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本研究では「病的賭博」に対する問題意識の低さを改善し、予防や教育、治療などの対策 に繋げていくために、わが国の「病的賭博」の現状について実態データを示すことを目的と して実施された。そして、この目的に付随し、本研究では「1. “賭博への嗜癖”と他の“嗜癖”

との関連を調べるための実態調査」、「2. わが国の“病的賭博”の現状を示すための実態調 査に“有効”なスクリーニングテストの開発」、「3. “有効”かつ“有用”なスクリーニングテストの 開発と“病的賭博”の実態調査」を行った。

第1節 「賭博への嗜癖」と他の「嗜癖」との関連について

研究1と2では、「賭博への嗜癖」と他の「嗜癖」との関連を調べるための実態調査を実施 した。研究1では現在の社会においてどの様な「嗜癖」が存在するのかについて調査を実施 し、「嗜癖」の対象となるものの抽出を行った。研究1の結果から14種類の「嗜癖」の対象が 抽出された。研究2では研究1で抽出された「嗜癖」の対象について、従事人数やどの程度

「嗜癖」の性質をもっているのか調査をし、各「嗜癖」の類似性、特に「賭博への嗜癖」と他の

「嗜癖」の関連について検討した。研究2の結果より、研究2の対象において「賭博」は「屋外 での運動」や「インターネットに関連する行動」、「アルバイト」など日常生活における普段の 行動と違い「嗜癖」の傾向がある程度あるのだが、「嗜癖」として一般の問題意識も高く対策も されている「非合法薬物」や「喫煙」程顕著ではないことが示された。この結果は「嗜癖」に

「進行性」の性質があることから、研究2の調査対象者において「賭博」が深刻な状態にまで 至っていない過渡期の状況であるのではないかと考えられた。「賭博」に関してこのような解 釈の得られた研究2の調査対象者は大学生であり、様々な「嗜癖」の中での「賭博」の位置 づけをより包括的に捉えるのであれば調査対象を増やす必要があろう。しかし、この結果に

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関して、研究5にて得られた「病的賭博」と鑑別された大学生の症状がGAメンバーよりは深 刻ではなかったが、「賭博」への従事形態が類似していたという結果を併せて考えると、「研

究2」での「賭博への嗜癖」の特徴が「非合法薬物」や「喫煙」程顕著ではないという結果にな

ったのは、大学生における「賭博」が健常な状態でも臨床域でもない過渡期にあるからと解 釈できよう。このような「賭博への嗜癖」と他の「嗜癖」との関連、そしてSmith & Seymour

(2004)が述べていった「嗜癖の症状が進行性のものであること」から、大学生における「賭博」

が深刻な「嗜癖」の状態に陥らないために、大学生においては予防の観点からの防止教育 などの対策の必要性が伺えよう。

第2節 「有効」な「病的賭博」のスクリーニングテストについて

研究3と4では、「病的賭博」のスクリーニングテスト(SOGS-J)の開発を行い、信頼性と妥 当性の検討と妥当なcut off点の設定のための分類精度の検討を行った。研究3では大学 生を対象にSOGS-JとDSM項目を使用した調査を実施し、信頼性の検討とDSM項目の 得点を基準とした妥当性の検討と分類精度の検討を行った。その結果、大学生を対象とした 場合にSOGS-Jに十分な信頼性と妥当性があることが示され、また13点をcut off点として 設定することが妥当であると考えられた。次に研究4ではDSM項目の得点という主観報告 の結果を外的な基準にするのではなく、日常生活における「賭博行動」を基準として妥当性 の検討とcut off点の検討を行った。その結果、研究4においてもSOGS-Jには高い信頼 性と妥当性が備わっていることが示され、またcut off点も13点が妥当であるという研究3の 結果を指示する結果が得られた。研究3と4の結果から、SOGS-Jはわが国の「病的賭博」

の調査において十分使用できる信頼性と妥当性のある「有効」な「病的賭博」のスクリーニン グテストである事が示された。また、研究5にてcut off点を超えた学生のSOGS-Jの平均 得点がGAメンバーの平均得点と差があり、得点分布の形状も違っていたことから「病的賭 博」の症状は今すぐに治療・介入が必要なほど深刻な状態ではないが、既に「病的賭博」に 陥っている者と同様の従事形態で「賭博」に従事していたことが示された。この結果と「嗜癖

