第 3 章 文章の組版 21
3.19 書体について
文字は意思伝達手段であって長いあいだに洗練された媒体です.怒りの意思を強く込め たいならば人は荒々しく文字を書くでしょうし,優しさを込めたいならば丸みを帯びた書 き方になるでしょう.以上のような文字の形を書体と言います.
世の中にはこれらを書体というひとつの枠組みで整理しています.書体は読者に対して 何らかのメッセージを分かりやすく伝えるために変更される場合があります.ですから書 体を変更するということには必ず意味があるべきなのです.むやみやたらに書体を変更し
ても逆に読者を混乱させます.また自分だけのルールで書体を変更しても読者には何の意 味なのかが分かりませんので,一般的に使われている書体に関するルールを守るのもマ ナーです.
L
ATEX
はマークアップ型のシステムなのでユーザーが直接書体変更用の命令を使うこと は本来ならば必要のないことだと思われます.以下のコマンドは直接使うのではなく新規 に環境を定義して用いるのが望ましいでしょう.3.19.1 文字の大きさの変更
L
ATEX
においては比較的簡単に文字の大きさを変えることが可能ですが,文字は文書ク ラスオプションで指定した基準の文字の大きさに応じて変更されます .文字の大きさを 変更したいときは表3.8
の宣言型のコマンドを{\
命令 文字の大きさを変えたい文字列}
のように使用します.表3.8 文字の大きさの変更
大きさ 命令 出力例
とても小さい
\tiny
野鳥 かなり小さい\scriptsize
花鳥小さい
\footnotesize
雷鳥やや小さい
\small
白鳥普通
\normalsize
飛鳥やや大きい
\large やちょう
大きい
\Large かちょう
かなり大きい
\LARGE らいちょう
とても大きい
\huge はくちょう
特大
\Huge ひちょう
そういえば,{\scriptsize これ}は小さい文字だ けど,{\Large こっち}は大きい文字になってるね.
そういえば,これは小さい文字だけど,
こっち
は大きい文字になってるね.
このような書体の大きさを変更するコマンドを直接使うのは好ましくなく,きちん とマークアップ付けをするべきです.例えば強調のために文字を大きくしたいのであれば 新規に
\kyocho
命令を作ります.\newcommand{\kyocho}[1]{{\Large#1}}
\newcommand{\Kyocho}[1]{{\LARGE#1}}
ああそういえば\kyocho{ここは大事だからね}. それに\Kyocho{ここはもっと大事}だよ.
ああそういえば
ここは大事だからね
.それに
ここはもっと大事
だよ.好き好き
L
ATEX 2
ε初級編3.19
書体について3
表3.9 基準の文字の大きさによるコマンドの挙動の違い コマンド
\
基準の大きさ10 pt 11 pt 12 pt
使用すべき要素∗\tiny 5 pt 6 pt 6 pt
振り仮名\scriptsize 7 pt 8 pt 8 pt
\footnotesize 8 pt 9 pt 10 pt
索引・脚注\small 9 pt 10 pt 11 pt
図表見出し\normalsize 10 pt 11 pt 12 pt
少少節見出し・本文\large 12 pt 12 pt 14 pt
小節見出し\Large 14 pt 14 pt 17 pt
節見出し\LARGE 17 pt 17 pt 20 pt
\huge 20 pt 20 pt 25 pt
部・章見出し番号\Huge 25 pt 25 pt 25 pt
部・章見出し∗使用すべき要素は1段組での場合です.
3.19.2 書体の変更
L
ATEX
において書体の種類はファミリー デザイン上の系統の種類.
シリーズ 線の太さと文字幅の違いによる種類.
シェイプ 形状の変化の違いによる種類.
サイズ フォントの大きさ.
の四つに分けられます.サイズに関しては前述の通りです.
文字の大きさや書体の種類を不必要に変更することは,逆に読者を混乱させるだけで す.自分はきちんと使い分けることが出来る,という方は表
3.10
の一覧から適切な書体 を選んで,美しい文書を作成してください. ファミリーとシリーズとシェイプはそれぞ表3.10 書体を変更するコマンド
種類 命令 宣言 出力
ローマンファミリー
\textrm \rmfamily ABCabc
サンセリフファミリー\textsf \sffamily
ABCabc タイプライタファミリー\texttt \ttfamily ABCabc
ミディアムシリーズ\textmd \mdseries ABCabc
ボールドシリーズ\textbf \bfseries
ABCabc イタリックシェイプ\textit \itshape
ABCabc スラントシェイプ\textsl \slshape ABCabc
スモールキャピタルシェイプ\textsc \scshape ABC
abcれ組み合わせて使うことが出来ます.例えば「セリフがなくて太くて傾いたフォント」と いう文字を出力したければ次のようにします.
\textsf{\textbf{\textit{I like sushi.}}}
{\sffamily\bfseries\itshape I like sushi.} I like sushi. I like sushi.
使用している基本書体によっては出力できないタイプもあります.
\texttt{\textbf{Type writer and bold
extended?}} I like \textsc{small caps} and
\textit{\textbf{bold italic}}. {\ttfamily
\bfseries type writer and bold extended}
Type writer and bold extended?I likesmall caps and bold italic.type writer and bold extended
書体のファミリーやシェイプなどを先に指定してから大きさを変更します.
{\Large\textbf Large Bold?} 成功.\\
{\textbf\Large Bold Large?} 失敗.
Large Bold?
成功.Bold Large?失敗.
和文の書体は基本的には明朝体とゴシック体の二つしか用意されていません(表
3.11
). これは従来の和文組版で二つの書体しか使われなかった名残です.現在のpL
ATEX
で和文 の多書体を図ることはそれ程難しくありません.ただ不用意に和文を多書体にしても読者 がそれに慣れていないと思われますので,悪戯に行わないほうが良いかもしれません.表3.11 和文書体のファミリー
種類 命令 宣言 出力
明朝ファミリー
\textmc \mcfamily
永字八法って何ですか?ゴシックファミリー
\textgt \gtfamily
永字八法って何ですか?和文組版において明朝体は通常の文章の組版,
ゴシック体は\textgt{文章の強調に}使われま す.{\gtfamily 見出しも強調すべき要素なの でゴシック体にするのが普通です.}
和文組版において明朝体は通常の文章の組版,ゴシッ ク体は文章の強調に使われます.見出しも強調すべき 要素なのでゴシック体にするのが普通です.
3.19.3 基本書体の変更
フォントの大きさやファミリーなどを指定する命令は分かりました.しかし,文書に使 われている書体そのものを変更するにはどうすれば良いのでしょうか.実は普段何気なく
L
ATEX
で文書処理をしているときに使われている欧文のフォントはDonald Knuth
氏がデ ザインしたComputer Modern
と呼ばれる基本書体が使われています.この基本書体その ものを変更するには基本書体を変更する定義がされたマクロを読み込むか,自分で指定す る必要があります.数式に使われる数式書体も基本的にComputer Modern
が使われます.フォントついては奥村晴彦氏の文献