第 3 章 到達時間短縮非定常スライディングモード制御手法
3.3 時変切換超平面を用いた到達時間短縮制御
3.3 時変切換超平面を用いた到達時間短縮制御
本手法の概念をFig. 3-2,Fig. 3-3を用いて説明する.ここでは,簡単のため2次1入力系 を例とする.x1,x2で張られる位相空間上に,初期時刻t=t0における状態量x0が存在してい る.
Fig. 3-2 (a)は時不変切換超平面を用いた従来のスライディングモード制御手法の場合で ある.切換超平面は制御目的を達成することのみを目指して設計されており,初期の状態 量x0の位置は考慮されていない.したがって,偶然切換超平面近くにx0が位置していない 限り,到達モードが存在し,切換超平面に到達した後にスライディングモードを発生する.
Fig. 3-2 (b)は到達時間のないスライディングモード手法であるインテグラルスライディ ングモード手法の場合を示している.インテグラルスライディングモード制御では切換超 平面の設計時に補助変数zを導入することで,制御系と切換超平面の次元が一致し,Fig. 3-2 の例では切換超平面も2次元となる.したがって,x0が既知であればx0を通り,制御目的 を達成する切換超平面を設計することができる.インテグラルスライディングモード制御 では,図に示したとおり状態が常に切換超平面上に拘束されているため,スライディング モードのみの制御となる.
(x1(t0), x2(t0)) x1 x2
O
=Sx(t)=0
STEP1:
Reaching mode STEP2:
Sliding mode
(a) SMC
(b) ISM x2
O
(x1(t0), x2(t0)) x1
=Sx(t)+z=0
Sliding mode z
(x1(t0), x2(t0)) x1 x2
O
=Sx(t)=0
STEP1:
Reaching mode STEP2:
Sliding mode
(x1(t0), x2(t0)) x1 x2
O
=Sx(t)=0
STEP1:
Reaching mode STEP2:
Sliding mode
(a) SMC
(b) ISM x2
O
(x1(t0), x2(t0)) x1
=Sx(t)+z=0
Sliding mode z
x2
O
(x1(t0), x2(t0)) x1
=Sx(t)+z=0
Sliding mode z
O
(x1(t0), x2(t0)) x1
=Sx(t)+z=0
Sliding mode z
Fig. 3-2 Progress of control with traditional methods
以上の従来手法に対し,提案手法では,Fig. 3-3に示す3つのステップから制御を達成す る.
STEP1: 初期の切換関数値が微小値となるように設計された切換超平面 0 0に素早く
状態が到達する.
STEP2: 0 0から希望する動特性を有するf 0まで,時間に応じて状態を拘束した
まま切換超平面が移動する.
STEP3: 切換超平面がf 0まで移動し,状態が平衡点へスライディングする.
このとき,STEP1 のみが到達モードとなり,STEP2,3 はスライディングモードである.
したがって,到達時間は大幅に短縮され,スライディングモードの特徴であるマッチング 条件を満たす外乱や不確かさへのロバスト性が制御時刻全般において発揮される.
(x1(t0), x2(t0)) x1 x2
O
0(t)=S(t0)x(t)=0
f=S(tf)x(t)=0
1(t)=S(t1)x(t)=0
STEP1:
Reaching mode (x1(t0), x2(t0))
x1 x2
O
0(t)=S(t0)x(t)=0
f=S(tf)x(t)=0
1(t)=S(t1)x(t)=0
STEP1:
Reaching mode
(x1(t0), x2(t0)) x1 x2
O
0(t)=S(t0)x(t)=0
f=S(tf)x(t)=0
1(t)=S(t1)x(t)=0
STEP3: Sliding mode with time-invarying switching hyperplane
(x1(t0), x2(t0)) x1 x2
O
0(t)=S(t0)x(t)=0
f=S(tf)x(t)=0
1(t)=S(t1)x(t)=0 STEP2: Sliding mode
with time-varying switching hyperplane
Fig. 3-3 Progress of control with Proposal method
3.3.2 最適な時変切換超平面による到達時間短縮
3.2 に示した最適な時変切換超平面を到達時間が短縮されるように設計する方法を示す.
Fig. 3-1に示したように,到達時間を短縮するためにはS(0)を構成する要素の値をなるべく
小さくすれば良い.3.2で述べたように,Sは式(3-9)で表される評価関数が最小となるよう に設計される.したがって,評価関数中の重みQの各対角成分wiを微小値で与えて設計さ れた切換超平面は,状態量に対して感度の鈍い保守的なものとなり,Sを構成する各要素も 比較的小さい値となり,結果として切換関数の初期値
0 が小さい値となる.しかし,全 制御時刻でこの制御器を用いると十分な性能を得られず,制御目的を達成することはでき ない.したがって,式(3-10)で与えられる時変重み関数の各対角成分wi(t)を,Fig. 3-4のように,
初期時刻の重みw0はなるべく0に近い値とし,時間が経つにつれて制御目的を達成する適 切な値 wfへと変化する時間関数で与えることとする.初期時刻付近で重みを微小値とする ことで,初期時刻では切換超平面の傾きを構成する各要素の値が微小値となる.そのため,
初期状態量が未知であっても,切換関数値が比較的小さい値となり,到達時間の短縮が実 現され,かつ制御時刻後半では十分な制御性能を有した制御器を得ることができる.
さらに,本手法は評価関数に基づいた設計方法であるため,切換超平面は制御対象のダ イナミクスを考慮した安定なものとなる.
w
O t wf
w0 w
O t wf
w0
Fig. 3-4 Time-varying weighting function
3.3.3 最適時変フィードバックゲインを用いた時変切換超平面による到達時間短縮
次に第 2 章で提案した時変切換超平面に対して,評価関数の重みの設計により到達時間 を短縮する方法を述べる.
本手法は第2章で示した通り,最適時変フィードバックゲインf(t)を時変切換超平面の傾 きS(t)とするものである.
t
t r1
t T t tS f B P
非定常最適制御手法において制御入力u(t)は次のように与えられる.
u t f t x t (3-25)
これに対し,本手法における切換関数は
t t t
t t
S x
f x (3-26)
であり,切換関数は最適制御におけるu(t)に対応することがわかる.
ここで,式(2-12)の評価関数は次の通りである.
2
( ) ( ) 0tf ( ) ( ) ( ) ( ) ( )
T T
f f f
J x t Q x t
x t Q t x t r t u t dtよって,積分項内のu(t)の部分は切換関数に置き換えることができる.
2
( ) ( ) 0tf ( ) ( ) ( ) ( ) ( )
T T
f f f
J x t Q x t
x t Q t x t r t t dt (3-27)つまり,本手法は切換関数を拘束条件として設計された評価関数に対して,切換超平面の 傾きを設計する手法と見ることができる.このとき,重み関数r(t)は切換関数に対する重み となる.
したがって初期時刻における切換関数値を小さくするためにはFig. 3-5に示すようにr(t) を初期時刻で大きい値,制御時刻後半に向かって r(tf)=1 に滑らかにつながれた関数とし,
状態量にかかる重み関数Q(t)の各対角成分については初期時刻での値を小さい値として,制 御時刻後半に向かって制御性能を発揮する適切な値として与えればよい.
w
O t wf
w0 w
O t wf
w0 O t wf
w0
r
O t rf=1
r0 r
O t rf=1
r0
(a)Q (b)r
Fig. 3-5 Time-varying weighting function