第 3 章 到達時間短縮非定常スライディングモード制御手法
3.4 数値計算による有効性の検証
3.4.2 到達時間短縮効果の検証
制御の有効性を検証する前に,前述した制御対象を用いた数値計算により,前節で提案 した設計方法により到達時間の短縮が実現されるかを検証する.
制御条件は,位置決め目標距離0.3m,整定条件は目標距離との誤差±1%であり,オーバ シュートなく位置決めすることを目指して制御を行う.
3.4.2.1 適用制御器
まず始めに,前述した位置決め制御を達成する定常スライディングモード制御器(以下,
SMC)を最適制御理論に基づく二種の手法を用いて設計する.一つはUtkinにより提案され
た最適な切換超平面を用いた制御器(以下,SMC1(tf))であり,もう一つは最適フィードバ ックゲインからなる切換超平面を用いた制御器(以下,SMC2(tf))である.次に,この定常 制御器設計に用いた評価関数中の重み値を時刻ttfにおける重みとする非定常スライディ ングモード制御器(以下,NSMC)用の重み関数を設計し,3.2.2 に示した最適な時変切換 超平面を用いた制御器(以下,NSMC1),および2.2.2 に示した最適時変フィードバックゲ インを切換超平面として設計した制御器(以下,NSMC2)を設計する. したがって,NSMC の設計に用いた重み関数値はSMC の設計に用いた重み値以下となる.NSMC1については 重み関数のrのみを時変にした場合(NSMC1r),Qを時変にした場合(NSMC1q),および r と Q いずれも時変にした場合(NSMC1qr)の三種の制御器を設計し,到達時間の変化を 確認する.
なお,非線形制御入力項については制御器の性能をそろえるために,いずれの制御器に
ついてもk(t)=15とし,平滑関数 の値はチャタリングを生じない適切な微小値で与える.
3.4.2.2 結果と考察
最適な切換超平面を用いたSMC1(tf),NSMC1での数値計算結果をTable 3-3に示す.上段 から順に,SMC1(tf),NSMC1 での制御結果であり,左から順に設計した重み値,値,土 台変位の時刻歴応答を示す.重み関数グラフ中のw1はxb,,w2はxs,w3はxb,w4はxsに対
する重みである.また,表中には各制御器を用いた場合の到達時間,整定時間も整理して いる.同様に,最適フィードバックゲインからなる切換超平面を用いたときの数値計算結
果をTable 3-4に示す.上段から順に,SMC2(tf),NSMC2r ,NSMC2q ,NSMC2qrでの制御結 果であり,行方向に記す内容はTable 3-3と同様である.
Table 3-3より,xbにかかる重みw1を定数10として設計した制御器と,0から10の範囲
で変化するシグモイド関数を用いて設計した制御器では,到達時間はそれぞれ0.84 s,0.25 s であり,時変切換超平面を用いることで時間の短縮を実現していることが確認できる.t=0 における値を見ると,SMC1では-0.3であるのに対し,NSMC1では-0.0075とかなり小さ い値となっており,前節で述べた通りの時変切換超平面が設計されていることがわかる.
Table 3-4に関しても,時不変切換超平面では到達時間に0.26 sを要しているのに対し,時
変切換超平面の導入により,最短で0.07 sまで到達時間が短縮されていることが確認された.
本制御対象では,到達時間の短縮に関しては,rよりもQの影響が強い傾向が見られた.し かし,Qは制御性能への影響も強いため,到達時間の短縮と共に制御性能も悪化する結果と なった.一方,rのみを時変とした場合には到達時間は大幅には短縮されないが制御性能は 維持される結果となった.
なお,NSMC で制御性能が劣る傾向があるが,これは,評価関数中の重みが到達時間へ 与える影響を調べるために,重み関数の最大値をSMC設計時に用いた値以下としたためで ある.NSMCとSMCでは制御器の構造が異なるため,重み値をそろえて設計した制御器で 性能を比較することはできず,本結果から到達時間の短縮が制御性能を劣化させると結論 付けることはできない.
Table 3-3 Control results using SMC1(tf) and NSMC1
Weighting Displacement
SMC1(tf) w1=10 w2=0 w3=0 w4=0.1
Reaching time = 0.84 s Settling time = 0.70s
NSMC1
w2=0,w3=0
w4=0.1 Reaching time = 0.25 s Settling time = 0.95 s
Table 3-4 Control results using SMC2(tf ), NSMC2r, NSMC2qand NSMC2qr
Weighting Displacement
SMC2(tf)
w1=5×104 w2=1×104 w3=0 w4=10
r=1 Reachinng time = 0.26 s
Settling time = 0.81 s
NSMC2r
w1=5×104 w2=1×104 w3=0,w4=10
Raching time =0.13 s
Settling time = 0.78 s
NSMC2q
w3=0
r=1 Reaching time = 0.07 s Settling time=1.15 s
NSMC2qr
w3=0 Reaching time = 0.07s Settling time=1.16 s