臨床リポート
午前 10 時〜午後4時 45 分
対 象:漢方入門から中級の医師・歯科医師・薬剤師・鍼灸師・医療系学生ほか 場 所:東邦大学医学部校舎第3・4講義室(都合により変更になる場合があります)
参 加 費:一般5万円/研修医・学生3万円/資料会員2万円 共 催:東邦伝統医学研究会・株式会社ツムラ
問合 せ:東邦大学医療センター大森病院東洋医学科内 担当:三浦・河野まで。メール可。
TEL:03(5763)6624(総診医局) FAX:03(3765)6518 メール:[email protected] 申込方法:上記問合せ先に申込用紙をご請求の上,FAX にてお申し込みください。
臨床リポート/十全大補湯投与3日目より解熱し得た骨盤内腫瘍による腫瘍熱の1症例
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インフルエンザ治療における 竹筎温胆湯の有用性について
臨床リポート
丹羽 幸吉
明陽クリニック(愛知県名古屋市)◆症例1◆
◆症例2◆
◆症例5◆
◆症例3◆
◆症例4◆
緒 言
こじれて遷延したインフルエンザに 有効であった3症例
予防接種後のかぜ症状に 有効であった3症例 竹筎温胆湯が,西洋医学的治療後もこじれて遷延したイン
フルエンザに有効であった3症例と,インフルエンザ予防接 種後のかぜ症状に有効であった3症例について症例を提示す る。インフルエンザ治療における竹筎温胆湯の有用性を明ら かにするとともに,その適応症(証)についても考察したの で報告する。
以下の症例1〜6は,2006 年 2 月から 2007 年 12 月まで の間に,慢性疾患にて当院通院治療中に発症したものである。
なお,オセルタミビル・ザナミビルの投薬,およびインフル エンザの予防接種は全例他施設で施行されたものである。
患者 66 歳,女性。身長 153㎝,体重 36kg。
受診日 200X 年4月 13 日。
現病歴 3週間前にA型に罹った。39 度まで上がり,オセ ルタミビルを4日服用したあとも 37.2 〜 37.8 度の間の上 下が続いたので,解熱剤だけ飲んでいたが,まだすっきりし ない。今,36.7 度。咳があり小寒い。足が冷える。
処方 竹筎温胆湯エキス製剤 6.0 g分3を,10 日分処方。
結果 微熱が取れて数日でよくなった。
患者 34 歳,女性。身長 150㎝,体重 66kg。
受診日 200X 年3月 10 日。
現病歴 2月 25 日から咳が出る。28 日にA型と診断され,
ザナミビルを4日使用して少し楽になったが,まだぐずつく。
熱っぽいが小寒い。37 度くらいで鼻水と咳あり。
処方 竹筎温胆湯エキス製剤 7.5 g分3を6日分処方。
結果 よく効いて治った。鼻水がよく止まった。
患者 70 歳,女性。身長 160㎝,体重 49kg。
受診日 200X 年2月 22 日。
現病歴 2月初めA型に罹った。39 度あったが,2月7日 オセルタミビルを1日服用して解熱した。まだ体の芯がだる い。少しけだるい。熱っぽいが体が冷える。足が冷えて背中 も寒い。昨日コタツを入れても寒かった。口が乾く。痰がか らむ。入浴後,目がボーッとする。鼻水が出る。
処方 柴胡桂枝乾姜湯エキス製剤 7.5 g分3を7日分処方。
結果 柴胡桂枝乾姜湯を 1 日半飲んで,目の熱感は取れた が体の方ははっきりしないので,たまたま家に残っていた竹 筎温胆湯を 7.5 g分3で3日飲んだところ,体がとても楽に なりよくなった。
患者 49 歳,女性。身長 151㎝,体重 48kg。
受診日 200X 年 11 月5日。
現病歴 11 月2日夕方に予防注射を打った。3日午後から のどがおかしくなった。のど痛と頭痛あり。37.1 度。寒かっ た。今も熱っぽいような小寒いような感じあり。痰がからん で,のどがイガイガする。目がチカチカする。
処方 竹筎温胆湯エキス製剤 7.5 g分3を6日分処方。
結果 翌日,体が軽くなり2日くらいでよくなって3日分残 して治った。
患者 50 歳,女性。身長 164㎝,体重 59kg。
受診日 200X 年 12 月 10 日。
現病歴 12 月3日に予防注射をしてからかぜっぽい。のど
◆症例6◆
臨床リポート/インフルエンザ治療における竹筎温胆湯の有用性について
考 察
痛と咳あり。のどにかぜがこもった感じがする。だるさはな いが,首が凝る。
