラム

(b)実行結果

図5.19: 第一象限の判定

1. まず、条件判定式⟨⟨x >0かつ⟨y >0⟩⟩の値を求めます。式の値を求めることを

評価

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(evaluate)と呼びます。

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2. もし判定式の値が

(true)であるならば、「YESと言う」ブロックを実行します。こ

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のとき、「NOと言う」ブロックは実行しません。

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3. さもなくば(判定式の値が

(false)であるならば)、「NOと言う」ブロックを実行

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します。「YESと言う」ブロックは実行しません。

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条件判定の結果によって処理内容を取捨選択する動作を一般に

条件分岐

(con-7

ditional branch)と呼びます。多くのプログラミング言語では(もちろんC++でも)、条件式が真

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の場合に実行されるプログラム部分をしばしば

then

(then part)と呼び、偽の

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場合に実行されるプログラム部分をしばしば

else

(else part)と呼びます。という

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のも、多くのプログラミング言語では条件分岐のアイディアを、if、then、elseの3つのキーワー

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ドで表すため、then部、else部という呼び方が広く認知されています。実際、Scratchの英語版で

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も「もし⟨〜⟩なら〜でなければ〜」ブロックを と表現しており、if、then、elseが

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用いられています(なお、C++ではif、elseはキーワードとして用いていますが、thenは用いま

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せん)。

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プログラムの実行において条件分岐は頻繁に行われています。条件分岐のないストレートな処理

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の方がまれです。たとえばロールプレイングゲームにおいて「HPが0になったらゲームオーバー。

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さもなくばゲームを継続」という条件分岐はゲームのプレイ中、常に実行されており、これ無しで

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はゲームは成立しません。

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組み込み述語

(built-in predicate) ... 実行時の様々な状態を真偽値

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で示すブロックで、もともとScratchによって用意されたものです。たとえば「調べる」のブ

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ロックパレットの「[ ]に触れた」ブロックや「マウスが押された」ブロックなどです。

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関係演算子

(relational operator) ... 数値の大小関係を判定するブロッ

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クです。「演算」のブロックパレットの中の「[ ]<[ ]」、「[ ] = [ ]」、「[ ]>[ ]」のブロッ

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クです。本格的なプログラミング言語(C++を含む)には「[ ][ ]」や「[ ][ ]」に

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相当する演算子も利用できますが、残念ながらこの二つはScratchには定義されていません。

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同等のことを表現するには2つの論理演算子ブロックを組み合わせる必要があります。

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論理演算子

(logical operator) ... いわゆる AND、OR、NOTを表す

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真偽値の上の演算子です。「演算」のブロックパレットの中の「⟨⟨ ⟩かつ⟨ ⟩⟩」、「⟨⟨ ⟩また

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⟨ ⟩⟩」、「⟨⟨ ⟩ではない」のブロックです。

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5.5.2 等価なプログラム

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5.4.4節において「似ているプログラム」を紹介しました。「似ている」ことを

等価

(equiv-15

alent)とも言います。より正確には、同じ入力に対して同じ出力を返す二つのプログラムを互い

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に等価であると言います。また別の言い方では「同じ意味を持つプログラム」とも言います。これ

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以降はこれらの言い方を用いることにします。

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図5.19(a)の条件分岐を含むプログラムについても等価なプログラムは多数存在します。

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まず、論理式を に置き換えても同じ真偽値と評価されるため、プ

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ログラムは等価です。言うまでもなく、論理式の置き換えには他にも様々なバリエーションがあり

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ます。

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次に、図5.20(a)は、猫に言わせる言葉を一旦、変数sに代入するプログラムです。条件分岐の

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箇所では、真偽値に依って変数へ代入する言葉をそれぞれ“YES”、“NO”にします。そして、猫の

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発話はプログラムの制御が合流した後に行います。これはやはり図5.19(a)と等価です。

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図5.20(b) は、図5.19(a)とは異なるプログラム構造になっています。図5.19(a)では論理積

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⟨⟨x >0かつ y >0⟩⟩」を用いて第一象限の条件を表しました。しかし、図5.20(b)ではまず

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⟨x > 0」を判定し、それが真ならば次に「⟨y >0」を判定し、それも真ならば第一象限であ

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ると判断しています。このプログラムでは条件分岐の中に条件分岐が含まれる

入れ子

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(nest)構造になっていることに注意してください。複雑な条件を判定するときには入れ子構造を

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用いた方がプログラムが簡潔に表現できる場合があります。

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(a)変数sへのデータの格納

(b)条件分岐の入れ子

(c)「もし⟨〜⟩なら」ブロックの利用 図 5.20: 図5.19(a)のプログラムの様々な変形

Scratchには「もし⟨〜⟩なら〜でなければ〜」ブロックの「でなければ〜」の部分がないブロッ

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ク —「もし⟨〜⟩なら」ブロック—も用意されています。このブロックでは、条件が成り立つ場

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合にはそれが内蔵する処理を行いますが、成り立たない場合には何も実行しません。図5.20(c)は、

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敢えてこのブロックを用いてプログラムを作成してみた例です。変数 sにあらかじめ“YES”を代

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入しておき、マウスの位置が第一象限でないならば sの値を“NO”で上書き変更します。このプ

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ログラムは図5.19(a)のプログラムに比べて読みにくいプログラムかもしれません。こういうプロ

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グラミングを推奨する訳ではありませんが、等価なプログラムの一例として紹介しました。

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考察 次のような動作をするプログラムをScratchで作りなさい。

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(第1〜第4象限)を“1”、“2”、“3”、“4”のいずれかで教えるプログラムを作りなさい。x軸、

y軸上については考慮する必要はない(どの象限としてもよい)。

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なお、第1〜4象限は原点の回りに反時計周りに定義されています14

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