図2−1 シラスとイカナゴの漁獲量の推移
(『兵庫農林水産統計年報』により作成)
2.小型底びき網漁業
小型底びき網漁業の前身は、打瀬網漁業や手繰網漁業である。小型底 びき網漁業は・、他の漁業種類に比べると漁獲努力に相応して安定した漁
獲量が得られる。また一本釣漁業や、まき網漁業などのように高度の技 術を要さなくても一応の漁獲が望めること、種類によっては個人操業が 可能であることなどが小型底びき網漁業の特質であり、兵庫県瀬戸内海 区の一円にみられる中心漁業の一つである。
林崎、東二見、西二見で行われているのは、手繰第一種漁業としての 沖廻手繰網であり、魚類の捕獲を主な目的にしている。共同経営がなさ れているところもみられる。林崎に近接する明石浦では、手繰第二種漁 業のちんこぎが主体である。神戸西部や東播地方の高砂や伊保もちんこ ぎで、カレイを中心にした挙例魚類やタコ、エビ(カワツエビと呼称さ れている。サルエビのこと)をとっている。淡路島の東浦では、板びき 網での周年操業が主流である。板びき網は、エビも漁獲対象であるがア ナゴやカレイなどの魚類を多くとる。南浦では、板びき網と手繰第三種 漁業のまんがを併用している。夏季が板びき網、冬季がまんがである。
まんがもちんこぎと同様に、タコ、カレイ、ヒラメ、エビ、エソ、アナ ゴなど対象魚種は豊富である。なお大阪湾は、まんが漁業の禁止海域と されてし「る。西浦でも呼びき網とまんがの併用地域であるが、北淡町の 漁業地区は漁法が異なっている。室津と浅野はちんこぎで、富島はぼう
こぎ(こぎ網)である。西播地方では、板びき網とまんがを併用してい る漁業地区が多いが、 Lけた網の行われているところもある。
漁業センサスによって小型底びき網漁業を営んだ経営体数を昭和58 年と平成5年で比較すると、漁業地区の多くが減少傾向にある。増加し ている漁業地区でも微増にとどまっている。明石浦の99から175への 増加は、特異な事例である。経営体数の減少は漁業資源の低下にもよる が、後継者不足も要因の一つである。小型底びき網漁業は、他の漁業種 類に比べて労働負担が大きい。60歳を過ぎると小型底びき網漁業を続 一41一
けることはむずかしいといわれている。高齢になると小型底びき網漁業 から地先での一本釣漁業や刺網漁業などに転業するのが一般的である。
全漁業経営体数に比べて小型底びき網漁業の経営体数が少ないところ がある。その理由の一つとして漁業権漁場の広さが関与していると考え
られる漁業地区がある。赤穂は漁業権漁場が広く、地方で豊富な漁獲が 得られたので沖合での操業へと伸展しなかった。室津(北淡町)は赤穂 と対照的である。室津から郡家の沖合にかけて室津の瀬がある。新漁業 法制定(昭和24年)までは室津に慣行漁業権があった。しかし自由漁 場となり、安定した漁獲を確保するために小型底びき網漁業が増加して いったという経緯がある。
3.刺網漁業
刺網漁業は地先で小規模に行う場合は漁業権漁業であるが、許可を必 要とする業種もある。その一つが鰭(サワラ)流し刺網漁業である。サ ワラ流し刺網漁業は五色の鳥飼が中心であり、女性の乗船も多い。一宮 や丸山でも操業されている。漁期は5〜11月である。五色では四国の 漁業者からサワラ流し刺網の漁法が伝授されたといわれている。 r.兵庫 県漁業慣行録』には「蜷流網」として五色の都志、万歳、鳥飼での操業 が明記されている。五色でのサワラの漁獲は流し刺網漁業だけによらな
いが、漁獲量が減っているという現状である。
南淡では刺網の9割近くが建網で、ヒラメやカレイなどの魚類のほか にサザエやアワビ、イセエビなどの水産動物をとっているが、まき刺網 漁業の一種である建廻し網漁業も行われている。投網終了後、木槌や棒
を用いて水面を威嚇し、タイやスズキなどをとっている。
なお明石浦では釣漁業を擁護する観点から建網を禁止している。
4.小型定置網漁業
減少傾向が.みられるが、西播地方のほとんどの漁業地区で行われてい るのが小型定置網漁業である。中でも家島・岩見・室津・赤穂などは統 数が比較的に多い。淡路島で、平成5年に小型定置網漁業を営んだ経営 体が10をこえる漁業地区は、湊と南淡である。小型定置網漁業は地先 の潮流と水深に左右される。潮流が速いと小型定置網は維持できない。
