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 本研究の限界と今後の課題について3点を述べる。

まず1点目は,1人の協力者に対するインタビュー回数の少 なさである。本研究の目的は,協力者のライフスドーリから 人白身の生き方を深く理解し,さらに語りに現れた部分から 統合過程を読みとることであった。確かに,2,3度の語り直 のなかで,劇的な統合がおこることを目的としてあげていた のではない。しかし,やはり2回のインタビューでは,例え 一度目と二度目で語りが見られたとしても,それが経験の意 味づけしなおしによるものなのか,その日の協力者の気持ち のもちようから来る差なのかを判断することは難しい。イン タビュー回数が少なくなった原因としては,協力者を募る時 点で,協力者の実際の紹介者と,紹介者と筆者の間の介入者 が存在していたことで,協力者一人ひとりと筆者が直接連絡 を取り合うことの困難が生じ,筆者の無意識のうちの妥協に つながってしまったことが考えられる。まずは協力者を1人 に絞ってでもインタビュー回数を重ねることで,統合過程が 現れやすくなるであろう。また,意味づけ直されていく語り と変化のほとんど見られない語りとの差を検討することがで きる可能性もある。

 2点目は,考察や総合考察の部分でもふれているが,協力 者の募集方法の関係で,協力者全員が語り部活動をはじめと

した社会的な活動を行っている女性高齢者と偏りが生じてし まったことである。自らの能力を活かして社会に貢献するこ と,ほかの世代との関わりを持ち続けている本研究の協力者 は,そうでない女性高齢者に比べて格段に適応的な状態であ ると考えられる。そのために,本研究結果を過度な」般化に つなげることはたいへん危険であると言えるだろう。今後,

本研究をより一般化させるためには,あらゆる生活環境にあ る女性高齢者に対しても同様の考察を行い,比較検討してい くことが必要である。

 3点目に,新しい知見として,協力者からこれまでの人生

に対する満足感が語られる一方で,どの協力者からも世代間

に存在する価値観の相違や現代の社会構造そのものに対する

違和感や孤独や生きづらさが語られた。そこには,多くの先 行研究で指摘されてきた,身体の健康や親しい人物の喪失な どによる孤独とは異なる,これまで持ち続けてきた価値観な どがまったく通じない,まるで異世界のような現代で暮らす 寂しさや混乱といったような孤独が表現されていた。このよ うに,戦時・戦後のような時代を生きた人々に独特な生きづ らさの理解は,高齢者に対する心理臨床学的なかかわり方や 支援において非常に重要であるといえよう。しかし本研究で は,統合過程に焦点を当てていたことからこの点について深 くふれられなかったため,今後さらに考察を深める必要があ

る。

おわりに

 本研究を通じて,時代背景や価値観の変化のなかで生きて いくということには,予想以上の難しさや複雑さが内包され ていることを学んだ。

 現代日本を生きる自分の生活からは想像することしかでき ない,協力者のみなさんが語る激しい体験に圧倒され,お話 を聴かせていただいた後は誰かに学んだことを誰かに知って ほしくて話したくてたまらなくなった。考えてみると,この 気持ちは,お話しくださった協力者のみなさんが普段から抱

えている気持ちを私が体験していたのかもしれない。

 周りの人々とのきずなや,周りの人への感謝,一日一日を 終えたことに対する感謝を心から語られる協力者のみなさん のお話には,聴かせていただいているだけでも,その日を生 き抜くことすらままならない時代を知っているからこその重 みがあった。それでいて,全く価値観の違う現代の人々に対 しても理解の姿勢や尊敬の念を忘れない態度に,大きく温か

い力を感じた。

 しかしながら,価値観などの違いを感じながらも歩み寄ろ うとされている語りの端々に,拭い去れない違和感や生きづ らさ,そしてやるせなさがにじみ出ていたことが,そのこと はが頭から離れない。協力者のみなさんにとっては,現代日 本とはもはや異文化といっても過言ではないだろう。

 これは,全ての女性高齢者が感じている問題とは言い切れ ないし,前提にするべきではない。しかし,現代に生まれ,

現代を生きる私たちには決して同じ体験をすることができな

い,このような苦しみの複雑さを抱えながら生きている方々

がいることを心にとどめておくことの必要性を強く感じた。

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謝辞

 本論文の作成にあたり,多くのご指導ご鞭捷をくださいま したすべての方々に,まずは心より感謝の気持ちを申し上げ

ます。

 そして,筆者が感じていた本研究の必要性や目的に共感し てくださったうえに,拙いインタビューに咲くご協力くださ った4名のみなさま,本当にありがとうございました。厳し い時代を生き抜いてこられたみなさまの語りを聴かせていた だくという貴重な体験は研究の枠を超え,自分の生き方につ いていろいろなことを考えさせてもらうきっかけとなりまし

た。

 また,大淀町教育委員会学校支援地域本部コーディネータ ーの皆さま,戦争を語り継ぐプロジェクトの関係者様,4名 の協力者の方々とめぐり合う機会を与えてくださり本当にあ りがとうございました。連絡や場所の提供をはじめとした手 厚いご協力に関しましては,どれだけ感謝してもしきれない

ほど助けていただきました。心より感謝申し上げます。皆様 との出会いは私にとってかけがえのないものとなりました。

 そして,指導教員である辻河昌登準教授には,研究の進め 方に関するご指導にとどまらず,精神的な面でも本当にたく さん支えていただきました。最後まで辛抱強く見守ってくだ さったことへの感謝の気持ちは申し上げきれません。本当に ありがとうございました。また,ご多忙な中,臨床心理学の 諸先生方からも貴重なご指導とご助言を賜りましたことを,

厚く感謝申し上げます。

 今後,臨床の場で学んだことを活かすことにより,皆様の ご厚情にお応えてきますよう,一層の努力をして参ります。

修士論文の作成を含めた学生生活にあたり,私を支えてくだ さいました,ここではすべて挙げきれないほど多くの皆様方 に感謝を申し上げ,謝辞とさせていただきます。

 二年間,本当にありがとうございました。

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