処方 竹筎温胆湯エキス製剤 7.5 g分3を7日分処方。
結果 そのまま治った。
患者 43 歳,女性。身長 156㎝,体重 47kg。
受診日 200X 年 12 月 21 日。
現病歴 12 月 14 日に予防注射(1 回目)を打った。そのあ とから体調が低下して,3日前から咳がひどく朝晩こみあげ て止まらず。のどが乾いてイガイガする。頭痛あり。寒くて 足は氷水につけているみたい。昨日1回下痢した。昨日まで 寝ていた。脈は沈,細。
処方 竹筎温胆湯エキス製剤 7.5 g分3と真武湯エキス製剤 5.0 g分2をそれぞれ7日分処方。
結果 よかった。3,4日でかぜは治った。真武湯を併用し たのは,体の冷えが強かったのと下痢のためである。
竹筎温胆湯は『寿世保元』が出典とされている1)。使用し たエキス製剤の構成生薬内容は『寿世保元』のものから大棗 を除いた 13 味であり,薬剤の効能としては基本的には同じ と考えられる。
竹筎温胆湯の,現代における一般的な使用目標2)としては,
「主として流感などに罹患し,咳嗽・喀痰・微熱などがやや 遷延する場合に用いられる。その際,不安・不眠などを伴う ことが多い」と考えられている。本報告においても,症状す べてを聞き出しているわけではないが,のどイガ・咳・痰・
微熱(または熱っぽい感じ)・悪寒などがおおむね共通した 症状としてみられる。
大塚敬節3)は,竹筎温胆湯による治療例を2例報告して いる。1 例は,「65 歳。男子。1 カ月前に風邪をひき,いま だに微熱があって咳が止まらない。脈は弱い。舌はやや乾燥 して,うすい白苔がある。腹部は一体に弾力に乏しい」とい う症例で,竹筎温胆湯を2, 3日服薬して諸症状の著明な改 善がみられた。もう 1 例は「17 歳。女子。腸閉塞などによ り2回の開腹手術を受けている。貧血がひどく,疲れる。腹 が張り,下腹が時々痛む。腹直筋が緊張して殊に下腹が硬い」
という症例で,大建中湯と小建中湯の合方が奏効して,そ
の治療経過中に,微熱が出るようになり,咳も出て風邪がこ じれたようだという。そこで竹筎温胆湯を用いたところ熱も 咳とともに数日でよくなった。
松田4)は,初めに桂枝湯が著効し,治ったと思っていたら,
また悪化してきたという 72 歳の女性に,竹筎温胆湯が著効 したと報告している。竹筎温胆湯を使用した症状は,「時々 寒けがし,微熱がある。のどが痛む。頭痛はないが,食欲は あまりない。特に眠れなくて困っている。なんとなく神経質 になって驚きやすく,痰が少しからんだ咳が出て,安眠でき ない」とある。
浅田宗伯5)は,「胸膈に鬱熱あり,咳嗽不眠の者に用いる」
と述べている。
菅波ら6)は,罹患期間3〜 21 日のかぜ症候群の患者 23 人に対して竹筎温胆湯エキス製剤を投与した結果を報告して いる。悪寒・発熱・咽痛などの症状はほとんど3日以内に消 失し,身体がだるい・食欲不振・咳嗽などの改善にはやや時 間がかかったと述べており,竹筎温胆湯は主に痰熱の治療薬 である,と位置づけている。
以上より竹筎温胆湯の適応症状としては「寒け・微熱・の ど痛(あるいはのどイガ)・咳・不眠など」といえるが,こ れらの症状の原因は上焦(上縦隔から咽喉頭のあたりを中心 に)に熱が滞留しているためと考えられる。竹筎温胆湯の構 成生薬に,小柴胡湯・麦門冬湯の方意が含まれているのはそ のためであろう。表1,2に示すごとく,遷延したインフル エンザでも,予防接種後のかぜ症状においても,発症からの 経過時間にかかわらず奏効するのは,病態が同じだからと考 えられる。筆者はすでに,竹筎温胆湯は,かぜ治療において,
発病初期にも使用できることを報告した7)。実際,常備薬の ようにしてかぜの引き始めに服用し,すぐ治るから重宝して いるという患者は当院にはけっこう多く,筆者の頻用処方の 1つでもある。また,方剤の効果としては,上記の大塚,菅 波らの報告,さらに以下に示す近藤らの報告からもわかるよ うに,即効的である。
さて,一方,竹筎温胆湯の適応を体質的な面からみると,
大塚,松田の症例は虚証であることが明らかである。今回報 告した6症例も,腹証や,発症時直前の常用方剤から明らか なように,すべて虚証例である。
近藤ら8)は,かぜ症候群にて,発症後 1 週間以上を経過