西翠:地方での対象魚種は豊富で、スズキ、チヌ、カレイ、アジなどの 魚類だけでなく、ガザミ、イカなどの水産動物もとっている。湊ではア ジが漁獲の中心で、主に関東方面に出荷されている。冬季は対象魚種の 移動が停滞するので水揚げが少なくなる。
西播地方の漁業地区の中には、岡山県、特に日生からの漁業者が地先 に入漁して小型定置網を張っていたところがあり、技術の伝播がなされ たと考えられる。白浜などには日生の漁業者の定住もみられる。かって は岩見でも小型定置網漁業にclる出漁が行われていた。網元制度のもと に、遠くは朝鮮半島(元山など)にまで出かけていた。湊では地びき網 漁業から小型定置網漁業に移行していった。小型底びき網漁業からの転 身もみられる。刺網漁業との兼業も多い。南淡では、小型定置網の技術 は香川県の引田から導入されたと伝わっている6
漁具の改良によって軽減されてきたとはいえ、小型定置網漁業の労働 負担は大きい。漁獲努力に比して水揚げが低下してきたことも、経営体 が減少する一因となっている。
岩屋や沼島などでは小型定置網漁業を抑制している。他の漁業権漁業 の障壁となるためである。
5.その他の網漁業
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坊勢や室津(御津町)では巾着網漁業が、親方制度のもとに行われて いる。主な対象魚種は、最近、資源量が増大しているアジである。
巾着網漁業と同様、まき網漁業の一種である、はなつぎ網も西播地方 を中心にして操業されている。サワラを主要魚種とする網漁業である。
漁期は春と秋に分かれているが、秋が盛漁期である。
神戸西部の長田にみられるのが敷網漁業としての八田網である。網元 制度で行われている。
注
(1) 船びき網漁業の歴史的経緯については、 『淡路の農林水産業 昭和 の歩み』 (兵庫県洲本市農…林水産事務所 1989年)と漁協関係者への 聞き取りによる。
(2) 事業所数は、淡路島水産加工業協同組合調べ。富島の3の中には野 島2を含む。志筑の事業所は、シラスやイカナゴの加工を専門にして いない。育波にある事業所のうち、経営者が一宮町に在住しているも のもある。志筑の漁協経営による事業所は協同組合に非加盟であり、
他にも西淡町と北淡町に非加盟の事業所が各1ある。ちなみにシラス とイカナゴ(コナゴ)の塩干を、それぞれチリメンジャコ、カナギチ リメンという。
第2節 兵庫県瀬戸内海沿岸漁村のその他の漁船漁業
1.一本釣漁業
兵庫県瀬戸内海区の一本釣漁業の主流は手釣漁業よりも曳縄釣漁業で あり、曳釣と曳縄釣に大別される。曳縄釣漁業は自由漁業ではなく許可 漁業である。許可数(平成6年12月1日現在)の多い漁業地区は、明
石浦の295を筆頭にして、由良215、神戸西部212、福良184、一宮
156、岩屋114、江井ヶ島92、阿那賀91、東二見85と続く。まっ
たく許可のない漁業地区は15である。列記すると高砂、伊保、広畑、網干、苅屋、岩見、相生、坂越、赤穂、福浦、生穂、守口、南淡、五色
育波である。(1)
曳釣の主な対象魚種は、サワラ曳釣漁業と称せられているようにサワ
ラである。漁期は、5月6月頃の春期と10月11月頃の秋期に分かれ
ている。秋漁としてサワラの幼魚であるサゴシをとる漁業地区もある。サワラの他には、ハマチ、アジ、サバなども捕獲している。漁場は播磨 灘や大阪湾一帯である。
曳縄釣といえばタチウオを漁獲目的にしている。タチウオ曳縄釣漁業 は、福良の漁業者が昭和42年頃に開発したといわれている。(2)しか し、現地では徳島県阿南市の伊島から技術が移入されたと伝えられてい る。福良で改良されて兵庫県瀬戸内海区の一円に広まっていったと考え られる。福良でのタチウオの漁期は、5月頃から翌年の1月頃までであ る。由良では女性が乗船して曳縄釣に就業する傾向がある。由良での女 性組合員の増加は、曳縄釣の導入が機縁となっている。福良では女性の 従事がみられず、当地のタイルや電気機器の製造工場などへの就労が多
い。
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