異方性材料の 3 次元破壊基準
首都大学東京大学院
都市環境科学研究科 都市基盤環境学域
安全防災分野 土質研究室
学修番号 18851521
氏名 富谷祐介
指導教官 吉嶺充俊准教授
の見直しが行われ、強靭な国土を構築すべく、日夜議論が交わされている。土質工学の分野 においては液状化災害もさることながら、台風や大雨等の水害による地盤の強度低下への 対策も急がれる。
近年では郊外地区での大規模土地開発や、都市部の地下空間の開発においては日々の地 盤工学の技術向上は欠かせない。そのなかで都市開発の進行により、より厳しい環境条件下 における地盤の支持力、強度、安定性などの検討が要求されている。それらの検討を行う際 には、地盤の強度を決めるパラメータである土のせん断強度定数を正確に求める必要があ る。
材料力学の分野において強度を求める、または強度に対する設計を行う際には様々な破 壊基準が用いられる。地盤工学の分野では、擁壁やダム等のいわゆる土構造物の設計の際に は土のせん断強度、つまり破壊時のせん断応力成分を求める必要がある。その際に用いられ る基準がクーロンの破壊基準である。クーロンの破壊基準によると、破壊時のせん断応力成 分と直応力成分の関係は、線形関係になるが、破壊面の方向をどのように考えるかによって 応力の全成分や主応力成分に対する破壊基準は異なったものとなる。このことから、クーロ ンの破壊基準を適用する面の方向が正確なせん断強度を求める際には重要な要因であるこ とが理解できる。つまり、クーロンの破壊基準を適用する面の方向について検討し、適切な 面の方向を導き出すことが、正確なせん断強度を求めることに繋がるのである。
等方的な土の破壊基準に関しては、現在までに多くの研究がなされている。代表的なもの に、モール・クーロンの破壊基準、トレスカの破壊基準、フォンミーゼスの破壊基準、松岡・
中井の破壊基準などが挙げられる。これらの破壊基準は、クーロンの破壊基準を適用する破 壊面の主応力方向に対する方向余弦をさまざまに設定することで統一的に表現できる。例 えば、一般的に知られる、モールの応力円を用いた図形的解法による等方材料のモール・ク ーロン破壊基準では、クーロン基準を最初に満たす破壊面は常に中間主応力に平行である ため、最大主応力と最小主応力の大きさだけで決まる破壊基準であり、これらの破壊基準は 後述するように式の中に中間主応力2が含まれないことから、中間主応力の影響を適切に 表現しているとは言えない。フォンミーゼスの破壊基準や松岡・中井の破壊基準では中間主 応力に平行ではない破壊面を仮定しているため、ある程度に材料特性に応じた中間主応力 の影響を表現しているものの、破壊面の方向の仮定についての物理的な根拠は非常に薄弱 である。特に材料が異方性を持ち、中間主応力に対して平行な面以外でせん断強度が小さい 場合には、材料強度におよぼす中間主応力の影響は重大である可能性がある。つまり、これ
には、隆起・沈降、堆積過程や地中応力状態などの影響により、異方性が大なり小なり存在 する。明瞭な節理やへき開をもつ岩石のような、強い異方性を発揮する材料を想像するのは 容易であるが、砂質土や粘性土により形成された地盤にも少なからず異方性があるとされ ている。堆積過程において一次元的に圧密され、土粒子は、上載荷重の増加と長時間の載荷 により、自重の作用する方向に対して直交する方向、つまり水平方向に多く配列し、成層や 層状構造を形成するので力学的に異方性を示すのである。また、上載荷重が作用したときに は、地盤内の主応力方向は載荷中心直下以外で垂直方向以外の方向に作用するため、一様地 盤とは異なる状況になることは容易に想像できる。現実の都市土木の分野においても、都市 部などに多くみられる軟弱地盤や砂質土により構成された地盤におけるシールド工法によ るトンネル掘削では、中間主応力の影響も考慮する必要がある。
したがって、既往の研究のような等方性地盤材料を仮定した破壊基準では、異方性を有す るような多様な地盤材料の破壊時の正確な破壊特性を表現するには問題がある。そこで本 研究では、数値計算を用いて、せん断面の方向によってその強度が異なるような異方性地盤 材料の破壊面方向を特定し、異方性地盤材料の 3 次元的な強度特性を調べることにする。