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の症状が進行性のものである」(Smith & Seymour, 2004)ことを踏まえると、SOGS-Jの得 点は症状の深刻さを示す連続量として扱うことができる。このことからSOGS-Jはcut off点 によって病的賭博者をスクリーニングするという用途に加え、cut off点以下の者については 全く問題の無い健常者に近いのかそれとも「病的賭博」の危険性が高いのかというように過 渡期の者を段階的に捉え、大竹(2002)の「多理論統合モデルを応用した喫煙行動の防止 プログラム」のように段階に根差した「病的賭博」の予防策を立てていくという効率的な介入 に使用することもできよう。

第3節 cut off点を超えた大学生について

cut off点を13点に設定し、研究3と4の全調査対象者の中で何人が「病的賭博」である のかを算出した結果、「病的賭博」であると考えられた者の割合は調査対象者全体の11.1%

であった。この結果は大学生を対象にSOGSを実施し、得られたわが国唯一の「病的賭博」

の有病率を示すものである。11.1%という有病率は佐藤(2008)が示しているSOGSを実施 した海外での実態調査のどの結果よりも高い有病率である。DSM-Ⅳ-TRに示されている対 象を青年や大学生に限定した場合の有病率やStinchfield et al(2006)が示した北米での 大学生の有病率は、一般サンプルの有病率と比較し非常に高い結果となっており、本研究 の結果も対象が大学生であったことから、比較的高い有病率が得られたと考えられる。本研 究の結果、大学生において比較的高い「病的賭博」の有病率が得られたことと大学生が日 常生活において自由な時間が多く「賭博行動」に従事し易く「賭博の問題」をもつリスクが非 常に高いこと(Jacobs, 2000)から、今後、青年や学生に対する「病的賭博」の防止教育や予 防等の対策を行っていく必要があろう。また、本研究の対象は関西圏の大学生に限られてい たため、今後全国の大学において同様の調査を行う必要があり、わが国の大学生を対象に した全国的な「病的賭博」の防止教育や予防に繋げていく必要性があろう。

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第4節 「有効かつ有用」な「病的賭博」のスクリーニングテストについて 研究 6 ではより簡便にスクリーニングできるよう SOGS-J の項目数を減らし短縮版

(SSOGS-J)を作成し、フルスケール版であるSOGS-Jと分類精度の比較を行った。その結 果、大学生を対象とした場合に SSOGS-J に十分な信頼性と妥当性があることが示され、ま たcut off点としては3点から4点と6点から7点という2つの設定が候補として考えられた。

次に研究 7 ではわが国の「病的賭博」の現状を示すための実態調査を想定し、大規模サン プルを対象とした実態調査におけるSSOGS-J使用の予備的な検討を行った。cut off点に ついて研究6 にて挙げられた2 つの設定で「病的賭博」である可能性が高い者の割合を算 出した結果、7 点では全体の 14.0%が「病的賭博」である可能性が高い者として分類され、

過去研究にて示されている有病率との比較からcut off点として7点が比較的妥当ではない かと考えられた。また、「cut off 点 7 点」で調査対象者を健常者と病的賭博者に分類し、人 口統計的な変数や物質への依存傾向」や「自殺念慮・企図」等の「病的賭博」と関係のある 変数との関連を検討した結果、海外やわが国の過去研究で示されている関連結果と類似し た結果が得られ、「cut off点 7 点」の妥当性を指示する結果であったと考えられた。研究6 と7の結果からSSOGS-Jの信頼性と妥当性に関しては十分なデータが示され、cut off点 の設定に関しても7点が妥当であると考えられたが、Nelson & Oehlert(2008)がSSOGS の使用用途によって設定を変更すべきであると述べていることから、SSOGS-J をより「有効 かつ有用」な「病的賭博」のスクリーニングテストにするために、今後もさらなる検討が必要で あり、全国的な「病的賭博」の調査の実現に繋げていく必要があろう。

本研究は、「病的賭博」に対する問題意識の低さを改善し、予防や教育、治療などの対策 に繋げていくために、わが国の「病的賭博」の現状について実態データを示すことを目的と して実施された。本研究にて開発されたSOGS-Jを使用することによって、大学生の11.1%

が「病的賭博」である可能性が高いと考えられ、またSSOGS-Jを使用することで一般サンプ

ルの14.0%が「病的賭博」である可能性が高いと考えられた。SSOGS-Jに関しては「有効か