第 3 章 破壊関数を用いたシミュレーション結果
3.2 既往の試験結果との比較
34
35 ロックをずらして配置してあるために不連続面となっている。
b
Joint-setⅢ
1
2
3図 3.1 既往の真三軸圧縮試験[]に用いられた供試体のモデル
Tiwari and Rao(2007)[1]は Joint set I と1のなす角bをb= 0°、10°、30°、50°、70°、
90°の角度を持つ 6 種類の供試体を用いて、中間主応力2を様々な値に固定したうえで、
かつ最小主応力を3=0.31, 0.78, 1.22 MPa と 3 条件下での試験を行った。
Tiwari and Rao(2007)[1]は弱面以外での強度定数について、使用したセメント混じり砂 の強度定数をR = 0.989 (= 44.7°)、C = 3.29 MPa と報告している。b= 0°あるいは 90°の場合にはすべての弱面が主応力面となるため、弱面でのせん断破壊は生じずに、供試 体の強度は弱面のないセメント混じり砂と同じになるはずである。そこでb= 0°, 90°の破 壊時応力状態を図 3.4 にプロットしてみたところ、実験結果は R = 0.989、C = 3.29 MPa の 等方材料に対する破壊線よりもかなり下に位置することがわかった。そこで、本研究では弱 面以外の粘着力を C = 1.6 MPa とした。摩擦比については R = 0.989 をそのまま用いた。
最弱面 Joint set - I の強度定数としては Tiwari and Rao (2007)が節理の摩擦比として報告 している R = 0.748 (= 36.8°)をそのまま引用した。粘着力において、Joint set – I は完全 に別個体の境界であることから C = 0 MPa を採用した。一方、Joint set - II は不連続面で あるが、連続した平面としてみた場合には節理面とそれ以外の面積比が同じとなるので、両 者の強度定数の平均値をとって R = 0.861、C = 0.8 MPa と仮定した。
(1) 不連続モデルによるシミュレーション
① フロー
これらの強度定数を用いて、初めに不連続モデルを用いたシミュレーションを行った。
実験条件と同じように 3 = 0.31, 0.78, 1.22 MPa およびb= 0、10、30、50、70、90の
36
もとで、様々な2の値に対して F = 0 となる1を求めるシミュレーションを行った。最初
2=3の状態から2を増加させていき、破壊時の1の挙動を図 3.5、3.6、3.7 にプロットし た。図 3.5 では3=0.31 MPa、図 3.6 では3=0.78 MPa、図 3.7 では3=1.22 MPa での挙動 である。今回は不連続モデルでのシミュレーションであるため、等方性材料、Joint set – I、
Joint set – II の 3 つの面での破壊基準を満たすときの1の値を比較し、最小の1を取る面を 採用した。参考に図で行った、様々な弱面における破壊時の最大主応力1と中間主応力2の 値をプロットしたシミュレーションフローを図に示した。なおフローにある角は Joint set I と3のなす角である。
また弱面の角度を増加させていき、破壊基準を満たすときの1をプロットした結果を図 3.8、3.9、3.10 に示す。図 3.2 でのシミュレーション同様等方性材料、Joint set – I、Joint set – II の 3 つの面での破壊基準を満たすときの1の値を比較し、最小の1を取る面を採用し た。併せてフローチャートを図 3.3 に示す。
37 最小主応力3
強度定数Rmax,Rjointset1,Rjointset2,Cmax,Cjointset1,Cjointset2
弱面と鉛直軸(z軸)がなす角bJointset1,bJointset2
弱面と水平軸(x軸)がなす角Jointset1,Jointset2
2の刻み幅dtを入力
2=3
(1,2,3)=(z,y,x)である
Joint-setⅠの破壊基準 F=0における1の算出
Joint-setⅡの破壊基準 F=0における1の算出 等方性材料の破壊基準
F=0における1の算出
それぞれの1を比較し、最小の値を取る 面の破壊基準を採用し出力
2 1?
2=2+dt
NO YES
END
STOP
図 3.2 一定の3における破壊時の1と2を求めるシミュレーションのフロー
38
START
最小主応力3
強度定数Rmax,Rjointset1,Rjointset2,Cmax,Cjointset1,Cjointset2
弱面と鉛直軸(z軸)がなす角bJointset1,bJointset2
弱面と水平軸(x軸)がなす角Jointset1,Jointset2
bの刻み幅dbを入力
b=0
(1,2,3)=(z,y,x)である
Joint-setⅠの破壊基準 F=0における1の算出
Joint-setⅡの破壊基準 F=0における1の算出 等方性材料の破壊基準
F=0における1の算出
それぞれの1を比較し、最小の値を取る 面の破壊基準を採用し出力
b 90?