第1章 序論 1
1.1 背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
1.2 3次元のクーロンの破壊基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
1.3 既往の研究で提案されている有名破壊基準とその証明・・・・・・・・・ 5
1.3.1 クーロンの破壊基準(等方性材料) ・・・・・・・・・・・・・ 5
1.3.2 トレスカの破棄基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 1.3.3 フォン・ミーゼスの破壊基準・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
1.3.4 モール・クーロンの破壊基準(図形的解法)・・・・・・・・・・ 9
1.3.5 モール・クーロンの破壊基準(代数学的解法)・・・・・・・・・ 10
1.3.6 松岡・中井の破壊基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
1.3.7 首都大学東京で行われた既往の研究・・・・・・・・・・・・・ 17
1.4 本研究の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
第2章 異方性材料の3次元破壊基準について 19
2.1 3次元主応力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
2.1.1 地盤内の応力状態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
2.1.2 平面・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
2.2 異方性材料の3次元破壊基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25
2.3 強度定数の関数化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
2.3.1 不連続モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
2.3.2 連続モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
2.4 破壊関数を用いたシミュレーションにむけて・・・・・・・・・・・・ 27
第3章 破壊関数を用いたシミュレーション結果 31
3.1 シミュレーションのフロー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 3.2 既往の試験結果との比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32
3.2.1 粘着力の大きい異方性材料・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32
3.2.2 粘着力の小さい異方性材料・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65
4.2 シミュレーション結果における考察・・・・・・・・・・・・・・・・ 151
第5章 結論 153
参考文献 謝辞
第 1 章
序論
2
第 1 章 序論
1.1 背景
モール・クーロンの破壊基準とは、クーロン基準が最初に満たされるせん断面の方向を特 定することによって応力(主応力成分など)に対する破壊条件を表したものである。材料が 等方である場合は、クーロン基準を最初に満たす破壊面は常に中間主応力に平行であるた め、中間主応力2に対して平行な方向を持つ面に作用する応力のモール円の包絡線に関す る図形的考察により、クーロン基準が最初に満たされるせん断面の方向を特定して破壊基 準が定式化され、その破壊基準は2によらないものとなる。しかし異方性材料では面の方 向によりクーロン基準の強度定数が異なるために包絡線が破壊条件になるとは限らない。
