第 4 章 新しいノイズ特性算出手法の提案
4.2 方法
4.2.1 使用機器
本研究では,トモシンセシス画像の再構成に用いる投影画像はRADspeed Pro EDGE
package(島津製作所)から取得した.この装置はピクセルサイズ 0.15 mmのFPDを有し
ているが,トモシンセシスの投影画像取得時にはビンニングにより 0.3 mmのピクセル サイズとして収集されるため,本研究ではビンニングされた状態の画像を使用した.デ ータ収集配置は Fig. 3.6と同様である.通常,FPD画像のノイズ特性を算出する試料を 作成する場合,FPD上に存在するグリッドや寝台などは取り除くが,トモシンセシスの ノイズ特性を算出した過去の報告では,臨床で用いるアライメントでデータ収集を行っ ているため,本研究も臨床と同様の条件を採用した [36-40].また,同様に,散乱体にア クリルを選択して実験を行った報告が多く,本研究においても 20 mm のアクリルを散 乱体として選択した.加えて,アクリル間に 0.5 mm径の金属ワイヤを挿入した.高コ ントラストな金属ワイヤを挿入することで,トモシンセシス画像のピクセル値の変動を 小さくすることが可能である.X 線振角は 40°に設定した.また,投影画像の照射回数 は撮影線量による測定結果への影響を考慮し,10,30,および 60回を選択した.投影 画像は付属のワークステーションを用いて FBP 法により画像再構成を行い,ワイヤの 配置高さに相当するトモシンセシス画像を得た.画像解析には ImageJを用いた.また,
2 次 元 パ ワ ー ス ペ ク ト ル 上 で ラ ジ ア ル ス キ ャ ン を 実 行 す る プ ラ グ イ ン で あ る , Radial_Profile_Angle_Ext.jarを使用した [41].
4.2.2 Radial Frequency 法
CT 画像のノイズ特性を算出する手法は仮想スリット法,2D-FFT 法および Radial 法 が用いられる [10,11,40].Radial法では,均一な物質を撮影して取得したCT画像の 2 次元フーリエ変換から得た 2次元パワースペクトルに対し,原点を中心としたラジア ルスキャンを行い,全周のパワースペクトルを取得する(Fig. 4.1).
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Fig. 4.1 Example of the acquired power value using the Radial frequency method.
取得したパワー値にサンプリングピッチやデータ数などの定数を積徐算することで,
Radial法によるノイズ特性を算出可能である.Radial法によるノイズ特性は以下の式か
ら計算される.
Noise power spectrum [𝑚𝑚2]
= 𝑥・𝑦
2・𝐷・𝐸̅2・𝑟2∑ |∑ ∑ (𝐼(𝑥𝑖, 𝑦𝑗))・exp (−2𝜋𝑖(𝑢𝑛𝑥𝑖+ 𝑣𝑘𝑦𝑗))
𝑟
𝑗=1 𝑟
𝑖=1
|
2𝐷
𝑑=1
2 (4.1)
ここで,x,y は水平および垂直方向のサンプリング間隔,D はデータ収集角度(180°),
𝐸̅はROI内の平均ピクセル値,rはROIのマトリックスサイズ,I(xi,yj)はトレンド除去 後のピクセル値である.2 次元パワースペクトルに対しラジアルスキャンを実行し,パ ワー値を取得する過程は, ImageJのプラグインにより簡便に取得可能である.
4.2.3 トモシンセシス画像に適用する上での問題点
Radial 法は原点を中心とした全周をラジアルスキャンすることでパワー値を取得す
る.この取得パワー値の相加平均でノイズ特性を算出するため,結果として軸方向の区 別なくノイズ特性を算出する.CT 画像では,読み取り方向などの概念が無く,被写体を
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360°のX線照射によりデータ収集するため,軸方向を区別してノイズ特性を算出する必
要はない.しかし,トモシンセシス画像はFPDを用いて制限された角度内のデータのみ で画像再構成するため,軸方向の特性は異なる.したがって,第 3 章で述べたように,
現状,トモシンセシス画像のノイズ特性は2D-FFT法を用いることが一般的である.Fig.
4.2に同一のトモシンセシス画像から2D-FFT法とRadial法により算出したノイズ特性 を示す.
Fig. 4.2 Results of the noise property calculated by using the 2D-FFT method and the radial frequency method.
この結果では,Radial 法により求めたノイズ特性と,2D-FFT法より求めた v 軸方向 の特性が酷似している.X 線管移動方向に前述の空間フィルタが適応されており,フィ ルタの影響がv軸を中心にパワースペクトル全体へ大きく影響しているため,上記の結 果が得られたと考えられた.しかし,u軸方向のノイズ特性とRadial法とは大きく異な っており,Radial法で軸方向の特性を分離することは困難である.したがって,トモシ ンセシス画像のノイズ特性算出に Radial 法を原法のまま適用できないことが確認され た.
26 4.2.4 Limited Angle Radial Frequency法
以上のように,Radial法を用いてノイズ特性を算出する過程は,プラグインを使用で きるため簡便であるが,軸方向の特性を個々に算出できない点が,トモシンセシス画像 においては問題となる.本研究では,この問題を解決するために,ラジアルスキャンを 行ったデータの内,軸周囲の限られたデータのみを使用することで軸方向を区別したノ イズ特性を算出する新しい手法を試みた.Radial 法が原点を中心とした 360°のパワー 値を取得するのに対し,この手法は制限された角度内のデータのみを使用するため,
Limited Angle Radial (以下,LAR) 法と呼称する.
Fig. 4.3 Example of the acquired power value using the LAR method. The u and v-axis directions were defined as shown in this figure. D is expressed the limited angle used for data acquisition in the LAR method.
LAR法におけるデータ収集範囲の 1 例を Fig. 4.3 に示す.図中の Dは式(4.1)の定数 Dに相当するもので,LAR法ではデータを収集する際の制限角度を示す.なお,収集の 角度ステップはピクセルサイズが 0.3 mmであることから,1°刻みとした.このように 軸周囲のデータのみでノイズ特性を算出することで,軸方向の特性を分離した算出が可 能になると考える.しかし,制限角度Dの設定によって,得られるノイズ特性の結果が 変化することが予想される.そこで,Dを3,5および15°に設定した場合の各軸方向の ノイズ特性について,Radial法および2D-FFT法を用いて算出した結果と比較した.
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