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第 3 章 日本の ABL に関わる担保制度の特徴

第 1 節 担保制度の概要

5 集合動産譲渡担保

在庫の構成内容が日々変動する場合、変動に応じて個々の動産に譲渡担保の設定と解除 を繰り返すことは実務上困難なことがある。このような不都合を回避するために集合物と いう概念がある。集合物とは、倉庫内の在庫品のように構成物が随時変動していくものを指す。

そこで流動集合動産と呼ぶことがある70。集合物とは、「一定の目的の下に集められた数個の 物の集団であって、その各個の物が独自の存在性と取引価値を失うことなく、しかも集団自 体も一個の統一財産として特有単一の経済価値を有し、取引上一体として取り扱われてい るもの」をいう(最判昭和54年2月15日民集33巻1号51頁)。

判例・多数説は、動産の集合体それ自体に着目し、その構成動産は流動するが一個の統一体と して同一性をもって存続しており、一個の集合物として対象とするという理論構成をとり、これ を集合物論という。判例では「構成部分の変動する集合動産についても、その種類、所在場所お よび量的範囲を指定するなどなんらかの方法で目的物の範囲が特定される場合には、一個の集 合物として譲渡担保の目的となりうる」としている(最判昭和54年2月15日民集33巻1号 51頁、最判62年11月10日民集41巻8号1559頁)。つまり、在庫担保の目的物としての法 律構成としては集合物が用いられており、判例は集合物を特定一物として目的物の種類、保 管場所、量の3つの要素を中核とする基準によって特定すると解される。

69 前掲61、山口明「動産譲渡担保権の円滑な実行に関する一試論」清水元、橋本恭宏、山田 創一編『平井一雄先生喜寿記念財産法の新動向』、209-211頁。

前掲66、山口明『ABLの法律実務―実務対応のガイドブック』、43頁。

70 河上正二『担保物権法講義』日本評論社、2015年、364頁。

前掲58、安永正昭『講義 物権・担保物権法第2版』、413頁。

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なお、日本の判例では集合動産は集合財として法律上特定一物として構成されているが、

集合債権は個別に特定されている。しかし、学説には集合動産に対しても集合物の固定化の 概念は不要であるとする有力説が主張されている71

図表3-3 集合動産譲渡担保

(出所)筆者作成

図表3-3 集合動産譲渡担保は、集合動産譲渡担保を図示したものである。担保権者は占有改

定によって物権を有すると解される。流動している在庫等の動産に対して設定者は使用権を有 している。集合動産譲渡担保では、集合物が流動するため、担保権者が物権を行使するときには、

物権の範囲を特定する必要がある。

判例は、「倉庫業者に寄託中の乾燥ネギ44トンのうちの28トン」という特定性を分離・特定 できないという点から否定している(最判昭和54年2月15日民集33巻1号51頁)。このほ か、酒・食品販売業者である債務者の各建物内に納置する商品、運搬具、什器、備品、家財一切 を目的とした譲渡担保の設定に対し、「家財一切の物件が、これに該当するか識別が困難であり、

特定できると考えられない上、所有者のものとそれ以外のものを明確に識別する指標がなく措 置もなされていないことから客観的な特定を欠く」という趣旨の判示がなされた(最判昭和 57 年10月14日判時1060号78頁)。

第三者対抗要件は、個別動産と同様に譲渡担保権設定契約時に集合物の占有改定による引渡 があり、譲渡担保権者が間接占有を取得することで対抗要件が具備され、集合物の同一性が維持 される限り、新たにその構成部分となった動産にもおよぶ(最判62年11月10日民集41巻8

71 前掲66、山口明(2011年)『ABLの法律実務―実務対応のガイドブック』、33頁。

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号 1559 頁)。これに対して、占有改定による引渡は、当事者の合意のみで集合物に担保設定さ れていることを外部から認識するのは困難であるにもかかわらず大量の集合動産を一挙に第三 者対抗要件を取得できることに批判もある72

法人が譲渡担保設定者である場合には、動産債権譲渡特例法による動産譲渡登記による第三 者対抗要件の具備が可能である(動産債権譲渡特例法3条1項)。

図表3-4は、動産債権譲渡特例法における集合動産譲渡担保を図示したものである。動産債権 譲渡特例法による登記を実施した場合、担保権者に担保物の引渡があったとみなされ、第三者に 対しても公示機能が備わる。

図表3-4 動産債権譲渡特例法(集合動産譲渡担保)

(出所)筆者作成

なお、判例は、範囲が重なる集合動産に重複した譲渡担保設定を認めている(最判平成 18

年7月20日民集60巻6号2499頁420)。同判例により、集合動産担保に重複した譲渡担保設

定がなされた場合、後順位の譲渡担保権者は、私的実行による動産の引渡請求は認められないと 解される。

集合動産譲渡担保権の実行は、債務者の同意があるときは私的実行であり、動産譲渡担保の 実行に準ずる。債務者に債務不履行があると譲渡担保権者は債務者に実行通知をなし、対象とな る集合物の範囲にある個別動産を帰属清算方式または換価処分方式のいずれかの方法で清算し、

換価代金で債権回収に充てる。

債務者が目的物の任意の引渡に応じないときには、法的な手続による目的物の占有保全を行

72 前掲58、安永正昭『講義 物権・担保物権法第2版』、418頁。

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うことになる。保全手続きは、概ね次の通りである。裁判所に対する保全命令の申立て、供託所 への供託、保全命令の発令、執行方法と執行日について打ち合わせ、占有移転禁止の仮処分また は断行の仮処分の執行である。

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