したがって数値計算によってクーロン基準が最初に満たされるせん断面方向を特定する必 要があり、また、せん断面は一般的には2に対して平行とはならないために、モール・クー ロンの破壊基準も2の大きさの影響を考慮しなければならない。
明瞭な節理やへき開をもつ岩石のように異方性が極めて強い材料であれば、弱面とそれ 以外の面の強度定数の比較によりクーロン基準が最初に満たされるせん断面方向を特定で きる。
これに対して、砂や粘土などの土質材料でも異方的な性質を持つことが一般的であるが、
岩石材料に比べて方向による強度差は小さく、また単独の方向にのみ弱面が集中するので はなく、面の方向によって連続的に摩擦角などの強度定数が変化していると考えられる。そ こで本研究では、面の方向によって連続的に強度定数が変化する材料のクーロン基準を考 え、最初に基準が満たされる面で破壊するとしてモール・クーロン基準を構築するとともに、
特に面の方向変化に対する強度定数の連続性の度合いに関して考察した。
3 3 次元下で微小要素に働く応力は、図のような 9 つの応力で表現できる。
図 1.1 微小要素に働く応力成分
このうち、力のつり合い条件およびモーメントに関する条件より、
応力成分はxx、yy、zz、xy=yx、yz=zy、xz=zxと与えられる。
このような応力が図 1.2 に示された x 面、y 面、z 面、s 面によって構成された四面体に微 小直交 3 軸に作用しているときを考える。x 面、y 面、z 面、s 面の面積を Ax、Ay、Az、Asと して、それらの面に作用する力を Fx、Fy、Fz、Fsとする。
力のつり合い条件より
Fsx = Fxx + Fyx + Fzx (1.1) と表すことができる。ここに、Fijは i 面に働く力の j 方向成分である。
力は応力と面積をかけたものであることから
Assx = Axxx + Ayyx + Azzx (1.2)
z
x y
σzz
σzy σzx
σxy
σxz
σxx σyz σyy σyx
4
と表すことができる。
このとき s 軸と i 軸のなす方向余弦 siとすると、面の投影より
Ax = sxAs、Ay = syAs、Az = szAs (1.3) と表現できる。
式(1.2)を式(1.3)に代入することで
sx = sxxx + syyx + szzx (1.4) のようにsxを表現できる。
同様に
sy = sxxy + syyy + szzy (1.5)
sz = sxxz + syyz + szzz (1.6) と表現できる。
なお、せん断応力は方向により大きさが異なるが、s 面における任意の方向 t に作用するせ ん断応力stは次のようになる。
st = txsx + tysy + tzsz (1.7) 式(1.7)を変形すると
st = txsxxx + txsyyx + txszzx + tysxxy + tysyyy + tyszzy + tzsxxz + tzsyyz + tzszzz
(1.8) の様に表現できる。
また s 面に作用する直応力成分においては、式(1,8)で t=s とおけば求まり、いわゆる s 面 における方向 s に作用する直応力ssは
ss = sx2sx + sy2sy + sz2sz (1.9)
ss = sx2xx + 2sxsyyx + 2sxszzx + sy2yy + 2syszzy + sz2zz (1.10) と表現できる。
以上の 3 次元主応力成分によるクーロンの破壊基準は
st =Rstss + Cst (1.10) と表現できる。なお式(1.10)にある Rstと Cst は s 面における方向 t に応力が作用すると きの摩擦比と粘着力であり、方向 s と方向 t の関数である。
5
s
x y z
sx
sy
sz
sst
smax図 1.2 s 面に働く 3 次元応力
1.3 既往の研究で提案されている有名破壊基準
1.3.1 クーロンの破壊基準(等方性材料)
破壊基準とは、破壊が生じるときの応力条件をその応力成分の条件式として定式化した ものである。定式化にあたっては主応力成分と強度定数を用いる。