b=b+db
NO
YES END
STOP
図 3.3 一定の3における破壊時の1と角bを求めるシミュレーションのフロー
39
0 1 2 3 4 5 6 7 8
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
(
1-
3)/ 2 , ( M P a)
(
1+
3)/2, ( MPa)
b=90°b=0°
実験値
図 3.4 強度定数を決定する際に用いた破壊基準線
40
図 3.5 破壊時の最大主応力と中間主応力の実験結果とシミュレーション結果
(3=0.31MPa)
図 3.6 破壊時の最大主応力と中間主応力の実験結果とシミュレーション結果
(3=0.78MPa)
0 2 4 6 8 10
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
b=51 b=81
3 =0.31MPa
Joint set-Iでの破壊 Joint set-IIでの破壊
2
によって破壊面が 異なる破壊
b=090 70 50 30
10 0
実験値
(deg) 中間主応力
2,(MPa)
最大主応力
1,( MPa )
0 2 4 6 8 10 12 14
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5
90 70
50 30
10 0
実験値(deg)
3=0.78MPa
b=0
Joint set-Iでの破壊 Joint set-IIでの破壊
最大主応力
1,( MPa )
中間主応力
2,(MPa)
41 図 3.7 破壊時の最大主応力と中間主応力の実験結果とシミュレーション結果
(3=1.22MPa)
0 2 4 6 8 10
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
3=0.31MPa
2=0.31
2=0.59
2=0.95
2=1.22
2=1.62
実験値
(MPa)
2=1.62
最大主応力
1,( MPa )
鉛直軸と joint-set Ⅰ のなす角 b, (deg)
図 3.8 破壊時の最大主応力と角bの実験結果とシミュレーション結果(3=0.31MPa)
0 2 4 6 8 10 12 14
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 b=5
90 70
50 30
10 0
実験値(deg)
3=1.22MPa
Joint set-Iでの破壊 Joint set-IIでの破壊
最大主応力
1,( MPa
中間主応力
2,(MPa)
42
0 2 4 6 8 10 12 14
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
2=0.78
2=1.22
2=2.24 実験値(MPa)
3=0.78MPa
最大主応力
1,( MPa )
鉛直軸と joint-set Ⅰ のなす角 b, (deg)
図 3.9 破壊時の最大主応力と角bの実験結果とシミュレーション結果(3=0.78MPa)
0 2 4 6 8 10 12 14 16
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
3=1.22MPa
2=1.22
実験値
(MPa)2=1.22MPa
最大主応力
1,( MPa )
鉛直軸と joint-set Ⅰ のなす角 b, (deg)
図 3.10 破壊時の最大主応力と角bの実験結果とシミュレーション結果(3=1.22MPa)
43 まず初めに図 3.2 で示したフローで、破壊時の最大主応力1と中間主応力2の関係をシ ミュレーションしたのち、既往の試験結果[]とシミュレーション結果を比較し、図 3.5、3.6、
3.7 に示した。
弱面の方向がb= 0あるいは 90の場合にはすべての弱面が主応力面となるため常に弱面 以外でのせん断破壊が生じ、等方性材料と同様に破壊時の1は2の影響を受けずに1-2平 面での破壊線は同一の水平線となる。ただし図 3.5 の実験結果を見ると、b= 0あるいは 90
の場合でも2が小さくなって三軸圧縮条件(2= 3)に近づくと強度が若干減少している。
これは等方材料の実験においても非常に一般的に観察されることであり、三軸圧縮強度を 過大評価してしまう(あるいは、三軸圧縮試験で強度定数を決めた場合には三軸圧縮条件以 外での強度を過小評価してしまう)ということは材料の異方性とは関係なくモール・クーロ ン基準の本質的な問題点である。
b≠ 0, 90の場合、中間主応力2が小さいときには弱面(Joint set – I または II)での破 壊が生じ、破壊時の最大主応力1は2の影響を受けて12平面(図 3.5、3.6、3.7)での破 壊線は左下がりとなる。2が大きいときには弱面以外での破壊が生じ、等方性材料と同様に 破壊時の1は2の影響を受けずに12平面での破壊線は水平となる。当然のことながら、
弱面以外での破壊条件はbには影響されず、3だけによって唯一に定まる。
次に図 3.3 で示したフローで、破壊時の最大主応力と角bの関係をシミュレーションした のち、既往の試験結果[]とシミュレーション結果を比較し、図 3.8、3.9、3.10 に示した。
