第四章 ゼミナールの発話におけるフィラー
4.1 日本語と中国語のフィラーの種類
4.1.2 質疑応答時の場合
4.1.2.3 日本語母語話者と中国人日本語学習者におけるフィラーの使用差(質疑応答
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表 13−② (表 13-①の続き)各発話者に使用されるフィラーの型別の分類 型 発話
者
J13 J14 J15 J16 J17 J18 C1 C2 C3 C4 C5 合 計
②
型別の出現 率(%)
母 音 型
ア系 12 3 1 3 2 3 13 7 26 207 9.91 エ系 1 1 3 1 5 129 6.18
オ系 3 1 1 7 0.34
コ ソ ア 型
コノ 系
4 44 6 126 6.03
ソノ 系
1 2 1 2 5 24 178 8.52
アノ 系
2 2 1 2 0 2 24 2 3 52 522 24.99
コ ソ 型
コー 系
17 0.81
ソー 系
2 0.10
エート型 25 7 4 3 7 55 203 9.72 マー型 1 2 1 7 439 21.01 ンー型 5 1 3 1 3 47 2.25
ハイ型 1 1 123 5.89
ナンカ型 5 5 3 2 5 26 77 3.69
ネー型 12 0.57
合計① 54 12 2 17 9 9 0 60 67 3 205 2089 100 注:1、合計①は「発話者ごとのフィラーの数の和」である。
2、合計②は「フィラーの種類ごとの数の和」である。合計②は表 13-①と表 13-②の フィラーの種類ごとの合計である。
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表 14 日本語母語話者と中国人日本語学習者におけるフィラーの使用実態(質疑応答時)
型 フィラー 日本語母語話者 中国人日本語学習者 数 出現率(%) 数 出現率(%) 母
音 型
ア系 161 9.18 46 13.73 エ系 120 6.84 9 2.69 オ系 5 0.29 2 0.60 コ
ソ ア 型
コノ系 72 4.10 54 16.12 ソノ系 147 8.38 31 9.25 アノ系 441 25.14 81 24.18 コ
ソ 型
コー系 17 0.97 ソー系 2 0.11
エート型 141 8.04 62 18.51 マー型 429 24.45 10 2.99 ンー型 40 2.28 7 2.09 ハイ型 123 7.01
ナンカ型 44 2.51 33 9.85 ネー型 12 0.68
合計 1754 99.98 335 100 総発話数 1684 624
一発話のフィラー数 1.04 0.54
表 14 の中の「一発話のフィラー数」を見ると、日本語母語話者は中国人日本語学習者の 約 2 倍使用されていることから、日本語母語話者の方が中国人日本語学習者よりフィラー の使用頻度が高いと言えよう。さらに、それぞれ使っているフィラーの種類を比べてくる と、中国人日本語学習者の場合は、「コー系」、「ソー系」、「ハイ型」、「ネー型」との四種類 のフィラーにおいて数がゼロであるということから、中国人日本語学習者は日本語母語話 者より使用するフィラーの種類が少ないということが分かった。以上の2点に関しては、
原稿説明時と同じ結果が出ている。そして、日本語母語話者と中国人日本語学習者のそれ ぞれ使っているフィラーにおいて、上位 5 位を順番に列挙すると、以下の表 15 の通りであ る。
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表 15 日本語母語話者と中国人日本語学習者の使用するフィラーの上位 5 位 1 位(%) 2 位(%) 3 位(%) 4 位(%) 5 位(%)
日本語母語話者 アノ系
(25.14)
マー型
(24.45)
ア系
(9.18)
ソノ系 (8.38)
エート型 (8.04) 中国人日本語学
習者
アノ系
(24.18)
エート型
(18.51)
コノ系 (16.12)
ア系 (13.73)
ナンカ系 (9.85)
表 15 のぞれぞれの上位 5 位までを比較したところ、「アノ系」に関しては、日本語母語 話者において中国人日本語学習者においても最も多く使われ、全体のおおよそ4分の一を 占めている。それは、(「アノー」は)「発話内容の整理や適切な表現選択の際に用いられる」
こと、および「相手の注意を引きつける機能を持つ」(松浦 1996)という「アノー」の機能 と関わっているかもしれない。
さらに、日本語母語話者は「マー型」と「ソノ系」の方を、中国人日本語学習者は「エ ート型」、「コノ系」及び「ナンカ型」の方を多用しているという違いも確認された。「アノ 系」と「コノ系」は中国語にもそれに対応するフィラーがあると前述の 4.1.1.2 も述べた が、「ナンカ型」も中国語に対応するフィラーがある(表 5 参照:「ナンカ」は「什麼(シ ェンマ)」に相当する)。そこで、原稿説明時でも質疑応答時でも、中国人日本語学習者 に多用されているフィラーは中国語にもそれらに対応するフィラーが存在するということ が分かった。なお、「ソノ系」に関しては、質疑応答時の場合は、日本語母語話者は第 4 位 を占めいているが、中国人日本語学習者は上位 5 位に入っておらず、日本語母語話者は中 国人日本語学習者より多用しているということが確認できた。しかし、原稿説明時の場合 はそれと矛盾する結果となっている。つまり、中国人日本語学習者は日本語母語話者より 多く使用しているという結果が得られた(表 8 参照)。前述の 4.1.1.2 でも述べたが、中国 語には「ソノ系」に対応するフィラーがない。質疑応答の結果に関しては、中国語には「ソ ノ系」がないため、中国人日本語学習者はあまり「ソノ系」を使用しないとも考えられる。
しかし、前述の 4.1.1.2 では、中国語では「アノ」と「ソノ」が同じ語になるため、「アノ」
と「ソノ」が混用されるが故に、「ソノ」が中国人日本語学習者に多用されていると述べた が、その二つとも考えられないことはないと思った。いずれにせよ、中国人日本語学習者 の使用するフィラーには母語による干渉があるということが言えよう。
なお、フィラーの使用における偏りがあるかどうかを見るために、日本語母語話者と中 国人日本語学習者とのそれぞれの上位1位から上位5位までのフィラーの出現率を合わせ ると、日本語母語話者の場合は 75%強、中国人日本語学習者の場合は 80%強もあるという
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ことで、両者とも上位 5 位のフィラーが全体の 4 分の 3 以上を占めているという結果が得 られた。