等方性材料においては粘着力や摩擦比は常に同じ値を取ることから
Rst = R = const. (1.11)
6
Cst = C = const. (1.12) と関数ではなく定数として表すことができる。
土質材料の破壊基準の定式化においての基本になっている式がクーロンの破壊基準であ る。この破壊基準は、破壊基準面に関して破壊するときの応力の直応力成分とせん断応力 成分tの間には線形的な関係があるとしており、摩擦比を R、粘着力を C とした強度定数を 用いて次のように表せられる。
t= R+ C (1.13)
ただし、上の式では破壊基準面は事前に破壊する方向が明らかの場合にその面に関して の応力成分に用いればよい。異方性があり破壊面が明らかではない場合にはどの面で破壊 が生じるか考慮する必要がある。既往の破壊基準の研究では破壊基準面をそれぞれ想定し て破壊基準を提案している。
クーロンの破壊基準では、ある面に働くせん断応力と直応力成分を、最大、中間、最小主 応力成分(1, 2, 3)の 3 主応力とその主応力とある面との方向余弦から表すことができる。
主応力面 i と角度αを持ったある面 s の方向余弦は、si=cosと表すことができる。なお i は主応力の方向であり、i=(x,y,z)、もしくは主応力の大きい順に i=(1,2,3)と表せる。また 三平方の定理より、
𝑠12+ 𝑠22+ 𝑠32= 1 (1.14)
と表すことができる。
主応力 3 成分1, 2, 3と、面 s の直応力成分sおよび最大せん断応力成分tsmaxの関係を、
力のつり合い条件から求めると
σ𝑠 = 𝑠12𝜎1+ 𝑠22𝜎2+ 𝑠32𝜎3 (1.15)
𝜏𝑠max = √𝑠12𝜎12+ 𝑠22𝜎22+ 𝑠32𝜎22− 𝜎𝑠2 (1.16)
𝜏𝑠max = √𝑠12𝑠22(𝜎1− 𝜎2)2+ 𝑠12𝑠32(𝜎1− 𝜎3)2+ 𝑠22𝑠32(𝜎2− 𝜎3)2 (1.17)
表すことができる。これらを式(1.13)のとtに代入すれば、主応力に関する等方性材料のク ーロン基準が得られる。
1.3.2 トレスカの破棄基準
トレスカの破壊基準は最も大きなせん断応力が作用する面で破壊が生じるとした破壊基 準である。よって、モールの応力円が移動、拡大していき最大せん断応力面の応力成分がク ーロンの破壊基準(τ=Rσ+C)を満たしたときに破壊が生じるとしている破壊基準であ る。下の図に示したように、破壊面(最大せん断応力面)の方向と最大主応力成分と最小主 応力成分の方向からなす角度はそれぞれ 45で、中間主応力成分の方向からなす角度は 0° であるので、その方向余弦 s1、s2、s3は、
s1=s3=cos45=√1
2、s2=cos90=0 (1.18)
となる。これを用いて破壊基準は
7 と表すことができる。
R=0 の場合、破壊基準は
1-3=2C (1.20)
となり、式(1.20)がトレスカの破壊基準とされる。
図 1.3 トレスカの破壊基準の模式図
x y
t
1
1
45o 45o
45o 45o
8
1.3.3 フォン・ミーゼスの破壊基準
フォン・ミーゼスの破壊基準は、図のように最大、中間、最小主応力が作用している方向 に対してそれぞれ等しい角度をなす面で破壊すると仮定したものである。よって、仮定した 破壊基準面の方向余弦は
s1=s2=s3=√1
3 (1.18)
となる。式(1.18)を式(1.15)、(1.16)に代入すると
σ=𝜎oct=13(𝜎1+ 𝜎2+ 𝜎3) (1.19)
τ = 𝜏𝑜𝑐𝑡 =1
3√(𝜎1− 𝜎2)2+ (𝜎2− 𝜎3)2+(𝜎3− 𝜎1)2 (1.20)
となる。この破壊基準は非摩擦性物質(R=0)の場合に用いるのでクーロンの破壊基準式
(1.13)で表すと、toct=C となり、
2 2 1 3 2 3 2 2 2
1 ) ( ) ( ) 9
( C (1.21)
となる。
x z
y
octt
octr
r r
45o 45o
45o
図 1.4 フォン・ミーゼスの破壊基準の模式図
9 すせん断面の方向を特定することによって、主応力に対する破壊条件を表したものである。
