本法律案は、第193回国会に「地方自治法等の一部を改正する法律」として内閣により 提出されたものである。2017年3月10日に衆議院において議案受理、同5月10日に衆議院
(6) 武藤博己は、今後の課題として、指定管理者と違い、地方独立行政法人はあまり普及してい
ないため、「地方独立行政法人の設立事務から始まる法的規制や具体的な運営方法について、
改めて学習する必要がでてくる」点、自治体のコントロール(公権力の観点から)と団体(当 該地方独立行政法人)の(外部資源の活用としての)自主性は相反する要素であり、「コント ロールと自主性という観点からバランスのよい関係が求められる」点、非公務員型の地方独立 行政法人であっても、給与や手当の面も含め公務員制度に準じていると思われることから、非 常勤職員を多用する必要が生じる可能性があり、結果、偽装請負となる懸念等から採用しても 財政面での効率化の可能性が低く、そもそも、採用されない可能性が高いのではないかという 点を掲げている(注(1)掲載の武藤(2017)参照)。
内閣委員会に付託、18日に委員会で、23日に本会議でそれぞれ可決している
(7)。
審議の舞台は参議院に移り、5月24日参議院総務委員会に付託、6月1日に委員会で、
2日に本会議でそれぞれ可決、成立している(公布日は6月9日、法律番号54)
(8)。 国会における成立の過程において、これまでに析出されてきた論点に関わる議論を中心 に検討を加えてみたい。
まず、地方独立行政法人が窓口業務を担うメリットについては、一部に公権力の行使を 含み一括した委託が困難、小規模自治体では事務量が少なく委託先の確保が困難という民 間委託の課題を克服しつつ、「地方独立行政法人は、行政から独立した自主的、自律的な 業務執行が可能」で、「業務運営の効率化や住民サービスの向上が期待できるところ」、
「具体的には、職員の勤務条件や給与などについても、地方公共団体の職員よりも柔軟に 設定できる、例えば夜間、休日の窓口対応や繁閑期に応じた人員配置などが期待できると ころ」であって、継続的に窓口業務を担うことにより、「窓口業務に係るノウハウの蓄積、
専門性の確保が図られることもメリット」としている
(9)。
民間委託と地方独立行政法人との違いは、公権力の行使に当たる部分を一体的に委託で きるかどうかであると思われる
(10)。そもそも、なぜ公権力の行使が地方独立行政法人に おいて可能となるのであろうか。これに対しては、「地方独立行政法人は、組織、運営の 根幹につきまして地方公共団体の関与が制度として担保されて」いるため、「地方公共団 体の責任において組織、運営の適正を確保することが常に可能であ」り、「地方独立行政 法人が行うことができる窓口業務を、定型的な業務として法律の別表に掲げたものに限定」
(7) 賛成会派は、自由民主党・無所属の会、公明党、日本維新の会、反対会派は、民進党・無所
属クラブ、日本共産党であった。なお、本稿における会派名、政党名はすべて当時のものであ る。
(8) 賛成会派は、自由民主党・こころ、公明党、日本維新の会、無所属クラブ、反対会派は、民 進党・新緑風会、日本共産党、希望の会(自由・社民)、沖縄の風であった。
(9) 衆議院総務委員会第18回(2017年5月16日)における輿水恵一委員(公明党)に対する原田 憲治総務副大臣の答弁。このほか、衆議院総務委員会第20号(2017年5月18日)における梅村 さえこ委員(日本共産党)の質問に対して安田充政府参考人(総務省自治行政局長)が「地方 独立行政法人は、行政から独立いたしました自主的、自律的な業務執行が可能」であることか ら「業務運営の効率化、住民サービスの向上といったものが期待できるのではないか」とした うえで「具体的には、職員の勤務条件や給与などにつきましても、地方公共団体の職員よりも 柔軟に設定ができ」、「例えば、夜間、休日の窓口対応でございますとか、繁閑期に応じた人 員配置などが期待できる」旨の答弁をしている。
(10) この点は、参議院総務委員会第15回(2017年5月30日)において江崎孝委員(民進党)が指 摘している。
図表3
地方独立行政法人制度の改革に関する研究会報告書(参考資料)より引用。
独立行政法人により担うことができるようにしておいて、それが「外部資源」と呼ぶべき ものか、各業務における公権力の軽重はどうかという論点は、この方式を採用するか否か、
また、採用したとしてどの業務を地方独立行政法人に担わせるかは自治体の判断に委ねる ことにより結論そのものを不要としたまま答申されているように思われるのである