弱面が破壊面となる場合、bが小さいときには Joint set – I が破壊面となり、bが大きいと きには Joint set – II が破壊面となる。両者の境界はb=50付近であるが、この境界付近で は、図 3.5 のb=51の例で示されるように同じbに対しても2の大きさに応じて Joint set – I が破壊面となったり Joint set – II が破壊面となったりすることもある。
Joint set – I が破壊面となる場合には、同一の2に対してb=30付近で破壊時の1は極小 値をとる。このbは 45+I/2 = 26.6に対応するものと考えられる。また、Joint set – II が破 壊面となる場合にはb=65付近で破壊時の1は極小値をとる。このbはI/2 = 65.4に対 応するものと考えられる。当然のことながら、同一の2に対する1の極小値は、Joint set – I の方が Joint set – II より小さくなる。
なお図 3.8 (3=0.31MPa)では、中間主応力係数は最大で b = 0.17(b=30付近で1≒ 8.0MPa, 2= 1.62MPa)であった。したがって本シミュレーションでは中間主応力係数 b が 0.2 以下であれば異方性の影響を受けやすいことが言える。
44
③ 平面によるシミュレーション結果の考察
材料の破壊時の主応力(𝜎1, 𝜎2, 𝜎3)を 3 主応力成分で描いた図を平面と呼ぶ。本論文第 2 章でも述べているが、平面では主応力𝜎1, 𝜎2, 𝜎3相互の大小関係のあらゆる組み合わせに よる応力状態を表現できる。実験では𝜎1, 𝜎2, 𝜎3の方向は固定されているが、平面を用いて 𝜎1, 𝜎2, 𝜎3の方向を変えてみると、実験結果がない応力状態でもどのような挙動を示すかを予 測できる。平面では主応力の関係を表すパラメーターとして、中間主応力係数 b と平均主 応力 p を用いる。
𝑏 =𝜎𝜎2−𝜎3
1−𝜎3 (3.1)
𝑝 =𝜎1+𝜎2+𝜎3
3 (3.2)
今回は平均主応力 p=5MPa のもとで、b= 10、30、50、70の結果を図311、312、313、
31にそれぞれ示した。なお平均主応力が粘着力に比べて極端に小さい値では、破壊基準を 満たす面が存在せず、材料は破壊しない。また平面解析において用いた強度定数等は本章 3.2.1 に示したものを採用した。
b=090においては弱面以外での破壊をするという前提のもとにシミュレーションを行っ たため常に等方モデルで破壊する。
5 9 11 13
7
11 9 13
7 9
11 13 5 5 7
p=5MPa
z(MPa) Joint-setⅠでの破壊 Joint-setⅡでの破壊 弱面以外での破壊 等方モデル
b = 10°
45
5 9 11 13
7
11 9 13
7 9
11 13 5 5 7
p=5MPa
z(MPa) Joint-setⅠでの破壊 Joint-setⅡでの破壊 弱面以外での破壊 等方モデル
b = 30°
図 3.12 平面(b=30, p=5MPa)
46
5 9 11 13
7
11 9 13
7 9
11 13 5 5 7
p=5MPa
z(MPa) Joint-setⅠでの破壊 Joint-setⅡでの破壊 弱面以外での破壊 等方モデル
b=50°
図 3.13 平面(b=0, p=5MPa)
47
5 9 11 13
7
11 9 13
7 9
11 13 5 5 7
p=5MPa
z(MPa) Joint-setⅠでの破壊 Joint-setⅡでの破壊 弱面以外での破壊 等方モデル
図 3.14 平面(b=0, p=5MPa)
図 3.15 では平面を描くために弱面の情報と平均主応力 p を入力し、中間主応力係数 b を微増させることで、3 主応力の大きさ、ならびに座標を出力するシミュレーションフロー を示した。なお図 3.15 では(x、y、z)=(3、2、1)であるパターンのフローを示し ているが、実際は
(x、y、z)=(3、1、2)
(x、y、z)=(2、1、3)
(x、y、z)=(1、2、3)
(x、y、z)=(1、3、2)
(x、y、z)=(2、3、1)
のほかの 5 つのパターンでのシミュレーションも行ったうえで、平面が 1 周分描ける。
48
平均主応力p
強度定数Rmax,Rmin,Cmax,Cmin
弱面と鉛直軸(z軸)がなす角b 弱面と水平軸(x軸)がなす角 を入力
START
b=0
(1,2,3)=(z,y,x)である
Joint-setⅠの破壊基準 F=0における1の算出
Joint-setⅡの破壊基準 F=0における1の算出 等方性材料の破壊基準
F=0における1の算出
それぞれの1を比較し、最小の値を取る 面の破壊基準を採用し出力
b 90?
b=b+db
NO
YES END
STOP
図 3.15 平面シミュレーションのフロー
今回は平面での破壊シミュレーションを行った。傾向からして(a)b=10、30、(b)
b=50、70の2つに分類し、考察を行う。
(a)b=10、30
図 3.11 と図 3.12 においては鉛直軸(z 軸)と Joint set – I のなす角bがb=10、30となる 解析である。(x、y、z)=(3、2、1)では、中間主応力係数 b が小さいうちは Joint set – I での破壊がみられる。次第に中間主応力係数bが大きくなるにつれて、平面の最外 殻、すなわち弱面以外の面で破壊することが示された。
(x、y、z)=(3、1、2)においてb=10では中間主応力係数 b の値によらず弱面