材料が等方的な場合は、モールの応力円の包絡線に関する図形的解法からせん断面の方向 を特定して破壊基準が定式化される。下の図よりモール円が最初にクーロンの破壊基準に 接したとき破壊が生じるので破壊基準面と最大応力面とのなす角度から方向余弦を示すと
𝑠1= 𝑐𝑜𝑠 (45°+𝜑2) = √1−𝑠𝑖𝑛𝜑2 = √12(1 − 𝑅
√1+𝑅2) (1.22)
𝑠2= 0 (1.23)
𝑠3= 𝑠𝑖𝑛 (45°+𝜑2) = √1+𝑠𝑖𝑛𝜑2 = √12(1 + 𝑅
√1+𝑅2) (1.24)
となる。ここに、tan = R である。これをクーロンの破壊基準に適応すると、モール・クー ロンの破壊基準は
𝜎1−𝜎3
2 =𝜎1+𝜎3
2 𝑠𝑖𝑛𝜑 + 𝐶𝑐𝑜𝑠𝜑 (1.25)
となる。なお乾燥砂のような非粘着性物質の場合は C=0 となり、上式に代入すると
𝜎1−𝜎3
𝜎1+𝜎3= 𝑠𝑖𝑛𝜑 (1.26)
と表される。したがって
(𝑠1, 𝑠2, 𝑠3) = (√𝜎𝜎3
1+𝜎3, 0, √𝜎𝜎1
1+𝜎3) (1.27)
となり、基準面の方向が主応力成分の大きさだけに関連付けられることが分かる。
一方非摩擦性物質は R=0 となり、上式に代入すると
𝜎1− 𝜎3= 2𝐶 (1.28)
となる。これは先述のトレスカの破壊基準に一致する。
10
図 1.5 モール・クーロンの破壊基準の模式図
図 1.6 モール・クーロンの破壊基準による破壊面
11 線とモールの応力円の接したとき、材料が破壊するという、いわば幾何学的解法により破壊 面の方向余弦が導き出されるという認識であった。そこで筆者はモール・クーロンの破壊基 準を代数学的に論述できないかと模索してきた。
そこで破壊関数を以下の式の様に整理した。
F = tRs -C (1.29)
s = s121 + s222 + s323 (1.30) t s1212 + s2222 + s3232 - s2 (1.31)
ただし1,2,3は任意の値である。また R、C は強度定数である。
s1, s2, s3はせん断面の方向余弦であって、次の条件を満たす。
s12+s22+s32=1 (1.32) このとき、式(1.29)の破壊関数Fを最大とする s12,s22,s32を1,2,3、R,C の関数として 求めていく。
本破壊関数は多変数関数 F(s1,s2,s3)と表すことができる。多変数関数の極値を求めるには、
様々な方法が存在するが、今回は多変数関数 F を偏微分して 0 となる点で極値を取ると定 義した。
したがって
∂F
∂𝑠1(a, b, c) = ∂F
∂𝑠2(a, b, c) = ∂F
∂𝑠3(a, b, c) = 0 (1.33)
式(1.33)を満たす(a,b,c)を調べる。
また式変形の簡易化のために今回表記を
s=s121+s222+s323 (1.34) t s1212+s2222+s3232-s2 (1.35) とした。さらに
=(1-2) ≥ 0 (1.36)
=(1-3) ≥ 0 (1.37)
=(2-3) ≥ 0 (1.38) と表記する。
式(1.36)、(1.37)、(1.38)を式(1.35)に代入すると
t (1-2)s12s22(2-3)s22s32(1-3)s12s32 (1.38) と表すことができる。
したがって破壊関数 F は
12
F=sqrt(s12s22s22s32s12s32)-(s121+s222+s323)R-C (1.39) と定義される。
そして破壊関数 F が極大値を取るとき、材料は破壊する。ここで極大値を求めるために、各変数 いわゆる方向余弦 siにて偏微分すると
∂F
∂𝑠1= 1
2𝜏{2𝛼2𝑠1𝑠22+ 2𝛽2𝑠1𝑠32} − 2𝑅𝑠1𝜎1 (1.40) となる。同様にして
∂F
∂𝑠2= 1
2𝜏{2𝛼2𝑠2𝑠12+ 2𝛾2𝑠2𝑠32} − 2𝑅𝑠2𝜎2 (1.41)
∂F
∂𝑠3= 1
2𝜏{2𝛾2𝑠3𝑠22+ 2𝛽2𝑠3𝑠12} − 2𝑅𝑠3𝜎3 (1.42) 偏微分を行った。破壊関数 F が極値を取るにはいずれも
∂F
∂𝑠1= ∂F
∂𝑠2= ∂F
∂𝑠3 = 0 (1.43)
という条件が満たされなければならない。このことから式(1.40)は
∂F
