第4章 総合考察
第2節 本研究の限界と今後の課題
最後に,本研究の限界と今後の課題について4点述べる.まず,1点目は 本調査の対象者の偏りについてである.対象者は全員が教育大学に通う大学 生もしくは大学院生であった.教員などなんらかの形で対人援助職を目指し ている対象者がほとんどであり,総合大学などに比べて,自己理解を深める ことにあらかじめ関心が高かった可能性や,進学する際にすでに職業選択を 行っていることにより自己理解の深まっている可能性があった.そのため,
結果として得られる自己理解の効果の度合いも他の大学生とは異なる可能 性がある.よって今後は,対象者を広げた調査を行いたい.大学生であれば 総合大学,より自己理解について程度を測るのであれば,アイデンティティ の揺らぎが問題となる青年期全般,臨床的意義を検討するのであれば臨床例 を対象とするなど,対象者を広げる必要があると考えられる.また,本研究 では通常コラージュ作成群と動物コラージュ作成群の間に,コラージュ作成 前の自己理解得点において有意といえる差が見られている.動物コラージュ の有用性をより明確にするためには,作成前の自己理解得点が2群で有意差 を生じないようにするべきである.
2点目は,本研究において統制群に作成させた「通常コラージュ」は,動 物切片を除外したという点である.今回,動物切片の有無の効果の差をより 明確にするために,意図的に動物切片を除外したが,通常行われるコラージ ュでは,他のカテゴリーと同じ様に動物を取り入れる場合も少なくない.よ って今後は,動物カテ:ゴリーを含む通常コラージュと,動物コラージュの効
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果の差について検討する必要がある.これにより,動物切片を活用すること の効果がより明確に検討されることとなると考えられる.
3点目は,コラージュ作成後の面接についてである.本研究における半構 造化面接は,自己像やそのイメージについて語ってもらい,言語化すること で作成者のもつイメージを明確化することとした.さらに毎回その流れにつ いて気がついたことや考えたことを述べることで,投影された自己イメージ についてその変化を語った.つまり,本研究における面接は,イメージの明 確化により,調査者,作成者間でイメージを共有することと,言語化により 自己理解を促すことを目的として行われたものであった.本研究ではコラー ジュの効果を質問紙の得点のみで検討したが,今後は,コラージュ作成によ り生じた自己理解の詳細な内容を面接で尋ね,検討する必要がある.そのた め,本研究のように質問紙という量的,客観的指標の他に,面接の場におい て質的,主観的指標も取り扱っていきたい.そうすることで,動物コラージ ュと通常コラージュにおいて生じる自己理解得点の差にどのような内容の 違いがあるのかを検討することができる.それにより,今後動物コラージュ 技法が臨床的に有用であることやあるいは施行が望ましいとされる対象者 の特性が明らかになってくると考えられる.また,面接におけるイメージの 共有や明確化がどの程度自己理解などの効果に影響を与えているのかを今 後検討し,動物コラージュ技法において面接をパッケージ化することも検討
していきたい.そうすることで,動物コラージュ技法の効果をより能率的に 引き出す方法を探っていきたいと考える.
ラージュで使用された動物切片の枚数と得られた自己理解度の相関関係も また検討していない.これは,例え使用しようと思って切り取った切片であ っても,結局貼るには至らない切片も存在し,動物切片と積極的に関わるこ とが必ずしも,貼るという行為に直結していないと考えるからである.貼ら ないとしても,見る,選ぶ,切る,配置するなど,積極的に関わる場面はあ り,そこから得られる自己理解もあると考えられる.山路ら(2009)において も,作品に現われた動物切片の有無の違いにより自己理解度に有意といえる 差はみられていない.よって,今後の課題としては,作品に現われた動物切 片のみでなく,作成過程においてどの程度動物切片と関わっているかを検討
していく必要があると考える.
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添付資料
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予備研究で使用した質問紙の見本 本調査で使用した質問紙の見本通常コラージュ技法により作成された作品 動物コラージュ技法により作成された作品(1)
動物コラージュ技法により作成された作品(2)
用意された切片の一部の見本