本研究の概念枠組みの再構成までのプロセスを下記に示す。
概念分析を行った結果、患者アドボカシーとは、患者を尊重する、情報を提供する、エン パワメントする、家族・他職種・環境との調整を図ることであり、患者は自己決定に至る
(図1, p. 17’)。図1が示すように、看護師の患者アドボカシーは幅広い概念である。
Gadow(1978)の主張を踏まえると、看護師の患者アドボカシーとは、患者が自身の生活や価 値観に合った選択をし、自律した意思決定が行えるように支援することであると定義づけら れ、看護師の患者アドボカシーとはどのような構造であるのか、その実践を具体的に明らか にするために予備研究を実施した。
予備研究では患者アドボカシーについて「看護師は患者自身が患者にとって重要である何 かを決めるときに、患者さんを尊重して希望をたずねたり、相手が必要とする情報を伝えた り、環境を調整して患者さんの希望がかなうように支援すること」と説明し、「看護師の患 者アドボカシー概念に基づく意思決定支援である」と定義づけ質的帰納的に探索した。
予備研究の結果、導き出した概念図が図 2(p. 28)である。患者アドボカシー概念に基づく 意思決定支援は、アドボカシー実践に関する因子、看護の対象となる人を理解する、患者や 家族の尊厳を守る、看護の対象となる人をエンパワメントする、患者を取り巻く環境を調整 する、これらの5つの概念から成り立つことが明らかになった(図2)。
看護師の患者アドボカシーの帰結、患者が自律した意思決定ができるという点を踏まえ、
本研究では図2より概念「看護の対象となる人をエンパワメントする」を抽出し、概念枠組み の再構成を図った。看護師の患者アドボカシー概念に基づく意思決定支援という実践を示す ものは範囲が広いために、患者の治療選択の場面に限定し、尺度を作成することとした。患 者にとって治療の選択は生活や人生を左右するほど重要なことであり、看護師のアドボカ
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シー概念に基づく意思決定支援が特に必要とされるという点を踏まえた。よって、治療にお ける意思決定支援に限定し、文献検討、および予備研究の結果を加え、再構成した概念枠組
みを図3(p. 32)に示す。
看護師の患者アドボカシーに基づく治療選択における意思決定支援力における看護師の帰 結は職務満足、看護師のアイデンテティとし、妥当性の検討として、看護師の職務満足度尺 度(撫養, 2014)、看護師の職業的アイデンテティ尺度(佐々木, 2006)を用いた。看護師の職 務満足度尺度(撫養, 2014)は、「仕事に対する肯定的な感情」、「上司からの適切な支援」、
「働きやすい労働環境」、「職場での自らの存在意義」の4因子構造からなる尺度であり、
専門職としての自らの能力を発揮する看護実践を通して得られる職務満足から成る内容で構 成されている。看護師の患者アドボカシーの帰結として、実践を通して得られる達成感や成 長が挙げられている点で看護師の職務満足と言えることから、妥当性の検討に看護師の職務 満足度尺度を用いる。看護師の職業的アイデンティ尺度(佐々木, 2006)を用いる。ケアする ということは、自らのアイデンテティを保ちながら他者の価値観を認めていくことが求めら れ(Mayeroff, 1971)、ケアをする者として、 看護師は看護師としての確固たるアイデンテ ティを獲得していくことが,よりよいケアを行ううえで重要とされている(佐々木, 2006)。
Quinby (1971) は看護師が自身のアイデンテティを獲得していくプロセスの中で職業的な成 熟を獲得することや、自らの自尊心を強めることを明らかにしており、看護師の職業的アイ デンテティの獲得は看護師の達成感や成長につながっている。看護師の患者アドボカシーの 帰結として、実践を通して得られる達成感や成長(Hanks, 2007; Vaartio, 2006)が挙げられてお り、これらはアイデンテティの構築につながることから、看護師の職業的アイデンテティと 患者アドボカシーは関連があると言える。したがって、妥当性の検討として看護師の職業的 アイデンテティ尺度を用いる。
「看護師の患者アドボカシー概念に基づく治療選択における意思決定支援力」は、【Ⅰ.患 者が決めるべきことに対して行動する力】、【Ⅱ.患者の決める過程を支援する力】、【Ⅲ.医 師に対して働きかける力】、【Ⅳ.専門的な知識をもつ力】から構成される( 表3, p.32’’)。
「看護師の患者アドボカシー概念に基づく意思決定支援力」は、患者アドボカシーを実践 する個人的因子、労働環境などの環境的因子と関連がある。また、「看護師の患者アドボカ
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シー概念に基づく意思決定支援力」と職務満足、看護師の職業的アイデンテティには関連が あるという概念枠組みを作成した。
32’
図 3 看護師の患者アドボカシー概念に基づく治療選択における意思決定支援力「看護の対象となる人を エンパワメントする」に焦点化した概念枠組み
32’’
表3 「看護師の患者アドボカシー概念に基づく治療選択における意思決定支援力」の構成概念
概念 下位概念 下位概念の定義
決めるべきことに注目するように支援する力 決めることに対する患者のレディネスを把握し、何をいつまでに決めるべきか、決めること自体 に注目するようかかわる力のこと
どのように決めたいか望む方法を支援する力 どのように、どの程度関わって、どのような方法で決めることができるかかかわる力のこと
選択肢すべての利点・欠点について説明する力 すべての治療の選択肢とその利点と欠点について、選択しないということも含めて、すべての選 択肢に時間をかけ丁寧に説明する力のこと
価値観を明確にすることを支援する力 患者が治療の選択肢すべてを理解したうえで、自分にとって重要であることを見出すことを支援 する力のこと
選択肢すべての利点・欠点が整理できるよう支
援する力 患者が治療の選択肢すべての利点と欠点が整理できるように支援する力のこと
患者の理解状況を観察する力 治療の選択肢に関する情報について十分理解した上で選択ができるか患者の理解状況を観察する 力のこと
他者からのサポートが受けられるように計らう 力
治療の選択をする際に家族や友人から十分な支援が得られ、同じような経験をした人の選択につ いて情報が得られるように計らう力のこと
気がかりを表出させ解決する力 心配ごとや関心がどこにあり、表出できているか確かめ、解決できるように計らう力のこと 決めた後の状況を確かめる力 患者が自分自身で決め、決めたことに迷わず、自信があるかを確かめる力のこと
Ⅲ医師に対して働きかける力 医師の意思決定支援に対して行動できる力 患者が主治医から決めるべきこと、すべての治療の選択肢とその利点と欠点について十分な説明 を受けた上での選択をし、合意に至っているか確認し、不十分と判断すれば行動できる力のこと
Ⅳ専門的な知識をもつ力 専門職として理解し、説明できる力 患者が受ける治療の選択肢すべてとその利点・欠点、危険性・副作用について理解し、説明でき る力のこと
Ⅰ患者が決めるべきことに対して 行動する力
Ⅱ患者の決める過程を支援する力
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