∂𝑠1= {2𝛼2𝑠1𝑠22+ 2𝛽2𝑠1𝑠32} − 2𝑅𝑠1𝜎1τ = 0 (1.44) と表すことができる。
同様にして式(1.41)、(1.42)も
∂F
∂𝑠2= {2𝛼2𝑠2𝑠12+ 2𝛾2𝑠2𝑠32} − 2𝑅𝑠2𝜎2τ = 0 (1.45)
∂F
∂𝑠3= {2𝛾2𝑠3𝑠22+ 2𝛽2𝑠3𝑠12} − 2𝑅𝑠3𝜎3τ = 0 (1.46) と表記できる。
ここで式(1.44)、(1.45)、(1.46)をそれぞれsi(i=1,2,3)で割るためにs1≠s2≠s3≠0であ ると仮定する。したがって式(1.44)、(1.45)、(1.46)をそれぞれ si(i=1,2,3)で割ると、
{2𝛼2𝑠22+ 2𝛽2𝑠32} = 𝑅𝜎1τ (1.47) {2𝛼2𝑠12+ 2𝛾2𝑠32} = 𝑅𝜎2τ (1.48) {2𝛾2𝑠22+ 2𝛽2𝑠12} = 𝑅𝜎3τ (1.49) と表現できる。
これをマトリックス表記にすると
[
0 (𝜎1− 𝜎2)2 (𝜎1− 𝜎3)2 (𝜎1− 𝜎2)2 0 (𝜎2− 𝜎3)2 (𝜎1− 𝜎3)2 (𝜎2− 𝜎3)2 0
] [ 𝑠12 𝑠22 𝑠32
] = Rτ・[ 𝜎1 𝜎2
𝜎3] (1.50) となり、
13 (𝜎1− 𝜎3) (𝜎2− 𝜎3) 0
𝑥 = [ 𝑠12
𝑠22 𝑠32
] (1.52)
𝑦 = [ 𝜎1 𝜎2
𝜎3
] (1.53)
とする。線形式にすると
Ax=y (1.54)
x=A-1y (1.55) となる。式(1.51)、(1.52)、(1.53)を式(1.54)、(1.55)に代入すると、
[ 𝑠12 𝑠22 𝑠32
] = Rτ・[
0 (𝜎1− 𝜎2)2 (𝜎1− 𝜎3)2 (𝜎1− 𝜎2)2 0 (𝜎2− 𝜎3)2 (𝜎1− 𝜎3)2 (𝜎2− 𝜎3)2 0
]
−1
[ 𝜎1
𝜎2
𝜎3] (1.56) 逆行列を変形させると
[ 𝑠12 𝑠22 𝑠32
]=
[
𝑅𝜏 2𝛼2𝛽2
𝑅𝜏 2𝛼2𝛾2
𝑅𝜏 2𝛽2𝛾2]
・[
−𝛾2𝜎1+ 𝛽2𝜎2+ 𝛼2𝜎3 𝛾2𝜎1− 𝛽2𝜎2+ 𝛼2𝜎3
𝛾2𝜎1+ 𝛽2𝜎2− 𝛼2𝜎3
] (1.57)
として、各方向余弦siを式(1.57)の様に表現できる。
ここで式変形より
𝑠12= 2(𝜎 𝑅𝜏
1−𝜎2)2(𝜎3−𝜎1)2× (𝜎1− 𝜎3)(𝜎1− 𝜎2)(𝜎2+ 𝜎3) (1.58) 𝑠22= 2(𝜎 −𝑅𝜏
1−𝜎2)2(𝜎2−𝜎3)2× (𝜎1+ 𝜎3)(𝜎1− 𝜎2)(𝜎2− 𝜎3) (1.59)
𝑠32= 2(𝜎 𝑅𝜏
1−𝜎3)2(𝜎2−𝜎3)2× (𝜎1− 𝜎3)(𝜎1+ 𝜎2)(𝜎2− 𝜎3) (1.60) となる。ここで式(1.58)について
𝑅𝜏
2(𝜎1−𝜎2)2(𝜎3−𝜎1)2 ≧ 0 (1.61) であり、
(𝜎1− 𝜎3)(𝜎1− 𝜎2)(𝜎2+ 𝜎3) ≧ 0 (1.62) となる。したがって
𝑠12≧ 0 (1.63)
14
と表せる。これは、0 ≦ 𝑠12≦ 1となり式(1.58)はすべての𝑠12に対して成立する式である。
なおこの段階で𝑠12は具体的な数値を得ることはできない。
ここで式(1.60)について
𝑅𝜏
2(𝜎1−𝜎3)2(𝜎2−𝜎3)2 ≧ 0 (1.64) であり、
(𝜎1− 𝜎3)(𝜎1+ 𝜎2)(𝜎2− 𝜎3) ≧ 0 (1.65) となる。したがって
𝑠32≧ 0 (1.66) と表せる。これは、0 ≦ 𝑠32≦ 1となり式(1.60)はすべての𝑠32に対して成立する式である。
なおこの段階で𝑠32は具体的な数値を得ることはできない。
ここで式(1.59)について
−𝑅𝜏
2(𝜎1−𝜎2)2(𝜎2−𝜎3)2 ≦ 0 (1.64) であり、
(𝜎1+ 𝜎3)(𝜎1− 𝜎2)(𝜎2− 𝜎3) ≧ 0 (1.65) となる。したがって
𝑠22≦ 0 (1.66) と表せる。これは、0 ≦ 𝑠22≦ 1であるから式(1.59)を満たす条件は𝑠22= 0のみとなる。し
たがって破壊関数 F が極値をとる条件は𝑠22= 0のみとなる。
ここでs22=0を式(1.38)に代入すると
t (𝜎1− 𝜎3)s12s32 (1.67) となる。さらに、ここにs2=0、s32=1-s12を式(1.39)に代入すると