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【参考文献】
1)小山誠次,古典に基づくエキス漢方方剤学.メデイカルユーコン,
1998,p.419
2) 長谷川弥人ほか.漢方製剤活用の手引き.臨床情報センター,1998,p.204 3)大塚敬節.大塚敬節著作集.春陽堂,1980,第3巻 p.193,第5巻p.124 4)松田邦夫.症例による漢方治療の実際.創元社,1992,p.152 5)長谷川弥人.勿誤薬室「方函」「口訣」釈義.創元社,1985,p.150 6)菅波茂・甄立学.かぜ症候群に対する竹筎温胆湯の使用経験.漢方診療,
臨床情報センター,1993,12(1),p.29
7)丹羽幸吉.「カゼ治療における竹筎温胆湯証についての考察」.第 38 回日 本東洋医学会東海支部学術総会における発表,2008
8)近藤寛治・長野準・吾郷晋浩ほか.かぜ症候群に対する竹筎温胆湯の臨床 治験.和漢医薬学会誌,1984,1(1),p.124
9)稲木一元.漢方重要処方マニュアル・基礎と実践の手引き(46)竹筎温胆 湯.漢方医学,臨床情報センター,1998,17(1),p.7
結 語
したと推定される 15 歳以上の患者 66 例にツムラ竹筎温胆 湯を投与し,投与3日目の中等度改善以上 44.6%,軽度改 善以上 84.6%と,高い有効率を報告している。そして,竹 筎温胆湯の使用目標の 1 つに「虚証(時に中間証)」をあげ ている。
稲木9)は,竹筎温胆湯の使用目標として,「体質的には,
中等度からやや虚弱な者まで使用できる。神経質で,慢性胃 炎様症状,上腹部不定愁訴のある例に用いる機会が多い」と,
述べているが,竹筎温胆湯に,茯苓飲や二陳湯の方意が含ま れていることから首肯しうる。
なお,今回インフルエンザ治療に関連した竹筎温胆湯の報 告例を他に見出しえなかったため,考察は,かぜ(普通感冒)
との比較という体裁をとらざるをえなかったが,両者の症状 が類似している限り,まったく支障はないと考えている。
西洋医学的治療後もこじれて遷延したインフルエンザ,な らびにインフルエンザ予防接種後のかぜ症状に対して竹筎温 胆湯が有効であった6症例について報告し,適応症や治療効 果などにつき,若干の検討を加えた。竹筎温胆湯は,証が同
様であれば,かぜにもインフルエンザにもともに有効であ り,即効性があること,発病からの経過時間にかかわらず 使用できること,などが示された。西洋薬にはないこの ような優れた効能をもつ竹筎温胆湯は,かぜやインフル エンザの重要な治療薬の1つに数えられて然るべきもの であろう。
*本論文の要旨は,第 38 回日本東洋医学会東海支部学術総会(2008 年 11 月 9 日)において発表した。
表1 遷延したインフルエンザに対する治療例
症例 かぜ症状 治療効果 腹証 竹筎温胆湯による治療
直前の主な常用方剤
インフルエンザ 予防接種の有無 1 66 歳,
女性
咳・小寒い・足が冷える・微熱
(36.7 度) 数日で治った。 陥凹型 人参養栄湯・真武湯
など 無
2 34 歳,
女性
鼻水と咳。熱っぽいが小寒い。
微熱(約 37 度) よく効いた。 水太り肥満・
軟弱無力
五積散・牛車腎気丸・
柴胡桂枝乾姜湯 無
3 70 歳,
女性
鼻水。痰がからむ。熱っぽいが 体が冷える。けだるい。入浴後 目がボーッとする。口が乾く。
3日飲んでよくなった。 陥凹型 四君子湯・柴胡桂枝湯
など 有(1回)
表2 インフルエンザ予防接種後のかぜ症状に対する治療例
症例 かぜ症状 治療効果 腹証 竹筎温胆湯による治療直
前の主な常用方剤 4 49 歳,
女性
注射翌日から発症。今日で発症3日目。熱っぽいよ うな小寒いような感じ。痰がらみで,のどがイガイ ガする。目がチカチカする。
翌日体が軽くなり,
2日くらいでよく なった。
平坦・軟弱 補中益気湯・小青竜湯 など
5 50 歳,
女性
7日前に注射をしてからかぜっぽい。のど痛と咳。
のどにかぜがこもった感じ。首が凝る。 そのまま治った。 平坦・軟弱 真武湯・人参湯・
女神散
6 43 歳,
女性
7日前に注射後,体調が低下して,3日前から咳が ひどい。のどが乾いてイガイガする。頭痛あり。寒 くて足が冷える。昨日 1 回下痢。
3,4日で治った。 一見正常 柴胡桂枝乾姜湯・真武湯 など
臨床リポート/インフルエンザ治療における竹筎温胆湯の有用性について