(6)。 さらに付け加えれば、本法律第21条の別表に掲げられた業務はすべて「総務省令で定め るもの」とされていることから、この詳細が明らかにならなければ、提示された選択肢が いかなるものか地方自治体にとっては判断が難しいのではないかと思われる。
4. 本法律の成立過程と国会における議論
本法律案は、第193回国会に「地方自治法等の一部を改正する法律」として内閣により 提出されたものである。2017年3月10日に衆議院において議案受理、同5月10日に衆議院
(6) 武藤博己は、今後の課題として、指定管理者と違い、地方独立行政法人はあまり普及してい
ないため、「地方独立行政法人の設立事務から始まる法的規制や具体的な運営方法について、
改めて学習する必要がでてくる」点、自治体のコントロール(公権力の観点から)と団体(当 該地方独立行政法人)の(外部資源の活用としての)自主性は相反する要素であり、「コント ロールと自主性という観点からバランスのよい関係が求められる」点、非公務員型の地方独立 行政法人であっても、給与や手当の面も含め公務員制度に準じていると思われることから、非 常勤職員を多用する必要が生じる可能性があり、結果、偽装請負となる懸念等から採用しても 財政面での効率化の可能性が低く、そもそも、採用されない可能性が高いのではないかという 点を掲げている(注(1)掲載の武藤(2017)参照)。
内閣委員会に付託、18日に委員会で、23日に本会議でそれぞれ可決している
(7)。
審議の舞台は参議院に移り、5月24日参議院総務委員会に付託、6月1日に委員会で、
2日に本会議でそれぞれ可決、成立している(公布日は6月9日、法律番号54)
(8)。 国会における成立の過程において、これまでに析出されてきた論点に関わる議論を中心 に検討を加えてみたい。
まず、地方独立行政法人が窓口業務を担うメリットについては、一部に公権力の行使を 含み一括した委託が困難、小規模自治体では事務量が少なく委託先の確保が困難という民 間委託の課題を克服しつつ、「地方独立行政法人は、行政から独立した自主的、自律的な 業務執行が可能」で、「業務運営の効率化や住民サービスの向上が期待できるところ」、
「具体的には、職員の勤務条件や給与などについても、地方公共団体の職員よりも柔軟に 設定できる、例えば夜間、休日の窓口対応や繁閑期に応じた人員配置などが期待できると ころ」であって、継続的に窓口業務を担うことにより、「窓口業務に係るノウハウの蓄積、
専門性の確保が図られることもメリット」としている
(9)。
民間委託と地方独立行政法人との違いは、公権力の行使に当たる部分を一体的に委託で きるかどうかであると思われる
(10)。そもそも、なぜ公権力の行使が地方独立行政法人に おいて可能となるのであろうか。これに対しては、「地方独立行政法人は、組織、運営の 根幹につきまして地方公共団体の関与が制度として担保されて」いるため、「地方公共団 体の責任において組織、運営の適正を確保することが常に可能であ」り、「地方独立行政 法人が行うことができる窓口業務を、定型的な業務として法律の別表に掲げたものに限定」
(7) 賛成会派は、自由民主党・無所属の会、公明党、日本維新の会、反対会派は、民進党・無所
属クラブ、日本共産党であった。なお、本稿における会派名、政党名はすべて当時のものであ る。
(8) 賛成会派は、自由民主党・こころ、公明党、日本維新の会、無所属クラブ、反対会派は、民 進党・新緑風会、日本共産党、希望の会(自由・社民)、沖縄の風であった。
(9) 衆議院総務委員会第18回(2017年5月16日)における輿水恵一委員(公明党)に対する原田 憲治総務副大臣の答弁。このほか、衆議院総務委員会第20号(2017年5月18日)における梅村 さえこ委員(日本共産党)の質問に対して安田充政府参考人(総務省自治行政局長)が「地方 独立行政法人は、行政から独立いたしました自主的、自律的な業務執行が可能」であることか ら「業務運営の効率化、住民サービスの向上といったものが期待できるのではないか」とした うえで「具体的には、職員の勤務条件や給与などにつきましても、地方公共団体の職員よりも 柔軟に設定ができ」、「例えば、夜間、休日の窓口対応でございますとか、繁閑期に応じた人 員配置などが期待できる」旨の答弁をしている。
(10) この点は、参議院総務委員会第15回(2017年5月30日)において江崎孝委員(民進党)が指 摘している。