F=(𝜎1− 𝜎3)√𝑠12(1 − 𝑠12) − (𝑠12𝜎1− 𝑠12𝜎3+ 𝜎3)𝑅 − 𝐶 (1.68) という破壊関数Fを示せる。
式(1.68)を変数s1で偏微分して
∂F
∂𝑠1= (𝜎1−𝜎3)
2√𝑠12(1−𝑠12)
{2𝑠1− 4𝑠13} − 2𝑅𝑠1(𝜎1− 𝜎3) (1.69) 破壊関数 F が極値を取るときの s1の値を特定するために
∂F
∂𝑠1= 0 (1.70)
とすると、
(𝜎1−𝜎3) 2√𝑠12(1−𝑠12)
{2𝑠1− 4𝑠13} − 2𝑅𝑠1(𝜎1− 𝜎3) = 0 (1.71)
15
2√𝑠12(1−𝑠12)
となる。式(1.72)を変形させると、
(𝜎1− 𝜎3)(1 − 2𝑠12) − 2𝑅(𝜎1− 𝜎3)√𝑠12− 𝑠14= 0 (1.73) となり、
(𝜎1− 𝜎3)(1 − 2𝑠12) = 2𝑅(𝜎1− 𝜎3)√𝑠12− 𝑠14 (1.74) 式(1.74)の両辺を2乗して
(𝜎1− 𝜎3)2(1 − 2𝑠12)2= 4𝑅2(𝜎1− 𝜎3)2(𝑠12− 𝑠14) (1.75) と表せる。式(1.775)において、(𝜎1− 𝜎3)2は定数であるから係数比較法により
(1 − 2𝑠12)2= 4𝑅2(𝑠12− 𝑠14) (1.76) となり、変形すると、
4(1 + 𝑅2)𝑠14− 4(1 + 𝑅2)𝑠12+ 1 = 0 (1.77) と表せる。式(1.77)は s12の 2 次方程式として、破壊関数 F が極値をとるときの s12を求め ていく。2次方程式の解の公式により
𝑠12=−4(1+𝑅2)±√16(1+𝑅2)2−16(1+𝑅2)
8(1+𝑅2) (1.78)
よって
𝑠12=1
2± R
2√(1+𝑅2) (1.79)
となる。同様に s32に関しても、
𝑠32=1
2± R
2√(1+𝑅2) (1.80)
という式が得られる。
なお破壊関数 F は F<0 で破壊せず、F≧0 で破壊することから s12<s32という条件が得られ る。したがって
𝑠12=1
2− R
2√(1+𝑅2) (1.81)
𝑠32=1
2+ R
2√(1+𝑅2) (1.82)
という式が得られる。よって破壊関数 F は、式(1.66)より得られた𝑠22= 0と式(1.81)、
(1.82)が成立するとき、極値をとる。すなわち等方性材料は破壊することとなる。これら の代数学的解法により求められた破壊時の方向余弦 siは、モール円を用いた図形的解法に より算出された結果(式(1.22)、(1.23)、(1.24)、(1.27))と等しくなる。先述の通りモー
16
ル・クーロンの破壊基準はこれまでモール円を用いた図形的解法でのみ、破壊面の特定がで きるとされていたが、著者が行った本章により代数学的解法によっても、等方性材料のモー ル・クーロンの破壊基準における弱面の特定が可能になった。
1.3.6 松岡・中井の破壊基準
松岡・中井の破壊基準は、クーロンの基準を適用する面の方向を2方向にも傾けた 3 次 元的な破壊面(SMP(空間滑動面)空間)を想定したものである。図 1.7 にあるように各主 応力の作用したある土の要素を考えると、主応力成分方向に対して12、 23、 13で決まる 傾きをもった面が SMP である。式(1.27)を参考にして、12、 23、 13を主応力成分の大き さに関連づけ、SMP の方向余弦を
1 3 3 2 2 1
2 1 1
3 3 2 2 1
1 3 1
3 3 2 2 1
3 2
13 12 23
3 2 1
, ,
2 )) 45 cos(
2 ), 45 cos(
2 ), 45 (cos(
, ,
s
s s
(1.83) とおき、これらを式(1.3)、(1.4)に適用すると、
1 3 3 2 2 1
3 2
3 1
SMP (1.84)
3 1
3 2
1
t
t
SMP SMP
SMP (1.85)
となる。ところで、式(1.15)はC = 0の場合であったから、式(1.21)もC = 0の条件に対応 していると考えられる。そこで、ここでも性物質(C = 0)の場合のみを考えると
tSMP = RSMP (1.86) となり、これは松岡・中井の破壊基準と呼ばれている。