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方言教育の導入の背景としての学習指導要領の変遷

4 我が国における言語・方言の現状(三井はるみ)

4.3 方言の衰退と方言教育の導入

4.3.2 方言教育の導入の背景としての学習指導要領の変遷

教育に関する時代的な背景として,1950 年代に,「学習指導要領」における方言の扱い に変遷があったことも,教育現場における方言の位置付けに影響を与えたことが推測され る。次に,昭和 22(1947)年,26(1951)年,33(1958)年,43(1968)年,および,現 行の平成 10(1998)年の「小学校学習指導要領」から,関連箇所を抜粋する。

① 昭和 22 年度(試案)学習指導要領 国語科編

・第一章 まえがき

第二節 国語科学習指導の目標

(二) なるべく,方言や,なまり,舌のもつれをなおして,標準語に近づける。

・第三章 小学校四,五,六学年の国語科学習指導 第一節 話しかた

三 話しかた学習指導上注意すべき点

(三)できるだけ,語法の正しいことばをつかい,俗語または方言をさけるようにする。

② 昭和 26 年(1951)改訂版 小学校学習指導要領 国語科編(試案)

・第七節 第三学年の国語科学習指導はどう進めたらよいか 三 話すことの学習指導はどうしたらよいか

3 国語科の学習で,話すことを計画的に指導する。

- 32 - 図 4.9 方言保存運動と方言教育

2011.1.29 朝日新聞(夕刊)

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(4) 教科書や,いろいろな読み物の文を読んだり,ラジオを聞いたりすることによ って,自分の使っていることばの中に,幼児語・方言・なまり・野卑なことばな どのあることに気づかせ,だんだんとよいことばや,共通語を使わせていくよう にする。

③ 小学校学習指導要領 昭和 33 年改訂 第2章 各教科 第1節 国語

・〔第4学年〕

(7) 全国に通用することばとその土地でしか使われないことばとの違いを理解する こと。

上に示す指導事項のほか,「全国に通用することばで文章を書いたり,また,話をし たりするように努めること」も望ましい。

・〔第5学年〕

(5) 全国に通用することばで書くようにすること。

・〔第6学年〕

(6) 必要な場合に全国に通用することばで話すこと。

④ 小学校学習指導要領 昭和 43 年7月 2章 各教科 第1節 国語

・〔第4学年〕A 聞くこと,話すこと

ウ 共通語と方言とでは違いがあることを理解し,また,必要な場合には共通語で話す ようにすること。

・〔第5学年〕〔第6学年〕A 聞くこと,話すこと ウ 必要な場合には共通語で話すこと。

⑤ 小学校学習指導要領 平成 10 年 12 月 2章 各教科 第1節 国語

・〔第5学年及び第6学年〕〔言語事項〕

カ 言葉遣いに関する事項

(イ) 共通語と方言との違いを理解し,また,必要に応じて共通語で話すこと。

(教育情報ナショナルセンターWeb ページ http://www.nicer.go.jp/guideline/old/ による)

昭和 22 年,26 年の学習指導要領では,方言を「俗語」や「野卑なことば」と同列に置 き,目標言語である「正しいことば」「よいことば」「共通語」を習得する上での妨げとな るものとして位置付けている。戦前以来の「方言禁止」「方言矯正」を伴った標準語教育

- 34 - と共通の方向性を持つものと言えよう。

昭和 33 年の学習指導要領では,その方向性に変化が見られる。目標言語を「全国に通 用することば」(昭和 43 年以降は「共通語」)に置きながらも,方言に対しては「その土 地でしか使われないことばとの違いを理解する」として扱い,排除するのではなく,併存 するものとして位置付ける姿勢がうかがわれる。また,共通語については「必要な場合に」

話すとされ,ここには,方言と共通語の状況に応じた役割分担が想定されているように理 解される。以後の学習指導要領は,現行の平成 10 年告示のものに至るまで,ほぼ同様の 記述が続いている。

学習指導要領に示された,方言に対する扱い方の変化は,タイムラグを伴いながらも,

教育現場に徐々に取り入れられ,時代・地域・学校の状況に応じて,方言教育にもつながっ ていったものと考えられる。