第 5 章 画像診断機器に関する配置と利用の関連についての分析
5.2 方法
セプト(入院外)」「DPC レセプト」「調剤レセプト」「歯科レセプト」に分けて格納されて いるが、この内「医科レセプト(入院)」「医科レセプト(入院外)」「DPC レセプト」を対象デ ータベースとして、「診療行為レコード(SI レコード)」に CT 検査、MRI 検査に該当する 診療行為コードを有するレセプトを抽出した。分析対象地域は日本全国とし、地域単位は NDB 研究のガイドラインにおける公表基準に則り二次医療圏とした。
また、CT 及び MRI の配置台数は、2014 年の医療施設調査から各二次医療圏別の配置台 数を集計した。その他、二次医療圏別の人口は 2015 年の国勢調査を基に集計した[18]。
5.2.2 CT・MRI 検査回数の抽出
レセプトに記載されている CT 検査、MRI 検査に該当する診療行為コードの頻度を、
各々の検査回数として定義を行い、当該レセプトに記載されている市町村コードを基準に して二次医療圏別に集計を行った。また、抽出の妥当性を検証するために、公開されている NDB オープンデータとの比較によって誤差率を算出し、妥当性を検証した。
なお、日本の医療保険は、国民皆保険制度によって運用されており、公的医療保険が適用 される保険診療において、医療機関は保険者に請求書を定められた様式で作成し、月ごとに 保険者に送付し、審査支払機関での審査の後に医療費の償還を得る。この請求書がレセプト であり、検査を実施した医療機関の情報、患者の個人情報、傷病名、診療報酬等が記載され ている。なお、DPC 病院においては画像検査の診療報酬は算定されないため、医療費とし ては計上されていないが、診療行為コードの記載は DPC レセプトにおける CD レコードに 記載されており、本研究の集計では DPC 病院の入院中の画像診断検査回数も含んだ値であ る。CD レコードを含んだ集計の妥当性についても検証するために、DPC レセプトの集計 において「SI レコードと CD レコードをカウント」「SI レコードのみカウント」「CD レコ ードのみカウント」した場合のそれぞれに NDB オープンデータとの誤差率を算出した。
5.2.3 配置と利用の関連および偏在の評価
二次医療圏別に「1台あたりの検査数」および「人口 10 万人あたり検査数」を算出し、
これを利用状況の評価指標とした。また、配置状況の評価指標として「人口 10 万人あたり 台数」をそれぞれ求めた。また、「1台あたり検査数」と「人口10万人あたり台数」を二 変数とするプロットを行い関連を検討した。
二次医療圏間における配置状況と利用状況の各指標の格差を評価するために、Gini 係数 を算出した。また、Gini 係数の算出に加え資源間の比較を行うためにローレンツ曲線を描
順に並べ、全体の度数で除した「相対度数」の累積比率を x 軸にプロットする。次に、階級 値と度数を掛け、全体に占める割合を除した「累積配分比率」を y 軸にプロットすることで 描出される。ローレンツ曲線は完全平等分配が実現している環境下では傾き1の直線(均等 分配線)となり、不平等になるにつれ、下に凸になるように歪んでいく性質がある。なお、
このローレンツ曲線と均等分配線との間の面積を 2 倍した値が Gini 係数と一致する性質が ある。本研究では、x 軸に医療圏別人口の累積比率、y 軸に二次医療圏別の各資料の累積比 率としてローレンツ曲線を求めた。さらに各指標別に Gini 係数を用いて評価を行った。な お、ローレンツ曲線を用いた Gini 係数の算出を数式で記述すると以下のように記述される。
𝐺𝑖𝑛𝑖 𝐶𝑜𝑒𝑓𝑓𝑖𝑐𝑖𝑒𝑛𝑡 = ∑ ∑ 𝑦 − 𝑦 ・・・式(11)
𝑦 , 𝑦 :各医療圏における指標
n
:二次医療圏数 μ:各指標の平均また、同値の Gini 係数においても、前章で触れたローレンツ曲線の形状が異なる場合が あり Gini 係数単体では地域差を正しく把握できない可能性がある。こうしたケースへ対応 するため、近年ではエントロピーの概念を導入した Theil 指標、厚生関数の概念を導入した Atkinson 指数等の複数の指標と合わせて評価を行うことで、より頑健な結論を得た報告が 行われている[19]。Theil 指標はある事象の起こる確率の逆数の対数をその確率の比重和を エントロピーとして、この確率を所得や資源と入れ替え、完全に均等に分配された時のエン トロピーの最大値から所得のエントロピーを引けば、一つの不平等尺度になるという原理 である[19]。本研究では、以下の式によって Theil 指標 T を算出した。
𝑇 = ∑ 𝑠 log 𝑛𝑠 ・・・式(12)
𝑠 ,:各医療圏
i
における指標n
:二次医療圏数Atkinson 指数は、経済学で使用される個人の相対的危険回避度一定型の効用関数
𝑈 (𝑥) = に基づき所得分布の不平等指数を定義した指標である[19,20]。この時、εは
相対的危険度を表す非負のパラメータであり、全員の効用の和を社会厚生関数と定義した 時、本研究では以下の式によって Atkinson 指数を算出した。
𝐴 = 1 − ∑ ・・・式(13)
𝑌: 各指標の平均 𝑌 ,: 二次医療圏
i
における各指標n
:二次医療圏数Barr N、Johnson DT らは Theil 指標、Atkinson 指数を活用し、医療資源の偏在について 評価を行い、各国の偏在状況を報告している。国内では Toyabe らが3つの指標を用いて、
医師の地理的偏在の推移について報告した[19]。本研究では これらの先行研究で活用され ている上記3つの指標を用いて、CT と MRI との比較を行った。